新製品レビュー
パナソニックLUMIX DMC-GX7
洗練された機能と持ち歩く楽しみを凝縮
Reported by 塙真一(2013/9/20 08:00)
パナソニックが9月13日に発売したLUMIX DMC-GX7(以下、GX7)は、LUMIX DMC-GX1(以下、GX1)の後継となるモデル。約2年ぶりのモデルチェンジとなる。実勢価格はボディ単体が10万3,300円前後、「LUMIX G 20mm F1.7 II ASPH.」が付属するレンズキットが10万8,900円前後。
GX7のボディサイズは、約122.6×70.7×54.6mm(幅×奥行き×高さ)となっており、重さは約360g(本体のみ)となる。GX1と比べると大きく重たくなっているが、GX7は上方チルト可能な液晶ビューファインダー(EVF)を内蔵し、さらに液晶モニターも上下チルト式となっているため、単純に大きさを比較することはできない。
デザインは好みによって評価が分かれるところではあるが、私はずいぶんと格好良くなったと感じている。横長のフラットボディのカメラにしてはグリップも大きいし、ホールド感もよい。EVFを覗くスタイルでも、大きなグリップと程よい大きさで撮影に集中できる形状だと感じる。
目玉となるチルト式のEVFだが、約276万ドットの高精細な液晶を採用しており、発色も申し分ない。一方、背面の液晶モニターは3型約104万ドット。こちらも見え具合に大きな不満はない。ただし、液晶モニターが上下にチルトする以上、EVFが上方にチルトできることはそれほど便利だとは感じないのが正直な感想だ。もちろん、チルト式のEVFという発想は新しいし面白いと思う。だが、どうせなら液晶モニターかEVFのどちらかは上下左右に動いて欲しい。そうすれば縦位置撮影ももっと便利になるのだが。
一つだけ苦言を呈したいのは、EVFと背面モニターを切り換えるアイセンサーの位置がEVFの左側にあることだ。EVF自体がボディの左側にあるため、アイセンサーは左端ということになる。このため、背面モニターを見ながらの撮影で、カメラを縦位置(シャッターボタンを上にする構え)にすると、手のひらでアイセンサーを隠してしまい、不用意にEVF表示に切り替わってしまうのだ。撮影中、何度も不意に背面モニターの表示が消え、そのたびにカメラを持ち直すことがあった。
もちろん、アイセンサーをオフにしておけばよいのだが、普段は背面モニターとEVFを無意識に使い分けているので、できることならアイセンサーは生かしておきたい。このあたりの振る舞いはファームアップでもなんとかなるのではと期待したいところだ。使っていて、気になった点はそれくらい。あとは非常に軽快に撮影が楽しめた。
特に、シャッターボタンの半押し、全押しのフィーリングは良いし、シャッター音も金属的なキレのあるものとなっている。シャッター音などはどうでもよいという人もいるだろうが、私は気持ちよく切れるシャッターが好きだ。
背面モニターは静電容量式のタッチパネルを採用する。タッチの反応はよいし、画面の隅々までタッチでAFエリアを選択できるのはいい。画面の隅っこにピントを合わせる場面は決して多くはないが、タッチしたときに端っこまで反応してくれると、気持ちの上で自由度が高いと感じるからだ。
AFの速度に関しては特に不満に感じることはない。AFの方式はミラーレスカメラの王道ともいえるコントラストAFのみだが、ここまで速ければ特に位相差AFなどを併用する必要もないだろう。
また、ボディ背面の上部にAFとMFを切り換えるフォーカスモードレバーを装備した。レバーをMFにし、フォーカスリングを回すと画面の一部が拡大される。拡大率は3倍から6倍まで。拡大する場所もタッチで選択できる。撮影時のフレーミングをキープしながらピント位置だけを拡大できるため、構図の確認もしやすい。
一方、背面モニター全体を拡大モードにすることもできる。この場合は、10倍までの拡大が可能だ。ただし、全面で拡大しているため、構図は分かりにくくなる。シャッターボタンを半押しにすると、通常のフレーミング表示に戻るので、半押しで確認の上、シャッターを切るというスタイルになる。
また、MF時のピーキング機能も搭載されている。ピーキングはオンオフの設定だけでなく、コントラストの検出レベルの高低や表示の色なども選択できる。ピーキングをオンにしておけば、あまり拡大率を上げなくてもピントの山はつかみやすい。拡大の方法や倍率、検出レベルなどをうまく組み合わせることで自分に合ったMFがおこなえるだろう。さらに、MFモード時には、背面モニター上に「AF」アイコンが表示される。これをタッチするとAFが駆動する仕組みとなっている。もちろん、AFレンズ使用時に限るが、ピントが大きく外れているときなどに併用するとよいだろう。
ちなみに、AFにはローライトAFと呼ばれる機能が搭載され、-4EVまでピント合わせが可能となっている。屋外でのテスト撮影ではそこまでの暗闇には出会わなかったが、試しに部屋の灯りを消し、パソコンのモニター表示だけの明るさにしてみたが、部屋のどこにカメラを向けてもAFでしっかりとピントを合わせることができた。
GX7はLUMIX Gシリーズとして初のボディ内手ブレ補正機構を搭載した。パナソニック製レンズの中にも単焦点レンズや超広角ズームなどにはレンズ内手ブレ補正機構がないものがある。これらのレンズでも手ブレ補正が可能になったのはうれしい。また、LUMIX GシリーズでライカMマウントレンズなどを使って撮影を楽しむユーザーも多いが、当然、これらのレンズでも手ブレ補正が可能だ。
一点だけ注意しておきたいが、レンズ内手ブレ補正機構を持つGレンズに関しては、あくまでもレンズ側で補正をおこなうようだ。レンズ側の手ブレ補正スイッチをオフにしても、ボディ側では補正をおこなわないようなので注意しておきたい。ボディ内手ブレ補正の効き具合に関しては、まあまあという印象。あくまでも実感値での話となるが、驚くべき補正効果というよりは、補正なしよりは明らかに手ブレは減っているという感じだった。ボディ内手ブレ補正の初号機ということで、さすがに、オリンパスの5軸手ブレ補正のようにはいかないようだ。
ほかにも、GX7は従来機に比べてさまざまな進化が見られる。外部ストロボ使用時のシンクロ速度は1/250秒までとなったし、連写速度もアップした。連写は通常の高速連写で5コマ/秒、AF追従連写でも4.3コマ/秒となっている。また、JPEGのみのSサイズ記録なら40コマ/秒の超高速連写も可能となっている。操作系に関しても、前後2ダイヤルになり、露出操作もやりやすい。初期設定でFn1ボタンに割り当てられているQ.メニューを上手く使うことで、各種設定も素早く変更できる。
また最近のカメラのトレンドともいえるWi-Fi機能も装備している。スマートフォンやタブレットなどと接続することで、離れたところでカメラを操作したり、撮影した画像を閲覧したりできる。スマートフォンのGPSデータを用いて撮った写真に位置情報を付加することも可能だ。
スマートデバイスと連携するには、パナソニックがリリースしている「Panasonic Image App」をインストールしておく必要がある。接続は簡単で、カメラとスマートフォンをWi-Fiを初めて接続するときにSSIDなどの設定をするだけでよい。2回目以降は、カメラの履歴から接続先を選ぶだけでOKだ。また、NFC(Near Field Communication:近距離無線通信)機能を搭載しているため、Android端末などNFC対応の機器ならカメラと携帯をタッチするだけで接続が可能となる。カメラで撮影した画像をスマートフォンやタブレット経由でSNSなどの素早くアップしたいというユーザーには嬉しい機能だろう。
さて、最後に画質の話に移ろう。実はGX7の一番の進化点は画質といってよいだろう。新開発の16M Live MOSセンサーと画像処理エンジンのおかげで、これまでのどのカメラよりも細部の解像力が高くなっていると感じる。さらに、発色に関しても比較的落ち着きがあって深みのある色再現となっているようだ。高感度の画質に関しては、ISO800くらいまでがとても綺麗になった。ISO3200、ISO6400ではかなりノイズリダクションの効きが強くなり、細部の再現性は悪くなるが、緊急用の手持ちスナップとしてならISO3200でも使ってもよいと感じられる画質といえるだろう。
またミラーレスカメラといえば、撮影画像にエフェクト効果を付加したフィルター系のモードの充実も気になるところ。GX7ではモードダイヤルにクリエイティブコントロールモードを装備しているのはもちろんのこと、その種類も増え全22種類となった。GX7のみに搭載されるフィルターは、モノクローム、ラフモノクローム、シルキーモノクロームの3種。モノクロのフィルターを強化してきたところが、GX7の性格を表しているようで面白い。
LUMIX Gシリーズのクリエイティブコントロールは、画質モードをRAW+JPEGにしておいても撮影できる。実はフィルター系のモードはJPEGのみでしか使えないというカメラも多く、RAWも残しておけるというのは安心感があってよい。極端な話、全カットをクリエイティブコントロールモードで撮影しておいても、RAW+JPEGにしておけば、いつでもパソコンでノーマルの写真を取り出すことができるからだ。
ここまで述べてきた通り、GX7というカメラは、小型軽量の割には実に多機能で高画質。デザインも洗練されてきたこともあって、画質だけでなく、持ち歩く楽しさも兼ね備えている。そういった意味で、誰にでも勧められるカメラといっても差し支えないのではないだろうか。
実写サンプル
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・ISO感度
メニューに用意されるノイズリダクションの設定は、長秒ノイズ除去のオン、オフのみ。高感度ノイズリダクションの設定は用意されない。
※各サンプルのサムネイルは下の画像の青枠部分を等倍で切り出しています。
・ハイライトシャドウ
パソコンの画像処理ソフトでトーンカーブを調整するように、カメラ内でハイライトとシャドーの調整が可能。フォトスタイルと組み合わせて使うと、かなり仕上がりを追い込めそうだ。
・フォトスタイル
スタンダード、ビビッド、ナチュラル、モノクローム、風景、ポートレートの6種類。それぞれコントラスト、シャープネス、彩度、ノイズリダクションの各項目を調整可能。調整したものをカスタムとして登録しておくこともできる。
・クリエイティブコントロール
フィルター効果が楽しめるクリエイティブコントロール。全22種類となり、さらに多くの表現ができるようになった。各モードは色や明るさ、彩度など効果の適用度合いを微調整することが可能だ。調整できる内容はフィルターによってさまざま。
・作例