新製品レビュー

PENTAX K-S2(実写編)

Kマウントレンズをより深く楽しめる一眼レフ

リコーイメージング「PENTAX K-S2」は、世界最小をうたう防塵防滴対応のデジタル一眼レフカメラだ。同社の一眼レフ「K」シリーズでは初めてバリアングル液晶を採用するなど、小さなボディに高機能が凝縮されている。

ファインダーには視野率約100%のガラス製ペンタプリズムを、AFには11点測距の位相差AFセンサーを、手ブレ補正には装着する全レンズで効果を発揮するボディ内補正機構「SR」をそれぞれ搭載。上位モデルに迫る贅沢な内容だ。

前回のレビューでは外観と機能をチェックしたが、今回は実写編として、写りの性能を見てみよう。

新標準ズームで遠景描写を検証する

K-S2には、3種類のレンズキットがあるが、そのうち18-50REキットおよびダブルズームキットには新開発の標準ズーム「smc PENTAX-DA L 18-50mmF4-5.6 DC WR RE」が付属する。

独自の沈胴機構によって持ち運び時の薄型デザインを実現しつつ、9ヶ所のシーリングによって防滴に対応したレンズである。フォーカスリングの回転が電動式のためMFの感触が良くないことと、撮影可能状態にするためにズームリングを回して沈胴を引き出す操作が重いことが弱点だが、従来の標準ズームに比べて静音化と薄型化を図ったことはありがたい。

写りは、18mm側の開放値で周辺部がやや甘く、四隅の減光も見られるが、全体としては低価格のキットレンズとしては悪くないレベルだ。下の写真は、ズームのワイド端とテレ端で撮影したもの。発色の調整機能であるカスタムイメージは、初期設定の「鮮やか」を選んでいる。

ワイド端
テレ端

ISO感度別の画質をチェックする

撮像素子にはAPS-Cサイズ相当の有効2,012万画素CMOSセンサーを、画像処理エンジンには「PRIME M II」をそれぞれ搭載する。感度はISO100〜51200を1/3ステップで選択できる。

以下は、感度を変えながら撮影したJPEGデータだ。高感度ノイズ低減機能は、感度に応じて最適な処理が加わる「オート」を選択した。

以下のサムネイルは青枠部分を等倍で切り出したものです。
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600
ISO51200

赤い造花の部分には光が当たっているため、高感度ノイズはあまり気にならないが、影になった葉っぱの部分を見るとISO3200を超えるあたりからノイズが目立ちはじめることが分かる。また赤い造花の生地のテクスチャを見ると、ノイズ低減にともなう解像感の低下が確認できる。

どの感度までが実用的かの判断は用途や狙いによって異なるが、ISO6400くらいまでは大きな破綻はないといっていい。

新機能「明瞭強調」と「A-HDR」モード

K-S2は、画像処理に関する新機能として「明瞭強調」と「A-HDR」を搭載している。明瞭強調は、輪郭部分のコントラストを高めることで、被写体の凹凸や質感を強調する機能だ。撮影メニューからオン/オフの選択ができる。

金属やガラス、革製品などの素材感を強く表現したいときや、ぼんやりとした印象になりがちな曇天の風景にメリハリ感を与えたいときに役立つだろう。

明瞭強調オフ
明瞭強調オン

A-HDR(アドバンスドHDR)モードは、露出をずらしながら3枚を連続撮影し、その3枚をHDR合成してダイナミックレンジを広げつつ、同時に明瞭強調を適用して、絵画調の写真に仕上げる機能だ。

モードダイヤルを「A-HDR」に合わせることで選択でき、電子ダイヤルを回して露出の振り幅を「±1/±2/±3」から選べる。記録形式はJPEGのみに対応する。

通常撮影
A-HDRモード(振り幅±1)

このA-HDRモードは、振り幅±1を選んでも強めに効果が加わるため、利用範囲は限られる気がするが、ドラマチックでインパクトの強い写真に仕上げたい場合には役立つかもしれない。ただ、モードダイヤルの一項目に割り当てるほどの機能ではないと思う。なお、これとは別に、メニュー内には通常の「HDR撮影」も用意されている。

フルHD動画モードで撮影する

動画は、最大で30pのフルHD記録に対応する。記録ファイル形式はMPEG-4 AVC/H.264(MOV)。絞り値やシャッター速度、ISO感度のマニュアル設定ができるほか、動画にさまざまなエフェクトを加えて撮ることも可能だ。

動画撮影の操作は、電源レバーを動画モードの位置に回した上で、シャッターボタンでスタート/ストップを行う。音声は、内蔵ステレオマイクまたは市販の外部マイクが使用可能だ。

以下は、ガラス越しの撮影だが、クリアな描写とリアルな動きが確認できる。


DA L 18-50mm F4-5.6 DC WR RE / ISO800 / F4 / 1/30秒 / ±0EV / 21mm

作品集

色温度が低い夕方の光によって、金色に輝くチタンの外壁を撮影。カスタムイメージは「雅(MIYABI)」を選び、彩度とコントラストをほどよく高めている。

DA L 18-50mm F4-5.6 DC WR RE / ISO100 / F8 / 1/60秒 / ±0EV / 23mm

ダブルズームキットに付属する望遠ズームの200mm側を使用し、整然と並んだデモカーを切り取る感覚で捉えた。周辺画質には物足りなさが残るが、車体の金属感と逆光による強烈な陰影は狙いどおりに表現できた。

DA L 50-200mm F4-5.6 ED WR / ISO100 / F8 / 1/1,250秒 / -0.3EV / 200mm

ホワイトバランスを色温度10,000Kに設定して、夕焼け空の赤みを強調した。色温度の設定画面では、2つの電子ダイヤルと背面の十字ボタンを使って数値を細かく調整できるのが便利だ。

DA L 50-200mm F4-5.6 ED WR / ISO100 / F8 / 1/1,250秒 / ±0EV / 200mm

低い位置に咲いていたヤエヤマブキの花をバリアングル液晶を生かして正面から捉えた。立体感を出すために、外部フラッシュを上から当てている。なお上位機K-3とは異なり、内蔵フラッシュによる外部フラッシュのワイヤレスシンクロに対応していない点は少々残念だ。

FA77mm F1.8 Limited / ISO100 / F11 / 1/160秒 / +0.3EV / 77mm

中望遠の単焦点レンズを使って、密度の高い構図を狙った。絞りは被写界深度が非常に浅くなる開放値を選んだが、ライブビューのコントラストAFを使うことで意図した点に確実にピントを合わせることができた。

FA77mm F1.8 Limited / ISO100 / F1.8 / 1/250秒 / ±0EV / 77mm

七色のゴンドラのバランスよく並んだタイミングで撮影。電子水準器およびグリッド表示を活用することで、左右がシンメトリーになる状態を保つことができた。

DA L 50-200mm F4-5.6 ED WR / ISO100 / F8 / 1/500秒 / -0.3EV / 200mm

フィルム時代のレンズ「FA77mm F1.8 Limited」で撮影。アウトフォーカス部に色ずれが生じる個性的な写りだが、そんなレンズのクセも含めて、多彩なKマウントレンズの描写が楽しめる。

FA77mm F1.8 Limited / ISO200 / F1.8 / 1/160秒 / ±0EV / 77mm

バリアングル液晶が生み出す新しい撮り方

今回の試用では、ダブルズームキットに付属する標準ズームと望遠ズーム、それに中望遠の単焦点レンズを使ったが、それぞれの光学性能がきっちりと反映するK-S2の描写性能を確認できた。

カスタムイメージによって画質の傾向を細かく調整できることは、これまで通りの魅力であり、さまざまな効果を加えるデジタルフィルター機能も受け継いでいる。

K-S2の魅力は、防塵防滴構造やボディ内手ブレ補正、視野率約100%ファインダー、ハイパー操作系、カスタムイメージといったPENTAX製品の伝統を継承しつつ、バリアングル液晶という新たな価値を加えたことだ。

細かい改善要望点はいくつかある。例えば、Wi-Fiと自分撮りの2機能を兼用するボタンがボディ天面の一等地を陣取っているが、このボタンの割り当てをカスタマイズできないのは疑問だ。新機能をアピールする狙いがあるとはいえ、Wi-Fiや自分撮りの使用頻度が高いユーザーばかりとは限らない。

とはいえ、個人的には最近のPENTAX製品の中ではいちばんのお気に入りだ。フィルム時代から続くKマウントレンズには個性的な製品が数多くそろっているが、そのレンズ資産をバリアングル液晶を使って新たな角度から楽しめる、PENTAXファンにはたまらないカメラである。

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。