【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-FP8

〜フラットボディの高速レスポンス機
Reported by 小山安博

 パナソニックのコンパクトデジタルカメラの秋モデルが登場した。主力のFXシリーズなどに加え、新たに登場したのが、今回紹介する「LUMIX DMC-FP8」だ。LUMIXシリーズにしては珍しいボディデザインのDMC-FP8をチェックしてみよう。

 本体色はレッド、ゴールド、シルバー、ブラック、ピンク。ピンクは直販サイト「LUMIX CLUB」での限定販売となる。実勢価格は3万5,000円前後。


コンパクトなフラットボディ

 DMC-FP8の特徴は、そのフラットな外観だ。薄型のLUMIXシリーズといえば沈胴式のレンズが思い浮かぶが、DMC-FP8では防水デジカメ「DMC-FT1」と同様に屈曲光学系を採用。撮影時にレンズがせり出さないフラットなボディを実現した。

 屈曲光学系を採用したことで、撮影時もフラットでコンパクトなボディを実現。ズームしているのに気づかれにくいため、相手に「狙っている感じ」を与えないことから、パナソニックでは相手の自然な表情をアップで狙える、としている。パナソニック唯一の屈曲光学系採用がDMC-FT1だけだったので、「防水は必要ないけど、フラットなデジカメが欲しい」という人に向けたモデルと考えればいいだろう。

 レンズスペックはDMC-FT1と変わらず、ライカDC VARIO-ELMARレンズを搭載。非球面レンズ6面5枚を含む8群10枚構成で、光学倍率は4.6倍。焦点距離は35mm判換算28〜128mm相当で、開放F値はF3.3〜F5.9となっている。

 ボディデザインは、DMC-FT1に似たスタイルで、正面から見て右上にガラスカバー付きのレンズがあり、撮影時でもフラットになる。正面中央にヘアライン仕上げのアクセントがあり、デザイン上のワンポイントとなっている。

 本体上部は、ズームレバー一体型のシャッターボタンと電源スイッチ、iAボタンが配置されている。防水性能を確保しなければならないDMC-FT1とは異なり、従来通りのズームレバーと電源スイッチになっており、シャッターボタンも丸形。本体をフラットにするためかモードダイヤルはなく、代わりにiAボタンを置き、1ボタンでおまかせiAモードを設定できるようになっている。

 背面はブラックをベースにしており、上部に撮影・再生の切り替えスイッチ、背面左にはボタンが並ぶ。ボタンは従来にない小型サイズで、凹凸も少なめ。そのため、背面もフラットに見えるようになっている。

屈曲光学系を採用したため、撮影時もレンズが出っ張らない。レンズバリアは特にないので、ちょっと不安を感じる部分ではある通常のLUMIXシリーズとは異なり、モードダイヤルはなく、背面のMODEボタンを使う。再生/撮影の切り替えスイッチと、おまかせiAボタンが用意されている
フラットな背面。ボタンは小さいが、慣れればそれほど押しにくいわけではないボタンはブルーのイルミネーションで光る

 ボタンは、特にパナソニック製品に慣れた人だと最初は押しにくい感じがあるかもしれない。小さく、凹凸が少ないので慣れが必要な印象はある。ただ、ボタンの間隔はそれなりに確保されているため、押し間違いは少ない。爪先で押すのは難しいので、指の腹で押す感じになるだろう。

 基本的な操作はこれまで通りで、「Q.MENU」ボタンを押すと、撮影でよく使う設定が画面上部に現れ、十字キーで素早く選べる。モードダイヤルはなく、背面のMODEボタンを押すことで通常撮影とシーンモードなどを選択する。通常のシーンモードに加えてマイシーンモードが用意されており、シーンを固定しておけば一発でよく使うシーンモードを設定できる。

Q.MENUボタンで、よく使う撮影設定を素早く呼び出せるのは今まで通りMODEボタンから撮影モードを選択したところ。「料理」とあるのはマイシーンモードで、特定のシーンモードをすぐに呼び出せる

強力な手ブレ補正と高速AF

 DMC-FP8の新機能としてあげられるのが、新しい手ブレ補正機能「POWER O.I.S」の搭載だ。一般的な手ブレは、文字通り手や体が小刻みに震えることで画像がブレてしまうというものだが、ブレの発生原因はそれだけではない。脇を締めてしっかり構え、息を吐きながら慎重にシャッターボタンを押すようにすれば、それなりに小刻みブレは押さえられる。しかし、暗いシーンでの「大敵」とパナソニックがが主張するのが「大きくゆっくりした揺れ」だという。

 これは、カメラを持つ人の呼吸や脈拍などによる揺れが主な原因。通常のブレは押さえようという意識があるため小刻みに素早く動くのだが、一定のリズムを刻む呼吸や脈拍は、ゆっくりで動きが大きい。それを押さえるというのが今回のPOWER O.I.Sだ。

 実際に使ってみると、撮影中にその効果を明確に感じるというほどではないが、手ブレは確実に減っている。よりクリアな写真を撮るには低感度で撮影した方がいいのは間違いないので、手ブレ補正機能が強化されるのは健全な進化だ。POWER O.I.S搭載によるデメリットも感じず、特に夜景や室内撮影などで効果を発揮しそうだ。

 もう1点の大きな強化ポイントは、AFや起動の高速化。公式には、起動時間が約0.95秒、AF/AEは約0.25秒(ワイド端)になったという。AFに関してはほぼ同じスペックのDMC-FT1が約0.46秒で、約1.8倍の高速化を実現したそうだ。

 実際に試してみると、確かに速い。コントラストAFに特有のレンズが前後に動いてコントラスト差を走査する動きがほとんど感じられず、気持ちいいくらいピントが素早く合う。起動からピント合わせまでが高速なので、とっさのシャッターチャンスにも安心感がある。低照度の被写体に対してのピント合わせは、AF補助光が投射される分、通常に比べて遅くなるが、少なくとも屋外であれば動きの速い被写体の撮影も比較的簡単にできる。LUMIXシリーズには伝統的にAF方式に「高速1点AF」が用意されているが、普通の11点AFや1点AFでも十分高速なので、今回はあえて使う必要がないくらいだ。

 手ブレ補正やAF/起動の高速化は、地味な変更点ではあるが、カメラの使い勝手を向上させる重要な機能向上といえる。

使い勝手の良い諸機能

 そのほかの機能向上では、個人認識機能が強化された。個人認識機能は、人の顔を識別して、設定した顔を認識すると、その名前を表示して優先的にAFを合わせるという機能だが、従来は同時に1人までしか表示できなかった名前が、3人まで表示できるようになった。

 個人認識機能自体は、同じ人を撮り続けていると自動的にその顔を登録してくれるが、登録画面からきちんと顔を登録した方が精度が高いような印象がある。今回からひとりの顔につき3枚まで登録できるようになったので、より精度が高まる。

個人認証の設定画面。自動登録をオンにしておけば、撮影しているうちに勝手に登録されるそれよりも顔を能動的に登録した方が精度はいいようだ。今回は3枚の顔が登録できるようになった

 カメラを被写体に向けるだけで、カメラが自動でシーンを判別する「おまかせiAモード」では、従来の顔/赤ちゃん/風景/接写/顔&夜景/動きの各認識に加え、新たに夜景認識が追加された。

 従来の顔&夜景認識では、ストロボがオートだと顔と夜景の認識、ストロボオフだと夜景認識という形で動作したが、今回は夜景認識が独立して認識されるようになった。また、手持ちか三脚かを手ブレ量で判別し、手持ちの場合はISO感度を低くして手ブレを抑え、三脚の場合は最長8秒のシャッタースピードまで遅くなる。ちなみに、手ブレが少なければ、シャッタースピードは1/2秒まで遅くなってくれ、むやみにISO感度を上げないような設定になっている。

 モードダイヤルがないため、おまかせiAモードを使うためには本体上部のボタンを押す形になる。1ボタンでおまかせiAモードのオン・オフが行なえるため、非常に使いやすかった。

 MODEボタンを押して選ぶモードダイヤルは27種類用意されているが、その中で新たに「ハイダイナミックモード」を搭載。階調を強調するモードで、コントラストと色を強調する「アート」、モノクロで撮影する「白黒」が用意されている。

 そのほか、画素数3Mで約10コマ/秒の高速連写や720pのHD動画撮影機能も搭載。DMC-FT1のように動画撮影ボタンが配置されているわけでもないし、AVCHD Liteでもないが、ハイビジョンサイズのなめらかな動画が撮影できる。ズーミングやAFの音も入り込まず、なかなか使い勝手がいい。

 DMC-FP8は、コンパクトでフラットなカメラで、目立った特徴があるわけではない。しかし、カメラに関する基本機能は高く、さりげない使い勝手の良さが光るカメラだ。

作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・歪曲収差

広角端
DMC-FP8 / 約5.5MB / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
望遠端
DMC-FP8 / 約5.5MB / 4,000×3,000 / 1/125秒 / F5.9 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 23mm

ISO感度

ISO80
DMC-FP8 / 約5.2MB / 4,000×3,000 / 1/30秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 14.3mm
ISO100
DMC-FP8 / 約5.6MB / 4,000×3,000 / 1/40秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 14.3mm
ISO200
DMC-FP8 / 約5.3MB / 4,000×3,000 / 1/80秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 14.3mm
ISO400
DMC-FP8 / 約4.7MB / 4,000×3,000 / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 14.3mm
ISO800
DMC-FP8 / 約4.8MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 14.3mm
ISO1600
DMC-FP8 / 約4.6MB / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 14.3mm

ハイダイナミックモード

ハイダイナミックモード:OFF
DMC-FP8 / 約6.7MB / 4,000×3,000 / 1/4秒 / F3.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 5mm
ハイダイナミックモード:標準
DMC-FP8 / 約6.7MB / 4,000×3,000 / 1/4秒 / F3.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 5mm
ハイダイナミックモード:アート
DMC-FP8 / 約6.6MB / 4,000×3,000 / 1/4秒 / F3.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 5mm
ハイダイナミックモード:白黒
DMC-FP8 / 約5.9MB / 4,000×3,000 / 1/5秒 / F3.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 5mm

自由作例

DMC-FP8 / 約3.7MB / 3,000×4,000 / 1/200秒 / F10 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 5mmDMC-FP8 / 約3.6MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
DMC-FP8 / 約5.4MB / 3,000×4,000 / 1/200秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 23mmDMC-FP8 / 約4.3MB / 3,000×4,000 / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 15.3mm
DMC-FP8 / 約4.9MB / 3,000×4,000 / 1/160秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 23mmDMC-FP8 / 約5.1MB / 3,000×4,000 / 1/80秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
DMC-FP8 / 約4.5MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm




小山安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2009/8/27 00:00