新製品レビュー

キヤノンPowerShot G3 X(外観・機能編)

雨天にも強い光学25倍ズーム+1型センサー搭載機

高機能なコンパクトデジタルカメラ、キヤノン「PowerShot G」シリーズの新顔として「PowerShot G3 X」が登場した。同社は昨年、1.5型センサー&光学5倍ズームの「PowerShot G1 X Mark II」と、1型センサー&光学4.2倍ズームの「PowerShot G7 X」を発売しているが、今回のモデルではズーム倍率を大幅に高め、1型センサー&光学25倍ズームレンズを搭載している。

昨年の2台に比べると、ボディは一回り以上大きくなっているが、それでもセンサーサイズとズーム倍率を考慮すれば、小型軽量といっていい。35mm換算の焦点距離は、ワイド端が24mm相当で、テレ端は600mm相当となる。

発売は6月25日。価格はオープンプライス。直販価格は税別10万6,800円。今回のレビューでは、その外観と機能をお伝えしよう。

しっかりとした作りの防塵防滴ボディ

ボディは、四角い本体に円柱状のレンズを組み合わせた正統派のカメラデザインとなる。グリップ部分は大きく突き出ていて、ホールド感は良好だ。各部の作りはしっかりとしていて、質感の高さも感じられる。

本体にはレザートーン塗装を、グリップ部には革シボパターンをそれぞれ適用。ダイヤル類にはスピンカットやローレットを刻み、見た目と手触りを高めている
全体を黒でまとめつつ、ダイヤルの付け根部分など、ところどころに赤ラインを施して高級感を演出。液晶モニターの右上には、2ステップでスマホと接続できる「ワンタッチスマホボタン」を備える

そのうえ防塵防滴に対応する。短時間なら小雨程度の環境下でも使用できるという。アウトドアユースにうれしい仕様だ。

左側面には、ストロボスイッチ、ヘッドホン端子、NFC機能のNマーク、Wi-Fi通信部などを装備する
右側面のカバー内には、リモコン端子とデジタル端子、HDIM端子を搭載。リモコン端子には、オプションのリモートスイッチを装着できる

ボディサイズは幅123.3×高さ76.5×奥行き105.3mmで、使用時重量は733g。コンパクトデジカメと呼ぶにはやや大きくて重いが、1型センサーを搭載した高倍率ズーム機としては比較的コンパクトにまとまっている。

グリップの上に、シャッターボタンとズームレバーを装備。電源はボタン式。そのほか、各種のボタンやダイヤルは右手側に集中配置されている
三脚穴はレンズの光軸からずれている。三脚穴の手前に、ビデオカメラでおなじみのVHSピンの穴を備える点はユニークだ。動画機能重視のためだろう

マクロ撮影にも役立つ光学25倍ズーム

いちばんの見どころは、24-600mm相当の光学25倍ズームレンズを搭載すること。同じく1型センサーを搭載した高倍率ズーム機に、光学8.3倍のソニー「サイバーショットDSC-RX10」や、光学16倍のパナソニック「LUMIX DMC-FZ1000」などがあるが、それらに比べて小さなボディにもかかわらず、より高い倍率を実現している。

ズーム駆動に独自の「マイクロUSM II」を、フォーカス駆動に光学センサーとリニアアクチュエーターを採用した新設計レンズだ

レンズの開放値は、ワイド端F2.8、テレ端F5.6となる。テレ端は特に明るいとはいえないが、とりあえず実用的な開放値といっていい。

マクロ性能は強力だ。最短の撮影距離は、ワイド端で5cm、テレ端で50cm(レンズ先端から)に対応。ズームの中間位置では名刺の半分程度のサイズを、ズームのテレ端では名刺のほぼ全体を、それぞれ画面いっぱいに捉えることができる。離れた位置から植物や昆虫などを接写する用途にうってつけだ。

電源オフの状態
電源オン/ズームワイド端の状態
電源オン/ズームテレ端の状態

手ブレ補正は、光学式の補正機構を搭載する。アクチュエーターを新規設計することで、これまでは困難だった2群レンズでの手ブレ補正に対応し、収差や周辺光量落ちを抑えつつ、効果3.5段分の補正を実現したという。試用では、ズームのテレ端を手持ちで慎重に構えて撮った場合、シャッター速度1/125秒なら約7割のカットを、1/60秒なら約5割のカットをブレなしで撮影できた。

高倍率をサポートする機能としては「フレーミングアシスト(探索)」を搭載する。望遠で撮る際、レンズ側面のボタンを押すことで一時的にズーム倍率を下げて、見失った被写体を再発見できる仕組みだ。

レンズ鏡胴部に「フレーミングアシスト(探索)」ボタン、その下にマニュアルフォーカスボタンを装備する

さらに、被写体の大きさが一定に保たれるようにカメラが自動でズームイン/ズームアウトを行う「オートズーム」機能や、見失った被写体が見つけやすくなるように自動的にズームダウンが行われる「サーチアシスト」機能も備える。動き回る子どもや動物などの撮影に役立つだろう。

オートズーム機能では、画面に対して保たれる顔の大きさを「オート/顔/上半身/全身/マニュアル」の5モードから選べる

自分撮り対応のチルト可動液晶を装備

液晶モニターには、約162万ドットの3.2型TFTを搭載。上に180度、下に45度まで回転するチルト可動式で、静電容量式のタッチパネルにも対応する。液晶には十分な明るさと精細感があり、屋外でもまずまずの見やすさだ。

ローポジションやハイポジションでの撮影に有利なチルト可動液晶を搭載。上に180度回せば、自分撮りも行える

電子ビューファインダーは非搭載で、オプションでの対応となる。しっかりと構えて撮影したいときは、オプションのEVF「EVF-DC1」を用意したい。標準装備でない点は少々残念なところ。

天面アクセサリーシューにオプションの「EVF-DC1」を装着。かさばるのが難点だが、望遠撮影時のフレーミングやホールディングがしやすくなる
「EVF-DC1」は90度のチルト可動に対応。アイセンサーを備え、液晶モニターとの自動切り替えもできる

バルブ撮影やズームメモリー機能を搭載

AFは、コントラスト検出方式となる。AFスピードは、ズームのワイド側でもテレ側でもまずまずの速度で作動する。本格的なスポーツ撮影用には厳しいが、ちょっとしたスナップならAFに不満を感じることは少ない。

連写は、最高で約5.9コマ/秒に対応。ただし、この連写速度はAF動作が「ワンショットAF」で、記録ファイル形式がJPEGの場合だ。連続的にピントが合う「サーボAF」では連写速度は低下する。またRAW記録では、連写速度は大幅に落ちる。

動画は、最大で1,920×1,080/60pのフルHD記録ができ、ファイル形式はMP4となる。動画撮影の際は、光学ブレ補正に加え、平行移動時の電子ブレ補正や、水平・縦回転の歪み補正も可能になっている。

そのほか、ズーム位置やフォーカス位置を記憶するズームメモリー機能や、光量を3段分減光するNDフィルター挿入機構、星空を光跡として記録する「星空」モード、1回のシャッターでエフェクト付きの6カットを同時記録できる「クリエイティブショット」などを搭載。Wi-Fi/NFCによるリモート撮影も可能だ。

新機能として、同社コンパクトデジカメでは初めてバルブ撮影に対応。シャッターボタンを押している間、最長256秒まで露光し続けることができる
マニュアルフォーカスでは、最大4倍の拡大表示やピーキング表示が行える。メニュー画面は、一眼レフEOSの画面に近いデザインになっている
天面のモードダイヤルではオートからマニュアルまで11の撮影モードが選べる。絞りやシャッター速度は、グリップ部のダイヤルおよび背面のホイールで操作する。露出補正には専用のダイヤルを使用する
ダイヤルとホイールのほか、背面のショートカットボタン、動画ボタン、側面のMFボタンなどは割り当て機能のカスタマイズができる
撮影直後のアフタービュー表示は、オフのほか、クイック/2秒/4秒/8秒/ホールドが選べる
手動ポップアップ式の小型ストロボを内蔵。アクセサリーシューにオプションの外部ストロボや、外部ストロボ用のトランスミッターを装着することも可能だ
記録メディアはSDXC/SDHC/SDカードで、電源にはリチウムイオン電池「NB-10L」を採用。CIPA準拠の撮影可能枚数は約300枚。エコモードで約410枚となる

高倍率+高機能で幅広いシーンに対応できる

トータルとしては、撮影自由度が非常に高いカメラだと感じられた。光学25倍という幅広いズーム域に加え、オートからマニュアルまでの多彩な機能によって、あらゆる用途に対応できる。RAW記録での連写スピードが遅いのは残念だが、それ以外のレスポンスに大きな不都合はない。

電子ビューファインダーがオプションであることは評価が分かれるだろう。装着すると少々かさばり、バッグへの収納性が悪くなる。外部ストロボと併用できない点も、ストロボを多用する私としてはやや困る。ただ、ファインダーを外付けにしたからこそ他機に勝る小型軽量ボディを実現できたともいえる。

一眼レフの場合はなにかとハードルが高くなりがちな600mm相当の撮影を、スナップ感覚で楽しめることがPowerShot G3 Xの最大の魅力だ。有効2,020万画素の1型CMOSセンサー+処理エンジン「DIGIC 6」が生み出す画質がどのくらいなのかは、次回の実写編でお伝えしよう。

オプションの「レンズフードLH-DC100/フィルターアダプターFA-DC67B」を装着した状態。径67mmのレンズフィルターが使用できる

永山昌克