今回のお題は、D700用の望遠レンズである。ニコンにはAF-S NIKKOR 70-200mm F2.8 G ED VR IIという決定版的最新大口径望遠ズームレンズがあるが、D700は単焦点レンズでシステムを組んでみようと思っているので、基本的にズームレンズはパスである。なにしろ、FXフォーマット(フルサイズ)でばっちりなズームレンズは大きくて重いうえに素晴らしく高価なので、二の足を踏みまくってしまう。と言って、無理して買ったFXフォーマット(まだローンが残ってます)に便利さを求めようとは考えていないので、F値暗めのワイドレンジズームには魅力を感じない。で、単焦点メインなわけである。
現状、中望遠〜望遠系はトキナーのAT-X M100 PRO DとシグマのAPO Macro 150mm F2.8 EX DG HSMを持っている。なので、マクロ/マイクロ以外の純正レンズを1、2本追加したいなぁともくろんでいる。もちろん、カミサンにばれないように、である。
さて、ニコン純正の中望遠〜望遠系の単焦点レンズは、マイクロレンズをのぞくと、Ai AF Nikkor 85mm F1.4 D(IF)、Ai AF Nikkor 85mm F1.8 D、Ai AF DC Nikkor 105mm F2 D、Ai AF DC Nikkor 135mm F2 D、Ai AF Nikkor ED 180mm F2.8 D(IF)の5本。画角的にはAF-S VR Nikkor ED 200mm F2 G(IF)もあるのだが、雲の上の存在なものだから、かすんでよく見えない。
コストパフォーマンス的にはAi AF Nikkor 85mm F1.8 Dがいちばんだが、評判はAi AF Nikkor 85mm F1.4 D(IF)のほうが上だ。以前、人から譲ってもらった85mm F1.8 Sを少し使っていたことがあるが、DXフォーマットのカメラで使ったときの印象がいまいちだったこともあって、手もとには残していない。Ai AF Nikkor 85mm F1.4 D(IF)とAi AF DC Nikkor 105mm F2 D、Ai AF Nikkor ED 180mm F2.8 D(IF)はフィルム時代に使っていたが、これもいろいろあって手放してしまっている。
というような個人的事情もあって、この際まとめて借りて使ってみようと思い立った次第。というのは、5本ともとにかく設計が古い。いちばん新しいAi AF Nikkor 85mm F1.4 D(IF)でさえ発売は1995年の12月である(Ai AF DC Nikkor 135mm F2 Dも時期は同じだが、こちらはSタイプからのマイナーチェンジなので、もとはもっと古い)。現行レンズとはいえ、デジタル化以前のレンズであるのは間違いないわけで(こっそりとデジタル対応コーティングに変更されてるなんて可能性はなくはないけど)、FXフォーマットのデジタル一眼レフでどれほどの力を発揮できるのかは気になるところだ。
望遠系のレンズは、わりと設計が古いものでも悪くない結果が得られる傾向があるとはいえ、やっぱり絞り開放はきびしいだろう。まあ、F5.6とかF8とかまで絞らなくても大丈夫だと思いはするが、開放から1段でOKなのか、2段絞ったほうが身のためなのか、そのあたりもチェックできたらなぁ、というのがあって、職権乱用モード発動である。
■Ai AF Nikkor 85mm F1.4 D(IF)
Ai AF Nikkor 85mm F1.4 D(IF) |
さっき書いたとおり、この5本の中ではもっとも設計が新しいが、それでも14年前のレンズである。フィルター径77mmの大物だが、見映え的にはばっちりだ。ピント合わせはインナーフォーカス方式で、大口径レンズながらAF駆動はわりと高速だ。A-M切り替えリングを装備しているので、AFとMFの行き来はファインダーをのぞきながらでもやりやすい(とはいえ、AF-Sレンズの便利さにははるかにかなわない)。
ピントさえちゃんと合わせられれば絞り開放からシャープだが、四隅まで均一な描写が欲しければ少なくともF4まで、風景とかならF5.6までは絞りたい。9枚羽根の円形絞りを採用していることもあって、ボケは自然で優しい感じだ。
■Ai AF Nikkor 85mm F1.8 D
Ai AF Nikkor 85mm F1.8 D |
発売は1994年の3月だが、SタイプからDタイプへのリニューアルだ(オリジナルのSタイプは1988年の発売)。フィルター径62mmのコンパクトサイズで、軽量な分ハンドリングはすこぶるいい。ピント合わせはリアフォーカス方式で、AFの駆動スピードはまずまずの速さだが、AF動作に合わせてフォーカスリングがぐるぐる回転する仕様である。
なお、Dタイプ化にともなって、フォーカスリングの先端側が少し絞り込まれた形状に変更されている。Sタイプのストレートなフォーカスリングのほうが気持ちよく回せる感じがして好きなのだが、変わっちゃったものはどうしようもない。
画面中心部はF2.8でまずまずのシャープさが得られるが、周辺部はF5.6まで絞ったほうがいい。また、周辺光量落ちはAi AF Nikkor 85mm F1.4 D(IF)よりも目立つので、F2.8より絞りを開けて撮る場合は、背景だけ少し暗くなったような感じになる。
■Ai AF DC Nikkor 105mm F2 D
Ai AF DC Nikkor 105mm F2 D |
Ai AF DC Nikkor 135mm F2 Dと違って、こちらは発売当初からDタイプだった。光学系の長さに対して鏡胴が長いのは、105mm以上のレンズはフードを内蔵するのがニコンの基本ルールだから、という話を聞いたことがあるが、本当かどうかはわからない。ピント合わせはリアフォーカス方式+A-M切り替えリング仕様で使い勝手はいい。
DC(デフォーカスコントロール)機能を搭載していて、前後のボケ味を変えられるのが大きな特徴だ。ちょっとやそっとで使いこなせるものではないが、それだけに遊び甲斐のあるレンズだといえる。また、DCリングをめいっぱいR側に回した状態で絞り開放付近で撮ると、独特のソフトフォーカス効果が得られるのも惹かれるポイントだ。
比較作例は微妙にピントがズレていて、中心部より周辺部のほうがシャープに写っているが、傾向としてはAi AF DC Nikkor 135mm F2 Dによく似ている。絞り開放ではお祈りしながらシャッターを切らないといけないが、ピントが合っている部分のキレはいい。また、絞り開放での周辺光量の落ち方はAi AF Nikkor 85mm F1.8 Dよりもながらかなので、絵柄にもよるがそれほどひどく目立たない。ただし、近距離でF4まで、遠景だとF5.6まで絞らないと光量落ちは解消しない。
■Ai AF DC Nikkor 135mm F2 D
Ai AF DC Nikkor 135mm F2 D |
1991年に発売されたSタイプが、1995年にDタイプにリニューアルしている。サイズ的にはAi AF DC Nikkor 105mm F2 Dより9mm長いだけだが、前玉の口径が大きく、しかも貼り合わせになっている関係で175gも重い。Ai AF DC Nikkor 105mm F2 D同様、スライド式のフードは申しわけ程度の長さしかなく、有害光対策としては外付けのフードを検討したほうがいい。
DCリングを回すと球面収差が変動するため、正規の使い方(絞りF4で後ボケをいい状態にするにはDCリングをRの4の位置に合わせるのが基本)でも若干解像力が低下する。シャープさ重視で撮るならDCリングは触らないほうが無難といえるが、それだとDCレンズを買う意味もなくなりそうでもったいない気がしてしまう。
絞り開放でも画面中央部は十分にシャープだが、2段絞れば周辺部まで安定した画質になる。周辺光量は近距離でF4、遠景ではF5.6まで絞ったほうがいい感じ。9枚羽根の円形絞りだが、F2.8の開口形状はあまりきれいではないのはちょっと残念な点だ(Ai AF DC Nikkor 105mm F2 Dはかなり丸いけど)。
■Ai AF Nikkor ED 180mm F2.8 D(IF)
Ai AF Nikkor ED 180mm F2.8 D(IF) |
Dタイプの発売は1994年だが、前身のS
AF時にフォーカスリングが回転せずに、しかもMF時には適度なトルク感が味わえるところは素晴らしいが(Ai AF Nikkor 85mm F1.8 Dみたいなスカスカではない)、正直いって面倒くさい仕様でしかない。実際、89年に発売されたAF Micro 60mm F2.8 SはA-Mリング装備である。
描写は絶品といっていい。絞り開放でも十分にシャープなのだが、きちきちしたシャープさではなくて、まろやかな感じのするシャープさできれいなのだ。周辺光量も厳密にはF8まで絞らないと均一にはならないが、絞り開放でも気になりにくい落ち方なので使い勝手はいい。ボケ味は、MFのED 180mmよりも若干硬い感じがするものの、このレンズだけ見ている分には文句なしだと思う。
■使ってみて
こんな結論で申しわけがないのだが、やっぱりどれにしようかと迷ったままである。
Ai AF Nikkor 85mm F1.8 Dは、周辺光量がなだらかに落ちてくれないのが目立ちそうだが、小型軽量なところは魅力。ついで感覚で持っていけるのに、案外役立ってくれそうな1本だ。お値段もほかの4本と比べてぐぐっと手ごろだし。
同じ85mmでもAi AF Nikkor 85mm F1.4 D(IF)のほうは、絞りを1段開けて使える感じ。その分ボケをいかしやすいし、ポートレートを撮るならばっちりなチョイス。風景系だとF5.6とかF8まで絞ったほうがよさそうなので、そうなるとAi AF Nikkor 85mm F1.8 Dのほうが使いやすいかもしれない。
Ai AF DC Nikkor 105mm F2 Dは、シャープさとソフトフォーカスの両方が楽しめるのと、まん丸な点光源ボケが惹かれるポイント。鏡胴が長いのは個人的に気に入らないけど。また、AT-X M100 PRO Dとかぶるところがネックかもしれない。
Ai AF DC Nikkor 135mm F2 Dは、手持ちの100mmと150mmのあいだでどっちつかず的画角なうえに、重さが気になってしまう。F2の明るさとDCリングで画がいじれるおもしろさはあるが、画角の好みでは135mmより100・105mmなので、シグマAPO150mmとバッティングしにくいAi AF DC Nikkor 105mm F2 Dを選ぶだろう。
最後のAi AF Nikkor ED 180mm F2.8 D(IF)は画質的には大納得だし、画角のわりに軽快なのでハンドリングもいい。が、いかんせん操作性の悪さがネックである。AFオンリーまたはMFオンリーで使う分には問題はないが、行き来の面倒さを考えると悩んでしまう。
などと書いていたら、「今年はもっと趣味性の高いレンズを出したいですね」なんていうインタビュー記事が目に入ったりして、だったらAF-Sの中望遠が出るのを待って、もう1回考えるとかのほうがいいのかもと思ってみたりもするのである。
■実写サンプル
・Ai AF Nikkor 85mm F1.4 D(IF)
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・Ai AF Nikkor 85mm F1.8 D
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・AT-X M100 PRO D(参考)
・Ai AF DC Nikkor 105mm F2 D
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・Ai AF DC Nikkor 135mm F2 D
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・APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM(参考)
・Ai AF Nikkor ED 180mm F2.8 D(IF)
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D700 / Ai AF Nikkor ED 180mm F2.8 D(IF) / 4,256×2,832 / 1/1,250秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート | D700 / Ai AF Nikkor ED 180mm F2.8 D(IF) / 4,256×2,832 / 1/1,250秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート |
2010/2/15 00:00