新製品レビュー
パナソニックLUMIX DMC-G6
上位機譲りの操作性と自由度の高いWi-Fiリモート撮影
Reported by 曽根原昇(2013/8/28 12:10)
「LUMIX DMC-G6」は、パナソニックが6月に発売したEVF内蔵タイプのミラーレスカメラ。2008年10月に発売された初のマイクロフォーサーズ機「LUMIX DMC-G1」(2008年10月)の直系と言える存在で、数えて5世代目にあたる。
上位機に「LUMIX DMC-GH3」(2012年12月)、EVFを省略した下位機種として「LUMIX DMC-GF6」(2013年4月)が存在し、9月には新たにフラットタイプでEVFを内蔵した高級路線の「LUMIX DMC-GX7」が加わる。多様化する同社「Gシリーズ」のなかにあって、もっともオーソドックスな中堅機という位置付けだ。
執筆時点における大手量販店での実勢価格は、ボディ単体が6万6,700円前後、電動ズームの「LUMIX G X VARIO PZ 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.」レンズキット(Xキット)が8万5,800円前後、新しい高倍率ズームレンズを組み合わせた「LUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S」レンズキット(Hキット)が9万6,200円前後、「LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 II ASPH. MEGA O.I.S.」と「LUMIX G VARIO 45-150mm F4-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.」のダブルズームキット(Wキット)が9万1,000円前後となっている。
カラーバリエーションはホワイト、シルバー、ブラックの3色が用意されるが、Hキットはシルバーとブラックのみ、Xキットはブラックのみと、やや変則的。ボディ単体とWキットには、3色全てのカラーバリエーションが用意される。
なお、通常シルバーボディのレンズキットにはブラックのレンズが付属するが、本稿ではシルバーのボディにシルバーの「LUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S」という組み合わせで試写を行なった。
良好なホールディング性と多彩なカスタマイズ機能
ボディデザインは前機種のDMC-G5に比べて凹凸が少なくなり、面構成による直線的なラインで全体をまとめることで、小型であることを維持しながらも存在感を出すことに成功しているといった印象。DMC-G5から大きく握りやすくなったグリップは本機にも継承され、新たにダイヤルやボタンのレイアウトを最適化することで、優れたホールディング性と良好な操作性を両立している。
本機DMC-G6はEVFを内蔵していることもあって、状況に応じての多様な撮影スタイルが想定される。それだけに、小さくても操作性に十分な配慮がなされているのは嬉しいところである。
ただ、美しく複雑な成形であるがゆえか、外観を構成するパーツはほとんどがプラスチック製となっており、Gシリーズの他機種やこれまでに登場した前機種と比較すると金属的な高級感を望むことはできない。とはいえ結果的にDMC-G5からは約21g(撮影時)の軽量化が達成されているので、小型・軽量が望まれるこのクラスのカメラではむしろ歓迎すべきことと考えるべきだろう。
操作性で特筆したいのが、好みに応じて選択した機能を割りたてることのできるFnボタン(ファンクションボタン)の数だ。カメラ背面の5つのFnボタンと、モニター右側にあるタッチタブに用意された2つをあわせるとその数は計7つにもなり、これは上位機種のDMC-GH3と同等で、前機種DMC-G5の5つ(専用Fnボタン3つ、タッチタブ内2つ)より2つ増という充実ぶりだ。操作性を左右するボタン類の数を、大きさと価格を抑えながらも上位機種同等とした点にはパナソニックの良心を感じずにいられない。
現行のパナソニック機に共通する「Q.MENU(クイックメニュー)」は初期設定でFn1ボタンに割り当てられており、Q.MENUを呼び出すと使用頻度の高い機能を一覧表示として呼び出すことができ、そのまま各項目を選択してダイレクトに操作することが可能だ。
最近のデジタルカメラはメニューの設定項目が肥大しがちで、いざ目的の機能を探そうとしても迷ってしまうことが多いが、こうしたFnボタンやQ.MENUを積極的に活用すれば、自分がよく使う機能を効率よく呼び出すことが可能となり、直感的でスムーズな操作で撮影に臨むことができる。
また、本機のメニューの操作系は、どちらかというとカーソルボタンやダイヤルでの操作よりも、タッチ、ドラッグ、ピンチイン/アウトといったタッチパネル操作を主体とした操作体系になっており、コンパクトデジタルカメラやスマートフォン、タブレット端末の操作に慣れた人にとっては、それらからのステップアップでも理解しやすく馴染みやすいだろう。
また、シャッターボタン近くに「iAボタン」が設置されているのは、下位機種DMC-GF6と同じく、本機が入門機という性格をもつ証といえるだろう。iAボタンを押すことで、どの撮影モードからでもカメラが自動的にシーン判別をしてオート撮影するインテリジェントオート/インテリジェントオートプラスモードに瞬時に移行できるので、カメラの操作に不慣れな人にとっても安心感が高い。
内蔵のEVFはDMC-G5と同じく視野率100%・144万ドット相当であるが、ディスプレイは有機EL(OLED)に変更され、コントラストや色合いが向上して視認性が高まった。ただし、あえていうなら、解像度を他社最新機並みの200万ドット相当以上としてもらえれば、さらに電子ビューファインダーの利点を享受できたかもしれないという期待もあり、ここは今後に期待したい。とはいえ現状でも大きな問題はなく、ファインダーの実用性が必要十分なのはもちろんのことである。
処理速度が向上した新開発ヴィーナスエンジン
撮像素子は有効1,605万画素の「16M Live MOSセンサー」で、これは前機種のDMC-G5から変更がないが、画像処理エンジンには新たに開発された「ヴィーナスエンジン」となり、画像処理にかかわる演算処理速度が向上した。撮像素子の前面に設置されたローパスフィルターなどのフィルター系と、新開発のヴィーナスエンジンによる信号処理技術の最適化を図る(新ディテール再現フィルター)ことで、解像感が大幅に向上し、白トビ黒つぶれを抑えた階調豊かな描写を実現しているという。
例えば、背景と被写体の明暗差が大きい場合などに、コントラストや露出を自動補正する「iDレンジコントロール」は、階調処理の演算処理精度向上によって、なめらかな階調を残したまま、従来よりも広いダイナミックレンジを実現したとしている。実際に試写した結果、従来ではハイライトかシャドーのいずれかを諦めなければならなかった輝度差の大きいシーンでも、不自然になることなく幅の広い階調表現を確認でき、画質向上の効果を実感できた。
電子シャッターで静かな撮影も
「撮影メニュー」で電子シャッターをONにすると、通常のメカシャッターを使わずほぼ無音での撮影が可能となり、演奏会での撮影など静寂が要求されるシーンで有効だ。ただし電子シャッターはその特性上、動きの速いものを写すと歪んで写ってしまうことがあるため、特に必要のない場合は一般的なメカシャッターで撮影したほうがよいだろう。
連写速度はSH(超高速)、H(高速)、M(中速)、L(低速)の4段階から選択することができる。このうちH(高速)は、メカシャッターを利用して約7コマ/秒の連写が可能であり、これは前機種のDMC-G5はもとより上位機種のDMC-GH3をも上回る数値だ。Gシリーズのラインナップ上の位置づけよりも、前述の画像処理速度の向上といったデジタルデバイスの進歩が結果的にスペックとして表れたところといえるだろう。いずれにしても、連写性能はシリーズ中最も高性能であるので、価格を考えると本機の特徴的な優位点である。
さらに、SH(超高速)にすると秒間約40コマの超高速連写が可能となるが、この場合は、記録画素数が約400万画素でJPEGのみ、シャッターも自動的に電子シャッターに固定されるので、写真のサイズは小さく、被写体が歪んで写ることがある場合を承知しなければならず、特殊用途での連続撮影に限定されるだろう。
高機能なスマホ連携
DMC-G5にはなかったWi-Fi機能が新たに内蔵され、専用アプリ「Panasonic Image App」を使用することでスマートフォンやタブレット端末との連携が可能となった。いまどきのミラーレス機としては流行ともいえる内蔵Wi-Fiであるが、アプリとの連携機能が大変に使いやすく秀逸なので紹介しておきたい。
Panasonic Image Appはパナソニックが無償提供するスマートデバイス用の連携アプリで、iOSはApp Store、Android OSはGoogle Playでダウンロードできる。アプリを利用してDMC-G6と端末を接続すると、リモート撮影やSNSへの画像投稿を簡単に行なえる。
このアプリが特に優れているのは、端末から操作できるカメラの設定項目が非常に多彩であること。カメラのライブビュー画面を見ながらシャッターを切るといった単純なリモート撮影はもちろん、ホワイトバランスやISO感度、露出補正、絞り、シャッター速度など、通常よく操作するカメラの設定項目のほとんどをスマートデバイスから操作することができる。Q.MENUに登録したフォトスタイルや横縦比などの選択も可能で、内蔵Wi-Fiと連携する無償アプリとしては、最もリモート撮影に関する操作項目が多い優れたアプリといえるだろう。
再生画面で画像を長押しすることで表れる「ピクチャジャンプ」では、タッチやドラッグ操作で画像の転送・削除、事前設定したSNSへの投稿が可能であり、ほかにはないシームレスな操作でWI-Fi機能によるスマホ連携の長所を活かすことができる。