新製品レビュー
ソニーサイバーショットDSC-RX100M2
スマホ連携など完成度を高めた1インチコンパクト
Reported by 大浦タケシ(2013/7/29 07:55)
ソニーが7月5日に発売した「サイバーショットDSC-RX100M2」は、1インチセンサーの搭載で話題を呼んだ「サイバーショットDSC-RX100」(2012年6月発売)のバリエーションモデルだ。モデル名のなかの“M2”は、マークツーと読む。
スペックの数値のみを拾うとさほど変化はないように思えるが、イメージセンサーを裏面照射型としたほか、EVFやストロボに対応するマルチインターフェースシュー、チルト式液晶モニター、Wi-Fi機能を新たに搭載するなど、機能的に大きな違いがある。本稿執筆時点の実勢価格は7万4,900円前後。
サイバーショットDSC-RX100M2(以下RX100M2)のイメージセンサーは、先に発売されたサイバーショットDSC-RX100(以下RX100)と同じく1型有効2,020万画素。ただしRX100のCMOSセンサーは表面照射型の「Exmor」で、RX100M2は同社の十八番ともいうべき裏面照射型の「Exmor R」 だ。
裏面照射型のイメージセンサーの優位性についてはよく知られているとおりである。通常のイメージセンサーと異なり受光部の上に回路がないため、受光面積が広く取れ高感度で有利となる。加えて、RX100M2では画像処理技術のチューニングも図られ、より高感度に強いカメラへと仕上がっている。その結果、RX100M2の通常感度域はISO160-12800となり、最高感度はRX100から1段分アップした。なお、アスペクト比は3:2で同じだ。
高感度特性の違いについては記事末の比較サンプルを見ていただければ分かる通り、ISO400あたりからその差が出はじめる。もちろんRX100M2が有利だ。最高感度であるISO12800のノイズレベルは、RX100の最高感度ISO6400とほぼ同じといってよい。ノイズの粒もRX100M2のほうが揃っているように思える。同社のカタログ等を見ると約1段分のノイズ改善とのとことであるが、そのことに間違いはないといってよいだろう。さらに低感度での階調再現性なども心もちRX100M2のほうが上手に感じられ、総合的にも描写は向上していると言えるだろう。
ちなみに、RX100M2ではベース感度も従来のISO125からISO160へとアップしているが、パンフォーカスでの撮影などで有利なことがある反面、ボケを狙って絞りを開けようとすると制約を感じることも多くなったように思える。拡張感度としてISO100相当とISO125相当も選択できるが、コントラストが若干高めになるため、被写体によっては気になる人もいることだろう。
レンズに関しては、RX100から変更はない。35mm判換算28-100mm相当で、テレ端の開放値を抑えたコンパクトな鏡筒になっている。個人的には、バリエーションとして1型センサーのメリットを活かすような明るい単焦点レンズを搭載するモデルもあっていいように思える。
マルチインターフェースシューの採用も新しい部分。形状は、これまで同社が採用していた独自規格のオートロックアクセサリーシューと異なり、一般的なアクセサリーシューに近い形状をしている。奥に専用の信号ピンを備えており、電子ビューファインダー「FDK-EV1MK」などの装着を可能としている。
余談とはなるが、今回の作例撮影などではこのファインダーを使うことが多かった。しっかりとカメラを構えることができ、太陽の照りつけるような明るい屋外での視認性よさは液晶モニターを大きく上回るほか、老眼の身にはメニュー設定や撮影した画像の確認なども快適であったからだ。決して安いアクセサリーではないので、誰にでもオススメできるものではないが、RX100M2の使い勝手は格段に向上するといってよいだろう。
また、マルチインターフェースシューにはクリップオンストロボも装着できるため、大光量のTTL撮影が楽しめるようになったことも便利に思える部分だ。
チルト方式の液晶モニターも従来からの変更点だ。上方向に84度、下方向に45度可動する。カメラを低く構えて撮影するときなど重宝することはいうまでもない。気になるのがボディの厚さと重さであるが、固定式の液晶モニターであるRX100が35.9mmであるのに対しRX100M2は38.3mmとなる。
また、重量もRX100が240gに対しRX100M2は281gにアップしている。ホールドした印象は数字ほど違わず、ハンドリングのよさは損なわれていない。ソニーのチルト式液晶モニターは他のメーカーものより薄く軽量に仕上がるのが特徴だが、面目躍如といったところだ。なお、3型約123万ドットのスペックに変更はない。
加えて、このところデジタルカメラのトレンドにもなっているWi-Fi機能も搭載された。専用のアプリ「PlayMemories Mobile」をスマートフォンやタブレット端末にインストールすれば、撮影画像・動画を転送してSNSや動画共有サイトなどにアップロード可能となる。また、スマートフォンの画面でライブビューを見ながらRX100M2のシャッターを切ることもできる。さらに特徴的なのは、NFC(Near Field Communication)に対応していることだろう。筆者の端末では試せなかったが、RX100M2では、対応するスマートフォンとカメラをタッチするだけで画像転送やリモートライブビューのペアリングが可能になるという。
昨今では高性能カメラの搭載を謳うスマートフォンも少なくないが、撮影意図を反映しやすいカメラ専用機の便利さを知っているカメラファンにとって、こうしたスマホ連携は嬉しい機能だろう。
そのほかの部分に関しては、基本的にRX100を継承する。操作性についても同様である。そのなかで少々気になったのが、レンズ付け根にあるコントロールリング。このリングには露出補正やISO感度、ホワイトバランスなどの機能を割り当てることができるが、これまでどおりクリックがなく、やや節度の足りない操作感となっているからである。オリンパス「STYLUS XZ-2」のようにクリックの有無が選べるようになると、より使いやすくなるように思えてならない。今後に期待したいところだ。
RX100ユーザーの思う“こうだったら”という思いの多くを実現したRX100M2。機能のほか拡張性なども含め、飛躍的に完成度が高まった。元々口うるさいカメラ愛好家のサブカメラとして選ばれることが多かっただけに、ますますその地位を盤石なものにしたといってよいだろう。35mmフルサイズセンサー搭載のDSC-RX1/RX1Rなども含め、ソニーのハイエンドコンパクトはここにきて独自性をより強く打ち出しているように思えるが、今後のさらなる展開にも注目しておきたい。