デジカメアイテム丼

“光の色”を測って作品力をアップ!

セコニック「スペクトロマスターC-700」

デジタルカメラの撮影において、しばしば問題になるのが色の問題だ。「WB(ホワイトバランス)は合わせたのに、思い通りの色が再現できない」「被写体の色がくすんでいる」などの悩みはないだろうか。原因の多くは光源にあることが多い。ただし、光源の質や色のずれなどを肉眼で見極めることは困難だ。

光の色を表す数値は「色温度」としてK(ケルビン値)で表される。例えば、白熱電球やタングステン灯は3,200K、日中の太陽光は5,500Kといった具合だ。被写体の色を正確に表現したい場合は、正確な色温度を知る必要があり、その色温度を基に補正する必要がある。

そこで今回ご紹介したいのがセコニックの「スペクトロマスターC-700」(以下C-700)だ。この製品は「色」を測ることができる、カラーメーターと呼ばれる製品の最新モデルとなる。

CMOSリニアイメージセンサーを分光センサーとして採用。近年多く採用されているLEDや蛍光灯に加え、撮影現場でよく使われるHMIも計測可能だ。もちろん、自然光やタングステンなども数値化できる。また、色の再現性に大きく関わる「演色評価数」も測定できるのも魅力のひとつ。フラッシュ光を測定できる点もユニークだ。

カラーメーターの必要性とは?

カラーメーターをどういったときに使うか。

静物などを撮影する際、使用する光源をC-700で計測。そのとき色温度が6,500Kであれば、カメラ側のWB設定も6,500Kにする。それで正確な色再現が得られる。WB設定をカメラ本体に記録させ、撮影のたびに呼び出せば、手間いらずで毎回正確な色が得られるというわけだ。

光源による違いの例

C-700で撮影用光源を測ってみた。その結果と作例。

※CCT=相関色温度、Δuv=黒体軌跡からの偏差、Ra=平均演色評価数

LED
ストロボ
タングステン灯
蛍光灯

また、自然光とストロボ光がミックスされる環境の場合。ストロボが6,500K、自然光が5,000Kだとすると、WBの設定によっては色がずれてしまう。ストロボ側に合わせると自然光はアンバー気味になり自然光に合わせると少しブルーになるからだ。そうした場合、色温度変換フィルターなどを使用し、ストロボ光を自然光に近くなるように変換することで解決する。

このとき光源の色温度がわからないと、どういった補正を光源やWB設定に加えなければならないかが判断できない。逆にいうと、光源の色温度がわかると、色のずれを補正しやすくなる。

いろんな光を測ってみよう

C-700の使い方は至って簡単。スマートフォンのようなタッチパネル式液晶モニターを搭載しているので、直感的に操作できる。

スイッチを入れると始めに「ダーク補正中」と表示される。この間、約15秒ほど。少々手間は掛かるが、この待ち時間は次のファームウェアアップデートで解消するとのことだ。

起動すると9つのアイコンが現れる。使用したいアイコンをタップすればよい。計測する際には定常光かフラッシュ光か選択できる。フラッシュ光はシンクロコード、ノンコードに対応。

後はC-700を光源に向けて、計測ボタンを押すだけ。色温度を始め、さまざまな情報を確認できる。

それは、代表的なモードを見ながら、C-700の機能を紹介をしよう。

テキストモード

計測した数値をまとめて表示してくれる機能だ。カスタマイズでき必要な情報だけを表示できる。瞬時に必要な情報を確認できるので便利だ。

スペクトルモード

計測した光源の分光分布グラフを表示できる。

分光分布とは、光源から放射される光を各波長にごとに分割して、どの程度各波長の光が含まれているか表したものだ。

同じような色温度でも、光源によってグラフが大きく変化する。各波長が途切れることなく断続的に続いている光源の方が、結果的に色の表現に直結する演色性が高くなる。

演色評価モード

平均演色評価数(Ra)とR1〜R15までの各評価をグラフ表示する。

CIE標準光源(CIE=国際照明委員会に定められた標準となる人工光源)を基準に、光源の演色再現性を数値化したものが演色評価数。色の再現性を見るための重要な指標だ。

基準およびR1〜R8が平均演色Ra(平均演色評価指数)と呼ばれる。Ra値は0〜100で表され、この数値が高ければ高いほど色の表現性は高くなる。

そして、R9〜R15までを特殊演色評価数と呼び、特にR9(彩度の高い赤)とR15(日本人の標準的は肌色)は重要になる。

演色性の悪い光源で撮影すると被写体の赤い部分がくすんでしまったり、忠実な色がまったく表現できないなど大きな問題になることが多い。WBは合わせたのに思い通りの色が表現できない場合は、演色性が問題の場合も多いので、心当たりのある方は光源を確認してみるとよいだろう。

演色性の例

ストロボ光をC-700で測ってみた。Ra値は99.1と高い値を示した。
今度は古い蛍光灯を測る。Ra値は60.8とふるわなかった。

ちなみに、太陽光はもちろんだが、タングステン灯やストロボ光は非常に演色性の高い物が多かった。C-700を使えば、簡単に演色性を測定できるので、光源の確認や新たに購入時にも役立つに違いない。

多灯比較モード

4つまでの光源測定値を表示でき比較できる。多灯ライティングするユーザーに役立つだろう。色温度の誤差も一目瞭然だ。

ラジオボタンをタップすると選択した光源との差を確認できるので、各ライトの補正が楽に行なえる。スタジオや自然光とストロボ光をミックスで使う場合などさまざまなシーンで役立つこと間違いなしだ。

このようなミックス光の条件で撮影してみる。
そのまま撮影すると青っぽい。
多灯比較モードなら、それぞれの光源の数値を表示できる。
数値を基に、色温度変換フィルターをストロボに装着。
光源Aと光源Bの数値が近くなった。
結果、色再現性が良くなった。

WB補正モード

ターゲットに設定した色温度の補正量をLB指数、黒体放射軌跡からのずれ量CC値で表示してくれる。デジタルカメラのWBの微調整画面と同じWB補正グラフ上に表示してくれるのでとても便利だ。

その他、「スペクトル比較モード」、「カメラフィルターモード」、「照明フィルターモード」などが利用できる。

この中では「照明フィルターモード」も有用だ。

照明フィルターはデジタルでも使用頻度が高く、特に多灯でライティングする際などは、可能な限り色温度の誤差は補正しておいた方が良い。カメラのWBをメインライトの色温度に合わせ、その他のライトの色温度もフィルターを使って補正してみよう。照明用のフィルターはプロショップや一部大手家電量販店で入手可能だ。

カスタマイズ項目には、カメラフィルターブランドや照明フィルターブランドの設定が見える

まとめ:照明機材を見極めるためにも

「色を測る」……とてもシンプルに聞こえるが、それで得られる光の質や色温度は、撮影結果に大きく影響する。筆者もC-700を使うことで、自分の使っている照明機材のコンディションチェックや色のずれ、ストロボにアクセサリーを装着した時の色温度の変化など、目視では確認できない情報を的確に知ることができ助かっている。

今まで色に悩まされていた方や色に拘りたいという方は、ぜひC-700を使用して光源の質や色温度を的確に知っていただきたいと思う。

本日から開催されているPHOTONEXT2015のセコニックブースでは、本稿を執筆した上田晃司さんによるC-700をテーマにしたセミナーが開かれています。

詳しくはセコニックのWebサイトからどうぞ。

協力:セコニック株式会社

上田晃司

(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/