新製品レビュー
パナソニックLUMIX DMC-GM1
手のひらサイズにGX7画質を詰め込んだ意欲作
Reported by 小山安博(2013/12/12 08:00)
超コンパクトでデザイン性の高いボディ
LUMIX GMシリーズは、LUMIXシリーズの最新シリーズとして幅広いターゲットを想定したレンズ交換式カメラと言っていいだろう。最大の特徴は、なんといってもコンパクトなボディ。本体サイズは約98.5×54.9×30.4mm、本体のみの重さは約173g、付属レンズを装着した撮影時の重さが約274gとなっており、レンズ交換式としては破格のコンパクトなサイズ感を実現している。
数字だけだと分かりにくいが、例えばパナソニックの高級コンパクトデジカメ「LUMIX DMC-LX7」が約110.5×67.1×45.6mm、約298gなので、レンズを装着してもGMの方が軽く、レンズを外した状態だと、全体のボディサイズもGMの方が小さい。
もちろん、ミラーレスカメラだからレンズを含めたサイズが重要になるが、付属レンズの「LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S」は、沈胴式で非常にコンパクト。沈胴時の全長が約24mm、重さは約70gなので、装着しても奥行きは55mm以下で、小さなバッグにも収まる。コンパクトデジカメの感覚で持ち歩ける手のひらサイズだ。
外観のマグネシウム合金やアルミ削り出しのダイヤル、合皮素材による4色のボディカラーといったあたりからは、クラシックカメラの佇まいをも感じさせ、高品位なボディは持っていても楽しい。
付属の12-32mmレンズは、35mm判換算で24-64mmをカバーする約2.7倍ズームレンズで、コンパクト性と広角を重視したためか、テレ端の焦点距離はちょっと物足りない。しかし、とにかく軽くてコンパクトだ。
沈胴式のため、撮影時はレンズが繰り出して全長は長くなるが、それでもコンパクトに収まっている。ミラーレスカメラには何タイプかの沈胴式ズームレンズが存在するが、この12-32mmはレンズの繰り出し・収納にスイッチ操作が不要で、軽く力を入れるとレンズが伸縮する。適度なトルクがあって、ロックスイッチがなくても勝手に伸び縮みしたりせず、作りは良さそう。
写りに関しては、良くも悪くも付属の標準レンズといった印象で、際だった画質ではないが、ライトなスナップ撮影では有効に活用できるだろう。コンパクトながら光学式手ブレ補正を搭載しており、AFも速い。普段はコンパクトデジカメライクに12-32mmを付けっぱなしで持ち歩き、ここぞのシーンでは各種の交換レンズが使える、というのは大きな可能性をもたらす。
もちろん、マイクロフォーサーズのレンズはすべて装着できるし、マウントアダプター経由でオールドレンズにも対応。小さなボディなので、大柄なレンズは不釣り合いだが、レンズの鏡筒を持ってボディには軽く手を添える程度で構えれば、比較的安定して撮影できる。もちろん、コンパクトな単焦点レンズはよくフィットし、コンパクトデジカメ感覚で取り扱える。組み合わせを探ってみたい。
同世代の「LUMIX DMC-GX7」と比べると、手ブレ補正機構をボディに内蔵しておらず、特にレンズ内手ブレ補正機構を持たないオリンパスレンズなどを使うときは手ブレに注意が必要だが、そうした点を差し引いても、このコンパクトさは魅力的だ。
また、小型ながらポップアップ式のストロボも内蔵。光量はそれなりだし、大きめの交換レンズを装着するとケラれてしまうが、指でフラッシュを上に向けて発光させれば、バウンス撮影的な手法も使えそうだ。ホットシューなどはなく、アクセサリーを装着するといった拡張性についてはGX7と好対照に割り切っている。
ちなみにGMの撮像素子は“全部入り”のGX7と同じ「16M Live MOSセンサー」で、画質的には同等とされている。日々の活用シーンに応じて選ぶべき2台というわけだ。
スマホ並みの快適タッチ操作
背面には十字キーと一体のコントロールダイヤルがあり、回転操作が行なえる。背面モニターはタッチパネル操作にも対応していて、画面タッチとダイヤル操作を併用できる。特にタッチパネルはスマートフォンと同じ静電容量式としており、反応が良く、快適に操作できる。
このタッチパネルを生かし、画面右側に「タブ」が用意されている。ここにタッチすると各種設定項目が表示され、画面のタッチした場所にフォーカスを合わせてそのまま撮影するタッチシャッターや、タッチした場所に露出を合わせるタッチAEのオンオフが行なえる。
このタブにはカスタマイズ可能な「ファンクション(Fn)」ボタンを5つまで配置可能。本体上部に物理的な「Fn1」ボタンがあり、Fn2~6はソフトウェアボタンとしてタブ内に搭載した形だ。Fnには無線LAN、プレビューモード、水準器の表示、ヒストグラム表示があらかじめ設定されており、いずれも設定で変更可能。物理的なボタンが少なくてもソフトウェア的な工夫でカバーしようという心意気を感じる。
画面内のどこでもタッチすればAFを合わせられたり、タッチした状態で指をスライドさせることで露出を変更したりといった操作が可能。再生画面では、左右フリックで画像送り、2本指でタッチして指を開いたり閉じたりするピンチイン/アウトで画像の拡大縮小といった操作ができる。フリックが快適なのに比べて、ピンチイン/アウトの動作がやや引っかかりを感じるが、ダブルタッチでの拡大/縮小も可能で、全体として動作は快適。いよいよ「スマートフォンライク」と呼べる程度のレスポンスで扱えるようになったので、タッチパネルを苦手としていたユーザーにも改めて試してみてほしい。
上部にはモードダイヤル、シャッターボタンと同軸の電源レバー、Fn1ボタン一体型のフォーカスモードレバーが配置されている。フォーカスモードレバーがわざわざ一等地に搭載されているのは面白いが、それほど頻繁に使う機能かどうかは少し疑問がある。
MFに設定した場合、付属の12-32mmレンズにはフォーカスリングがないため、フォーカスエリアを移動してSETボタンを押し、そこから十字キーの左右でピント合わせを行なう。タッチパネルを使い、フォーカスエリアを指で動かし、「決定」アイコンにタッチ。画面右のバーを指でスワイプしたり、タッチしたりしてピント合わせを行なうこともできる。いずれにせよ少々面倒だが、もちろんフォーカスリングやフォーカスレバーのあるレンズであれば、そちらを利用すればいい。
おなじみのQ.MENUにはカスタマイズ機能も搭載。Fnと合わせて設定すれば、自分好みにカスタマイズできるので、使い勝手が向上する。
操作性は、カメラとしてはノーマルだが、タッチパネルに対応し、その反応がいいため、タッチを多用して操作するのも快適。静電容量式なので、爪や手袋での操作はできないが、最近はスマートフォン対応手袋、スマートフォン対応タッチペンのようなものもあるので、そうしたグッズを利用してもいい。
使い勝手のいい無線LAN機能
このコンパクトサイズに無線LAN機能を内蔵し、スマートフォンとの連携を強化しているのも特徴。デフォルトでは、上部のFn1に無線LANが割り当てられており、撮影中・再生中にこのボタンを押すと無線LAN設定が起動する。
初回は、「新規に接続する」→「スマートフォンとつないで使う」を選択。スマートフォン(iOS/Android)側ではアプリ「Panasonic Image App」をインストールしておき、スマートフォン側の無線LAN設定でSSIDとパスワードを入力すれば、GM1とスマートフォンが接続され、Image Appからカメラの操作ができるようになる。
スマートフォンには、カメラ側と同様の画面がリモート表示され、各種設定やタッチAFが可能。そのままシャッターボタンを押せる。動画撮影も開始できる。
ホワイトバランス、ISO感度、露出、セルフタイマーなど、主要な設定もスマートフォンから設定できるので、スマートフォン側からほとんどの操作が可能。
再生モードにすると、カメラ内の画像をスマートフォンで閲覧できる。左右フリックで写真を送り、拡大してピントを確認する、といった操作も簡単に行なえる。画像をスマートフォンに転送したい場合は、再生中に画像を長押しすると、スマートフォンの上下左右に転送先が表示されるので、そこに画像をドラッグする(同社がピクチャジャンプと呼ぶ機能)。サムネイル表示中に複数画像を選択して一度に送信することも可能だ。
撮影するたびに画像を自動で転送する機能も搭載。特に「Wi-Fi Direct」に対応したスマートフォンなどと接続する場合は、すぐに画像を転送してくれて便利だ。撮影してスマートフォンを取り出す頃には転送されているので、SNSなどにもすぐに投稿できる。
ただし、バッテリーの消費は結構大きい。公称の連続撮影枚数は、静止画で約230枚(CIPA規格)だが、無線LANを使うとさらに短くなる。頻繁に使う場合は、予備バッテリーがあるといいだろう。使った印象は、それほどバッテリーの保ちは良くないので、基本的に予備は確保して置いた方がよさそうだ。
また、パナソニックは一部のカメラで無線LANとNFCを組み合わせ、スマートフォンのNFCをタッチするだけで無線LANの設定ができる機能を搭載しているが、GM1には搭載されていない。NFCを搭載するためのスペースの問題かもしれないが、これは残念な部分だ。
いつでも身につけるカメラ
カメラの基本性能としては、上でも述べたようにGX7と並ぶハイスペックなもので、対応レンズと組み合わせた高速AFのほか、-4EVまで対応という「ローライトAF」は、夜景撮影時やレストランでの撮影でも良好に動作し、たいていのシーンで素早くピントを合わせてくれる。
GM1では小型化を実現するためにシャッターユニットがバネ式からモーター式に変わっており、1/500秒を超えるシャッター速度の場合、電子シャッターを利用する。電子シャッター自体は、通常であれば問題ないのだが、高速で移動する被写体を撮影する場合に、ローリング歪み(動体歪み)が発生する場合がある。シーンによっては気になるかもしれない。
ところで、シャッターユニットが変更されたためか、GM1のシャッター音は非常に小さい。さらに「サイレントモード」に設定すると、全速で電子シャッターに切り替わってシャッター音がまったくしなくなる。レストランなどの静かな環境で撮影したい場合には特に便利そうだ。派手なシャッター音を鳴らすスマートフォンよりも使いやすい。
電子シャッターとメカシャッターでは、連写速度も異なり、電子シャッターでは最高40コマ/秒までの連写が可能で、シャッタースピードも最高1/16,000秒まで選べるなど、単に切り替えるだけでなく、それぞれの特徴を生かした機能が利用できるようになっている。
また、シャッター方式については、ローリング歪みが気になる場合などメカシャッターのみに設定することもできる。その場合でもサイレントモードに設定すると電子シャッターに切り替わるので、Fnにサイレントモードを登録したり、カスタムモードに登録したりといった使い分けもできる。
LUMIX DMC-GM1は、コンパクトデジカメライクな小型ボディでありながら、本格的な作品作りもカバーできる撮影性能やレンズ交換による幅広い撮影の楽しみを持ち、スマートフォン連携による作品の披露といった、まさに「なんでも1台でこなせるカメラ」と言っていい。
カメラ本体でも22種類のフィルターを設定できる「クリエイティブコントロール」、ヴィヴィッドやモノクロームといった色味・画質の調整ができる「フォトスタイル」、撮影後に写真の不要部分をタッチ操作で削除できる「クリアレタッチ」、フルHD(60i)の動画撮影など、多彩な機能を満載している。それでいて、いつでも身につけて撮影を楽しめる1台だ。
作例
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
・作例
【12月12日11時追記】記事初出時、LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 ASPH. POWER O.I.Sのキャプションに「大口径高倍率ズーム」、「インナーズーム」と誤った記載があったため、修正しました。