ミニレポート

純正ソフト以外でシグマのRAWファイルを見る方法

(SIGMA sd Quattro)

さて、遅まきながらSIGMA sd Quattroである。といっても、今回はカメラではなくて、画像閲覧ソフトの話である。

ご存知のとおり、sd Quattroに搭載されているFoveon X3は一般的な撮像センサーとは構造が違っていることもあって、対応しているソフトがきわめて少ない。RAW形式の.X3Fファイルを現像できるのは、現状では純正のSIGMA Photo Proしかないのだが、これがまた少々動作の重いソフトなものだから、撮影後の作業がなかなかはかどらない。

sd Quattro自体が解像感のオバケみたいなすごい写りをするだけに、ほんのわずかなブレやボケも気になってしまう。それをチェックするのがひと苦労なのである。

そんな状況を、もしかしたら劇的に改善できるかもしれないのが、Photo Mechanicという画像閲覧ソフトである。

古くから存在するも恐ろしくマイナーな存在

これがPhoto Mechanicの画像一覧画面。.X3Fファイルがばっちり表示されている。

Photo Mechanicは、たいていのカメラのRAW画像が表示できるうえに、スピードもそこそこ速いのだが、日本での知名度はおそろしく低い。

なにしろ、「Photo Mechanic」でGoogle検索すると、公式サイトをのぞいた2番目か3番目に、私が書いた11年前の記事が出てくるぐらいである。

英語版オンリーなうえに150米ドルと少々お高く感じられるのと(カメラに付属のソフトなら無料だからねぇ)、日本に代理店がない(ひとつ前のバージョンのころはレキサーが販売していたけど)というのが重なっているせいもあるのだろうが、個人的にはもうちょっと売れてほしいなぁと思っている。

でまあ、このPhoto Mechanicが、シグマの.X3Fファイルに対応している。つまり、SIGMA Photo Pro以外のソフトで.X3Fファイルを表示できる貴重な存在なのである。

しかも、このPhoto Mechanicは動きが速い。画像を見るだけのためのソフトで150米ドル取ろうというのだから遅くては話にならないのだが、まあ、カメラに付属のソフトしか使ったことのない人が見たらまず間違いなくびっくりするだろう。それぐらいに速いのである。

RAWと同時記録のJPEGを別々の画像として表示するソフトは多いが、Photo Mechanicは、対になっているRAWとJPEGはひとつの画像として表示してくれる。

1枚の画像を大きく表示するプレビュー画面で、RAWとJPEGのどちらを表示するかを選択するオプションがあって、さらにRAWのみの場合にデータを展開して表示するか、埋め込まれているプレビュー用のJPEGを表示するかも選択できる。

環境設定の「RAW」の画面。ここで「Use JPEG Preview for speed」と「Use embedded JPEG Preview for speed」を選んでおくと快速表示が可能となる。

つまり、RAW+JPEGでも、RAWのみでも、JPEGと同じスピードで閲覧できるということ。だから、大量のRAW画像を快適かつ効率よく閲覧できるわけだ。

全画面表示はもちろん、ピクセル等倍での表示も速いので、ピントやブレのチェックはもちろん、sd Quattroの解像感のすごさに見とれ放題なわけ。

2枚の画像を並べて表示して、ピクセル等倍で見る位置を同期させてスクロールするとかもさくさくなのだ。

Macの場合、画面の任意の部分をcommand+クリックすると、その部分を中心にピクセル等倍表示になる。sd Quattroのキレのよさが堪能できる。

ちなみに、シグマの.X3Fファイルと富士フイルムの.RAFファイルは、Photo MechanicではRAW画像を展開して表示することはできず、埋め込みJPEGの表示のみとなる。

また、キヤノン、シグマ、ニコン、ペンタックスはフルスケールのJPEG画像が埋め込まれているが、ほかはサイズが小さく、記録画素数はそれぞれ、オリンパスが3,200×2,400ピクセル(E-M5 Mark II)、ソニーは1,616×1,080ピクセル(α7R II)、パナソニックは1,920×1,440ピクセル(DMC-GX7 Mark II)、富士フイルムは1,920×1,280ピクセル(X-T2)だった。

管理機能も充実

セレクト作業をアシストする機能も充実している。SIGMA Photo Proで画像につけられるマークは、通常の「マーク」と白黒に仕上げたい画像につける「モノクロームマーク」のほか、マークとは違うがほかの画像と区別するのに使える「ロック」の3種類しかないが、Photo Mechanicには「★」から「★★★★★」までの「レーティング」、8色のマークが付けられる「カラークラス」、チェックボックス式の「タグ」があって、それらを組み合わせてマーキングできる(たいていは、「レーティング」か「カラークラス」だけで十分に用は足りると思うが)。

レーティング
カラークラス

これらを使って、たとえば、一覧表示の画面で「★★★★★」の画像だけを選択して別フォルダーにコピーしたり、グレーの「カラークラス」の画像だけを非表示にしたりとかもできる。

しかも、これらの操作のほとんどをショートカットキーでやれてしまう。マウスでいちいちクリックするのに比べて、トータルの作業時間を圧倒的に短くできるのだ。

そういうわけなので、SIGMA Photo Proにしかできない現像以外の作業をPhoto Mechanicにまかせてしまえば、いろいろはかどりますよ、といいたいのである。

ひとつ残念なのは、sd Quattroの売りのひとつであるSFD(スーパーファインディテール)モードで撮った「.X3I」ファイルが表示できないこと。もしかしたらそのうち対応してくれるかもしれないが、オリンパスのハイレゾショット時に同時記録される「.ORI」ファイルも表示できないまま放置されているっぽいので、あまり期待はできなさそうな気もしている。

が、それ以外はばっちりなので、sd Quattroはもちろん、dp Quattroシリーズのユーザーにもおすすめだ(シグマ以外のカメラのユーザーが買っても損はしないと思う)。開発元のcamera bitsのサイトからダウンロードできるデモ版は機能制限なしで30日間利用できる。ためすだけならタダである。じっくり使い込んでみてほしい。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら