交換レンズ実写ギャラリー
ニコンAF-S NIKKOR 300mm F2.8 G ED VR II
手ブレ補正を強化した大口径望遠レンズ
Reported by 大浦タケシ(2013/9/12 12:05)
フィルム時代から“サンニッパ”は、その時々の光学技術の粋を集めるレンズである。デジタルになってからもそのことに変化はなく、各メーカー互いに切磋琢磨し合い、高性能なレンズをリリースしている。
今回取り上げる「AF-S NIKKOR 300mm F2.8 G ED VR II」はニコンのサンニッパとして、同社の光学テクノロジーが惜しみなく注ぎ込まれたレンズ。発売は2010年1月であるが、今もってスペック的に不足を感じさせないものである。
操作部材が機能的に配置されている鏡筒だが、なかでも目を引くのがフォーカスリングと滑り止めゴムの間にある4個のフォーカス作動ボタン。フォーカスロック、メモリーリコール、AF作動のいずれかの機能をユーザーの好みで割り当てることのできるものである。ボタンは大きく感触も上々。レンズを支える左手での操作もしやすい。本レビューのためこのレンズを使った時間はわずかであったが、それでも最終的にはこのボタンが手放せなく思えたほどである。ちなみにフォーカス作動ボタンは、サービスステーションなどで位置を変えることができるそうだ。
本レンズは、手ブレ補正機構「VR II」のON/OFFをリング操作としている。VRはそれほどON/OFFを頻繁に切り換える必要はないように思えるが、雲台を完全に固定しないで使ったときなど、手ブレ補正機構が余計な作動を行なうことが稀にある。そのような際、ファインダーを覗いた状態のままOFFできるとともに、雲台の固定ネジを絞め増すよりも素早い操作を可能としている。なお、手ブレ補正機構の効果は、シャッター速度に換算して約4段としている。
超音波モーターSWMによるフォーカシングは予想以上に高速で静かだ。被写体との距離が極端に近い場合をのぞけば、前後に動いている被写体もコンティニュアスAFでしっかりと追い続けてくれる。MF時、フォーカスリングの操作と実際のレンズ移動のタイムタグは皆無で、リニアに反応するのもよい。いずれにしても長年、スポーツや報道などの現場で培われたノウハウが、本レンズにはしっかり反映されているといってよいだろう。
光学系には、ニッコールを象徴するEDレンズとナノクリスタルコートを採用する。8群11枚(+メニスカス保護ガラス1枚)のうち3枚がEDガラスだ。描写は開放から非常にシャープで、画面周辺部まで高い均一性を誇る。
作例を撮影した時期、日本中が連日猛暑日で大気中の水蒸気が多く、遠景がキリッとする状態ではなかったが、それでも解像感の高さが十分認識できるほどである。しかも、ピントの合った部分のエッジも繊細で、パソコンの画面で見るとリアル感があり、手に取れてしまいそうな立体感である。ヌケのよさも圧倒的で、際立った周辺減光や色にじみなど見受けられない。冒頭にサンニッパは光学技術の粋を集めると記しているが、それに寸分違わない描写特性といってよいだろう。
正直に言えば、大きく重いレンズである(124×267.5mm、2,900g)。70-200mm F2.8クラスのズームでも振り回すのに苦労する筆者にとって、このレンズを担ぎ歩き回るのは些か辛く感じられるものであったが、得られる描写はその労に十分報いるものである。高価である故に簡単に手に入れられるものではないが、この画角と明るさを必要とするニコンユーザーにとっては唯一無二のレンズといってよい。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。