交換レンズレビュー

FE 90mm F2.8 Macro G OSS

画質に突っ込みどころ無し! ボケも美しい等倍マクロ

α7 IIで試用した。発売は6月。実勢価格は税込14万5,670円前後

ソニーのフルサイズ対応Eマウントレンズとして初めてとなるマクロレンズ。高性能な同社交換レンズの証しである“G”の称号が与えられる。90mmは適度なワーキングディスタンスが得られ、マクロレンズとして使いやすい画角も魅力だ。

実際、フォーカスシングには撮影距離による収差変動を抑えるフローティング機構や、強力な反射防止コートであるナノARコーティングを採用。光学系にはスーパーED(特殊低分散)ガラスを用いる。さらに、AF駆動には停止位置精度と静粛性に優れたダイレクトドライブSSM(DDSSM)搭載し、Gレンズとして隙はない。

デザインと操作性

レンズ鏡筒でまず目につくのが、フォーカスリングに記された撮影距離(mおよびfeet)と倍率だろう。このところの多くのマクロレンズは、撮影距離も倍率も表示窓を通して見るタイプか、さもなくば何も表記されないものがほとんどなので、とても新鮮に感じられる。往年のMFレンズを見ているように思う写真愛好家もいるかもしれない。

距離目盛り(メートル表記とフィート表記)のほか、撮影倍率も記されている。最短撮影距離は0.28m、最大撮影倍率は等倍

AFとMFの切り換えはフォーカスリングを前後させるリングスライドスイッチを採用。瞬時に切り換えることが可能で、マクロ撮影時などピントの微調整を必要とするときなどたいへん便利に感じられる。

さらにインターナルフォーカシングの採用で撮影距離に関わらずレンズの繰り出しがないのも本レンズの特徴だ。なお、前述の撮影距離と倍率の記された部分はMF時のみフォーカスリングに連動して動く。最短撮影距離は0.28m、最大倍率は等倍だ。

フォーカスリングを前後させてAFとMFを切り替えるリングスライドスイッチを搭載。切り換え操作は思いのほかスムースに行える

鏡筒側面左手側には、「G」のロゴをはじめフォーカスロックを迅速に行えるフォーカスホールドボタン、フォーカスレンジリミッタースイッチ、手ブレ補正スイッチが備わり、ちょっとメカメカしい。反対に右手側の鏡筒は同社のロゴが小さくあるだけでシンプルな雰囲気だ。

左手側に操作部材が集中している理由は述べるまでもないが、それぞれが適度に主張する大きさとしており、カメラを構えた状態でも操作しやすく感じられる。ちなみにフォーカスレンジリミッタースイッチは、FULL/∞-0.5m/0.5m-0.28mから選ぶことができる。撮影距離によっては迅速なピント合わせを可能とするので、積極的に活用したい機能だ。

左手側の鏡筒側面には、フォーカスロックを迅速に行えるフォーカスホールドボタン、フォーカスレンジリミッタースイッチ、手ブレ補正スイッチが備わる

光学式の手ブレ補正機構をEマウントのマクロレンズとしてはじめて搭載しているのもトピック。補正段数は公開されていないようだが、焦点距離を考えるとたいへん心強く感じられる。

ただし、補正するブレは角度ブレのみ。近接撮影時に発生することの多いシフトブレには残念ながら対応していない。そのため近接撮影の多いユーザーには、センサーシフト方式の手ブレ補正機構を採用するα7 II、もしくはこの8月に発売されたα7R IIでの使用がベストだろう。これらのカメラの手ブレ補正機構はシフトブレにも対応しているからだ。

ナノARコーティングの採用により、フレア・ゴーストを抑えヌケの良い画質を実現する。フィルター径は62mm。防塵防滴に配慮した設計とする
円筒状のレンズフードが付属する。遮光効果は高そうだが、マクロ撮影時は気をつけておかないとフードで影になってしまうこともありそうだ
製造国表記はレンズ後端に記載。ちなみに本レンズの製造はタイ。APS-Cフォーマットのαシリーズでは35mmフルサイズ換算で135mm相当の画角が得られる

遠景の描写は?

絞り開放からキレ、コントラストとも不足のない描写である。しかも、画面周辺部の描写についても解像感の低下や色のにじみなど見受けられず、さらに周辺減光も最小限といえるレベル。

Gレンズらしい文句の付けどころのない描写である。一般にマクロレンズの場合、光学的に近距離撮影時の描写特性に重きが置かれるがことが多い。しかしながら本レンズでは、撮影距離の変化で生じる収差変動を抑えるフローティング機構によって、遠景でもマクロレンズらしからぬ優れた描写特性が得られるのだろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

※共通設定:α7 II / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm

中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

被写体同士が溶け合うような柔らかくクセのないボケ味は、このレンズの持ち味だ。球面収差を良好にコントロールしており、目障りな二線ボケの発生は皆無。合焦面から滑らかにボケが変化する様子はため息ものと述べても過言ではない。

さらに前ボケも素直な印象である。開放絞りでも低下することのない合焦面のキレのよさも手伝い、絞りを開いて撮影する機会が格段に増えそうに思える。マクロ撮影のみならず、ポートレート撮影などでも重宝すること請け合いである。絞り羽根は9枚。もちろん円形絞りとしている。

絞り開放・最短撮影距離(約28cm)で撮影。α7 II / 1/50秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。α7 II / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO250 / 絞り優先AE / 90mm

逆光耐性は?

作例を見るかぎり、太陽が画面内にある場合も画面外にある場合もゴーストおよびフレアの発生が見受けられる。ただし、レベル的にはよく抑えられているほうで、その大きさも最小限といえる。

むしろコントラストの低下は皆無に等しく、ヌケもよい。本レンズには同社自慢のナノARコーティングが施されているが、逆光でもクリアな描写はその効果の現れだ。なお、撮影の際は付属しているフードをなるべく装着するようにしたい。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。α7 II / 1/1,600秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。α7 II / 1/1,000秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm

作品

デフォーカスとなった被写体同士が柔らかく溶け合ったようなボケ味だ。開放F2.8での撮影だが、ピントの合った部分のシャープネスは驚くほど高い。

α7 II / 1/200秒 / F2.8 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm

本レンズの手ブレ補正機構は角度ブレのみの対応だが、α7 IIとの組み合わせならシフトブレにも対応可能となるので、マクロ撮影の多いユーザーは憶えておきたい。

α7 II / 1/320秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm

開放F2.8での画面周辺部の描写も秀逸。解像感の低下や色のにじみなどなく、ピントの合った部分を鮮明に再現する。

α7 II / 1/250秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm

ワーキングディスタンスがとれるため、このような人影を見ると逃げてしまうようなチョウの撮影も楽しい。MFでピント位置の微調整を行っているが、その操作もまた楽しい。

α7 II / 1/400秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm

中遠距離だと手ブレ補正もよく効き、シャープな画像が得られやすい。絞りは開放から1段絞ったF4。画面の隅々まで上々の解像感と述べてよいだろう。

α7 II / 1/250秒 / F4 / -1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm

開放絞りでも合焦面のシャープネスは秀逸。コントラストも良好である。手ブレ補正が効いていることもあって、ブレの発生も見受けられない。

α7 II / 1/200秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 90mm

まとめ

ソニーEマウントのマクロレンズは、本レンズで2本目。しかしながら“本格的”となると本レンズがはじめてだ。マクロレンズとして充実した機能を誇り、フルサイズフォーマットに対応。何よりどの撮影距離でも優れた描写特性が得られる。

三脚座の無いことが心残りではあるが、それ以外の突っ込みどころの見受けられないレンズである。ネイチャー系の写真愛好家をはじめ、本格的なEマウントマクロレンズの登場をこれまで待ち望んできたαユーザーの期待に十分応えられるものである。

有効4,240万画素裏面照射型CMOSセンサーを搭載するα7R IIも発売された。このレンズとの組み合わせで使ってみたく感じる。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。