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「カメラグランプリ2025」贈呈式が開催

キヤノンEOS R1が大賞 レンズ賞はソニーFE 28-70mm F2 GMも

贈呈式は九段会館テラスで行われた

カメラ記者クラブは「カメラグランプリ2025」の贈呈式を5月30日(金)に都内で開催した。会場では、各社の代表者が受賞を受けてのスピーチを行った。

既報の通り、大賞はキヤノン「EOS R1」、レンズ賞はソニー「FE 28-70mm F2 GM」、あなたが選ぶベストカメラ賞はキヤノン「EOS R5 Mark II」、あなたが選ぶベストレンズ賞はキヤノン「RF70-200mm F2.8 L IS USM Z」がそれぞれ受賞した。

このほかカメラ記者クラブ賞として企画賞と技術賞が2製品に贈られた。

大賞:キヤノン「EOS R1」

EOS R1

加藤学氏(キヤノン イメージング事業本部 IMG第一事業部事業部長)は、「大賞は2015年のEOS 7D Mark II以来10年ぶりで、社内の関係者も非常に感慨深く受け止めています」と喜びを語った。

「遡ること1971年、F-1というキヤノン初のプロカメラシステムを上市しました。それを元祖として、ミラーレスの時代に行っても”1”の製品はいかなる妥協も許さないという思いでものづくりを行っています」

「昨年のパリオリンピックに試作品を持ち込んでプロカメラマンの方々に使って頂きました。開会式の日が豪雨でして、我々もしっかりと評価を行って自信を持っていましたが、何台かは内部に水が入るというトラブルがありました。すぐに代替機をお貸しして事なきを得ましたが、同時に開発者に至急対応をとってもらって次の日には原因究明と対策という素早い対応ができました。技術者はいかなる過酷な環境でも撮れるのが”1”だと強い信念を持っています。そういうものが信頼性という無形の価値を作り上げていくと私も感じた次第です」と開発時のエピソードにも触れた。

キヤノンの出席者

レンズ賞:ソニー「FE 28-70mm F2 GM」

FE 28-70mm F2 GM

岸政典氏(ソニー レンズテクノロジー&システム事業部イメージングエンタテインメント事業部長)は、「このレンズは我々Eマウントシステムの中で初めてのF2通しのズームレンズです。開発で目指したのはズームレンズを作るのではなく、焦点距離の変えられる単焦点レンズを作ることでした。光学設計は数々の制約との戦いですが、その周辺技術によって制約をどんどん取り払うことを年々進めています。今回のレンズはこれまでやってきたことの集大成と感じています」と話した。

開発について語ったのは、金井真実氏(ソニー 商品設計第5部門光学設計部 統括部長)。

「公開されている断面図を見てお気づきの方もいらっしゃると思いますが、レンズ構成は過去に出したFE 24-70mm F2.8 GM IIにけっこう似ています。いろいろ検討を行った中で最終的にこの構成が最適というところに行き着き、FE 24-70mm F2.8 GM IIをベースにした光学設計になっています」

「非常に精度の高いXAレンズというものがありますが、過去のものより大きく、さらに1段精度も高いタイプの開発が間に合ったことで今回のレンズが成り立っているのが1つの大きなポイントです。また、重心移動という点で繰り出しをなるべく小さくしようと設計していますが、これがメカ構造の軽量化にも大きく効いています。そして我々の持っているアクチュエーターや製造技術によって軽量化や高い信頼性が達成できたと考えています」

ソニーの出席者

あなたが選ぶベストカメラ賞:キヤノン「EOS R5 Mark II」

EOS R5 Mark II

開発について話したのは、佐藤洋一氏(キヤノン イメージング事業本部 IMG開発統括部門 IMG製品第一開発センター所長)。

「以前同じ賞を取ったEOS R5も担当していましたが、コロナ禍でこうした会がなかったんですね。あのときは本当に今後カメラをどれだけ使って頂けるんだろうな、という思いもありながら開発をしていたのが正直な所でした。その後はいろいろ良い方向に向かいまして、賞をいただいてまた次の機種も頑張ろうと作ってきたのがこのカメラです」

「Mark IIにするときも何を進化させるのかを非常に議論した上で、やはり視線入力は入れようとか、動画撮影時間を長くするためには空冷機構も入れようということを検討していきました。今回はアクセサリーにファンを置くといった落とし所になりましたが、そういった変えない部分と新しく変えた部分を作ったところがこうした評価に繋がったと思います」

あなたが選ぶベストレンズ賞:キヤノン「RF70-200mm F2.8 L IS USM Z」

RF70-200mm F2.8 L IS USM Z

中下大輔(キヤノン イメージング事業本部 IMG光学統括部門 IMG光学開発センター部長)が開発について語った。

「70-200mm F2.8というレンズは1995年から製品化が進んでいます。そこから手ブレ補正や小型軽量化といった進化をしてきました。今回のレンズはプロの求めるクォリティに答え、静止画と動画の垣根を越えて皆様の期待に応えられたのではないかと思っています」

「EOSの哲学である快速、快適、高画質に加えて、ズーミング時にピントが変動しないようにAF性能を大幅に進化させることができました。このレンズはズーミングするとメカニカルに連動する部分と電気制御で動く部分があります。この2つの光学系を高度に連係させることで大幅にAF性能が向上しています。開発の初期段階から全員でこのAFの進化を達成しようと技術開発をして見事成功することができました」

カメラ記者クラブ賞(技術賞):ニコン「Z50II」

Z50II

開発について話したのは八木成樹氏(ニコン 映像事業部開発統括部付 兼設計部長)。

「Z50IIは非常に多彩な絵作りを楽しめる機能と、上位機譲りの優れた性能を兼ね備えたモデルになっています。Z9から始まるシステムをこのサイズにギュッと詰め込んでいます。初めてカメラを使うユーザーの方でも難しい設定はカメラに任せて、安心して撮影に没頭して頂けるモデルにしたいと思って開発してきました」

「フォトグラファーやクリエイターといった方々の表現であったり、自分らしい画づくりを簡単に楽しめるようにピクチャーコントロールをこの小さなカメラで実現しています。動画性能も充実させており、初心者を始めクリエイターなど幅広いユーザーにカメラを構える楽しみを感じてもらえる機能を詰め込みました」

ニコンの出席者

カメラ記者クラブ賞(企画賞):リコーイメージング「PENTAX 17」

PENTAX 17

濟木一伸氏(リコーイメージング カメラ事業本部長)が開発について語った。

「2022年の暮れにフィルムカメラプロジェクトということで発表し、開発がずっと走って世の中に出したわけですが、経営目線で見ると十分な検証がされていない状態でのキックオフでした。なぜなら我々は21年間フィルムカメラを出していなかったからです。その間に技術も失っていますし、新しいフィルムカメラにどういった期待をしてくれるかということも十分検証できていなかったというのが本当のところです」

「それが発表後にはフィルムユーザーの方など世界中から思いも寄らぬご期待の声をいただきまして、これはちゃんと作らないといけないという状態に追い込まれました。昔の図面も無い中でOBの方々に出て頂いたこともありますし、今調達できない部品は社内で作りました。若い方が反応してくれる自信はありましたが、古くて新しいという受け取り方をしてくださいまして、たくさん発信をしてくれているところです」

リコーイメージングの出席者

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。