iPhoneのカメラアプリ界隈では、アート指向の「Instagram」や料理スナップの「miil」といった写真を軸にしたソーシャルアプリが根強い人気だ。いずれも端末上で撮影・編集・投稿まで行なえる手軽さが特徴的だが、デジタルカメラを日常的に持ち歩いているユーザーなら「デジカメ画像もその場で使えれば」と一度は思ったことがあるだろう。
AirStash |
そこにデジタルカメラとスマートフォンの新たな架け橋として登場したのが、日立マクセルが2月25日に発売した無線LAN機能搭載カードリーダー「AirStash」だ。記録メディアはSDHC/SDメモリーカードに対応する。実勢価格は9,980円前後。
本稿執筆時点ではAndroid用アプリは今春提供予定としているが、Webブラウザを使ったファイル転送も一部可能としており、現状でもAndroid端末と組み合わせられないことはなさそうだ。
SDHC/SDメモリーカード用スロットを備える | パソコンやモバイルバッテリーのUSB端子から充電できるほか、通常のUSBカードリーダーとしても使える |
これまでデジカメの撮影画像をスマートフォンにその場で転送するソリューションとしては、無線LAN機能搭載の記録メディアやコンパクトデジタルカメラなど、いずれかが画像転送に特化した製品である必要があった。それらはまだ選択肢も多くなく、ヘビーユーザーにとっては転送速度や撮影画質など、何かしらの“我慢”がつきものと言える。
AirStashの最大の特徴は、「いつものデジカメ」と「いつものSDカード」を使いながら、スマートフォンへ画像転送する道を拓いてくれる点だろう。バッテリー内蔵でアクセスポイントも不要なため、場所を選ばず利用できる。また設定はすべて専用アプリの「AirStash+」から行なえるため、パソコンを必要としないのも特徴と言えるだろう。
7時間駆動というバッテリー内蔵と考えれば、格別大きいとは感じない |
例えばAndroid端末はmicroSDカードのスロットを搭載していたり、iOS端末でもiPadならアップル純正の「iPad Camera Connection Kit」でSDメモリーカードなどから直接画像を吸い上げられるが、iPhoneにはそうした純正ソリューションがなかった。唯一サンワサプライが取り扱っていた「Zoomit」がDockコネクタ接続のiPhone対応SDカードリーダーとして存在するが、調べたところ国内販売は終了、海外から取り寄せるしかないようだ。
というわけで、今回はデジカメ撮影画像をiPhoneに転送する方法を紹介する。
普段から持ち歩いているリコーGR DIGITAL IVとサンディスク製SDHCメモリーカードで試してみた |
用意するのは、専用アプリ「AirStash+」をインストールしたiPhone。AirStashの電源ボタンを長押しすると電源が入り、iOSの設定画面から無線LAN接続先として選択する。
iPhone 4Sで試してみた | iOSの設定画面から接続する |
AirStashに接続後、AirStash+を起動するとSDメモリーカードの中身が表示される。初期状態ではAirStashにセキュリティがかかっていないため、誰でもSDメモリーカード内のデータにアクセス可能だ。セキュリティは13文字のWEPキーを利用可能。iOS端末がパスワードを記憶するので、毎回入力する必要はない。
WEPパスワードは13文字の入力が必須 |
現状ではAirStashとの接続中にインターネットは利用できないが、アプリ内には「SideLink」という通信モードがグレーアウトで存在している。日立マクセルによると、将来的には3G通信とAirStashの通信を両立できるようになる可能性があるという。
設定画面 | 執筆時点では、端末の3G通信との同時使用はできない |
画像一覧表示はリスト形式のみで、iOSのカメラロールのようなサムネイル表示はできない。とはいえファイル名と一緒に撮影日時が表示されるので、目的の画像を探す助けになるだろう。ファイル名をタップすると画像を読み込んで表示する。リストで隣り合った画像も順次読み込まれているようで、前後の画像をスワイプしながら探すこともできた。
AirStashに接続し、SDカードの中身が表示されたところ。撮影画像が保存されるDCIMフォルダが見える | ファイル名と撮影時刻を表示。カメラのマークをタップすると、フォルダ内の画像ファイルを一括転送できる |
リスト表示を左にスワイプすると削除ボタンが現れる。確認ダイアログは出ないので注意したい | リスト表示のソートも可能。「拡張する。」は拡張子でのソート |
画像表示中に+ボタンを押すと転送画面になり、iOS端末のカメラロールに画像を保存できる。転送はJPEG画像1枚あたり1秒ほどで、ストレスは感じない。「画像サイズを縮小します。」のオプションにチェックを入れると転送後にリサイズして保存してくれる。GR DIGITAL IVで撮影した1,000万画素・3,648×2,736ピクセルの画像は、同オプションの設定で1,024×768ピクセルに縮小されていた。
画像を読み込んだところ。左右スワイプで前後画像に移動できる | 転送中の様子。4MB弱のJPEGファイルは1秒もかからず転送された |
iPad 2の横位置で使ってみたところ。iPadでもできることは基本的に同じ。右下のボタンで全画面表示できる |
AirStashはRAWファイルの対応について謳っていないが、同じくGR DIGITAL IVで撮影したDNGファイルをiPhoneに転送してみたところ、RAWサムネイルと見られる160×120ピクセルの画像が表示された。カメラロールに保存しておいたところ、iCloudのフォトストリーム経由でMacのApertureライブラリに保存され、記録メディアから読み込んだファイルと同様に表示・RAW編集できた。
転送が終わったら、AirStash本体の電源ボタン長押しでオフになり、接続が解除される。本体のインジケーターが点灯・点滅するフィードバックがあるため、動作状況は確認しやすい。ディスプレイのないモバイルルーターを使っているような感覚だった。
操作部は中央の電源ボタンのみでシンプル。長押しでオン/オフなどの操作を行なう |
iPhoneに画像転送する流れはおおむね以上の通りだが、AirStashは「カードリーダー」というだけあり、使い道は画像転送だけではない。例えば日立マクセルでは、SDメモリーカード内の動画ファイルをストリーミング再生したり、Office系の文章ファイルに最大8台の端末から同時アクセスしたり、といった使い方もアピールしている。興味のある向きは製品情報ページなどもチェックしてみてほしい。
動画をストリーミング再生しているところ。キヤノンPowerShot S100で撮影したフルHD動画を開けた |
2012/3/9 00:00