ケンコー・トキナー「aosta CT Trotter」

〜個性的な設計のカメラ機材対応カートバッグ

 最近、ケンコー・トキナーのカメラバッグブランド「aosta」(アオスタ)が変化している。かつては機能優先なイメージ(とコストパフォーマンスの良さ)が目立つブランドだったが、近年はファッショナブルな製品も見かけるようになった。先日発表された「DECORO」シリーズなどは、その一例といって良いだろう。

aosta CT Trotter(AOC-CT-TRM-BK)

 ここではaostaシリーズのうち、カート型バッグの「CT Trotter」シリーズを紹介したい。CT Trotterには、Lサイズの「AOC-CT-TRL」とMサイズの「AOC-CT-TRM」の2サイズがあり、そのうちMサイズを試用してみた。Mサイズは100席以上の国内線機内持ち込みに対応する製品で、容量25L、質量3,450g。カメラバッグとしては破格の大きさだが、旅行用のスーツケース製品としては小さい部類に入る。

 カート型のカメラバッグは海外ブランドによく見られるが、そのほとんどが金属フレームに布製の外装を採用したソフトシェルタイプだ。CT Trotterがユニークなのは、ソフトシェルとハードシェル(ABS)を複合させたハイブリッド構成にある。これは、軽量かつ丈夫な構造を実現するためという。

 タイヤは2輪。4輪に比べると狭い場所での取り回しに苦労する2輪だが、タイヤが大きく、重量級の機材を入れて移動しても安定感がある。石畳など凹凸が目立つ街路でも楽に移動できるのは、2輪らしい利点だろう。タイヤの動きはスムーズで、安物のスーツケースにあるようながたつきや不安定さはない。この手の製品はタイヤが壊れると大変なので、造りが良いのはありがたい。

背面。スライド式ネームプレートを装備するタイヤは大きめで回転もスムーズ
旅客機の上部に持つ収納スペースに入れてみた。機材はB757-200
ヴィッツクラスのレンタカーへの収納例。奥は同じくキャリーオン対応のスーツケース

 ハンドルは2段伸縮式の2本タイプ。がっしりしており、伸縮もスムーズだ。1本タイプはケース内容量と軽さの面で有利だが、バッグを取り付けられないという不利な面がある。また、重い機材を引っ張るとなると、ねじれやゆがみが気になるところだろう。

 内部には、基本的に付属の着脱式インナーバッグを収納し、そこにカメラ機材などを収納する。インナーバッグのパッドは厚く、衝撃吸収性は高そう。仕切りも大量についてるので、機材に合わせたアレンジが可能だ。半分をカメラ機材、半分を衣服など別のものにしても良い。

 インナーバッグには取っ手がついており、単体での持ち運びが可能だ。海外旅行などで、行きはインナーバッグををケースに入れて機内持ち込み手荷物にすれば、バゲッジクレームで受託手荷物が出てくるのを待つ必要がない。一方帰りは、カメラ機材を入れたインナーバッグを取り外して機内に持ち込み、お土産とその他の品を詰め込んだケースは受託手荷物として預ける。こうすれば容量が約2倍になるわけだ。

取り外し式のインナーバッグが付属するインナーボックスの機材収納例
インナーバッグを取り外した状態。このままでも使用可能だ内側にジッパー式のポケットを用意。衣服などを収納できる

 ケース内側にはジッパーポケットを装備。衣服などを収納できる。鍵はTSA南京錠が付属する(Lサイズは差し込み式のTSAロックを装備)。

TSA南京錠が付属する。上位モデルは差し込み式ロックなのに……TSA南京錠の活用例
ウェザーカバーもついている

 そのほか使い勝手としては、ハードシェル製品ではほとんど見られない前面ポケットが便利だ。地図、資料、雑誌などを入れておき、空港で列に並ぶときなど、ちょっとした待ち時間にすぐに取り出せるのは使いやすい。

 ただしポケットの容量が小さく、ノートパソコンを入れるには少々窮屈。もちろんケース内のジッパーポケットを使えば、17インチクラスまでのノートパソコンが余裕で収納できる。しかし、機内に持ち込むとなると、セキュリテチェック時にノートパソコンをとり出す必要があり、そのためにいちいちケースを開け閉めのは大変だ。せっかくの前面ポケットなので、ノートパソコンが入る程度まで大きければ、ケースを開けることなくスムーズにセキュリティチェックを受けられるだろう。

 国内某大手スーツケースメーカーの意見も取り入れたというだけあり、タイヤのスムーズさや各部の造りの良さは問題ない。上部と側面の取手も握りやすく安定感がある。インナーバッグの取り外しは簡単なので、普段はインナーバッグなしで利用し、カメラ機材が多いときはインナーバッグを入れて使うといった利用法もありだろう。旅客機で撮影旅行に行くなら、検討して欲しいアイテムだ。

【2011年10月12日】インナーボックス機材収納例の写真が間違っていたので差し替えました。




本誌:折本幸治

2011/10/12 00:00