新製品レビュー
PENTAX K-S2(外観・機能編)
バリアングル液晶を備えた防塵防滴の一眼レフ
Reported by 永山昌克(2015/3/25 09:00)
リコーイメージングから、APS-Cサイズセンサーを搭載したデジタル一眼レフ「PENTAX K-S2」が登場した。2014年に発売された「PENTAX K-S1」の上位機にあたり、現行のラインアップではKシリーズのフラッグシップ「K-3」のひとつ下に位置する製品だ。
撮像素子と処理エンジンは、既存モデルK-S1から継承したもの。PENTAXブランドの一眼レフではおなじみともいえる、視野率100%のガラスファインダーや、どのレンズでも効果を発揮するボディ内手ブレ補正機構も受け継いでいる。
進化のポイントは、Kシリーズでは初めてバリアングル式液晶を採用したことと、同じくシリーズ初となる無線LANを内蔵したこと。外観デザインは一新され、K-S1では省かれていた、防塵防滴構造とハイパー操作系が復活した。入門者から中級者まで幅広いユーザーにアピールする製品といえるだろう。
発売は3月6日。価格はオープン。発売時の店頭価格は、ボディキットが10万円弱、18-50REキットが12万円弱、ダブルズームキットが13万円弱、18-135WRキットが14万円弱となっている。今回のレビューでは、その外観と機能をお伝えする。
ホールド性と携帯性を両立した小型ボディ
ボディは、フラットな面を多用したシンプルで端正なカメラデザインだ。グリップは、ホールド性を重視して比較的大きなもの装備する。一方でボディの高さを低く、横幅を短く抑えることで、全体としては小ぶりまとめている。
既存モデルK-S1は、前面に5つのLEDライトを配置するなど大胆な外観デザインが特徴だったが、K-S2ではそんな見た目の奇抜さは影をひそめ、比較的オーソドックスなスタイルになった。より多くの人に受け入れられやすいデザインといえそうだ。
前面のLEDはなくなったが、シャッターボタンまわりと背面OKボタンのLEDは継承されている。多彩で斬新なカラーバリエーションも健在だ。
レギュラーカラーは、ブラック、ホワイト、ブラック×オレンジの3色が用意。このうちブラック×オレンジのモデルは、ボディ底面がオレンジという個性的な配色が目立っている。そのほか、オーダーカラー受注サービスも実施中だ。
外装は、樹脂が主体で上面がアルミ素材。高級というほどではないが、特に安っぽい印象はない。
ボディサイズは、K-S1に比べて幅と奥行きがそれぞれ3〜3.5mm増え、高さについては1.5mm低くなった。重量は120gアップし、バッテリーとカード込みで約678g。APS-Cサイズの一眼レフの中でも、バリアングル液晶搭載モデルとしては標準的なサイズと重量といえる。メーカーによると、防塵防滴仕様のデジタル一眼レフでは世界最小ボディとのことだ。
シリーズ初となるバリアングル液晶を搭載
液晶モニターには、約92.1万ドットの3型TFTを搭載する。左右に最大180度、上下に最大270度まで回転するバリアングル式であり、ローポジションやハイポジションからの撮影時に重宝する。
ライブビューは、ボディ背面左上にあるLVボタンを押すと表示される。ライブビュー時のAFは、これまでの製品と同じくコントラスト検出方式だ。AF測距点は画面内の好きな位置に動かすことができ、顔検出や追尾AFにも対応する。
コントラストAFの合焦速度は特に高速とはいえず、動体撮影用にはは少々厳しい。ただ、一眼レフのライブビューAFとしてはまずまず速いほうではある。
ライブビューの際は、OKボタンを押すことで最大10倍の拡大表示ができるほか、ピーキング(輪郭強調)表示やグリッド表示、電子水準器表示なども行える。
新しい工夫としては、自分撮りシャッターがある。これは、液晶モニターをレンズ側に向けると、ふだんはWi-Fiのオン/オフを切り替えるための天面のボタンがシャッターボタンとして機能する仕掛けだ。このボタンは、腕を伸ばして自分撮りをする際、通常のシャッターボタンよりも押しやすい位置にある。
一方、ファインダーには倍率0.95倍/視野率100%のガラス製ペンタプリズムを採用。APS-Cサイズセンサー機としては比較的広いファインダーであり、見やすさは良好だ。
暗所でも確実にフォーカスが合うAF性能
光学ファインダーで撮る際は、一眼レフでは一般的な位相差検出方式のAFが作動する。測距センサーは「SAFOX X」で、測距点は中央9点のクロスタイプを含む11点に対応。背面十字ボタンによって測距点の切り替えが行える。
下位モデルK-S1と比べた場合、ワンランク上の測距センサーであり、測距可能な輝度範囲の下限は-1EVから-3EVに広がっている。実写では、薄暗いシーンで合焦速度が低下する傾向を感じたものの、暗所でも確実にピントが合う測距性能を実感できた。
ちなみにボディ性能とは直接関係はないが、レンズキットに付属する標準ズームレンズがリニューアルされたことで、AF駆動音が静かになったことは撮影時の心地よさを高めるうれしいポイントだ。従来の付属標準ズームレンズはボディ内モーターによるAF駆動だったため、作動音がギーギーと鳴ったが、新しい標準ズーム「smc PENTAX-DA L 18-50mmF4-5.6 DC WR RE」はレンズ内DCモーターによって静音化が図られている。
慣れるほど快適になるハイパー操作系
操作面では、グリップの前後に2つの電子ダイヤルを備えることが、下位モデルK-S1との大きな違いである。このダブル電子ダイヤル、および天面にあるグリーンボタンによって、PENTAX製品の伝統ともいえるハイパー操作系(ハイパープログラム/ハイパーマニュアル)が使用可能になった。
ハイパープログラムとは、プログラムAEモードを選んだ際、前ダイヤルを回すことでシャッター速度を、後ろダイヤルを回すことで絞りをそれぞれダイレクトに切り替えられる仕掛けだ。そしてグリーンボタンを押すことでプログラムAEに復帰する。つまりモードダイヤルを使用せず、プログラムAEとシャッター優先AE、絞り優先AEの3つを自由に行き来できるというわけだ。
またハイパーマニュアルとは、マニュアルモード選択時に、グリーンボタンを押すことで標準露出に素早く設定する仕掛けだ。どちらも上手に利用すると快適な操作感が得られる。
操作のカスタマイズとしては、露出モードごとの電子ダイヤルの働きの変更のほか、RAW/FxボタンとAF/AE-Lボタンの割り当て変更、自分撮りシャッターボタンの有効/無効化などに対応する。
操作面で気になったのは、背面の十字ボタンがくぼんだ形状になっていて押しにくく感じること。また、電源レバーが静止画モードと動画モードの切り替えを兼ねているため、電源オンの際に回しすぎて不用意に動画モードに入ってしまうことが何度があった。このあたりは慣れが必要だ。
Wi-Fiよるリモート撮影や画像閲覧に対応
付加機能としては、シリーズで初めて無線LANを内蔵したことがトピックだ。無線LANは、天面にある専用ボタンのワンタッチ、またはNFC端末の場合はNFCマーク部を軽くタッチすることでオンになる。
そして専用アプリ「Image Sync」によってリモート撮影やカメラ内の画像閲覧などが行える。リモート撮影の際は、スマホなどの端末側にライブビューを表示し、絞りやシャッター速度、ホワイトバランス、ISO感度、露出補正などが設定できる。
そのほかの新機能としては、カメラ内画像処理によって被写体の質感をリアルに再現する「明瞭強調」や、3枚の画像合成と明瞭強調を組み合わせることで絵画調の写真に仕上げる「A-HDR」などがある。
連写は最高5.5コマ/秒で、動画はフルHD記録に対応。一定間隔で撮影した静止画をつなげて動画にする「4Kインターバル動画」や、星の動きをインターバル動画で記録する「スターストリーム」機能も備えている。
カメラ内での手ブレ補正機構「SR」や、イメージセンサーのゴミをふるい落とす「DR」、画像処理でモアレ軽減を行うローパスセレクターなどは既存モデルから継承する。オプションのアストロトレーサーによる簡易天体撮影も可能だ。
より自由な構図と多彩なアングルが楽しめるカメラ
トータルとしては、最上位モデルK-3に迫る充実した内容のカメラだと感じられた。連写やAFの性能、最高シャッター速度、バッテリー持久力、シャッターフィーリングなどK-3には及ばない部分はもちろんあるが、その代わりにバリアングル液晶を備えることが何よりありがたい。
アウトドアシーンに有利な防塵防滴構造や、全レンズで作動するボディ内手ブレ補正はこれまで同様のメリットだ。そこにバリアングル液晶という新たな価値が追加され、撮影の自由度がいっそう広がっている。水滴やホコリ、手ブレに対する強さに加え、構図とアングルにも強くなった、というわけだ。屋外に持ち出して酷使すればするほど、その持ち味を発揮できるカメラである。
次回は、作例を中心にした実写編をお伝えしよう。