ミニレポート
社外品の視度調整レンズでファインダーをチューニング
(PENTAX K-1)
2016年8月22日 07:00
使い始めて2カ月余りが過ぎ、PENTAX K-1の素晴らしい画質には大いに満足しているが、使用上で具体的な不都合がひとつだけある。それはファインダーの視度調整についてだ。
K-1のファインダーは、視度調整幅が約-3.5~+1.2dpt(ディオプター)に設定されており、約-2.5~+1.5dptであるPENTAX K-3 IIに比べて近視側に強く遠視(老眼)側が狭い。
老眼が進んでいる私の視力では調整幅のプラス側限界に近く、体調によってはファインダー像がよく見えない時がある。その対策として外付けの視度補正レンズを併用して補正範囲をプラス側にずらしたところ、ずいぶん改善されたので、今回はその方法について紹介する。
PENTAX純正の視度調整レンズについて
気持ちとしてはPENTAX純正で揃えたいので、まず純正アクセサリーの状況を調べた。PENTAXの視度調整関連アクセサリーには「視度調整レンズアダプターM」と「アイカップMII」がある。
前者はアイカップと併用できないのでファインダーを見やすくする目的での選択肢としては弱い。後者のアイカップMIIはPENTAX 67用視度調整レンズを装着できるようになっており、純正アイピースとしてはこちらが本命のはずだ。
しかし、肝心の67用視度調整レンズの供給が不十分で、私がほしい+1.0dpt程度のレンズは手に入りそうにない。あきらめて社外品を探すことにした。
流用できる社外品としては、関連パーツが充実したニコン丸窓アイピースが候補に上がってくる。ニコンには角形アイピースのカメラに丸窓アイピース用アクセサリーを取り付けるアダプターがあり、ニコン角形アイピースとPENTAXアイピースの寸法はほぼ同じなので、これを流用できるからだ。
ニコン丸窓アイピースの2つの規格
ニコン丸窓アイピースには口径の違いにより19mmと22mmの2つの規格がある。レンズ径19mmがニコンF3までの銀塩一眼レフ用で、レンズ径22mmがニコンF3 HP(ハイアイポイント)以降採用されたハイアイポイント仕様だ。
ニコンのアイピースアダプターDK-22は19mm丸窓アイピースをニコン角型アイピースに取り付けるためのパーツだ。
19mm丸窓用の視度補正レンズは、本家ニコン製品の他にFUJIFILM X-Pro1用のDPC-1やコシナのフィルムカメラ用がある。コシナと富士フイルムの製品はレンズ枠にゴムコーティングが施されており、眼鏡レンズ保護のためにはこちらが好ましいが、対象となるカメラの生産終了に伴い、どちらも手に入りづらくなっているようだ。
ニコン製品は安定して供給されているので、ニコンFM3A用の+1.0dptの補正レンズでテストしてみることに決め、とりあえずこのレンズと、アイピースアダプターDK-22、19mm丸型用ラバーアイカップDK-3を購入した。
見え方はどう変わったか
K-1のノーマルファインダーは、私が裸眼で覗くと視度補正幅のプラス側限界から3クリック戻したくらいが適正になる。そこに+1.0dpt補正レンズを装着すると、プラス側限界から10クリック戻したあたりに落ち着く。補正範囲は全体で18クリックなので、ほぼ真ん中に持ってくることができた。
この状態で老眼鏡ではない遠用の眼鏡をかけてファインダーを覗くと、調整範囲のマイナス側限界から3クリック戻したところが適正だった。少し余裕幅は少ないが問題ないと言えるだろう。
この結果から、PC作業中に+2.0~2.5dptの老眼鏡を使っているくらいの視力なら、補正レンズは+1.0dptのもので適合する事がわかった。
22mm丸窓用アイピースの流用
22mm丸窓アイピースをニコン角形アイピースに取り付けるアダプターさえあれば、視度補正レンズDK-17Cのほか、拡大アイピースDK-17MやアンチフォグアイピースDK-17Aなどの現行ニコン用のパーツをK-1に装着できる。
先述の通り22mm規格はハイアイポイント用なので、できればこちらを使いたいが、量販店などで購入出来るニコンの製品にはそういうアダプターは存在しない。そこで一工夫が必要だ。
ニコンのプロ向け品、NEPS1の流用
ニコン角窓カメラに22mm丸窓アイピースを装着する変換アダプターとしてはNEPS1が定番だ。NEPS1はニコンが製造・販売しているアダプターだがカタログ商品ではなく、プロサービス向けのパーツをニコンダイレクトで限定数販売するという販売形態をとっている。そのため流通量が少なく、注文しても入荷待ちになる事が多い。
中華アイピースのアダプターを流用
別の方法として、ニコン22mm丸窓規格をコピーした中国製の拡大アイピースを買って、その付属アダプターを流用する方法がある。
この方法は、製品仕様に22mm規格採用と明記してあるわけではないので、どの商品が適合しそうかを自分で調べた上での「賭け」になる。拡大アイピースをセットで買わねばならないので、5,000円から1万円程と高価なのも難点だ。
DK-17Cは接眼枠がゴムでカバーされており、DK-19と併用する際もアイカップのゴムで枠がカバーされる設計なので、眼鏡のままファインダーを覗いても眼鏡レンズを傷つける心配がない。
また、眼鏡使用はどうしてもファインダーから目が離れてしまうが、口径が大きい22mm規格は比較的にケラレが生じにくい。その2点の理由だけでも、面倒を押して22mm規格を採用するメリットは大きいと言える。
まとめ
視度調整レンズを使ってK-1の視度補正範囲をずらす方法として一番手軽なのは19mm丸窓規格のニコン製品流用だ。しかし性能の上では22mmの方が有利で、NEPS1を使えば導入価格にも大差はないので、私と同じように視度調整範囲に問題を感じる方にはNEPS1 + DK-17C + DK-19の3点セットの導入を勧める。
PENTAXユーザーとしては、アイカップMII向けに67用視度調整レンズの供給を再開するか、あるいはK-1専用設計の拡大アイピースの発売をリコーイメージングに要望したい。
拡大アイピースは凸レンズ系なので装着により視度補正範囲がプラス側にシフトするから、視度補正範囲とファインダー倍率の両問題を同時に解決できるはずだ。使い込んでくると、K-1のファインダーは本来拡大アイピースを前提とした仕様であるように思われてならないのだが。