【新製品レビュー】キヤノンPowerShot S110
2011年12月に発売されたPowerShot S100の後継となるモデル。撮像素子に自社開発の1/1.7型CMOSセンサーを搭載。有効1,200万画素という数字はS100と同じだが、センサー自体は新開発のものとのことだ。画像処理には映像エンジンDIGIC 5を採用する。
S100が内蔵していたGPS機能はなくなったが、代わりに無線LAN機能を内蔵。GPS機能を持つスマートフォンと連携することで位置情報の取得を可能にしている。
発売は10月中旬の予定で、大手量販店の店頭価格は4万9,980円程度。S100の初値(5万4,980円)よりも5,000円安くなっている。ボディカラーはブラック、シルバー、ホワイトの3色から選べる。
■伝統のコントローラーリングが便利。タッチパネルとの連携も
S100はボディの両サイドのラインが上下でやや絞り込まれているのに対して、本機はやや丸みを抑えたフォルムに仕上げている。また、正面からサイドに向けて、少し角の張っていて、上から見ると八角形になっている。
前面右手側にあった指掛かりがなくなったものの、軽いこともあってホールド感が悪いという印象はない。ただし、汗をかいたときや手袋をしたときには滑らせないよう注意が必要かもしれない。
搭載レンズは24-120mm相当の光学5倍ズームで、これはS100と同じものと思われる。開放F値はF2-5.9。広角端が明るいのはいいが、望遠端は平凡な数字で、そこのあたりは少々おもしろくない。
ちなみに、ステップズームにして中間の焦点距離の開放F値をチェックしてみたところ、28mm相当ではF2.2、35mm相当でF2.8、50mm相当でF4、80mm相当ではF5だった。
手ブレ補正機構はレンズシフト式。撮影シーンを判別してそれぞれのシーンに最適な補正を行なう「マルチシーンIS」としている。最短撮影距離は広角端で3cm、望遠端で30cm。明るくないうえに寄れない望遠端よりも、明るくて寄れる広角端のほうが背景は大きくボケてくれる。
レンズ基部にコントローラーリングを備えているのも従来どおり。コントローラーリングの機能は「RING FUNC.」ボタンで変更でき、絞り値やシャッター速度、ISO感度などが割り付けられる。ただ、滑り止めのパターンが変更されていて、エッジの部分がぎざぎざしていて、少しばかり指が痛い。こういうのは人によって感じ方に違いがあるので、購入をお考えの方は店頭などでご確認いただきたい。
筆者個人としては、ダイヤルなどの単独操作で露出補正が行なえるのが好みなので、コントローラーリングに露出補正を割り付けて試用した。その場合、背面のコントローラーホイールの単独操作で絞り値が変えられる。どうせならその逆(絞り優先AEならリングで絞り値、ホイールで露出補正)の設定もできるといいのにと思う。背面のサブ電子ダイヤルで露出補正を行なうのに慣れたEOSユーザーなら、そのほうが自然に使えそうな気がするのだ。まあ、細かい話ですけど。
レンズ基部のコントローラーリング。エッジ部分の面取りの角度の問題だろう、筆者にはちょっと指が痛く感じられた。 | 「RING FUNC.」ボタンを押すとコントローラーリングの機能を変更できる。個人的には露出補正が使いやすいと感じた。 |
リングで露出補正、ホイールで絞り値の設定が可能。逆の設定ができるとEOSっぽくなっていいのにねって思う。 |
さて、撮影可能な状態で画面右端に表示される黒っぽい帯状の部分に触れるとダイヤル様の操作部が現れる(使用説明書を見ても名称は書かれていなかった)。このダイヤル様の操作部に触れることでコントローラーリングの機能を一時的に変えることができる。例えば、絞り優先AE時にコントローラーリングの機能を露出補正にしていた場合、上側に触れるとISO感度、下側なら絞り値になる。最初のうちはこんがらがりそうだったし、画面の一部が隠れるのはうれしくないが、慣れるとけっこう便利だった。
画面の右側の黒っぽい帯の部分に触れると、こういうのがにゅっと出てくる。触る部分によって機能が変わる。 | リングの機能変更はメニューからでも行なえるので、「RING FUNC.」ボタンの機能は好みなどに合わせて変えてもいい。 |
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。RAWやRAW+JPEG同時記録もできるので、できれば容量の大きなものを用意したいところだ。
電源はリチウムイオン電池NB-5L(4,725円)。容量は1,120mAhあるが、CIPA基準での撮影可能コマ数は約200コマと少なめ。1日の撮影量が多い人だと予備のバッテリーは1個では足りない可能性もある。これも注意が必要な点だ。
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。内蔵メモリは備えていない。 | 電源は容量1,120mAhのリチウムイオン電池。撮影可能コマ数が約200コマと少ないのは不満だ。 |
感度の設定範囲はISO80からISO12800。設定ステップは1/3段。「RING FUNC.」ボタンを押すと、瞬時にオートに切り替わる。 |
ISOオートでの上限はISO400からISO1600の範囲で設定可能。また、感度の上がり方は「早め」「標準」「遅め」から選べる。 |
上面右手側の操作部。モードダイヤルの滑り止めパターンも変わっているが、指は痛くない。 | 内蔵ストロボは自動で上下する電動式。 |
新しく1軸の水準器を内蔵。もちろん、縦位置にも対応する。 |
■スマホから位置情報を取得
最近、無線LAN機能を搭載したカメラが急速に増えつつある。先般発表されたフルサイズ一眼レフカメラのEOS 6Dもそうだが、本機も内蔵の無線LAN機能を使ってパソコンやスマートフォン、キヤノン製の無線LAN機能搭載カメラなどと、ダイレクトにデータのやりとりが可能になっている。パソコンなどと接続するには、無線LANルーターなどのアクセスポイントが必要となるが、スマートフォンとの接続であれば、本機をアクセスポイントとして利用することもできるようになっている。
スマートフォンとの接続には、専用アプリの「CameraWindow」が必要。iOS用、Android用ともに無料で入手できる。設定はわりと簡単で、再生モードで無線LANメニューボタン(十字キーの上キー)を押してスマートフォンのアイコンを選び、あとは指示にしたがうだけ。初回のみ接続先の機器の登録が必要になるが、2回目以降は手順もぐっと簡単になる。
再生モードで十字キーの上キーを押すと無線LAN機能が利用できるようになる。 | 初期画面はこんな感じ。接続する機器に合わせてアイコンをタッチする。 |
スマートフォンと接続する場合は、カメラをアクセスポイントにできるので、電波のない場所でも利用できる。 | この画面が出たらスマートフォン側のアプリを起動して、表示されている暗号化キーを入力する。 |
で、あとは指示にしたがって操作して、スマートフォン側に「接続中」が表示されればOK。 | 無線LANの接続が確立すると上面の青色のLEDが点滅から点灯に変わる。 |
この状態で、本機側からは再生中の画像(もちろん動画もOKだ)ないし複数の画像を選択してスマートフォンに送信できる。
「この画像を送信」をタッチすると1コマだけ転送できる。左下の「選んで送信」にタッチすれば複数画像をまとめて送れる。 | これは画像を転送中の画面。 |
スマートフォン側からは「カメラ内の画像を見る」ことと「カメラ内の画像に位置情報を追加する」ことができる。
前者は、スマートフォンの画面で再生表示を行なうもので、見られるのはインデックスと全画面再生のみ。部分拡大や動画の再生はサポートされていない。
カメラ内のSDメモリーカードに記録されている画像を、スマートフォンの画面で見ることができる。 | 1コマだけを全画面表示にした状態。拡大表示や動画の再生はできない。 |
後者はスマートフォン側で位置情報のログを記録しておき、そのデータと照らし合わせて撮影した画像に位置情報を追加できるもの。と書くとややこしそうだが、実際はかなり簡単。「カメラ内の画像に位置情報を追加する」ボタンにタッチして、あとは放っておけばいい。簡単操作でスマートフォンのGPS機能が利用できるのだから、カメラ内にGPS受信機を持つ必要もない。電池の無駄な消費も避けられるわけだ。
専用アプリのもうひとつの機能がGPS。スマートフォン側の位置情報のログを使って、カメラ内の画像に緯度、経度、標高のデータを追加できる。 | 位置情報を追加した画像には人工衛星のマークが付く。 |
本機の液晶モニターでも緯度、経度、標高が確認できる。 |
■代を重ねた故の完成度が魅力
AFが高速化されているのもトピックのひとつ。撮像面位相差検出AFのカメラほどではないが、望遠端や広角端の近接域でもストレスは感じにくい。
コンパクトデジタルカメラとしては高感度の画質もいいし、何よりコントローラーリングとコントローラーホイールを併用する操作系の使い勝手がいい。スマートフォンなどとの連携も含めて、快適に使えるカメラだと思う。
ズームの望遠側が明るくないのと、電池の持ちがもうひとつよくないのは残念なところだけれど、それ以外はかなり満足度の高いカメラに仕上がっている。
ちょっと納得できないのが、シャッター速度が1秒より遅くなったときに、感度がISO80に固定されてしまうこと。画質がらみの問題なのかもしれないが。 | 内蔵のNDフィルターをオンにするとシャッター速度を3段分遅くできる。明るい場所で絞りを開いて撮りたいときに便利だ。 |
高級タイプだけあってRAWやRAW+JPEGでの撮影もサポートしている。上級者にはうれしい点。 |
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
ベース感度はISO80とやや低め。ISO800あたりから暗い部分の表現があやしくなってきて、ディテールがつぶれがちになってくる。ピクセル等倍での観賞を前提にするならISO800が個人的には限界と感じるが、小サイズのプリントであればISO1600でも使えなくはないだろう。
・ズーム範囲
広角端は24mm相当で望遠端は120mm相当となる。デジタルズームを「入」にすると、画像サイズが「L」の場合は10倍までが画質劣化の少ない「プログレッシブファインズーム」、20倍までがデジタルズームとなる。
・作例
・動画
- 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
動画モードでの撮影。同じ条件で撮った静止画はISO1250になっていた。PowerShot S110 / 1,920×1,080 / 動画モード / -1EV / ISOオート / WB:オート / 26mm(120mm相当) |
これは「ジオラマ風」モードの20倍速で撮影したもの。音声なしになるが、なかなか面白い映像が撮れる。PowerShot S110 / 1,920×1,080 / クリエイティブフィルター:ジオラマ風 / 0EV / ISOオート / WB:オート / 5.2mm(24mm相当) |
2012/9/27 14:24