交換レンズレビュー

AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR

DXレンズ初のナノクリスタルコートの実力は

今回はD7200で試用した。発売は7月。実勢価格は税込12万1,500円前後

DXニッコールとして初めてとなるナノクリスタルコートを採用した交換レンズである。“ナノクリ”のスゴさについてはいうまでもないだろう。ニコンの半導体製造装置で培った技術を応用する強力な光反射防止コーティングとして、多くのニッコールユーザーが厚い信頼を寄せる。DXレンズへの搭載は漸くという感がないでもないが、今後、他のDXレンズにも波及していくことだろう。

同じくDXニッコールとしては初採用のフッ素コート(レンズ最前面と最後面)、さらに明るい開放値も本レンズの特筆すべきところ。特にフッ素コートに関しては、レンズに汚れが付着しても軽く拭くだけで良いので、メンテナンスの手間がかからない。レンズ構成は13群17枚。うち非球面レンズ3枚、EDレンズ4枚と贅沢な仕上がりなのも本レンズの注目点だ。

デザインと操作性

レンズ鏡筒のデザインは、他のナノクリスタルコートの施されたAF-Sニッコールレンズと同じである。鏡筒先端に金色の帯を巻き、さらに同コーティングが施された交換レンズであることを示す金色のロゴが誇らしげに輝く。撮影距離目盛り用の窓も備えており、キット用とする廉価な標準ズームなどとは格の違いを見せつける。

ワイド端(左)とテレ端(右)の状態。カメラはD7200。鏡筒はDX標準ズームとして太く大きいが、質量は480gと比較的軽量なためカメラとの重量的なバランスはよい
ナノクリスタルコートが施されたレンズであることを示す金色のNのロゴが付く

シェイプは、いわゆる“太マッチョ”。これまでのDXフォーマット標準ズームにくらべると鏡筒が太いため、全長が短く感じられる。ちなみに外寸は80mm×85.5mm、フィルター径は72mmとしている。質量は480gとレンズの明るさを考えると軽量に仕上がり、今回の撮影で使用したD7200との組み合わせでは、ホールディングしたときの重量的なバランスも上々だ。

レンズ前面にはフッ素コーティングを施す。水滴や汚れが付着しても、きれいなセーム革などで軽く拭き取れる。フィルター径は72mm
ニコンDXレンズのよいところのひとつといえば、FXフォーマット機にも装着が可能でカメラを選ばないことである。後玉にもフッ素コーティングを施す

シャッタースピードに換算して4段分の補正効果を持つ手ブレ補正機構の搭載と、高速連続撮影でも安定した露出制御を行う電磁絞り機構の搭載も本レンズのトピック。特に後者はDXレンズとしては初めてとなるもので、D7200などでの高速連写では大いに期待できそうである。なお一部の古いニコンデジタル一眼レフでは、この電磁絞り機構により本レンズの使用ができないので注意が必要。詳しくは同社Webサイトで確認して欲しい。

手ブレ補正機構VRの効果はシャッター速度に換算して約4段。通常撮影用のNORMALモードと、流し撮りなど被写体をカメラで追う際に便利なACTIVEモードから選択が可能

付属するレンズフードの形状も注目といえるだろう。鏡筒のサイズには似合わないほど大きく、さらに正面から見た開口部の形状は四角形とし、どちらかといえば無骨な印象である。その深さから遮光効果は高そうだが、カメラバッグにこのフードを逆さに取り付けた本レンズを収納するときなど、これまでの同等クラスのレンズ以上にスペースを必要とする。レンズフードはロック機構が備わり、確実に鏡筒へ固定できる。

大型のレンズフードが付属する。遮光効果は高そうだが、ちょっと自己主張し過ぎのように感じられなくもない

遠景の描写は?

ワイド端16mmの場合、絞りF4までは画面周辺部のキレが甘く感じられるものの、絞りF5.6になると解消されはじめ、絞りF8では画面全域で良好な描写となる。色のにじみについてはよく補正されているほうだ。周辺減光の発生についても絞りF4までは見受けられるものの、絞りF5.6でほぼ解消される。

一方テレ端80mmでは、絞りF4まで画面周辺部は緩い描写だが、絞りF5.6まで絞り込むと不足を感じないものに。コントラストは開放絞りから良好だ。

周辺減光については、開放から1段ほど絞るとほとんど気にならないレベルとなる。ワイド端も含め描写のピークは、多くのレンズがそうであるように本レンズも絞りF8からF11あたりと考えてよい。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
広角端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:D7200 / -1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
広角端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:D7200 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:D7200 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 80mm
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:D7200 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 80mm
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

ボケ味は概ね素直。後ボケに関しては、気になるようなクセなど作例を見るかぎり感じられない。前ボケについても、テレ端の開放絞りでやや粗く感じられるものの、それ以外は気になるようなことはないだろう。

DXフォーマット用の標準ズームで、明るさも単焦点レンズにくらべれば暗いため、大きなボケ味は期待できないものの、それでも合焦面直後からのボケは滑らかにデフォーカスへと変化していく。ボケ味に関しては概ね不足を感じるようなことはないだろう。

広角端
絞り開放・最短撮影距離(約35cm)で撮影。D7200 / 1/160秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
絞りF16・距離数mで撮影。D7200 / 1/800秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
望遠端
絞り開放・最短撮影距離(約35cm)で撮影。D7200 / 1/50秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 80mm
絞りF8・距離数mで撮影。D7200 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO360 / 絞り優先AE / 80mm

逆光耐性は?

作例に限っていえば、ワイド端およびテレ端とも画面のなかに太陽がある場合、小さいながらもゴーストおよびフレアの発生が見受けられる。特にワイド端ではゴーストが発生しやすいようだ。とはいえ、この程度に抑えているのは、やはりナノクリスタルコートのお陰なのかも。他のコーティングではさらに強く発生するように思われる。

画面の外に太陽がある条件では、ワイド端およびテレ端とも極端に目立つようなフレアおよびゴーストの発生は見受けられず、よく押さえ込んでいるといってよい。

広角端
太陽が画面内に入る逆光で撮影。D7200 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。D7200 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
望遠端
太陽が画面内に入る逆光で撮影。D7200 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 80mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。D7200 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 80mm

作品集

いわゆる標準域での撮影。F5.6まで絞っているが、ピントを合わせた屋根の瓦1枚1枚をシャープに再現している。画面周辺部の描写も不足を感じさせないものだ。

D7200 / 1/60秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 34mm

35mmフルサイズに換算して36mm相当の画角で撮影。コントラスト、シャープネスとも良好だ。色のにじみなどもなく、文句の付けどころのない描写といえるだろう。

D7200 / 1/80秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

テレ端80mm、開放F4での描写。35mmフルサイズ判換算で120mm相当の画角だ。ピントの合った部分の解像感は高く、開放絞りながらキリッと締まったヌケのよい描写である。

D7200 / 1/125秒 / F4 / 0EV / ISO110 / 絞り優先AE / 80mm

焦点距離はワイド端16mm。絞りはF8としている。露出を切り詰めることで、被写体の質感を強調したが、そのような表現にも応えてくれるレンズである。

D7200 / 1/640秒 / F8 / -1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm

このレンズの描写のピークである絞りF8で撮影。遠くの被写体も鮮明に描写する。D7200で撮影しているが、ローパスレス2,400万画素の解像度でも隙を見せることはない。

D7200 / 1/320秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 20mm

絞りは開放のF3.5とする。合焦面のキレは高く、ヌケも上々だ。前ボケは柔らかさにやや欠けるものの、暴れることなどなく上々の結果と述べてよいだろう。

D7200 / 1/800秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 48mm

画角は35mmフルサイズ判換算で66mm相当、開放F3.5で撮影を行っている。レンズの明るさから大きなボケは期待できないが、それでも被写体にぐっと寄るとボケを積極的に表現に活かした描写が存分に楽しめる。

D7200 / 1/60秒 / F3.5 / -1EV / ISO1250 / 絞り優先AE / 44mm

エッジのキレのよさとコントラストの高さはこのレンズの持ち味だ。さらに遮光効果の高いレンズフードのお陰で、ヌケのよい描写が得られ、DXフォーマット機の常用レンズに相応しい1本である

D7200 / 1/1,250秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm

まとめ

従来からのDXユーザーにも、これからDX機の所有を考えているユーザーにも、強くおすすめできるレンズである。特にこれまでの標準ズームの描写では満足できなかったユーザーは、その購入に迷いは必要ない。DXフォーマット用の標準ズームとしては高価な部類に入るレンズであるが、パフォーマンスを考えると十分納得できるものといえる。

DXフォーマットのハイエンド機D300Sがディスコンとなり、さらにFXフォーマット機が比較的安く手に入るようになったことで、DXフォーマット機はやや影が薄くなりつつあるが、それでもまだ根強いファンは少なくない。そのようなユーザーにとって、本レンズの登場は心強いかぎりである。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。