【新製品レビュー】オリンパス・ペンE-P2
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8と電子ビューファインダー「VF-2」を装着したE-P2(ブラック) |
今年7月に発売されて大きな評判を呼んだレンズ交換式デジタルカメラ「オリンパス・ペンE-P1」の上位モデルとなる「オリンパス・ペンE-P2」が発表になった。機能や性能、各種情報についてはもちろん多くの読者がすでにご存知のことと思うが、改めてここで、実機で撮影した画像を交えて解説をしてみたい。
E-P1とE-P2の大きな違いは、外付けのEVF(電子ビューファインダー)が装着可能となった点。EVFへの対応はE-P1が発売された当初から、多くの写真愛好家の期待するところでもあった。
デジタル版ペンの共通コンセプトとしては、レンズ交換式でかつ小型軽量、そして、かつての「ペンF」シリーズの流れを汲むデザイン性の高さによる、新しい世代、若者にも手にしてほしいカメラという狙いがある。そのため、EVF装着可能なE-P2と先に発売されたE-P1は併売される。それぞれ、E-P2は“ライブファインダースタイル”、E-P1は“オリジナルペンスタイル”といった形で住み分けを行なうことで、ファインダー無しで撮影するという向きにはE-P1、ファインダーを装着しての撮影を重視する向きにはE-P2という選択をユーザーが行なえるようになったわけだ。
そういったコンセプトのもとでの2機種であるため、4/3型1,230万画素のハイスピードLive MOSセンサーや、画像処理エンジンも「TruePic V」を採用と、基本性能は共通となっている。
しかしながら、E-P2においては、E-P1の上位機種という位置づけから、先に述べたように、EVFの装着を可能にしているし、新アートフィルターの追加や、仕上がり特性のブラッシュアップをおこなっている。動体追尾AF機能が付いたことも特徴だ。
ボタン配置や操作性に大幅な改良が無い点を見ると、E-P1である程度操作面は完成されたと見てもいいだろう。カメラ本体の外観や重さもE-P1とほとんど変わらず、唯一違う点はEVF装着用の接点(アクセサリーポート)がアクセサリーシュー下部に着いた点である。1つ注目したいのはそのカラーバリエーションだ。E-P1のシルバー、ホワイトに対し、E-P2ではカラーにブラックとシルバーを用意していて、特にブラックに関してはE-P1の発売時から強い要望が寄せられていたという。
上下のカバーはマットな質感 | 側面は光沢のあるヘアライン仕上げ |
操作ボタンはE-P1を引き継いだ | E-P2はシルバーもラインナップする |
■大変見やすい電子ビューファインダー
VF-2 |
では、今回E-P2から装着可能となったEVF(電子ビューファインダー)「VF-2」について解説してみたい。
簡単に言えば、背面液晶で確認できるライブビューなどの表示をファインダーのように接眼して見ることができるアイテムだ。視野率は100%で、見えた映像そのままを記録できる。本体内蔵型や外付け型といろいろと種類のあるEVFであるが、VF-2は各社いろいろあるEVFの中でも見やすさには特にこだわって作られたようだ。
従来あったEVFは確かに映像が少し暗かったり、色に隔たりが出て実際に撮影できる画像と大きく異なって見えることが多かった。また、ボディー内蔵型EVFは倍率が低く、どうしても焦点距離の変化の感覚が掴みづらかった。
しかし、VF-2はファインダー倍率が1.15倍と高倍率で、その見え方は同社のデジタル一眼レフカメラ「E-3」と同程度とされる。実際表示される映像は若干コントラストが高めで、高輝度に設定されている。
背面にEVFと液晶モニターの表示を切替えるボタンを備える | E-P2のアクセサリーシュー下に、VF-2などに対応するアクセサリーポートを搭載した |
使っていて感じたのは、接眼部のレンズにこだわっているのか、眼が疲れにくく、周辺部の歪みが極力抑えられているようだった。-3.0~+1.0Dの視度補正も付いているので、自分の視力に合わせて見やすく調整できる。基本的にはライブビューなので撮影前に設定変更画像を確認できるし、露出補正変化やホワイトバランスの変化、アートフィルターの効果を比較表示してみることもできる(背面の液晶モニターでも可能)。
アングルファインダーのように上側90度までファインダーを動かすこともできるので、通常の背面ライブビューよりも特に低い位置や小さい被写体を撮影するのにも有効だろう。
E-P2にVF-2を装着したところ |
VF-2は上90度までチルトできる |
カメラにファインダーがあるということは、直にカメラに顔を着けるので、液晶モニターによるライブビューよりも当然スローシャッターに強くなり、手ブレを抑えることにも繋がる。慣れてしまえば、液晶モニターよりも撮影がしやすいという人も出てくるのではないだろうか。
■E-P1からの進化ポイント
新仕上り設定「i-FINISH」を搭載 |
まずは、仕上がりモードに新しく追加された「i-FINISH」だが、これはE-P1、E-P2ともに搭載されているナチュラルモードに、より鮮やかさを加えた再現を行ってくれる新しい仕上がりモードだ。決してビビッドのような全体的に派手な仕上がりではなく、あくまでも全体の雰囲気はナチュラルの仕上がりを残し、被写体の中にある主として色味が際立つものに対して鮮やかに仕上げてくれる、といった雰囲気に再現してくれる。
なので、被写体が全体的にフラットなものや、あまり色味が特徴的でないものに対しては、ナチュラルで撮影したものと比べて仕上がりに大きな差は見られない。特に色のある被写体はナチュラルよりもより立体的でクリアに再現してくれるので、ナチュラルモードと同様、通常撮影する場合の設定にしておいても問題ないだろう。なお、今回のE-P2からは撮影モードを「i-AUTO」にした時に、自動的に仕上がりを「i-FINISH」にしてくれる。i-AUTOは、カメラが被写体を判別して自動的に最適な設定を行ってくれる、いわゆる全自動モードである。
次に、オリンパスのデジタルカメラの特徴となっているアートフィルターだが、ポップアートや、ラフモノクロームなど従来の6種類はそのままに、新しく「ジオラマ」と「クロスプロセス」の2種類が加わって、8種類搭載されている。
新アートフィルターとして、ジオラマとクロスプロセスが加わった。 |
まず「ジオラマ」モードだが、被写体のピント面を急激に変化することで、画面中央部にのみピントを合わせ、上下はボカすという従来大判カメラのアオリで再現していた写真を手軽に撮影することができる。こうしてでき上がった写真を見ると、ミニチュアを撮影したかのような写真になり、肉眼では見ることのできない世界を感じることが可能だ。特に高いところからカメラを下に向けて撮影した場合(肉眼で対象物が小さく見える状態)にその効果が一層発揮される。
注意として、ジオラマはあくまでも横位置での撮影が基本となる。縦位置で撮影した場合、画面両端のピントが一定の幅でぼやけ、中心部上下方向のみにピントの合った写真になってしまい、ご承知の通り、アオリ撮影を実現する機能ではないとい。ただ、視覚的に大変面白い効果が得られるので、意外とはまるのではないだろうか。
そして、もう1つの新アートフィルターの「クロスプロセス」について。これは、通常撮影では得られない独特のカラーバランスで撮影でき、写真に不安定な感覚、少し非現実的な独特の感覚をもたらしてくれる。ホワイトバランスの変化で得られるような一律の色の変化とは異なるので、被写体を選ぶアートフィルターといえるかもしれない。広めの風景写真などよりは、どちらかといえば無機質なものや、平面的なもの、もしくは原色の強い被写体などを撮影すると面白いようだ。
このように、設定の変更で手軽にアーティスティックな写真が撮影できるアートフィルターは、通常撮影だけでは飽き足らないユーザーにとってまた新しい作品作りの可能性を広げてくれるだろう。
動体追尾AFの動作画面 |
最後に、もう1つE-P2に備わった機能として動体追尾AFがある。画面内の動く被写体にピントを追従して合わせる機能のことだが、イメージとしてはレンズのピントが動いて追従するというよりは、カメラのAFフレームが被写体を追い続けるといったほうがわかりやすいかもしれない。
仮にフレームから被写体が外れても、またフレームインしてきた場合に再び追尾してくれる。実際使ってみて、速さは満足いくものであったが、たまに被写体によっては追尾できないこともあったので、ぜひ、次回搭載する場合は進歩を期待したい。
■まとめ
以上ごく簡単にE-P2のポイントを述べさせていただいたわけだが、実際自分が撮影して感じた意見として、第一に使いやすいということが挙げられる。
E-P1を使ったことのある人なら操作性は同じだし、初めて使う人でも撮影セッティングやホールディングなどを含めても全体的にはそれほど苦もなく使えるだろう。それぞれ撮影スタイルがあるので一概には言えないが、個人的にはデジタル一眼レフカメラとの併用よりはE-P2単独で撮影をした方が望ましいように思えた。
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8の装着例 | 同M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 |
一眼レフカメラに比べ小型で軽量なカメラであることもそうだが、かといってコンパクトデジタルカメラよりは断然機能的に優れているので、一眼レフカメラと併用した場合、撮影枚数はE-P2のほうが確実に多くなってしまった。もちろん交換レンズの問題などで、E-P2がデジタル一眼レフカメラと同様ということはいえないが、ただ、このカメラ1台で撮影できる被写体が非常に多いということは事実である。
そういった点で見ると、オリンパスの考える新しい世代のレンズ交換式デジタルカメラは今後のラインナップは常に注目できるし、今は個性的なカメラとして認識されているものが、次第にそうでなくなって、1つのジャンルとして確立されていってもおかしくないのかもしれない。
記録メディアおよびバッテリー室 | 付属の充電器とバッテリー。バッテリーはE-P1と同じ「BLS-1」 |
■実写サンプル
※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
●レンズ比較(17mm相当時)
●ISO感度
共通設定:E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / F9 / 0EV / 絞り優先AE / WB:オート / 16mm
ISO100 | ISO200 | ISO400 |
ISO800 | ISO1600 | ISO3200 |
ISO6400 |
●i-FINISH
共通設定:E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO400 / プログラムAE / WB:オート / 42mm
※いずれも、i-FINISHの効果は手動設定で「強」に設定しています。
無し | 有り |
共通設定:E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/250秒 / F9 / -0.3EV / ISO100 / プログラムAE / WB:オート / 42mm
無し | 有り |
共通設定:E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,024×4,032 / 1/200秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / プログラムAE / WB:オート / 30mm
無し | 有り |
●アートフィルター
共通設定:E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 42mm
ポップアート | ファンタジックフォーカス | デイドリーム | ライトトーン |
ラフモノクローム | トイフォト | ジオラマ | クロスプロセス |
共通設定:E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/4秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 19mm
ポップアート | ファンタジックフォーカス | デイドリーム | ライトトーン |
ラフモノクローム | トイフォト | ジオラマ | クロスプロセス |
●ジオラマ
●クロスプロセス
E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 3,024×4,032 / 1/200秒 / F5 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 17mm | E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,024×4,032 / 1/125秒 / F7 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 42mm |
●仕上り設定
共通設定:E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 3,024×4,032 / 1/125秒 / F5 / +0.3EV / ISO500 / プログラムAE / WB:オート / 14mm
プログラム | VIVID | NATURAL |
FLAT | PORTRAIT | モノクロ |
●アートフィルタームービー
※サムネイルをクリックすると、オリジナル動画のダウンロードを開始します。
1,024×720ピクセル / 15fps(撮影自体は2fps) / 約31MB / アートフィルター:ジオラマ |
1,024×720ピクセル / 30fps / 約64MB / アートフィルター:クロスプロセス |
●一般作例
E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,024×4,032 / 1/60秒 / F4 / -1.3EV / ISO100 / プログラムAE / WB:オート / 19mm / アートフィルター:― / 仕上り設定:NATURAL |
【訂正】記事初出時、i-FINISHの作例の「有り」、「無し」の表記が左右で逆になっておりました。
【追記】i-FINISHの作例で手動設定で「強」に設定した旨追記いたしました。
2009/11/25 00:00