新製品レビュー

キヤノンPowerShot G5 X(実写編)

1型センサーの本格表現力。明るいズーム+内蔵EVF

コンパクトデジタルカメラでありながら、そのスタイルはまるで一眼レフカメラのような「PowerShot G5 X」は、その見た目と同時に機能性にまでこだわりを持ったカメラである。約236万ドット有機ELの高精細な0.39型EVFを備え、約104万ドット3型TFTカラー液晶のバリアングルモニターを搭載。また直感的な操作に優れるアナログダイヤルを採用している。

一見クラシカルにも思えるカメラだが、その実は有効約2,020万画素の1型裏面照射型CMOSセンサーと映像エンジンDIGIC 6が組み込まれた最新型のデジタルカメラだ。今回は実際にPowerShot G5 Xで撮影した画像を見ながら、その実力と個性を検証していく。

1型センサーと明るい4.2倍ズームレンズの組み合わせ

PowerShot G5 Xには35mm判換算24-100mm相当の4.2倍ズームレンズが搭載されている。まずは広角端と望遠端の画角を画像で確認する。

広角端8.8mm(35mm判換算24mm相当)で撮影
望遠端36.8mm(35mm判換算100mm相当)で撮影

同じ位置から空港の駐機場にとまる旅客機を広角端と望遠端で撮影した。ズームレンズの焦点域は35mm判換算で24mmから100mmと、常用するズームレンズとしては扱いやすい画角だ。広角端24mm相当ならば広い画角を活かした撮影も十分に行える。

望遠端100mm相当は最近の高倍率ズームレンズと比べると少し物足りなさもあるが、スナップ撮影を目的とするのであれば丁度良い焦点距離だ。むしろむやみに望遠端が長いと、スナップ撮影のような瞬発力が必要な撮影では、ズームレバーでの焦点距離決めにモタついてしまう要因となる。なお開放F値はF1.8(広角端)〜F2.8(望遠端)と比較的明るいのも嬉しい。

広角端、望遠端ともに解像力が高く、周辺部の収差も最小限に抑えられている。1型センサーに約2,020万画素を搭載した撮像素子とのバランスがとてもよく取られているようだ。画像だけを見せられればAPS-Cサイズの撮像素子を搭載した一眼レフのエントリークラスに、レンズキットのズームレンズを装着して撮影した画像と判別するのが難しいほどだ。

曇天下の比較的柔らかな光のもとでの撮影ではあるが、シャドウからハイライトへ至るまでの階調も自然で、1/1.7型や1/2.3型といった小型の撮像素子を使用する一般的なコンパクトデジタルカメラとは一線を画す画質といえる。

また、PowerShot G5 Xには光学4.2倍のズームに加え、4倍までのデジタルズームが搭載されている。100mm相当の焦点距離で物足りない場合にはデジタルズームを併用するという考え方だ。

焦点距離36.8mmに2倍のデジタルズームをかけて、実質73.6mm(35mm判換算200mm相当)で撮影。等倍で画像を確認するとさすがにディテールに緩さが認められるが、拡大せず使用するには実用上問題ないレベルだ。なおトリミングとは違い、画像の記録サイズは通常時の5,472×3,648と変わらない。

高感度画質は?

ベース感度のISO125から、200〜12800のあいだの1段ごとに撮影を行いその画質を比較した。PowerShot G5 Xでは最低ISO感度はISO125、最高ISO感度が12800となる。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

ISO125〜800まではほとんど画質に差はなく、常用感度といえる印象だ。ISO1600で暗部に若干ノイズが見られるようになるが、それでも十分に実用の範囲。ISO3200〜6400となるとさすがにノイズが目立つが、拡大して見るのでなければ問題ない。高感度撮影ができるメリットを十分に享受できる。

最高感度ISO12800になるとノイズは目立ち、またディテールも緩いものとなる。ただしこれもコンパクトデジタルカメラとして考えると驚くほど低ノイズな画像である。やはりここでも1型センサーの有利さが目立った結果となった。

作品集

24mm相当の広角端で、空港のロビーの広がりを縦位置で撮影。絞り優先AE。限られた明るさだがISO125のままF2・1/50秒で手持ち撮影。明るく、そして周辺まで解像力の高いレンズのおかげで細かい部分の描写まで良好。歪みの少なさもよい。

ISO125 / F2 / 1/50秒 / 8.8mm

特徴的なフォルムをしたビルを24mm相当の広角端で地上から見上げるように捉えた。直線的な周囲のビルとの対比が面白い。コントラストも高くヌケの良さが気持ちよい。オートモードで撮影。

ISO160 / F5.6 / 1/1,250秒 / 8.8mm

同じ位置から望遠端100mm相当で撮影。解像感が高くビル壁面のエッジやクレーンの鉄骨などがくっきりと描写されいる。発色もよい。オートモードで撮影。

ISO160 / F5 / 1/1,250秒 / 36.8mm

望遠端100mm相当で撮影。屋内にディスプレイされているフェイクの紅葉。オートモードで撮影。ISOオートでISO640まで上げられているが十分な画質。望遠端F2.8の明るさも扱いやすい。

ISO640 / F2.8 / 1/100秒 / 36.8mm

広角端24mm相当にて、マクロモードで最短撮影距離5cmまで寄って撮影。絞り優先AE。ここまで大胆にクローズアップさせると収差も多く出るが、中心から周辺へかけて滲むような描写の流れもおもしろい。

ISO125 / F2.8 / 1/25秒 / 8.8mm

オートモードで撮影した夜景。シーンを見極めて適切な撮影設定にしてくれるのが、PowerShot G5 Xのオートモードの優れた点。状況から夜景であることを判別し、絞りはF2.8開放に、シャッタースピードは1秒に自動的にセット。適度にISO感度を上げ露出をコントロールしている。ただのオート露出とは異なり不必要な露出補正をかけていないので暗部が明るくなっていない。また三脚使用が前提となるので手ブレ補正はオフになっている。

ISO320 / F2.8 / 1.0秒 / 36.8mm

こちらはシーンモード内の星空軌跡モード。星空を連続撮影してカメラ内で比較明合成を行い星を軌跡として記録する。総露光時間を20分と決め、一回の露光時間、絞り、ISO感度はPowerShot G5 Xが自動で決める。この撮影ではISO125、F3.5、6秒となった。地上の明るさはオーバー気味だが、空の星と飛行機、海上の船の軌跡が綺麗に写し出されている。

ISO125 / F3.5 / 6秒 / 8.8mm

こちらも星空軌跡モードで撮影。残念ながら星は雲で隠れて写らなかったが、ライトアップされた帆船とランドマークタワーの夜景撮影をきれいに撮影することができた。総露光時間10分。ISO125、F11、2.5秒だ。撮影中にはカメラ前を通行人がいくどとなく通り過ぎているが、比較明合成なので暗い人影は写り込んでいない。

ISO125 / F11 / 2.5秒 / 8.8mm

シーンモード内のポートレートモードにて撮影。開放絞りF2.8にセットされ、背景を極力ぼかして人物を浮き上がらせる設定となる。+1EVの露出補正で明るく柔らかな肌のトーンとしている。どうやら肌理と色味を整え、美肌になるような処理も入れているようだ。

ISO320 / F2.8 / 1/200秒 / 36.8mm

クリエイティブフィルターモード内の背景ぼかしにて撮影。絞りを開放絞りにセットして極力被写界深度を浅くしたうえで、画像処理で背景のみにぼかしを入れる。通常ではぼけにくい広角での撮影や距離差のあまりない背景でもぼかした画作りが可能となる。ただし時折不自然なぼけとなることもあるので注意が必要。

ISO125 / F1.8 / 1/250秒 / 8.8mm

こちらも背景ぼかし。広角端24mm相当で撮影。手前の花にピントを合わせた。背景はぼかし処理でおおきくぼけている。

ISO125 / F1.8 / 1/60秒 / 8.8mm

クリエイティブショットで撮影し保存された画像のうちの1枚。撮影時には予想していない意外な色合いや効果が表れた。

ISO200 / F3.5 / 1/1,250秒 / 17.9mm

まとめ

PowerShot G5 Xはその本格的なカメラらしい見た目の印象だけでなく、実際に撮影した画像からも非常に高画質かつ高品質なデジタルカメラであることが判る。もはやコンパクトデジタルカメラの範疇を超えているといっても過言ではない。1型の撮像素子から生み出される画像は写真に十分な表現力を与える。

また高精細なEVFの搭載は、光学ファインダーとは違うあらたな撮影スタイルにも繋がることだろう。ここまで上質なカメラとして仕上がっていれば、普段はEOSデジタルなどのデジタル一眼レフを使用しているユーザーがサブカメラとして使用したとしても、十分満足に足るカメラだといえるだろう。ただそれだけに、このPowerShot G5 X同様にEVFが搭載されたキヤノンのミラーレスカメラ「EOS Mシリーズ」の登場を期待してしまうのは、いささか欲張りすぎだろうか。

モデル:夏弥
フラワーアレンジメント:フラワーショップ&スクールゆりの木

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現 東京ビジュアルアーツ)卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍やWeb誌にも数多く寄稿している。近著「オリンパスOM-Dの撮り方教室 OM-Dで写真表現と仲良くなる」(朝日新聞出版社)、「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド」(玄光社)など。 2015年9月よりデジタルハリウッド「カメラの学校」講師。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy