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クイックシューや雲台を手がける梅本製作所のもの作り

〜この夏の“ある体験”で仕事が丁寧になった!?

 梅本製作所といえば、クイックシューや高精度雲台などですっかり有名になった東京・亀戸のカメラアクセサリーメーカーだ。先般、代表取締役の梅本晶夫氏から「この夏のある経験で仕事の仕方が変わったよ」との連絡があり話を聴きに行ってみた。

ニコンの「ニーニー」(AF-S NIKKOR 200mm F2 G ED VR II)を手に入れた梅本製作所 代表取締役の梅本晶夫氏。壁には特許や意匠登録の証書がずらり

 と、その前に……梅本氏が最近思っているのが「クイックシューは専用の雲台にしか使えないと思っている人がいっぱいいる」ということ。

クイックシュー「SG-80」

 確かに、梅本製作所ではクイックシュー「SG-80」の“専用雲台”を手がけているが、SG-80自体は1/4インチネジまたは3/8インチネジで雲台と接続できるので、基本的にはどの雲台でも使用できる。とりあえずクイックシューを使ってみたいという人は雲台は手持ちのものでもOKだ。

SG-80の裏面。ほとんどの雲台に装着できる このように、他社製の雲台でも問題なく使用可能

 ただ三脚によっては、最初から付いてくるクイックシューと雲台を分離できないタイプもある。こうしたケースでSG-80を使いたいのなら、思い切ってSG-80と直結できる専用雲台に交換してしまうのが良いだろう。SG-80やクイックシュー専用雲台の詳細は記事末のリンクを参照されたい。

クイックシュー専用雲台もラインナップされている。

 梅本氏に話を聴いていると、見慣れないレンズが出てきた。ニコンの「AF-S NIKKOR 200mm F2 G ED VR II」だ。2010年の末頃に買ったのだという。「紙の厚さ位しかピントの幅がないというから、それは見てみたいと思ってね……それに、1.4倍のテレコンバーターを入れれば300mm F2.8相当になるし、2倍のテレコンなら400mm F4相当にできますからね。清水の舞台から10回飛び降りましたよ。うわぁぁぁ、もうオレはどうなってもいいやって(笑)」と実に楽しそうである。

AF-S NIKKOR 200mm F2 G ED VR II(2倍のテレコン装着)。「本当に紙の厚みほどの被写界深度ですね。ポートレートを撮ったらボケ過ぎて困るくらいでしょうね」(梅本氏)

 このレンズを愛機のニコン「D700」に装着し、近所にある東京スカイツリーなどを撮影しているとのことだが、もちろん自社製品の性能チェックにも活用しているそうだ。

 ひとしきり200mm F2を披露(自慢!?)したところで、耐荷重の話になった。同社製の自由雲台で“快適に使える”機材重量は5kgが限度という。「レンズで言えば300mm F2.8や200mm F2クラスまで。うちの雲台で600mm F4を使っている人もいるでしょうが、快適には使えないのでオススメしません」(梅本氏)と正直だ。あまりにも搭載機材が重いと、もし雲台が真横に倒れた場合にカメラネジが切れてしまう恐れもあるというから気をつけたい。

SG-80のリリースの様子 軽く銀色のレバーを押すだけで―― スッと外せる

 それから実際に見せていただいたのだが、レンズの三脚座にクイックシューを装着する場合は、三脚座の形に合わせて長手方向に装着するのが良いという。SG-80は、4辺のうち1方向から外れるようになっているため、利き手方向から着脱するようにすれば使いやすいとのこと。筆者も実際に試してみたが思いの外スムーズに着脱ができた。

三脚座の場合は光軸方向が長辺になるようにシュープレートを装着する。そうすれば、ブレ防止に効果のある「剛性体」(4つの黒丸部品)も三脚座に密着する

 ところで、シュープレートをカメラに装着する際に使用しているドライバーで新しいものを手に入れたので紹介しておく。スイスPB社の「クロスハンドルスタビーマイナスドライバー138-6」だ。梅本製作所でも扱っており、価格は1,680円。以前の記事で紹介したトップ工業製のスタビードライバーよりも力を入れやすく、非常にネジを締めやすい。また、グリップが薄いのでカメラバッグの中でも嵩張らないのがいい。値段はトップ工業製の倍だが、PBといえばドライバーの世界では一流ブランド。コインでもネジは回せるが、あると便利なツールだ。

独特のグリップが使いやすいスイスPB社の「クロスハンドルスタビーマイナスドライバー138-6」

仕事がより丁寧になった訳とは?

 さてここからは、梅本氏の仕事に影響を与えたという夏の出来事についてだ。まあ余談だと思って読んでもらえればと思う。

 今年の夏に、あるシンガーソングライターの歌を基にした芝居が梅本氏の地元で講演されることになった。その講演では一般から合唱の出演者を募っていた。実は梅本氏、そのシンガーソングライターの昔からの大ファン。とはいえ「知人の結婚式の2次会以来、歌など歌ったことがない」(梅本氏)ので、当初参加するつもりはなかった……。

 ところが、当のシンガーソングライターのTwitterをフォローしていた梅本氏は何度かやり取りしているうちに誘われて、結局参加することになった。それも夫婦で。

 その芝居だが、「若い役者も素晴らしい演技で感動した」と梅本氏。講演が終わってしばらく経ったとき“ある変化”があったのだという。

 「普段の仕事に戻ったら、やけに仕事が丁寧になっていたんです。最初は自分でも気がつかなかったんですが……。実際に手を動かす仕事に無意識のうちに時間を掛けるようになっていました。加工の部分は暗黙知の世界なので、手応えでやっている僕しかできない部分もある。その加工がかなり丁寧になっていたんです。秘密の加工などですね。自分でも驚きました。明らかに芝居に参加したせいでしょうね」と梅本氏は話す。

 ちなみに“秘密の加工”というのは、雲台やクイックシューで気持ちの良いフィーリングを生み出すための加工。設計図にも載っていない梅本氏自身の手仕事で、詳細は何度聞いても教えてくれない。

 「結局の所、食べ物だって品物だって何でもそうですが、最終的にいい気持ち、感動、心地よさ、楽しさなんかを与えるために仕事をしているんですね。今回、それを再確認できたのが良かった。まさか、畑違いの所から見て気がつくとは……。気持ちよく使ってもらえる品物を作るのが私の仕事ですから」(梅本氏)。

 梅本氏は、「何度も練習に向かい、本気で合唱に取り組みましたよ。合唱の夏でした。何かを始めるのに遅いって事はない、というのもまさにそうだとわかりました」と振り返っていた。

 かねてから品質には定評のある同社製品だが、今回の“変化”でさらにどれくらい良くなっているのか、気になるところだ。





本誌:武石修

2011/10/24 12:17