新製品レビュー
ソニーα6300(外観・機能編)
強力AFに4K動画。マグネシウムボディを手に入れた快速ミラーレス
Reported by 北村智史(2016/3/24 07:00)
APS-Cサイズの撮像センサーを搭載したミラーレスカメラで、2014年3月に発売されたα6000の上位モデルとなる。外観はほぼ同じで操作系にも違いはないことを考えれば、後継モデルといってもよさそうなものだが、最近のソニーは、新旧併売体制が増えていて(α7シリーズやRX1シリーズ、RX100シリーズがそうだ)、本機とα6000もそういう関係になるのだろう。
α6000からのおもな改良点としては、位相差検出AFの強化とEVF(電子ビューファインダー)の高精細化、4K動画の搭載、ボディ外装のマグネシウム合金化と防塵・防滴に配慮した構造の採用など。
同社のオンラインショップ「ソニーストア」での税別価格は、ボディ単体が13万4,880円、E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS付きのレンズキットが14万9,880円。大手量販店の店頭価格も同程度のようだ。α6000はブラック、シルバー、ホワイトの3色が選べるのに対し、本機はブラックのみとなっている。
各部を本格仕様にブラッシュアップ
α6000のボディはプラスティック外装だったが、本機は、上カバーと前後カバー(底面を含む)、内部フレームにマグネシウム合金を採用。4K動画による熱を効率よく逃がすためというのもあるのだろうが、金属ボディのカメラは、それだけで気持ちが高揚する。塗装も金属らしい高級感のあるものに変わっている。
マウント座金も、爪の部分がプラスティック製だったα6000などと違って、金属製の一体型となり、重さのあるGマスターレンズや大口径タイプのAマウントレンズにも対応できる強度と剛性を確保している。また、ボディの各部にシーリング処理をほどこすなどして防塵・防滴性を高めている。もっとも、同社のWebサイトなどにも「ほこりや水滴の浸入を完全に防ぐものではありません」と書かれているとおり、過信は災いのもとだが、小雨やちょっとした水しぶきにまであたふたせずにすむのはありがたい。
撮像センサーは、有効2,420万画素のExmor CMOS。通常の表面照射型だが、銅配線の採用やワイドフォトダイオード設計などによって従来よりも集光効率を高めているとのこと。最高感度をα6000に対して1段高いISO51200(拡張感度)としている。
また、ISOオート時にシャッタースピードの低速限界を設定できるようになった。感度を上げはじめるシャッタースピードを、30秒から1/4,000秒の範囲(1段ステップ)または手ブレを防ぎやすいシャッタースピード(標準〜望遠系は「1/焦点距離(35mmフルサイズ換算)」のシャッタースピード、広角系は1/60秒)を基準に、±2段の範囲で調整できる「より低速」「低速」「標準」「高速」「より高速」から選択できるようになった。
記録メディアは、メモリースティックPROデュオ/PRO-HGデュオまたはSDXC/SDHC/SDメモリーカード(UHS-I対応)に1スロットで対応する。記録画素数はα6000と同じだが、画質モードにJPEGの「エクストラファイン」が追加され、RAWは12bitから14bitに変更されている。設定をミスってほとんどをJPEGファインのみで撮ってしまったが(普段はRAW+JPEGが基本である)、実写でのファイルサイズはRAWが約23.0MB、JPEG(24M記録、ファイン画質)が約5.7MBだった。
電源は、容量1,020mAhのリチャージャブルバッテリーパックNP-FW50で、これはα6000やα7シリーズと共通だ。充電はUSB端子を利用する本体充電で、複数のバッテリーを効率よく運用するには別売のバッテリーチャージャーBC-TRWを購入したほうがいい。CIPA基準の撮影可能枚数は、ファインダー撮影時で350枚、モニター撮影時で400枚。α6000はそれぞれ310枚、360枚だったから、省エネにも成功しているわけだ。
実写では、8割方をファインダーを使って、20秒ほどの動画数本を含む487カットを撮影して、バッテリーの残りは16%だった。まあ悪くない結果だとはいえるが、大量撮影派には予備のバッテリーは必須だろう。
一層強化されたAFシステム
AFまわりの進化は、本機の見どころのひとつといっていい。なにしろ、α6000の持つ位相差検出179点+コントラスト検出25点のファストハイブリッドAFを、軽く凌駕しているのである。期待して当然だ。
像面位相差検出AFの測距点は、世界最多となる425点(横25点×縦17点)。これに25点のコントラスト検出AFが組み合わさるのだが、中央部の9点をそれぞれ16点ずつに細分化して、計169点でピント検出を行なうようになっている。
手動で選択できる測距点の数は、フォーカスエリアモードによって異なり、フレームサイズが最小となるフレキシブルスポットS時で横17点×縦19点の323点となる(フレキシブルスポットM/L時は数が減る)。数が合わないのはアシスト測距点として使われる分があるためで、最外周の測距点は、拡張フレキシブルスポット時にのみ使用される。
拡張フレキシブルスポットは、選択した測距点でピントが検出できなかったときに、その周囲の8点を使ってピント合わせを行なうもので、動体追尾を行なうロックオンAFを併用するモードも用意されている。この状態だと、シャッターボタン半押しでロックオンした被写体が画面内を移動した場合にも、それに追従して測距点が自動的に切り替わって追尾してくれる。もちろん、AF-C(コンティニュアスAF)時なら、撮影距離が変わってもずっとピントが合いつづける。動きものをメインにしている人にとっては、かなり理想に近いAFシステムなのではないかと思う。
カスタムメニューに「AF-S時の優先設定」および「AF-C時の優先設定」が追加されているのも新しい。それぞれのフォーカスモードで、特性を「フォーカス優先」「レリーズ優先」「バランス重視」から選択できる。
試用してみての印象としては、やはり「フォーカス優先」のほうが歩留まりがよく、かつ連写スピードにも大きな影響はないように感じられた。もちろん、撮影距離が近くてピントが追えなくなったときは連写スピードが落ちる(またはストップする)動作となるが、ムダなピンボケカットが減らせていいと思う。
連写は「H+」モードで11コマ/秒、「Hi」モードで8コマ/秒。いずれもAF、AEが追従する。「Hi」モードは、表示のタイムラグを短くした高速ライブビュー連写で、動きが読みづらい被写体を追うときには有利となる。ただし、1コマごとに画面が暗転しつつライブビュー表示を行なう仕様であるため、かえって見づらく感じられた。動きが単純な被写体であれば「Hi+」モードでもそこそこ対応できるので、そのあたりは、撮るものや好みなどに合わせて選択することになるだろう。
比較:連写時のライブビュー表示ラグ
・「Hi」モード時の画面。「ロックオンAF:拡張フレキシブルAF」でAF-Cモード。1コマずつ暗転するため、見づらい印象だが、表示のタイムラグが短いため、動体撮影には有利となる。
・「Hi+」モード。同じく「ロックオンAF:拡張フレキシブルAF」でAF-Cモード。動きが単純な被写体ならこちらのモードでも十分に追える。
高解像でなめらかなEVF。4Kやスロー動画も
EVFのスペックアップも見逃せない点だ。個人的には144万ドットでもあまり不満は感じなかったが、236万ドット有機ELならではの、ドットを感じさせない滑らかなファインダー像は気持ちがいい。視野率は100%、倍率は1.07倍(35mmフルサイズ換算で0.70倍相当)。輝度とコントラストがやや高めに感じられる。
表示フレームレートを、標準の60fps、より高速な120fpsから選択できるようにもなった。120fpsにすると画面解像度がやや低くなるとのことだが、見比べてみても、大きな違いは感じない。動きものを多く撮る人には有用だろう。ただし、消費電力は大きくなるだろうから、節電の面では不利となるので注意したい。
EVFとモニターとの切り替えは、接眼部右側のアイセンサーによる自動または手動。チルト式モニターを起こしているときは自動的にモニター表示のみにするといったサービス機能はない。
新しく、カスタムボタンなどに「FINDER/MONITOR切換」を割り当てることができるようになったが、カスタムメニューの「FINDER/MONITOR」で「ファインダー(マニュアル)」または「モニター(マニュアル)」を選択したときに有効となり、機能を割り当てたボタンを押すたびにEVFとモニターの切り替えが可能となる。
ただし、オートからマニュアルへの切り替えは、メニュー内で行なわないといけない。「FINDER/MONITOR」が「オート」の状態で「FINDER/MONITOR切換」を割り当てたボタンを押すと、モニター撮影時はモニターが消えるだけ(ファインダーをのぞくとEVFが点灯し、顔をはなすとモニターが点灯する)、ファインダー撮影時はモニターに切り替わるだけという不思議仕様だ。
個人的には、ボタンを押すごとに「オート」「ファインダー(マニュアル)」「モニター(マニュアル)」が切り替わるか、長押しでオートとマニュアルを切り替えられるとかだと便利だと思っていたので、少々肩透かしを食らった気分である。
なお、α6000では、拡大表示はMF時しかできず、シャッターボタン半押しで全画面表示に復帰するという仕様だったが、本機ではAF時にも可能になり、拡大したままAFを作動させることもできるようになった。拡大表示中は、狭い範囲でピント検出を行なえるし、ちゃんと合ったかどうかを目で確認できるので安心感もある。個人的には、これはうれしいアップデートだ。
動画は全画素読み出しの4K解像度、24pまたは30p記録。撮像センサーの幅いっぱいの6,000×3,376ピクセル(約2,026万画素)を3,840×2,160ピクセルにリサイズすることで、高い解像力を確保しているという。
フルHD解像度では120pというハイフレームレートでの撮影が可能。30pや24p記録とすることで4倍ないし5倍のスローモーション動画も撮影できる。
なお、4K、フルHDとも、最大ビットレートを100Mbpsに設定している時は、UHS-I U3規格に対応したSDカードを要求される。U3対応カードでなくても設定だけは可能だが、撮影はできなくなるので注意してほしい。
α6000に比べて、割高?
問題は、α6000に対して2倍以上もの実売価格に納得できるか、という点だろう。重さも、バッテリーとメモリーカード込みの状態で60g増えている(ボディ単体では76g差だったりする)。こちらはまあ許容範囲内だと思うが、価格の差は正直なところ、とても大きい。
外装素材の金属化やマウント座金が一体型になって強度や剛性が上がっていること、防塵・防滴になったこともあるし、AFやEVFのパワーアップ、4K動画への対応など、内容面でこれだけ変わっているのだから、α6000とは別物だと考えるべきだろう。
ただ、見た目がα6000そのままなものだから、後継モデル感が強くて、そのせいでどうしても見比べてしまう。それが割高感を増す要因になっているのは間違いない。防塵・防滴のマグネシウム合金ボディのAPS-Cサイズ2,400万画素ミラーレスカメラで、236万ドットのEVFに、425点AF、11コマ/秒連写、4K動画を搭載。というスペックをきちんと評価すれば、けして高くはないと思うのだ。
(近日公開の「実写編」に続く)