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梅本製作所「SG-80」

〜1度使ったらやめられない!? 絶妙フィールのクイックシュー

数々の工夫を盛り込んだクイックシュー「SG-80」

 三脚撮影のお伴に便利なのが“クイックシュー”だ。筆者もこれまで国内外数種類のクイックシューを使ってきたが、ここ最近とりわけ気に入って使っているのが梅本製作所の「SG-80」だ。今回はSG-80のレポートをお届けしたい。

 梅本製作所はともすると、早くから手がけていた「高精度自由雲台」ばかりが注目されがちなメーカーだが、2009年に発売したクイックシューも造りの良さからファンが増えている。筆者もそうしたファンの1人だが、このSG-80の良さを一言でいえば“とにかく使いやすい”ことに尽きる。

ラインナップ 価格
SG-80セット
(クイックシュー本体とカメラプレート1枚のセット
15,800円
SG-80ダブルプレートセット
(クイックシュー本体とカメラプレート2枚のセット
19,800円
SG-80シュー本体のみ 11,800円
SG-80シュープレートのみ 5,800円

 価格は、上の表に有るとおり。最近はベースにカメラプレートを2枚セットにした「SG-80ダブルプレートセット」を用意しており、カメラプレートを別に買うよりお得になっている。梅本製作所によると、ダブルプレートセットはカメラ本体と三脚座付きのレンズのそれぞれにカメラプレートを装着する人が多いのだという。

吸付くように嵌る感触

 SG-80を使っていると、雲台とカメラの着脱が非常に“クイック”にできる。クイックシューなのだから当たり前だろうと言う声が聞こえてきそうだが、これまで“クイックではないクイックシュー”も多かった。筆者は、SG-80に出会う前まで別なクイックシューを使っていた。それは、カメラを斜めにして上方から装着するタイプだった。このクイックシューも、それ以前のタイプと比べると完成度が高いと評されていたタイプで、自分でも気に入っていたのだが、一度SG-80に慣れてしまうともう戻れないというのが本音だ。

ベースとなるシュー本体 裏側。肉抜きも施してあり重量は110g
カメラプレート 背面。こちらも肉抜き加工がしてある。重量は50g

 SG-80の特徴は、スチルカメラ用としては数少ないくさび構造の勘合を採用している点にある。くさび構造は、軽い力であっても一度嵌ると強力な摩擦が発生する。この原理を利用しているのだ。そのため、シューにセットする際は、軽く自然に押すだけでしっかり固定される。その感覚は“吸付くように”と言っても言い過ぎではないだろう。高い加工精度の証だ。

 取扱説明書には、「確認のためレバーを手前に引いてよりしっかり固定してください」とあるが、筆者が試したところ、一旦嵌ればかなり力を入れて引いても外れなかった。従来のクイックシューにありがちな、嵌めた後にレバーをさらに締めるといった動作は必要なく、すぐに撮影に移れるのがいい。

シュー本体とカメラプレートのくさび効果によって強力に固定することができる。また、着脱時の落下を防止するためのガイドレールを双方に備えてある

 カメラプレート固定レバーのほかに、さらに“固定レバーをロックするレバー”を備えたクイックシューもあるが、レバーが2段階だとこれは使いよいとは言えない。その点SG-80は、誤ってレバーを戻してしまっても、それだけではカメラが脱落しない機構を内蔵している。また海外製に多いタイプに、カメラプレートを両側から万力のように挟み込むタイプがある。これなどはネジを回して締めるため着脱はクイックにはいかない。ただ、万力型は強力に固定できるため、超望遠レンズなどでは真価を発揮する方式だ。

EOS 5D Mark IIに装着したところ。同製作所のクイックシュー専用雲台「SL-40AZD」とともに使用している SG-80は、むろん一般的な市販の雲台にも装着可能だ
三脚座と本体にそれぞれカメラプレートを付けておくと、レンズを交換しても撮影が迅速にできる
カメラプレートは左側のレバーを押して外す。軽く押すだけでロックが外れる

“手前からセットする”という自然な動線

 SG-80は、カメラプレートを外すのもまたクイックだ。外す際は、シュー左側のレバーを1.5cmほど前に押してやればよい。このとき“コクッ”という音と感触でロックが解除されたことがわかるという仕組みまで付いている。そのため、SG-80を使い出してしばらくした後にはほとんど手元を見ずに着脱ができるようになった。結果、より撮影に集中できるようになった。筆者が依然使っていたタイプは、カメラプレートを外す際にレバーを180度近く回転させていたのだから、それに比べれば使い良さは明らかだ。

 着脱の際にカメラの動線が自然になるのも使いやすさに繋がっているのだろう。装着する際には飛行機が着陸するかのように、シューに向かって滑り込ませればよい。そして外す時はレバーを押しながら手前上方に引く――。一見、真上から装着するタイプの方が使いやすそうにも思えるかもしれない。だが、カメラの高さがアイレベル付近にある場合、真上よりも斜め後方からアクセスする方が使いやすい。この点は今回SG-80を使ってみてわかった点だ。

 筆者は風景を三脚で撮る際、1カ所で粘るというより、どんどん場所を変えながら撮影している。そんなとき、すぐにカメラを外して場所を移動できるため従来からクイックシューは重宝している。

 よく、カメラを雲台に付けたまま肩に担いで移動している人を見かけるが、あれは大変危険な使い方とされている。万一カメラが雲台から外れた場合、何も支えはなく地面に落下してしまう。移動するたびにカメラを雲台から外せば良いのだが、クイックシューを使っていなかったり、クイックではないクイックシューだと外すのが億劫になってしまうのかもしれない。事故を起こさずに撮影を楽しむためにも、気持ちよく使えるクイックシューを活用したい。

撮影中に、カメラを雲台に付けたまま担いで移動したりしていないだろうか(写真左)。これは、万一カメラネジがゆるんだりするとそのまま何の支えも無くカメラが落下する危険な使い方。短い距離であっても、写真右のように一旦三脚からカメラを外して移動するのが安全な方法だ

バッグ内で引っかかりにくいカメラプレート形状

 着脱のスムーズさはSG-80の大きな売りだが、それ以外にも多くの部分で考え抜いた造りになっている。

 例えば、カメラに付けっぱなしとなるカメラプレートにも工夫がある。外側に来る角が大きなアールで面取りしてあるので、カメラバッグの出し入れで引っかかることが無かった。この面取りは、ニコンD3のようなボディを縦位置の手持ちで使う際にも手が痛くないという効果もある。シュープレートの厚みが約8.5mmと比較的薄いこともこれらのメリットに寄与しているようだ。

 なお、カメラプレートには同社製雲台で既に採用しているブレ防止技術「剛性体」も装備している。これは、カメラプレートのコルクを貫通して直径1cmほどの硬質プラスチックを埋め込んであるものだ。このおかげで、ブレの低減と、コルクのみの場合に見られるたわみを防いでいる。

シュープレートの厚みは約8.5mm。エッジが丸みを帯びているので、カメラバッグの中で引っかからず取り回しも良い。 硬質プラスチックの剛性体。剛性体でブレとたわみを抑えつつ、コルクで滑りを防ぐハイブリッドの仕組み

 カメラプレートといえば、カメラネジを回す方式にもメーカー各社の思想が見えて面白いものだ。ヘキサゴンレンチ式、引き起こす蝶ネジ式、コイン式、専用工具式などさまざまだ。ただ、どの方式も一長一短で完全なものではない。SG-80では、ネジに溝を切ってあるコイン式を採用している。ヘキサゴンレンチは締めやすいがレンチを忘れたりなくすとどうにもならないので、コイン式はありがたい。

カメラネジはコイン式。単なるマイナス溝ではなく、コインに合わせたアールを持つ深さになっている
同製作所が推奨するトップ工業製コインドライバー「TRD-45」。コインで回すよりも大きなトルクでしっかり締めることができる。スタビータイプで小さいので、カメラバッグに入れておいても邪魔にはならない

 なお、コインでも十分に締め付けることは可能だが、梅本製作所ではトップ工業製コインドライバー「TRD-45」の使用を推奨している。

 これは数百円のドライバーだが、コインを使うより格段に締めやすい。撮影に出る前にこのドライバーでしっかり装着しておけば、持ち歩く必要がないともいえる。もし、撮影中にネジがゆるんだ場合はコインで対応できるからだ。もっとも、これまでネジがゆるんでしまったことは一度もなかったが……。要望があるとすれば、カメラネジの側面にローレットがあるとカメラに装着する最初がやりやすくなるのではと感じた。

 さてSG-80をレポートしてみたが、ここまで使いやすいクイックシューははじめてだった当のが正直な感想だ。シュー本体とカメラプレートのセットで1万5,800円とクイックシューとしては決して安くはない。ただ、その“絶妙なフィーリング”を考えれば十分に見合う値段だと思う。三脚派にはお勧めしたい逸品だ。




(本誌:武石修)

2010/4/12 12:05