【新製品レビュー】カシオEXILIM CARD EX-S200

~超解像技術を搭載したスタイリッシュモデル
Reported by 本誌:武石修

EXILIM CARD EX-S200。ボディカラーは写真のシルバーのほか、ピンク、オレンジ、ブルーがある。

 カシオの薄型コンパクトデジタルカメラシリーズである「EXILIM CARD」シリーズに新モデルが登場した。8月27日発売の「EXILIM CARD EX-S200」だ。カシオで初めての「超解像技術」を搭載している。実勢価格は2万9,800円前後。

 先代の「EXILIM CARD EX-S12」はオーソドックスな丸みのあるデザインだったが、EX-S200ではボディの右手側を絞り込んで薄さをより強調する意匠になった。また背面のボタンレイアウトも変更している。EX-S12にあったベストショットとニューボタンを無くし、代わりにオートボタンを設けた。ベストショットの選択とメニューには、十字キー中央(SETボタン)を押して現れる「操作パネル」から入るようになった。録画開始ボタンはそのままとなっている。オートボタンが付いたことで、シーン認識機能である「プレミアムオート」にワンタッチで入れるようになった。


高感度でも威力を発揮する超解像技術

 本機の大きな特徴が超解像技術だ。超解像技術は、元の画像を処理することで解像感を高める仕組みのこと。カシオでは、画像をテクスチャ部と平坦部に分類してそれぞれに最適な処理を施すことで質感と解像感が高まるとしている。デジタルカメラでの超解像技術はパナソニックに続いての採用だ。なお、カシオがEX-S200と同時に発表した「EXILIM ZOOM EX-Z2300」および「EXILIM ZOOM EX-Z800」にも超解像技術を搭載している。

デジタルズームも含むすべての領域に超解像処理を施す「超解像高画質」デジタルズームの始まりから1.5倍(トータルで6倍)の領域のみに適用する「超解像ズーム」も選べる

 EX-S200では、「超解像高画質」と「超解像ズーム」という2つの設定モードを備えている。超解像ズームをONにすると、光学ズームの望遠端(4倍、108mm相当)から1.5倍となる162mm相当までで超解像処理を施し、画像の劣化を抑えることができる(フル画素時)。通常はデジタルズーム域になるため、画像が劣化する範囲だ。超解像技術だからといって過大な期待は禁物だが、高倍率ズームレンズの搭載が難しい薄型モデルでは有効な機能といえそうだ。

 一方の超解像高画質をONにすると、光学ズーム域とデジタルズーム域のすべてで超解像処理を行なうようになる。特に光学ズーム域での違いは一目瞭然だ。広角端では遠方の看板の文字が超解像処理によって、よりはっきりと写っている。望遠端でも超解像高画質OFFのほうはややぼんやりとした写りだが、超解像処理をONにするとシャキッとした描写になる。超解像ズームがデジタルズームの1.5倍までしか機能しないのに対して、超解像高画質は、デジタルズームの望遠端である4倍(432mm相当)まで有効となる。

 ただデジタルズームの望遠端ともなると、輪郭部分にシャギーのようなものが見られたり、輪郭に倍率色収差のようなものが増えてしまうシーンもあった。超解像ズームが1.5倍までで抑えてあるのももっともで、あまり高いデジタルズーム域では効果が少ないようだ。

超解像設定を両方ともOFFにしたところ。ズームバーの赤線より左側が光学ズームの領域超解像高画質をONにしたところ。ズームバーの表示はそのままだが、右上に超解像処理を表す「SR」のアイコンが出る
超解像ズームをONにしたところ。緑色の三角より左側が光学ズームの領域。三角から赤線までの間が超解像処理が入る領域となる。つまり、超解像処理によって赤線の位置が望遠側に移動したことになる。赤線より右側では画質が劣化するこのズーム位置では超解像処理が適用されているので、SRのアイコンが出ている

 高感度での超解像だが、試す前はノイズがかえって目立つのではないかと心配していた。だがそのようなこともなく、ISO800~1600などの輪郭が甘くなっている部分でも超解像処理をONにしたほうは輪郭がよりはっきりしていた。超解像処理は高感度時のディテール喪失に対しても有効なようだ。ただ、さすがにISO3200では効果は限定的だった。

 なおマクロモードだが、もともと近距離はくっきりと写ることから、超解像の効果が大きくは現れていないようだった。ただし、高感度を使う場合は超解像処理があったほうが良いだろう。

 超解像処理を施すと、撮影後に3秒位の待ち時間が発生するのが唯一気になった点だ。それが気にならなければ超解像高画質を常時ONにしておけば問題ないだろう。待ち時間が気になる場合には、超解像ズームだけをONにするという手もある。これだと、待ち時間が発生するのは6倍までのデジタルズーム部分だけなので比較的快適に使え、かつデジタルズームでも綺麗に写すことができる。

「EXILIM CARD」シリーズで初めて手ブレ補正を搭載

 改めてここで、本機のスペックをざっと見てみよう。撮像素子は1/2.3型有効1,410万画素CCD。動画は1,280×720ピクセル、30fps。レンズは35mm判換算の焦点距離27-108mm、F3.2-5.9の4倍ズーム。感度はISO50-3200。液晶モニターは約23万ドットの2.7型TFT。サイズは100.1×55.3×17.8mm。手ブレ補正はCCDシフト式だ。なお、動画には超解像処理は適用されない。

右手側を絞り込んだデザインだ上部には電源ボタン、シャッターボタン、ズームレバーを配置
レンズ部分はやや本体から浮き出ているレンズは広角27mm相当からの4倍ズーム

 画素数はこのクラスとしてはトップで必要十分といえる。むしろここまでの画素数は必要ないのでは、と思えるほどだ。画素ピッチも細かいので、等倍で見てしまうとキレは感じられないが、やや縮小すれば鑑賞にも問題ない画質となる。画面周囲での流れも少ない。広角端の歪曲収差はやや見て取れるが、直線部分を写さなければさほど目立ってはいなかった。望遠端ではほぼ歪曲収差は収まっている。

新たに、プレミアムオート用の「AUTO」ボタンを新設した
側面にUSBなどの接続端子を設けたバッテリーおよびメモリーカードスロット

 感度面では、ISO400でノイズが増え始める印象だが常用可能だ。ISO800になるとカラーノイズが目立ち始め、細かいディテール表現が低下する。ただし、フルHDサイズ程度まで縮小してみるのであれば大きく気になることはないだろう。ISO1600以降は筋状のノイズが現れてくるため緊急用といったところだ。

画素は14Mピクセルとコンパクトデジタルカメラではトップクラス720pの動画を撮影可能

 機能面で大きなトピックは、薄型のEXILIM CARDシリーズで初めて手ブレ補正機構を搭載した点だ。これまで薄い分、手ブレ補正機構を我慢しなければならなかったので、その点は安心して選べる。

 2010年春モデルから搭載を始めた「プレミアムオート」も引き続き搭載している。夜景、逆光、青空、木々の緑、夕日などのシーンに加えて、人物の顔や被写体の動きをカメラが判断して最適な設定で撮影できる。EXILIMは「ベストショット」というシーンモードを多数搭載しているのが特徴だが、いちいち選択するのが面倒という向きには便利なモードになっている。

 また、EXILIMシリーズの大きな売りになっている動画合成機能「ダイナミックフォト」ももちろん搭載。本機では、背景となる動画を最大20秒まで拡大できるようになったほか、複数のキャラクターを違うタイミングで動かすことも可能になった。そのほか、撮影画像を絵画調、クレヨン調、淡い水彩画調に加工できる「アートショット」(2010年春モデルから搭載)など遊べる機能を備えている。

まとめ

 薄型機はズーム倍率が弱いが、その部分を超解像技術でカバーしたのは面白く、今後のトレンドになる可能性もある。デザインもソリッドなので、スタイリッシュなコンパクトデジタルカメラを探しているユーザーはチェックしてみて欲しい。ほぼオートで使いたいライトユーザーならしっくりくると思う。ただし、露出補正やISO感度の設定はメニューからでないと変更できないので、そのあたりの操作性を気にするユーザー向けではない。

すっきりしたデザインだ厚さは17.8mm

実写サンプル

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。(スイングパノラマ作例以外)

画角

・超解像高画質OFF

広角端
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/800秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 4.9mm
望遠端
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/200秒 / F5.9 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 19.6mm
デジタルズームの望遠端(16倍)
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/200秒 / F5.9 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 19.6mm

・超解像高画質ON

広角端
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/800秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 4.9mm
望遠端
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/200秒 / F5.9 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 19.6mm
デジタルズームの望遠端(16倍)
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/200秒 / F5.9 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 19.6mm

・超解像ズームON

超解像ズームが有効な望遠端(6倍)
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/200秒 / F5.9 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 19.6mm

超解像の比較

※共通設定:EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/250秒 / F5.9 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 19.6mm

超解像高画質ON超解像高画質OFF

マクロ

・マクロ

超解像高画質ON
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/800秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 4.9mm
超解像高画質OFF
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/1000秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 4.9mm

・スーパーマクロ

超解像高画質ON
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 5.8mm
超解像高画質OFF
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F3.5 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 5.8mm

ISO感度

※共通設定:EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / -0.7EV / オート / WB:オート / 16.5mm

・超解像高画質OFF

ISO50ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200

・超解像高画質ON

ISO50ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200

歪曲収差

・超解像高画質ON

広角端
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/40秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 4.9mm
望遠端
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/13秒 / F5.9 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 19.6mm

・超解像高画質OFF

広角端
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/40秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 4.9mm
望遠端
EXILIM CARD EX-S200 / 4,320×3,240 / 1/10秒 / F5.9 / 0EV / ISO50 / オート / WB:オート / 19.6mm

動画

※サムネイルをクリックすると、動画のダウンロードを開始します。

1,280×720 / 30fps / AVI(Motion JPEG) / 42MB





本誌:武石修

2010/9/6 00:00