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【新製品レビュー】SIGMA SD1 Merrill

〜手に届く価格設定で再登場。孤高の超高精細一眼レフカメラ
Reported by 礒村浩一

 シグマから発売された「SD1 Merrill」は、有効4,600万画素(4,800×3,200×3層)、APS-Cサイズ相当(23.5×15.7mm)の撮像素子Foveon X3「Merrill」センサーを搭載したデジタル一眼レフカメラだ。同じくシグマより2011年6月に発売された「SD1」と同等の機種であり、発売開始時の実勢価格が約70万円であったものを価格改定して発売したものだ。

 発売日は、ボディ単体が3月9日、17-50mm F2.8 EX DC OS HSMが付属するレンズキットが3月16日。価格はオープン。実勢価格は、ボディ単体が20万円前後、レンズキットが25万円前後。


大幅なコストダウンを実現

 SD1は発表された当初より解像感の高さから多くの人々に注目されていたのだが、約70万円という高価な価格により購入を諦めた人が多かった。しかし今回、シグマによると、イメージセンサーの製造方法を一部見直すことで大幅なコストダウンを実現したという。これをうけて発売されたのがSD1 Merrillだ。

 ボディのみの実勢価格は約20万円となり、SD1と較べるといきなり約50万円近くも安くなってしまったのには驚かされたが、同時にデジタルカメラにおいて、イメージセンサーのコストがいかに製品価格に反映されるものなのかを改めて知らされた一件となった。

 SD1 Merrillの登場は、SD1の購入を敬遠していた人々に対し、再び購入対象として検討をうながすものとなるだろう。そこで今回はSD1と重複する部分も含め、改めてSD1 Merrillの特徴をピックアップしていきたい。

 SD1 Merrillの最大の魅力は、なんといってもその解像力にある。

 一般的なベイヤー配列と呼ばれるセンサー方式を採用しているデジタルカメラでは、画像のモアレなどを抑制するためにローパスフィルターを必要とするのだが、同時に被写体の解像感を少なからず損なってしまう原因となっている。

 一方、SD1 Merrillで採用されている、Foveon X3「Merrill」センサーは、その構造上の理由からローパスフィルターを必要としないので、生み出される画像は細部にいたるまで被写体のディティールを再現したものとなる。

 私はFoveonセンサーを採用したカメラをSD15、SD1と使用しているが、これらのカメラから生み出される高精細な画像には、ほかのカメラからは得難い圧倒的な存在感を感じている。

 といった具合に、とかく画像の高解像度が話題として先行するSD1 Merrillだが、実はカメラとしての基本性能もなかなかしっかりとしたものだ。

 連写性能は約5コマ/秒。ファインダーは視野率約98%、倍率0.95倍のペンタプリズム式を採用。11点のAFセンサーは全点ツインクロスセンサーとなる。

 ボディはマグネシウム製の防塵防滴仕様なので、手にしたときの剛性感は非常に高い。グリップの形状も良くしっかりと手に馴染む上、ホールド性も高い。シャッターボタンをはじめ各ボタン&ダイヤルの操作感もよい。メイン&サブの2ダイヤルの採用も中級機以上のカメラとしては外せないところだ。

外観上のSD1との違いは、背面モニター脇に「Merrill」のサインが入っていること

不満点もSD1と共通

 SD1 MerrillとSD1とでは、性能面ではまったく同等のものとなっている。実際、今回の試用においても、SD1と変わらぬ高精細な画像を得ることができた。しかしそれと同時にSD1で不満に感じていた部分についてもそのまま引き継いでいることになる。

 まず何よりも改善してほしかったのは、画像処理にかかる時間だ。

 JPEGのみでの撮影なら、連続してシャッターを切っても比較的すぐに背面液晶モニターで前後画像をサクサクと確認することができる。

 しかしこれがRAW記録、またはRAW+JPEG記録となると、2、3コマ連続してシャッターを切ると、連写したことを後悔してしまうほど待たされてしまうことになる。

 もっともRAWで1ファイル約50MB、RAW+JPEGともなると軽く60MBを超えるわけだから、これを処理するのは大変なことだと思う。むしろ良くやってる方だとも思うが、やはり現場で使用する身としてはもっとサクッと画像を確認できるようになって欲しい。特に今回の撮影地のように極寒のなかでしばらく待たされてしまうのは正直つらいのだ。

バッテリーグリップPG-31を装着。充電池は寒さに弱いのでポケットで温めた充電池と交換しながら撮影を行なう。バッテリーグリップは充電池を2個装着できるので長時間の撮影に便利

 次に改善してほしい点としては、高感度撮影時の画質向上が挙げられる。最近のデジカメにおける高感度特性の向上は目を見張るものがある。もちろんSD1 Merrillはそれらのカメラとは異なる進化をしたカメラではあることは間違いないのだが、現状の高感度撮影時の画質は、他のデジタル一眼レフカメラの一世代ないしは二世代前のものだといえる。

 したがってSD1 Merrillで得られる高画質を望むには、常に最低ISO感度であるISO100にて撮影する必要がある。とはいっても撮影の状況によってはISO感度を上げて撮影したい状況も少なくない。できることならISO400程度までは高い画質を維持できるようにしていただきたいところだ。

 最近のデジタル一眼レフカメラに用意されていてSD1 Merrillに用意されていない機能としては、ライブビュー撮影機能が挙げられる。高精細な描写力を誇るカメラだけに、ライブビューを活かした細かいアングル決定や、画面拡大による液晶画面でのマニュアルフォーカスでの正確なピント合わせなどは欠かせないと感じている。

 パソコンからコントロールできるテザー機能については、SD1発売当初は未対応だったものの、その後のファームウェアアップデートとコントロールソフトの配布により対応。SD1 Merrillにおいても発売当初より利用できる。可能ならばシグマには同じようにファームウェアアップデートなどでの機能拡張を検討していただきたいところだ。


現実的な選択肢となったSD1 Merrill

 今回、実売約20万円という新たな価格設定によって発売されたSD1 Merrillは、大きな価格競争力を手に入れると同時に、同価格帯の他のカメラと直接比較されることにもなってしまった。

 この価格帯の他のカメラはどれも中級機として多機能を誇るモデルが多く、ノイズの少ない高感度撮影やライブビュー撮影、または高速連写が可能など、いずれも魅力的なモデルが揃っている。

 その中でSD1 Merrillは決して万能選手ではないが、ずば抜けた解像力を持つ、孤高ともいえる存在となっている。誰にでもお勧めできるカメラだとはいえないが、とにかく解像力で選ぶならば、間違いなく選択肢に入れるべきカメラである。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
  • すべてRAWファイルをSIGMA Photo ProにてJPEGに現像しています。

・感度

※RAWファイルをSIGMA Photo ProにてJPEGに現像。現像時にノイズリダクション(色ノイズ・輝度ノイズ)OFF

SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約11.1MB / 4,704×3,136 / 1/8秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / 23mm SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約9.6MB / 4,704×3,136 / 1/15秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / 23mm
SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約11.2MB / 4,704×3,136 / 1/30秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO400 / 23mm SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約12.0MB / 4,704×3,136 / 1/60秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO800 / 23mm
SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約20.6MB / 4,704×3,136 / 1/125秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO1600 / 23mm SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約27.4MB / 4,704×3,136 / 1/250秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO3200 / 23mm
SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約34.9MB / 4,704×3,136 / 1/500秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO6400 / 23mm

・作例

 今回は3月後半の北海道を訪れその光景を撮影した。北海道は多くの地域がまだ雪深く、私の滞在期間中もほぼ連日の降雪となった。日中でも気温はマイナスとなり、夜から朝にかけてはマイナス10度を下回る。しかし太陽は明らかに春の陽射しとなっており、冬の間に積もった雪は森の木々ともに春の兆しを見せてくれていた。

夏にはパッチワークの丘として色とりどりの花で埋め尽くされる美瑛の丘も冬期は白一色に染まる。ところどころにポツリと立つ木々は雪に閉ざされた丘の道標となる。SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約16.1MB / 3,136×4,704 / 1/320秒 / F8 / 0.0EV / ISO100 / 21mm 富良野から雪道を十勝岳の中腹まで上がる。山の中は街よりもずっと雪も深く道路もここで通行止め。積もる雪の白さと白樺の表皮の白さに惹かれる。SD1 Merrill / 85mm F1.4 EX DG HSM / 約6.8MB / 3,136×4,704 / 1/320秒 / F5 / +0.3EV(現像時+0.7) / ISO100 / 85mm
大雪山国立公園内の道路沿いにひろがる雪原。雪の下には夏に生い茂っていた笹が埋まり雪解けを待ち続ける。雪原にのびるダケカンバの木々。SD1 Merrill / 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM / 約8.4MB / 4,704×3,136 / 1/500秒 / F8 / +1.3EV(現像時-0.5、X3 Fill Light+0.2) / ISO100 / 8mm 北海道で最も標高の高い場所にある然別湖。火山の噴火で川が塞き止められできたという。夏は深い自然のなかで静かに佇み、冬は厳しい寒さによって湖面が結氷する。夜、湖上にひとり立ち星を見上げるのがなによりもよい。SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約17.0MB / 4,704×3,136 / 1/250秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / 25mm
山のなかの雪深い森にスノーシューを履いて分け入る。雪の重みに耐えきれずに倒れた木々が厳冬期の厳しさを伝える。雪を踏みしめる歩みを止めると、聞こえてくるのは風の音と自らの荒い息づかいのみ。SD1 Merrill / 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM / 約10.2MB / 3,136×4,704 / 1/40秒 / F5.6 / 0.0EV(現像時X3 Fill Light+0.3) / ISO100 / 16mm 十勝平野から日高山脈を望む。この日は青空に恵まれ春の陽射しに雪も輝く。広大な農耕地帯はこれより一気に雪解け作業が始まりあらたな作付けの準備に執りかかる。SD1 Merrill / 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM / 約16.7MB / 4,704×3,136 / 1/800秒 / F7.1 / +0.3EV / ISO100 / 167mm
平野の町から山に繋がる一本の道。除雪された道路に沿道から流れ出た雪解け水が黄金色の夕陽に輝く。しかし数キロ先からはまだ冬期通行止めのまま。まだしばらくは人を阻み続ける。SD1 Merrill / 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM / 約6.4MB / 3,136×4,704 / 1/8000秒 / F6.3 / 0.0EV / ISO200 / 500mm 南富良野町に位置するかなやま湖は治利水を目的としたダム建設によってできた人工湖。しかしダム完成より40年余の時が経ち今では自然のなかの静かな湖となっている。冬期に結氷した湖面が春の訪れとともに割れ目から姿を現す。湖岸の積雪も崩れて地肌を覗かせる。SD1 Merrill / 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM / 約9.4MB / 4,704×3,136 / 1/250秒 / F13 / +0.7EV / ISO100 / 8mm
牧場に降り積もった雪が織りなす丘の向こうには山肌を白い森が望める。だがここ数日の気温上昇によって木々の枝にはもう雪はない。すでに春の光景がそこに。SD1 Merrill / 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM / 約10.9MB / 4,704×3,136 / 1/320秒 / F11 / +0.7EV(現像時-0.2、X3 Fill Light+0.1) / ISO100 / 287mm ダム上部の管理棟からダムの下部を望む。蓄えられた水は水力発電によってエネルギーを生み出す。自然と人の暮らしの交わる場所。SD1 Merrill / 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM / 約17.5MB / 3,136×4,704 / 1/100秒 / F11 / +0.3EV(現像時-0.3、X3 Fill Light+0.1) / ISO100 / 17mm





礒村浩一
(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物から商品、建築、舞台など幅広く撮影。近年は自然と人の営みをテーマに作品展/セミナー/ワークショップを各地にて開催。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy

2012/4/11 00:00