【新製品レビュー】ペンタックスK-x
K-xホワイト。カメラの手前にあるマーブルチョコは、ペンタックスK-x記者発表会で出席者に配られたもの |
K-xは、K-m(2008年10月)の後継機として誕生した普及クラスのデジタル一眼レフだ。購入時に外装部品の色が指定でき、全部で100通りのカラーバージョンを選ぶことが可能。さらに限定発売の「コレジャナイロボモデル」を予約開始からわずか10分で完売するなど、これまでにないセールスプロモーションで話題を振りまいた。
発売は10月16日。実勢価格はレンズキットが7万円前後、ダブルズームキットが9万円前後。ボディのみでの販売はない。ダブルズームキットには、DA L 18-55mm F3.5-5.6 ALとDA L 55-300mm F4-5.8が付属する。
■上級機を脅かしそうな多機能ぶり
外観はK-mとそっくり。ボディ左肩のロゴを確認しないと見分けがつかないほど良く似ている。ボディサイズもまったく同じで、重量は10g減。ミラーを内蔵した正統派一眼レフでも、こんなに軽量コンパクトにできるという見本のようなカメラだ。
K-xに搭載された撮像素子は有効画素数1,240万のCMOSセンサー。これにともないライブビューと動画撮影機能が新たに搭載された。さらに最高感度も上がり、通常でISO6400、カスタム設定でISO12800の高感度撮影が可能。特にISO12800の高感度はK-7のISO6400を越えるスペックだ。このほかK-mでは±2Evだった露出補正範囲が3Evに拡大。よりクリエイティブな表現ができるようになった。
APS-Cサイズの約1,240万画素CMOSセンサーを搭載 | 記録メディアにはSDHC/SDメモリーカードを採用 |
引き続き入手性の良い単3電池に対応 | 動画記録用のマイク穴はペンタ部下に搭載 |
多機能という意味では、画像処理機能のアップが上げられる。まず筆頭に上がるのがHDRだ。これは露出を変えて3カット撮影した画像をカメラ内で合成、ダイナミックレンジの拡大を図る機能で、ペンタックスではK-7が初めて搭載した。
このほか、カスタムイメージに「ほのか」。ホワイトバランスに「CTE」(Color Temperature Enhancement)を追加するなど、入門機とは思えないほどの高機能満載。K-7の存在を脅かしそうな勢いだ。だが、ファインダースペックや像の消失時間、手にしたときの高級感などカメラの基本性能はK-7の方が明らかに格が上。やはりプラットホームの違いが如実に現れている。
ISO12800の設定画面。デフォルトの最高感度は6400なので、12800を利用するためには、カスタム設定を変更する必要がある | ダイナミックレンジ拡大を図るHDRの設定画面。「標準」と「誇張」を選ぶことができる。「誇張」だと被写体によっては不自然になることがある |
上位機種K-7と同様、ホワイトバランスのひとつとして「CTE」を選べる | これもK-7からの機能、カスタムイメージの「ほのか」 |
■コストパフォーマンスの高い入門機
K-mとK-xのスペックを比較してみると、K-xは意外な部分で健闘している。たとえばシャッタースピードの最高速が1/4,000秒から1/6,000秒にアップしたほか、光学プレビューの追加、さらにAF測距点が5点から11点に増えていたりと、目立たない部分の改良も多い。また連写スピードが3.5コマ/秒から4.7秒にアップしたことも見逃せない。
それからK-xにあってK-7にない機能として、クロスプロセスが上げられる。クロスプロセスとは、カラーリバーサルフィルムをネガフィルム用の薬品で処理、あるいはカラーネガフィルムをリバーサルフィルムの薬品で処理するとカラーバランスが崩れ、独特の色合いになる現象のこと。K-xは画像処理によってこれを再現できる。ユニークなのは、フィルムと薬品の組み合わせによって変化する色味に似せ、得られる画像の仕上がりをアットランダムに変化させていること。そのため、撮影画像を見るまで、どんな色に仕上がるか分からない。いわば、トイカメラに通じる遊び的な要素を含んだ機能だが、シャッターを切る度に違う結果になり、使ってみると意外と面白い。
新機能のクロスプロセスモードは、K-7にもない独自機能。偶然性が強く、独特の色合いが楽しめる | K-mでは5点だった測距点が、K-xでは11点に増えた。オート選択のほか、任意の測距点が自分で選べるが、フォーカシングスクリーンにスーパーインポーズ機能が無いので、液晶モニターを見ながら選ぶ |
K-mでは?マークが付いていたヘルプボタンが、K-xではグリーンボタンに変更された。本来の機能のほか、このボタンはさまざまな機能が割り当てられるが、K-xでは光学プレビューが追加された |
外観デザインがK-mとほとんど変わらないことに加え、100色のカラー展開というセールスプロモーションの話題が先行しているので、K-xはK-mのマイナーチェンジ機と思われがちだ。かく言う私も、実際の商品を手にするまで、そう思っていた。だがスペックの詳細を調べてみると、こんなにも多くの機能を備えていたのかと驚かされる。
製品ポジションは、あくまでも入門機だが、上級機のK-7に匹敵する高機能を装備。数ある入門機の中で、非常にコストパフォーマンスの高いカメラと言えるだろう。
■作例
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
・感度
NRオフではISO3200からノイズが目立ち始めるが、NRオンではそれほど気にならない。ISO12800では、NRオン/オフとも、かなりざらついた画面になる。
※共通データ:K-x / SMC Pentax F135mm F2.8 [IF] / 約5.1〜5.8MB / 4,288×2,848 / 1/25秒 / F2.8 / 0EV / WB:オート
(NRオフ)
ISO800 | ISO1600 |
ISO3200 | ISO6400 |
ISO12800 |
(NR:弱)
ISO800 | ISO1600 |
ISO3200 | ISO6400 |
ISO12800 |
・HDR
HDRオンで撮影した画像は、シャドー部が明るく再現されるとともに、ネオンサインなどの高輝度部の白とびが抑えられている。ただし「誇張」は、被写体によって不自然になることもある。
※共通データ:K-x / DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.7MB / 4,288×2,848 / 1.3秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 55mm
HDR:なし | HDR:標準 |
HDR:誇張 |
・CTE
説明書には「CTEは光源の特徴を誇張し、色味を残す機能」と記されている。次々と色が変化するクリスマスイルミネーションを撮影したところ、シャッターを切った瞬間の色に合わせホワイトバランスが変化した。
K-x / DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.1MB / 4,288×2,848 / 1/6秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:CTE / 55mm | K-x / DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.0MB / 4,288×2,848 / 1/4秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:CTE / 55mm |
・カスタムイメージとSCN(シーン)モード
K-xではK-7に続いて「ほのか」を追加。明るさを最大限に上げ、コントラストとシャープネスを下げることで、色味を抑えた独特の色合いを再現している。
※共通データ:K-x / K-x / DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.4〜5.6MB / 4,288×2,848 / 1/60秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 18mm
カスタムイメージ:ほのか | カスタムイメージ:鮮やか |
カスタムイメージ:雅 |
オートピクチャーは、撮影条件をカメラが判断して適切なSCN(シーン)モードを選ぶ機能。この場合は「風景」になった。
SCNモード:風景 K-x / DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.2MB / 4,288×2,848 / 1/100秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 55mm |
シーンモードで夕景を選択。夕陽の赤が強調された。
SCNモード:夕景 K-x / DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約6.2MB / 4,288×2,848 / 1/200秒 / F14 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 37.5mm |
・クロスプロセスモード
デジタルフィルターのひとつ「クロスプロセス」をオンにして続けて撮影。シャッターを押すごとに、異なった色味に再現された。K-7にもない機能だ。
※共通データ:K-x / DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約4.8〜6.0MB / 2,848×4,288 / 1/160秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 30.6mm
モデル:原智美(ルフプロモーション)
2009/11/20 22:03