交換レンズ実写ギャラリー
Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM
Reported by 大浦タケシ(2013/7/23 08:05)
カールツァイスといえば、カメラ愛好家にとって気になるブランドのひとつである。同ブランド銘を冠した日本製レンズが現在まで数多くリリースされているが、いずれも高い評価を受けていることに異論の余地はない。今回取り上げる「Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM」はソニーAマウント用として兼ねてから発売が予定されていたもの。カールツァイスを代表するプラナー銘を冠するとともに、使いやすい画角を持つ単焦点レンズとして、大いに気になる1本である。
鏡筒のシルエットは、マウント部から距離指標の手前までが一回り細くなってはいるものの、それ以外は全体的に凹凸がなくスッキリとしたシェイプである。このあたりに関しては、同じ“Planar T* 50mm F1.4”でもコシナ製のものとは趣が異なる。好みの問題ではあるが、ソニー製プラナーのほうがデザイン面で洗練されている用に感じる。さらにAマウントの「Planar T* 85mm F1.4 ZA」と同様、金属製鏡筒の質感は驚くほど高く、マニアの所有欲をも存分に満たすものである。フードを装着したときのデザイン的な一体感も秀逸で、ルックスからも大いに写真を撮る気にさせる。
フォーカスリングの操作感もAFレンズとしては文句の付けどころがない。トルク感は軽過ぎず、重過ぎず、滑らかに回転する。さらに思った位置に吸い付くようにフォーカスリングが静止する。掲載した一部の作例はMFで撮影を行なったが、その感触のよさを未だに指が憶えているほどである。鏡筒のAF/MF切り換えレバーと同軸にあるフォーカスホールドボタンも適度な大きさで使いやすい。全長の変わらないリアフォーカス方式を採用しているのも注目すべきところといえるだろう。
光学系は、メーカー発表のレンズ構成図をみると、5群8枚。プラナーらしい対称型に近いレンズ構成で、そのうち前から3枚目と最後端8枚目を非球面レンズとする。描写は開放絞りからシャープネス、コントラストとも高く、緩く感じられるようなところなどない。単焦点レンズならではのヌケのよさも当然あるが、キレのよさは特筆すべきところである。しかしながら、一部の他社製レンズで見受けられるようなカリカリとした描写ではなく、あくまでも上質なキレといってよい。
プラナーレンズの特徴のひとつである画面全体の均一性は、存分に発揮されている。画面周辺部の色のにじみやシャープネスの低下など十分に抑えられており、中央部分と異なることは少ない。特に開放値から2段ほど絞るとほぼ中央と周辺部の違いはなくなるといってよい。周辺減光にしても開放から1段ほどで見事に解消する。ディストーションはタル型のものが確認されるが、画面端に水平線などが入らないかぎり、気になることはないだろう。これら卓越した描写特性は、本レンズの発売をこれまで待ち続けてきたAマウントユーザーに報いるものといえる。
キヤノンやニコンのデジタル一眼レフでも、コシナ製カールツァイスにより“Planar T* 50mm F1.4”の描写は楽しめる(ソニー製とコシナ製とでは、レンズ構成など仕様は異なる)。しかし、ソニー製カールツァイスのアドバンテージといえば、AFに対応しカメラ側の手ブレ補正も効くことだろう。本レンズの登場で、Aマウントのカールツァイスのライナップはこれで7本(35mmフルサイズ対応は6本)となった。他のレンズも魅力的なものばかりで、αユーザーは一層羨ましがられるだろう。
(モデル:池田静香)
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- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。