フィルター活用術
秋の紅葉や滝を鮮やかに撮ろう!
写真の印象が激変 基本的なフィルターワークを紹介
Reported by 伊藤亮介(2015/10/16 09:00)
今回、紅葉の写真を撮りに出かけたのは栃木県の奥日光だ。奥日光は関東でも紅葉の色づきが早く、竜頭の滝や中禅寺湖、戦場ヶ原といった数多くの紅葉名所がコンパクトにまとまっていて写真撮影には最適な場所といえる。
さらに足を伸ばせば、群馬県側の丸沼や菅沼周辺の紅葉も美しく、奥日光と比べると観光客もそれほど多くないので落ち着いた撮影が楽しめる。
前回の「初夏の海を印象的に撮る! PLフィルター・NDフィルターの活用でワンランク上の作品を目指す」もご覧ください。
風景を撮るならぜひ使いたい「PLフィルター」
ところで、今までに紅葉を写した時に「見たままの鮮やかさが再現されていない」と感じたことはないだろうか。
そんな経験をお持ちの方には、PLフィルターを使った撮影をお薦めしたい。PLフィルターには「被写体の色を強調する」「水面などの反射を取り除く」という2つの効果があるため、紅葉はもちろん、風景を撮る際には欠かせないフィルターなのである。
青空と紅葉の対比が美しい作品に繋がる
PLフィルターは、レンズ先端に装着するだけではその効果は得られない。二重構造になっているフィルターの外枠をゆっくり回転させると、色が濃くなったり薄くなったりする。そのため、ファインダーや液晶モニターを注意深く見ながら操作しよう。
被写体の色を強調するPLフィルターは、青空を写す場合にも有効だ。青空の澄み切った色を出したい時や空に浮かぶ雲を強調したい時にPLフィルターを効かせると、イメージ通りの写真に仕上げられる。
風で揺れる樹木を表現するには「NDフィルター」
この日は朝から強い風がずっと吹き続けていた。晴れていて光量も充分にあったので、ほとんどの場面で風の影響を受けずに写せたが、逆にその風を利用してブラして撮ることで幻想的な写真に仕上げることもできる。そのような時に使用するのがNDフィルターだ。
NDフィルターは減光フィルターとも呼ばれ、文字通り“カメラに入る光を減らす”効果が得られるフィルターである。二重構造のPLフィルターとは違い1枚のガラスで構成されているが、ガラス部分は透明ではなく黒々としている。さらに何種類かの濃度が異なるものが用意されているので、これらを揃えておけばさまざまな状況下で意図通りのシャッター速度が得られる。
ただし、NDフィルターを使った場合はスローシャッターとなるため、三脚を使って撮影しなければならない。さらに僅かなブレも起こさないようにケーブルレリーズも準備しておきたい。
なお、NDフィルターを取り付けた時には、光学式ファインダーのカメラではファインダーが暗くなるので、NDフィルターの影響を受けないライブビューに切り替えて撮影しよう。
NDフィルターを使えば枝が揺れる幻想的な写真が撮れる
フィルターを付けずにそのまま写すと、銀杏の葉が太陽の光に美しく浮かび上がった。ある程度完成した写真になっているが、画面の中で風を表現するためにNDフィルターを装着すると、非装着時には1/20秒だったシャッター速度が2秒になった。風が強く吹いた瞬間を見計らってシャッターを押し、紅葉した葉がブレて幻想的に写るように撮影している。被写体をブラして写す時のコツは、画面の中にブレないものも取り入れることである。画面の中のすべてのものがブレていると見ていて落ち着かず、何が写っているのかよくわからない写真になってしまう。ここでは銀杏の静止した幹を取り入れてブレた葉と対比させることで、よりいっそう動きを感じさせている。
日光の名瀑でもPLフィルターが大活躍
さて、日光の滝といえば華厳の滝が有名だが、戦場ヶ原の近くでは華厳の滝とともに“奥日光三名瀑”として知られている竜頭の滝や湯滝もある。
今回訪れた竜頭の滝は“渓流瀑”と呼ばれるタイプの滝で、落差のある斜面を水が流れている。滝の左岸には遊歩道が設けられていて間近で撮影できるが、上流部にある竜頭の橋から眺める姿も美しく、滝と一緒に中禅寺湖も写せる。
滝を撮影する時にもPLフィルターは欠かせない。川岸を彩る紅葉を鮮やかにする効果もあるが、冒頭でも述べたように「水面の反射を取る」という効果が得られるからだ。水のある風景の撮影では、水の描写が表現上の大きなポイントとなる。
これは便利! PLとNDが合体した「CREATION」
上記の場面でPLフィルターを効かせれば美しい写真になるが、さらに写真の完成度を高めるのであればマルミ光機の「CREATION」(クリエイション)というフィルターを使おう。
CREATIONはPLフィルターとNDフィルターが1枚にまとめられた製品で、水風景を撮る時には非常に便利なフィルターだ。
CREATIONで水の描写に変化を付ければ完成度が高まる
PLフィルターだけでも美しい写真になるものの、シャッター速度が速く水の流れの描写にやや不満が残る。そこで水をスローシャッターで美しく表現するために「CREATION」を使用する。レンズに取り付け、PLフィルターと同じように回転枠を回すと川面の反射が取れて紅葉も鮮やかになった。シャッター速度は1/5秒になるので水流が滑らかに表現されて、水の美しさが感じられる写真に仕上げることができた。では次に「PLフィルターとCREATIONの比較」および、「CREATIONの効き具合を変えた場合」の写真を見てみよう。
CREATIONで秋の風景を印象的に写す
CREATIONは水風景だけでなく、紅葉や花などを写す時にも使用できる。このフィルターは「スローシャッターで色鮮やかに表現したい」場面で使うと効果が上がる。ここでは路傍に咲いていた野菊を「CREATION」を使って捉えてみた。
NDフィルターと同じようにCREATIONを装着した場合もカメラのファインダーは暗くなるので、その影響を受けないライブビュー撮影に切り替えよう。
さあ秋本番! フィルターを持って撮影に出かけよう
僕が愛用しているフィルターはいずれもマルミ光機製のもので、PLフィルターは「EXUS」、NDフィルターは「DHG」シリーズを使っている。
「EXUS」のPLフィルターには明るい偏光膜が採用されているため、従来製品よりもカメラのファインダーが明るく見えやすいのが特徴だ。また、フィルター表面に撥水加工や防汚コートも施されているので、雨の日や滝の側などフィルター表面に水滴が付きやすい場面では非常に重宝する。
マルミ光機のPLフィルターには価格を抑えた「DHGスーパー」シリーズや「DHG」シリーズもあるので自分に合った製品を選びたい。
一方、NDフィルターは暗さの度合いが異なるND8からND64までの4種類のタイプが、「CREATION」にはND8、ND16の2種類がそれぞれラインナップされている。非装着時と比べてND8は光量を1/8に落とせて、ND64では1/64になる。前述したようにどちらのフィルターも低速シャッターでの撮影となるため、三脚とケーブルレリーズは必需品だ。
暑かった夏も終わり、まもなく秋本番の季節を迎える。カメラやレンズだけでなくフィルター類もしっかりと用意して、日本の秋の表情を美しく切り取ろう。
制作協力:マルミ光機