特別企画
最新露出計 セコニック「L-858D」実践レビュー
ハイスピードシンクロ対応、閃光時間解析……多彩な機能をチェック
2017年6月14日 09:10
写真を撮る上で重要な要素の一つは「露出をしっかりと把握すること」だ。特に多灯ライティングをセッティングする際は、個々のストロボの出力を知ることが、ライティング成功への近道である。
カメラのAEを使って露出を測るのももちろん良いのだが、ストロボを使う場合、カメラのAEはTTLを除いて基本的に使えないので、露出計が必要不可欠になる。今回は2017年1月28日にセコニックが発売したフラッシュメーター「スピードマスター L-858D」を例に、露出計の活用法をご紹介したい。
高機能化するストロボに追従
まずは、L-858Dの外観から見てみよう。本機は入射光と反射光(スポット受光角1度)の両方を測光できる露出計だ。そのため、露出計としては少し大きめ。サイズ感は、手の平よりも少し大きめといったところだ。質量は約240g(電池含まず)となっている。
タッチパネルを使った操作が基本で、スマートフォンのように直感的に操作できるのも本機の魅力だ。スマートフォンの扱いに慣れていれば、問題なく操作できるだろう。
タッチパネル画面内の下部にはファンクションボタンを2つ備えており、ここには頻繁に使用する項目を割り当てられる。
例えば筆者は入射式と反射式の切り替えと、フィルターのON/OFFを割り当てている。メニュー内から簡単にファンクションボタンの機能を変更できるので、覚えておきたい。
2灯ライティングでの使用例
L-858Dを使って簡単な2灯ライティングを実践してみよう。はじめにモデルの立ち位置を決めて、ストロボおよびストロボアクセサリーとモデルの距離を決めたら、露出計を使ってメインライトの光を測光する。
測光するのはモデルの顔と背景の明るさだ。メインライトはF4になるように調整し、背景の明るさはメインライトよりも約2段落ちるよう、F2になるように調整している。
背景の明るさは、モデルと背景との距離を調整するだけだ。背景を離すと暗くなり、近づけると明るくなる。背景とモデルの距離を調整する場合も、モデルとメインライトの距離は変えないことが鉄則だ。
モデルの左から1灯。肌に露出を合わせた。
次に、10度のグリッドを用いて髪の毛にハイライトが入るように調整した。ハイライトの露出は、先ほど測ったメインライトの露出よりも1段明るくなるようにしている。
露出計を使用すれば、即座にストロボの光量を把握したり、モデルと背景の距離を調整したりと臨機応変に対応できるが、数値を知らないで撮影してしまうと時間が掛かってしまうこともあるので、多灯ライティングにおける露出計の役割は大きい。
ハイスピードシンクロ対応をチェック
露出計の機能と聞くと、単純に自然光やフラッシュ光などを測るだけ、というイメージをお持ちの方も多いかと思う。だが、実は最新のフラッシュメーターは驚くほど進化しているのだ。
近年、ストロボはクリップオンからモノブロック、バッテリー式などいずれも高機能になっており、現行のストロボの多くがハイスピードシンクロ(HSS、ニコンのオートFPなど)に対応しているほか、より短時間の閃光も可能になってきた。その流れを受けて、L-858DではHSSのフラッシュ光を測定する機能を搭載している。
ハイスピードシンクロとは、カメラの同調速度をはるかに超えて、1/8,000秒など高速のシャッタースピードでストロボを同調させる機能のこと。ストロボ光を連続発光させることで写真にシャッター幕が写り込んでしまうことがない一方で、一般的なフラッシュメーターでは正確な数値が出ないデメリットもあった。ハイスピードシンクロ撮影時の露出は、今までの露出計では測定できなかったのだ。
L-858Dではハイスピードシンクロ時の露出も正確に測光できる。そのため、正確な露出を即座に知り、ハイスピードシンクロの多灯ライティングなどでも的確に数値を把握し、調整することが可能になる。
そもそもハイスピードシンクロを使うとどんな作品になるのか。実践してみよう。
まずは前後をぼかして自然光のみで撮影。これはこれで悪くないが、曇天だっただけに、インパクトにかける印象だ。
次にストロボを発光させてコントラストをつける。ただしストロボ同調速度のまま絞りを開けると、ご覧の通りの露出オーバーになる。
そこでハイスピードシンクロの出番だ。前後のボケを生かしつつもコントラストを強調した、ドラマチックな作品になった。
この作品でもL-858Dでモデルの肌の露出を事前に測り、それに合わせてストロボの光量を決めている。ハイスピードシンクロに対応した製品であるため、試行錯誤をすることなくスピーディに撮影が進められた。
閃光時間を把握しての作品撮り
現行のストロボは、閃光時間がとても短くなっていると書いたが、ストロボのスペック表などを見ても、多くが閃光時間の表記がなかったり、最小値や最大値のみの表記が多い。
そのため、中間値の閃光時間などを把握することは難しかったのだが、L-858Dでは閃光時間を測定できる「フラッシュ光解析モード」を搭載しており、閃光時間を1/40〜1/55,000秒の範囲で計測できる。また、撮影者の用途に合わせて、t=0.1〜t=0.9まで0.1ステップで変更可能だ。
閃光時間を波形グラフと数値で表示し、光のピークをビジュアルで確認できる点も魅力の一つ。閃光速度を計測しながら、光量を効果的に変更できるため、とても使いやすい。
送風機の風を当てながらモデルに頭を振ってもらい、髪の躍動感を現してみた。
結果はこちら。使用したモノブロックストロボはプロフォトB2だ。閃光速度が短くなるほど、髪の動きを止めることができる。
こちらも閃光時間の短さを活かした例。高速に動かした髪の毛がピシッと止まっている。
その他の珍しい機能
ちなみに「露出プロファイル」の登録機能も備えている。露出プロファイルとは、使用しているデジタルカメラのダイナミックレンジを計測し、分析した後に、露出計に転送することで、計測した露出の値が使用しているカメラのダイナミックレンジ内かどうかを判断できる。その結果を、ハイライトやシャドーの表現などを加味した露出決定の際に役立てられる仕組みだ。
露出プロファイルの説明は、以前掲載したこちらの記事に詳しいので、興味のある方はご覧いただきたい。
さらに、L-858Dは、Elinchrom社の「EL-Skyportワイヤレスシステム」にも対応させることができる。これには別売のトランスミッターが必要だが、この拡張を行なうと、露出の計測からストロボの調光補正まで、L-858Dで一括して行なえるようになるので、使い勝手がぐっと良くなる。
まとめ:光を数値で把握するために
ストロボを使用していても、露出計を使わずに、デジタルカメラのモニターから露出を決めるという方も多いはずだ。しかし、ストロボは瞬間光であるため、肉眼ではどのような明るさか確認できないので、露出計を使用した方が圧倒的に楽で、時間の短縮になるはずだ。一灯ライティングならともかく、多灯ライティングともなると、それぞれの光がどのように影響するのかを判断しにくくなるので、そうした部分でお困りならば、是非、露出計を活用していただきたいと思っている。
L-858Dは、使用するカメラの露出プロファイルを登録できたり、現在トレンドになっているハイスピードシンクロの測光や、目では判断のつかない閃光速度の計測などができるハイエンド露出計だ。上手く使いこなして、ワンランク上の作品を作り上げていただきたい。
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6月20日(火)10時〜18時
6月21日(水)10時〜17時
パシフィコ横浜CDホール
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http://www.sekonic.co.jp/topics/pdf/news2017061201.pdf
制作協力:株式会社セコニック
モデル:琴珠