新製品レビュー
カシオEXILIM EX-ZR1600
“スマホと常時接続”でスムーズ連携
Reported by 小山安博(2015/5/20 09:00)
スマートフォンとの連携に最適なデジタルカメラ「EXILIM EX-ZR1600」がカシオ計算機から登場した。スマートフォンのカメラにめっきり押されて売上を落としているコンパクトデジカメだが、ZR1600のアプローチは、デジカメの新しい取り組みとして注目だ。
発売は2015年3月。実勢価格は税込3万2,060円前後。
快適動作の高倍率コンパクトデジカメ
ZR1600は、一見すると高倍率ズームを搭載した一般的なコンパクトデジカメ。レンズは35mm判換算25-450mmの光学18倍ズームレンズで、F値はF3.5-5.9。カードサイズとは言えないが、18倍ズームレンズを搭載する割にはコンパクトで持ち運びはしやすい。
外観としては、レンズ左下にある前面シャッターボタンが特徴的。自撮り用のシャッターボタンで、自分にカメラを向けて撮影する際に、親指でシャッターが押しやすい。背面モニターは180度上方向に回転するチルト式を採用しており、真正面にモニターを見ながら自分撮りをするのも簡単。
前面シャッター以外には、「モーションシャッター」機能を搭載。カメラを三脚に設置したり、テーブルに置いたりした上で、液晶モニターをチルトさせて自分撮り状態にしてから、カメラに向かって手を振るとセルフタイマーが動作する、というもの。離れていてもシャッターを切ることができるし、チルト式液晶で構図をきちんと決めて撮影できるというのがメリットだ。
画像処理エンジンはEXILIMエンジンHS Ver.3を搭載。連写合成機能やアートフィルターブラケットといった高速処理が必要なシーンでも快適に動作する。シャッターを押した瞬間の前後含めた3枚が連続撮影されるトリプルショット、フル画素で30fpsの高速連写など、スピードを生かした便利な撮影機能も搭載している。
背面には3型液晶モニターの右側に操作ボタンが並び、ムービーボタン、無線ボタン、中央にSETボタンを配した円形のコントロールダイヤル、再生ボタン、MENUボタンが用意されている。
コントロールダイヤルは上下左右の十字キーが一体化されており、ダイヤルを回して画像を次々と再生したり、メニューの項目を上下したりといった操作が可能。撮影時にSETボタンを押すとダイヤル状に設定項目が表示され、コントロールダイヤルでの操作性を考慮したUIになっているため、操作は分かりやすい。
上部にはシャッターボタン一体型のズームレバー、電源ボタン、モードダイヤルがあり、おなじみのBS(ベストショット)も搭載したほか、P/A/S/Mではシャッタースピードや絞りの変更も可能。ただし、絞りはNDフィルターによる2段階のみ。
全体的には奇をてらったところのない一般的なコンパクトデジカメという感じで、扱いも容易だし、普段の撮影で困ることはなさそう。シャッターボタンを押す前後最大30枚を記録し続けるパスト連写や、集合写真時に連写して目つぶりやブレのない写真だけを選ぶ「いち押しショット」、最大1,000fpsのハイスピードムービーなど、機能は豊富なので、何も考えずに撮影するだけでなく、色々と使いどころは多いだろう。
手間をかけずに撮影画像をスマホに転送
ZR1600の最大の特徴が、「エクシリム オートトランスファー」だ。昨今は、カメラに無線LANを搭載し、撮影した画像をスマートフォンにワイヤレスで転送する、という機能は一般的になった。
しかし、撮影後にカメラの無線LANを起動して、スマホを取りだして無線LANでカメラに接続して、カメラ内の画像を選んでスマホに転送する、といった手順を要するのが一般的。最初の接続設定も面倒であまり使っていない、という人もいるかもしれない。
オートトランスファーは、こうした問題の解決を狙った機能だ。ポイントは、Bluetooth Smart(Bluetooth Low Energy)を採用した点にある。これは低消費電力のBluetooth規格で、転送速度は抑えつつ消費電力を削減したため、腕時計のような低消費電力が必要な端末にも使えるように設計されている。
もともと、カシオやセイコーといった時計メーカーが主導して策定した規格で、時計とスマホを常時無線で接続することが目的とされていた。最近は色々な製品で使われているが、消費電力の少なさが最大のメリットだ。
オートトランスファーでは、このBluetooth Smartを利用して、ZR1600とスマホを常時接する。ZR1600の無線ボタンを押して「ペアリング」を選ぶと、ZR1600のBluetoothがオンになる。スマホもBluetoothをオンにすると、ZR1600が検出されるので、接続操作をする。あとは画面に従っていけば、Bluetoothでペアリングが行われる。
無線LANのようにパスワードを入力する必要もなく、接続は簡単。スマホがAndroidの場合、同時に無線LANの接続設定が自動的に配信されるため、無線LANの設定は行う必要がない。iOSの場合は一手間あって、無線LANのプロファイルがスマホ側に配信されるので、これをインストールする。
こうして一度Bluetoothでペアリングを行うと、スマホとZR1600は常時接続になる。カメラの電源をオフにしても、バックグラウンドでBluetooth接続は継続している状態だ。
カメラの電源オフの状態でスマホのEXILIM Connectアプリを起動すると、アプリからスマホの電源操作が可能になる。通常だとカメラの電源は手動で入れなければならないが、常時接続したBluetoothによってスマホから電源操作ができるので、カメラをバッグにしまったままでも撮影画像の確認などができる。
カメラの画像を再生する場合も自動的に無線LAN接続が開始され、カメラ内の画像がスマホに表示される。あとは画像をチェックして必要な画像をスマホに転送する、といったことができる。この間、カメラを取り出すことなく作業できるというのが何しろ便利だ。
撮影時のポイントは自動転送機能だ。カメラで撮影すると、自動的に無線LANが起動し、スマホと接続される。あとは、撮影する度に順次画像をスマホに転送していく。撮影画像がすべて転送され、スマホ側で操作する必要がない。
スマホで撮影するのは、手軽というのはもちろんだが、SNSに投稿したりメールで送信したり、コミニュケーションのための利用が多いだろう。今まで、いちいち無線LANで接続して、画像を選んで転送という作業では手間がかかったが、オートトランスファー機能を使えば、自動で画像が転送されているので、手間もかからず、すぐにスマホでSNSに投稿するといった操作ができる。気分的には、ほとんどスマホで撮影したような感覚だ。
Wi-Fi経由のリモート撮影では、スマホからカメラを起動し、そのまま撮影する、といったこともできる。遠隔でも、カメラの起動、被写体の確認、撮影までができるので便利。単にシャッターを切るだけではなくて、ズームやセルフタイマー、静止画・動画の切り替え、連写モードなどが選択できる。
ちなみに、リモートシャッターを利用していて、そのままアプリを終了したり前画面に戻ったりすると、自動的にカメラの電源はオフになるので、撮影後にずっと起動しっぱなし、といった状況にはならない。
自動転送の使いこなし一工夫
試用していてちょっと気になったのが、スマホからカメラにアクセスする場合、「カメラの電源がオフであること」という条件がある点だ。スマホからカメラの電源オフができないため、電源オンの状態だとスマホからはアクセスできず、カメラが自動電源オフになるのを待つしかない。
状況としては、撮影後に画像を自動転送する機能をオフにして、普通に撮影して、そのまますぐにスマホで撮影画像を確認しようとした場合。いったん手動でカメラの電源をオフにして、スマホからアクセスする、という流れになる。
消費電力的には、Bluetooth Smart自体は低消費電力なので、常時接続でもそれほど電池は消耗しない。少なくとも、常時接続したときとしていないときで極端な違いはないように感じた。
ただ、無線LANは電力消費が大きく、フル画素を何百枚も転送するのは難しい。接続設定に転送画像を3Mサイズにする項目があるので、スマホへの自動転送は3Mにしておいて、必要な画像は別途スマホから選択して転送する、というやり方が良さそうだ。
自動転送でいえば無線LAN内蔵SDカードの「Eyefi」もあるが、ZR1600はカメラ本体で通信を制御するため、きめ細かく無線LANの制御ができる。例えば撮影しながら転送する場合に、転送が撮影の邪魔になりそうだと転送を一時中断するといった制御も入っているそうで、より消費電力を抑え、安定した撮影と転送ができるというメリットがある。
もちろん「スマホ側からカメラにアクセスして画像を転送する」、「リモート撮影をする」といった機能も無線LAN内蔵SDカードにはないものだ。
まとめ
ZR1600は、日頃からスマホとカメラを持ち歩き、SNSに投稿するときだけスマホを使う、といった人には特にお勧め。スマホカメラでは撮影しづらい遠くの被写体を撮りたいときに、画質に目をつぶってスマホのデジタルズームで撮影していたような人も、高倍率ズーム搭載のZR1600なら、より遠くの被写体も高画質で撮影できる。
気軽に毎日持ち出せる使い勝手のいいコンパクトカメラであり、より幅広いシーンに対応できるカメラ本来の強みで撮影し、その画像をスマホですぐ活用できる、というのが本機らしいメリットだ。