交換レンズレビュー

XF35mm F2 R WR

軽快なAFと取り回しのよさが魅力の新標準レンズ

今回はFUJIFILM X-T10で試用した。発売は11月。実勢価格は税込4万8,050円前後

富士フイルムXマウントレンズは、2012年のデビュー以来、目覚ましいハイペースでラインナップを拡充中だ。その最新モデルとして「XF35mm F2 R WR」が登場した。35mm判換算で焦点距離53mm相当に対応した、標準画角のコンパクトな単焦点レンズである。

Xマウントの35mmレンズといえば、同マウント第1弾のひとつとして2012年に発売された「XF35mm F1.4 R」がすでにある。それに比べると開放F値は1段暗いが、光学設計を一新することで鏡胴のさらなる小型軽量化とAFのスピードアップ、防塵防滴対応などを図っている。後継モデルではなく、性格の異なる2本目の35mmレンズといっていい。

デザインと操作性

まずは外観を見てみよう。外装はこれまでの多くのXFレンズと同じく、硬質な手触りを感じる金属素材となる。フォーカスリングや絞りリングも金属製で、まずまず高品位な雰囲気が漂っている。

レンズ構成は2枚の非球面レンズを含む6群9枚。手ブレ補正は非搭載。カラーバリエーションとして写真のシルバーのほか、ブラックが選べる

本体サイズは最大径が60mmで全長が45.9mm。質量は170g。既存モデルXF35mm F1.4 Rと比べた場合、最大径は5mm、長さは4.5mm、重量は17g、それぞれダウンしている。大幅な小型軽量化とはいえないが、本レンズは根元よりも先端部のほうが細くなるデザインのため、実際に手にすると数値以上にコンパクトに感じる。

フォーカス機構の一新にも注目したい。フォーカシングには、前部のレンズを動かさず、後部の比較的小さなレンズを動かすインナーフォーカス方式を取り入れている。

フィルター径は、同社Xマウントレンズでは初となる43mmを採用。キャップやフィルターをほかのレンズと共有できないのは残念だが、小型軽量化は大歓迎だ

加えて駆動機構には、パルス電力に同期して一定の角度だけ素早く回転するステッピングモーターを採用。これによって、全群繰り出しのフォーカシングとDCコアレスモーターを搭載していた既存モデルXF35mm F1.4 Rに勝るAFスピードが可能になった。試用では、超高速とはいえないものの、ほぼ無音でスムーズに合焦するAF性能を実感できた。

鏡筒各部に計8カ所のシーリングを施すことで、防塵防滴および-10度の耐低温に対応。アウトドア派にはうれしいポイントといえる

MFについては、適度なトルク感があり、操作は心地いい。距離目盛りや被写界深度目盛りはない。絞りリングは1/3ステップでクリック感があるタイプ。こちらも程よい感触を確認できた。

付属する軽量コンパクトな円形フードを装着した状態。これとは別に、オプションとして金属製の穴あきフード「LH-XF35-2」も用意されている
小さなボディのX-T10に装着すると、バランス的にもデザイン的に見事にマッチする。またFUJIFILM X-Pro1装着時には、光学ファインダーを覗いた際にケラレが生じない利点がある

遠景の描写は?

ちょうど紅葉が見ごろを迎えた日原川の眺めだ。緑から黄色、赤までのさまざまな木がバランスよく重なる構図を選択した。

画質は、小さな葉っぱまできっちりと解像する優秀な描写力を確認できる。特に中央部は、開放値からシャープネスが高く、大きなプリントにも適した精細感がある。さらに周辺までくっきりとした写りが欲しい場合は、F8まで絞り込むといいだろう。

周辺の光量落ちについては、開放値ではわずかにあるが、1段絞ると解消する。色収差はほとんど気にならないように補正されている。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

※共通設定:X-T10 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 35mm

中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

ファンタジー映画に出てくるようなアンティークな鍵を最短撮影距離の35cm付近で捉えた。鍵の長さは約9cm。その素材感が際立つように、手前から弱めのストロボ光を当てている。絞り値は開放のF2を選択。背景の芝生部分には滑らかなボケが生じた。このくらいの近接撮影では、球面収差による光のにじみが少々見られるが、気になる場合は1、2段絞り込むことで抑えられる。

絞り開放・最短撮影距離(約35cm)で撮影。X-T10 / 1/60秒 / F2 / 0EV / ISO200 / マニュアル / 35mm

懐かしさ漂う昭和テイストの教室を絞り開放で撮影。シンメトリーに近い構図を選び、静寂な雰囲気を高めている。ピントは約2mの距離にある中央の椅子に合わせた。これくらいの撮影距離では、絞り開放でも光のにじみは目立たない。合焦部分はシャープネスの高い写りとなり、そこから前後に向かってしっとりとしたボケが生じている。また、歪曲収差もほぼ気にならない。

絞り開放で撮影。X-T10 / 1/2秒 / F2 / 0EV / ISO200 / マニュアル / 35mm

全長約30cmのオブジェを絞りF2.8で捉え、背景に見えるカラフルな街の灯りを玉ボケとして華やかに表現した。周辺は口径食の影響がやや見られるが、9枚羽根の円形絞りによって多少絞っても絞りの角はあまり目立たない。

絞りF2.8・距離数mで撮影。X-T10 / 1/3秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 35mm

夕暮れどきのほのかな光を利用して、ブリキのプレートにピントを合わせた。背景部分をぼかしすぎず、この季節ならではの落ち葉のじゅうたんが判別できるよう、絞りはF4を選択。狙いどおり奥行きのある写真となった。

絞りF4・距離数mで撮影。X-T10 / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO200 / マニュアル / 35mm

逆光耐性は?

次の写真では、絞りをF2.8にセットして背景を適度にぼかしつつ、あえて逆光になるカメラポジションを選んで、写真全体を明るく輝く雰囲気にまとめた。光がレンズに直接入射した場合は、フレアによって全体のコントラストがやや低下し、撮影角度によってはゴーストも生じる。

ただ逆光に弱いというわけではなく、むしろ強い方だ。これほどの厳しい条件でも、見栄えのする仕上がりとなっている。しかも光の直射を避ければ、逆光でもフレアやゴーストは大幅に減る。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。X-T10 / 1/180秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / 35mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。X-T10 / 1/180秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / マニュアル / 35mm

作品

レインボーブリッジと東京タワーの光が運河に反射する撮影スポットを訪れた。すでに日が落ちて夜空は暗くなっていたが、ホワイトバランスを電球にセットすることで全体を青紫色に染め、無機質なイメージを作り出した。また、光源部分には9枚羽根による18本の光芒が放射状に生じるように、絞りはF11まで絞り込んでいる。

X-T10 / 25秒 / F11 / 0EV / ISO200 / マニュアル / 35mm

薄暗い地下道へと続く螺旋階段をハイアングルから狙った。手前から奥までをシャープに再現するため絞り値はF8を選択。縞鋼板の質感までを精密に再現でき、秘密の地下室に導かれるような怪しいムードを強調できた。

X-T10 / 1秒 / F8 / 0EV / ISO400 / マニュアル / 35mm

山の斜面に張り付くように建てられた工場を撮影。森の中にある古城のような雰囲気を出すため、生い茂る木々で周辺が囲まれて見えるカメラアングルを選択した。

X-T10 / 1/15秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 35mm

肉眼では空は真っ白に見えていたが、露出を超アンダーに設定して、広がる雲のディテールと樹木のシルエットを再現した。35mm判換算で53mm相当という焦点距離は、昔ながらの標準レンズである50mmレンズとほぼ同じ感覚で使える。つまり、光学的な誇張がほとんどなく、自然な画角と距離感で目の前の光景を写し取れる。

X-T10 / 1/2,000秒 / F11 / 0EV / ISO200 / マニュアル / 35mm

格調を感じさせる建物の内観を斜めから切り取った。電球光の赤みと屋外の青みのコントラストが引き立つように、ホワイトバランスは晴天に固定し、フィルムシミュレーションはVelviaを選んでいる。

X-T10 / 1/7秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / 35mm

まとめ

今回の実写では、比較的小さなボディであるX-T10との組み合わせによって、身の回りのスナップや風景撮影を軽快に楽しむことができた。本レンズは、焦点距離や開放値などのスペックに突出したところは特にない、一見地味な製品である。最短撮影距離35cm、最大撮影倍率0.135倍という近接能力についても悪くはないが、あと一歩欲しいところである。

とはいえ、自然で使いやすい焦点距離と取り回しに優れた軽量コンパクトを兼ね備えていることは大きな魅力。基本レンズの1本として広範囲に役立つことは間違いない。携帯性のメリットを生かし、カメラバッグに常に入れておくのもいい。また、あえてこの1本のみを装着してスナップに出掛けるのも面白いだろう。

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。