新製品レビュー

キヤノンPowerShot G3 X(実写編)

1型センサー+25倍ズームの万能ナイフ型カメラ

キヤノンPowerShot G3 Xに、オプションのEVFとレンズフードを装着

キヤノン「PowerShot G3 X」は、光学25倍ズームを搭載したレンズ一体型のコンパクトデジカメだ。いちばんの特徴は、広角から超望遠までの幅広いズーム域に対応しつつ、1型という比較的大きなセンサーを備え、なおかつボディを小型軽量にまとめたこと。

外装は防塵防滴構造の頑丈な作りだ。液晶モニターは自分撮りも行えるチルト可動式で、各種機能はタッチパネルによってスムーズに設定できる。さらに、天面のホットシューにオプションのEVFや外部ストロボを、レンズ先端部にフードやフィルターを装着できる点もポイントだ。

前回のレビューでは外観と機能をチェックしたが、今回は実写編として、写りの性能を見てみよう。

遠景の描写性能を検証する

レンズの焦点距離は8.8-220mmで、35mmフィルム換算値は24-600mm相当となる。下の3枚は、ズームのワイド端/中間位置/テレ端を使って同じ場所から撮影したもの。

ライバルと呼べる1型センサー採用の高倍率ズーム機に、ソニー「サイバーショットDSC-RX10」(24-200mm相当)や、パナソニック「LUMIX DMC-FZ1000」(25-400mm相当)などがあるが、それらよりもテレ端の焦点距離が長く、遠景をより大きく引き付けて写せることが魅力のひとつになっている。

ズームワイド端(24mm相当)
ズーム中間位置(300mm相当)
ズームテレ端(600mm相当)

レンズの開放値はワイド端F2.8、テレ端F5.6に対応する。写りは、ワイド端/テレ端ともに開放値からまずまずの解像感がある。F8よりも絞り込むと回折の影響でシャープネスが低下するため、絞りすぎには注意したい。

歪曲や色収差はややあるが、あまり目立たないように低減されている。このあたりはレンズ一体型の強みといえる。ただしズームアップして撮影した際、ハイライト部の周辺に色ずれやにじみが生じやすい点は気になった。RAW撮影し、気になる部分を現像時に補正することは可能だ。

マクロの描写性能を検証する

最短の撮影距離は、ズームのワイド端でレンズ先端から5cm、テレ端でレンズ先端から85cmとなる。次の写真は、テレ端を使って約90cmの距離で撮影したもの。開放値のF5.6ではやや甘いが、1段絞ると細部の先鋭感が向上する。

F5.6
F8
F11

感度別の描写性能を検証する

感度は、自動制御が働くオートのほか、ISO125〜12800の範囲を1/3ステップ刻みで選べる。次の写真は、感度を変えながら同一のシーンを撮影したもの。弱/標準/強の3段階から選べる高感度ノイズ低減は、初期設定の標準を選択した。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

感度を高めるほどにざらつきが増え、同時にノイズ低減処理の影響で細部表現力は低下する。どこまでを許容できるかは用途によるが、個人的にはISO1600までは実用範囲だと感じる。

作品集

ズームのテレ端を使うことで遠近を圧縮し、実際には間隔を吊られている灯籠を、密集しているように見せて画面を引き締めた。絞りは開放値を選び、前後をぼかして空間に奥行きを与えている。

ISO200 / F5.6 / 1/160秒 / 220mm

次はズームのワイド端を使用。画面からはみ出るくらいバイクに接近することで、内臓が詰まったようなメカの凝縮感を表現した。光は、斜め上から外部ストロボを照射。反射と陰影を作ってメタリックなイメージを強めている。

ISO200 / F4 / 1/250秒 / 8.8mm

孔子像の顔をあえてフレーム外にすることで、中国式の挨拶をする手の表情と、像の素材感を強調した。ズームは中間位置を使用。ワイド端/テレ端に限らず、自由なフレーミングを選べることが高倍率ズームのメリットだ。

ISO250 / F5.6 / 1/80秒 / 77.4mm

カメラを持った両手を伸ばし、展望室のガラスにレンズをくっつけるようにしながらハイアングルで撮影。こうした撮り方をする際は、液晶のチルト可動機構が重宝する。

ISO125 / F4.5 / 1/200秒 / 8.8mm

飛行する機体を追い続けてピントを合わせ、観覧車がフレームインしたタイミングでシャッターを切った。ドライブモードは連写を使用。最高速の約5.9コマ/秒で撮りたい場合は、AF動作をワンショットに、記録形式をJPEGにすることが欠かせない。

ISO160 / F5.6 / 1/1,600秒 / 184mm

カメラにトランスミッター「ST-E3-RT」を取り付け、左手に持った外部ストロボ「600EX-RT」を斜め上からかざしながら、温室のアンスリウムを手持ちで撮影。ハイスピードシンクロ発光によって背景を暗く落とし、色とフォルムを際立たせている。

ISO125 / F7 / 1/2,000秒 / 20.8mm

横断歩道のパターンを画面をデザインする感覚で切り取った。マイカラー機能を利用してコントラストを+2に設定し、メリハリ感を強めている。

ISO125 / F5.6 / 1/500秒 / 220mm

ホワイトバランスの日陰を選び、ホワイトバランス補正をアンバー方向に設定することで画面全体を赤く染め、擬似的な夕焼け空を作り出した。ホワイトバランスの選択や補正は、クイック設定メニューから素早く呼び出せるのが便利だ。

ISO125 / F6.3 / 1/1,600秒 / 71mm

多彩なフレーミングが楽しめる光学25倍の表現力

今回の実写では、適度にメリハリ感のある見栄え重視の発色と、細部までをシャープに描く解像性能を確認できた。高倍率ズーム機の写りとしては悪くない。より大きなセンサーを備えたレンズ交換式カメラの画質に比べると、ディテール表現力や高感度性能で見劣りするのは仕方ないところ。

とはいえ、画質面の小さな不満よりも、気楽に持ち運べる光学25倍ズームという、1型センサー機ではほかにはない圧倒的な魅力のほうが上回っている。

広角から超望遠まで交換レンズ10本分に匹敵する画角をカバーし、これさえあれば、どんなシーンでも対応できる安心感がある。PowerShot G3 Xだけを持って身軽な撮影旅行に出掛けるのもいいだろう。

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。