シグマ「10-20mm F3.5 EX DC HSM」

交換レンズ実写ギャラリー
Reported by 野下義光

EOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約5.6MB / 4,752×3,168 / 1/125秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 10mm

EOS 50Dに装着した状態。

 2005年に発売された「10-20mm F4-5.6 EX DC HSM」の後継製品。焦点距離全域での開放F3.5を実現して使いやすくなった、APS-C専用の広角ズームレンズだ。今回はキヤノン用を試用した。

 キヤノンのAPS-Cデジタル一眼レフに装着した場合の画角は、35mm判換算で焦点距離16〜32mm相当。肉眼の視界を超えた超広角域から、扱いやすい広角域まで、これ1本で楽しめる。純正のEF-S 10-22mm F3.5-4.5 USMに対する最大のアドバンテージは、開放F3.5固定という点。プログラムAEでスナップを撮る場合は開放F値固定の恩恵を感じることはあまりないが、F値を吟味しながらの作画では非常に使いやすい。

 重量は520gと決して軽量ではないが、EOS 50Dとの組み合わせでは丁度いいバランス。フィルター径は全域開放F3.5としたためか、82mmでけっこう大きめ。フルサイズ機にも使えるEF 16-35mm F2.8 L II USMと同じで、直接のライバルとなるAPS-C専用のEF-S 10-22mm F3.5-4.5 USMの77mmよりも大きい。本体はシグマ独特の質感で高級感も感じられるが、EOS 50Dとは趣の異なる黒なので、好みは別れるかもしれない。

 ズームの回転方向は統一しないというのがシグマの方針らしいが、本レンズについてはキヤノンEFレンズとは逆。EFレンズに慣れた筆者にはチョット戸惑うこともあった。ピントリングの方向はキヤノンと同一。


 超音波モーターを採用しているので、AFの動作音も静か。ライブビューでのコントラストAF時の動作音も小さいのでEOS Kiss X3などで動画撮影中にAFを動作させても、大きく気に触るほどの動作音が記録されることもないだろう。ただし位相差AF時にAFが合わせにくい被写体を狙うと、純正USMレンズでは経験したことのない、カクカクッとした動作が気になった。

 レンズフードは画角ギリギリで設計されている様子で、超広角でも役立つ場面は多いだろう。しかし、ロック機構がイマイチ甘いため、持ち歩いてる間に緩んで角度が変わっていることが度々あった。そのまま撮るとレンズフードが写り込むし、夜景など暗い被写体だと、レンズフードが画面内に入り込んでいることに気づきにくい。ロックはもっと強めにしてほしい。

 さて、肝心の描写だが全くもって不満はない。どの焦点距離でも絞り開放から十分な解像感があり、周辺光量落ちも気にならないレベル。もちろん2段ほど絞れば描写力は更にアップする。ボケ味も広角ズームとしてはなかなかのもので、24cmの最短撮影距離と開放F3.5を組み合わせてマクロ的な撮影も楽しめる。フレアやゴーストはズームレンズ、特に広角ズームのウィークポイントだが、意識的に画面に太陽を入れてもフレアっぽくもならず、目障りなゴーストが数多く発生することがないのは特筆ものだ。

 強いて不満を述べるとしたら、キヤノンが用意するレンズの光学的な収差情報を基にした後処理的な補正機能が使えないこと。EOSボディ内では周辺光量補正、さらに現像ソフト「Digital Photo Professional」(DPP)では周辺光量・歪曲収差・色収差などが補正できるが、それらは純正レンズを使ったときだけに利用できる。とはいえ、今のところEOSがJPEGで補正できるのは周辺光量だけであるし、作例を見ていただければわかるように、周辺光量については補正の必要性はあまりないだろう。

 APS-Cでの広角ズームを検討している方には、是非候補に入れてほしいレンズだ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

EOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約5.2MB / 4,752×3,168 / 1/125秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 14mmEOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約4.6MB / 4,752×3,168 / 1/8秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 15mm
EOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約3.4MB / 4,752×3,168 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 20mmEOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約3.1MB / 4,752×3,168 / 1/320秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 20mm
EOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約4.3MB / 3,168×4,752 / 1/80秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 10mmEOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約4.1MB / 4,752×3,168 / 1/200秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 10mm

 

EOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約4.9MB / 3,168×4,752 / 1/5,000秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 10mmEOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約5.3MB / 3,168×4,752 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 20mm
 
EOS 50D / 10-20mm F3.5 EX DC HSM / 約10.0MB / 4,752×3,168 / 1/80秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 20mm


http://www.sigma-photo.co.jp/lens/digital/10_20_35.htm



野下義光
(のしたよしみつ)熊本県生まれ、千葉県育ち。国立木更津工業高等専門学校機械工学科卒業後、エンジニアとして大手コンピューター会社に5年勤務。その後、夢を捨てきれず写真界へ身を投じる。現在ジュニアアイドルを中心にWeb、DVDジャケ写などで活躍中。フルデジタルの写真集も多数手がけている。趣味はネットオークション(笑)

2009/7/27 00:00