ぐるっと全天周!カシオEX-FR200の魅力を探る
全天周カメラ「EX-FR200」詳細レビュー 目の前の景色を丸ごと記録 そしてスマホに転送&シェア
カメラ2台でマルチアングル撮影 360度記録も
2016年9月28日 11:00
カシオ計算機のアウトドア向けデジタルカメラ「EX-FR200」は、カメラ部とディスプレイ部が分離し、防水防塵で新しい撮影スタイルを提案するFRシリーズの最新モデルだ。旧モデルの「EX-FR100」は、カメラ部が分離することでフリースタイルでの撮影ができ、各種アタッチメントを利用することで、さまざまな場所に装着して撮影できる点が斬新な製品だった。
この流れを汲むEX-FR200では、レンズの画角が185度となることで「全天周」の撮影ができるようになり、周囲の風景を一度に撮影でき、よりダイナミックで新しい撮影が可能になった。
眼前のすべてを収める全天周画像
EX-FR200は、従来のFRシリーズと同じく、カメラ部とディスプレイ部が分離するスタイル。使い方も従来のFRシリーズと同様だ。
ディスプレイ部(コントローラー)のスペックは「EX-FR100」と変わらないが、EX-FR100とEX-FR200とではエンジンは異なる。FR100のときはZR系にも使用している「EXILIM エンジン HS ver.3」だった。また、EX-FR200はEX-FR100の後継ではなく、画角の違うバリエーションモデルという位置付けだ。
カメラとの接続はBluetooth ver 2.1+EDRを使用。外形寸法は59.2(W)×86.7(H)×19.4(D)mm、約103gで、ディスプレイは3型92万1,600ドット、静電容量式タッチパネルとなっている。
大きく仕様が異なるのがカメラ部で、前述の通りレンズは全天周185度をカバーする円周魚眼レンズ。F値はF2.8の固定焦点で、撮像素子には有効1,195万画素の1/2.3型裏面照射型CMOSセンサーを採用する。
カメラとコントローラーはBluetoothで接続されており、カメラの接続プレートをコントローラーに差し込んで「セルフィースタイル」や「カメラスタイル」で撮影できることに加え、双方を分離した「ウェアラブルスタイル」でも撮影が可能だ。
基本的な使い方はFRシリーズで共通しているが、EX-FR200の最大の特徴は全天周をカバーするレンズを搭載した点だ。
一般的に円周魚眼レンズと呼ばれるこのタイプのレンズだが、最近は2つの円周魚眼レンズの映像を合成して360度撮影を実現する「360度カメラ」「全天球カメラ」の普及にともなってか、EX-FR200では「全天周」という言葉が使われている。全天球とは異なり、半球のエリアを撮影するため「全天周」という表現になる。
記録される画像は、通常の円周魚眼レンズで撮影されたものと同じように、四隅がケラレた円形の写真。その中に、カメラの周囲185度全体が一度に写っており、とにかく見た目にインパクトがある。
目の前の風景すべてを一度に収められる反面、画像周囲の歪みは大きく、撮影が難しいレンズではあるが、主要被写体を中央付近に収めて撮影すれば、周囲の状況を余すことなく記録できる面白さがある。
また、とにかく何も考えずに撮影していればカメラの正面の風景はすべて収められるので、ディスプレイを見ながら撮影しなくても記録できるメリットがある。セルフィーでも集合写真でも、全員を写真に収めながら背景も全体が撮影できるし、狭い屋内でも全体を記録できるのは新しい体験だ。
撮影は、カメラ部とコントローラーの双方の電源を入れると、自動的にコントローラーがペアリングされたカメラ部を検索して接続し、画面が点灯する。あとはシャッターボタンを押すだけだ。シャッターボタンはカメラ部、コントローラーの双方にあるので、どちらを押してもいい。設定をしておけば、コントローラーの画面タッチでもシャッターは切れる。適当にカメラ部を持って撮影するだけでも、画角を気にせずに撮影できるのは全天周のメリットだ。
手のひらに収まりのいいカメラ部は、自由に手を動かして撮影できるし、頭、腕、バッグに装着するアタッチメントもオプションで用意されているので、任意の場所にカメラをセットしておけば、コントローラーを使って好きなタイミングでシャッターを切っても、眼前の光景をすべて収められる。
さまざまな撮影方法ですべてを記録する
コントローラーは、画面タッチで各種設定もできる。画面上部をタッチするとメニューアイコンが表示され、インターバル撮影モード、無線LAN設定、撮影モード、メニューの設定にアクセスできる。
インターバル撮影は、旧機種でも搭載していたモードだ。撮影条件を任意で設定できる「スタンダード」に加え、「ハイキング」、「サイクリング」、「スノー&ウォーター」、「レジャー」といった、各アクティビティに適したモードが用意されている。ひとまずこれらにしておけば、あとはカメラに触れなくても自動的に撮影されている。静止画だけでなく動画の撮影も自動で行われるのがポイントだ。タイミングはカメラ任せなので、ベストショットがどれだけ撮影できるかは状況次第だが、むやみに撮影枚数を増やさず、アクティビティを撮影し続けられるというのはひとつのメリットと言えるだろう。
撮影モードでは、全天周、パノラマ、超広角の3種類のモードを選択できる。
全天周は通常の円周魚眼の画像だが、パノラマはいわばそれを開いて横長にしたものだ。1回のシャッターで180度のパノラマ写真が撮れる。
超広角は、中央部分を切り出してケラレ部分がない画像にしたもの。対角208度での画像記録ができる。ケラレがないため、1枚の写真としてはSNSに投稿する場合などには扱いやすいだろう。画面の周囲が歪むものの、それが迫力に結びつくような撮り方を考えるのもまた楽しい。
再生ボタンで画像を再生すると、左右のフリックで画像送り、ダブルタッチで画像の拡大縮小ができる。パフォーマンス的にはスマートフォンレベルとまではいかないし、低速のBluetoothでカメラ部と接続して画像を表示しているため、フル解像度の画像を再生するのは難しいが、ざっくりと構図の確認ぐらいはできる。
Bluetoothによる無線接続だが、コントローラーとカメラの接続は安定しており、違和感なく操作できる。一瞬のシャッターチャンスを狙う、というよりも、とにかく何枚も撮影したり、インターバル撮影を活用したり、全員の楽しいシーンを撮影するといった具合に、アクティビティの様子を撮影する、ライフログを記録するという使い方がいいだろう。「一瞬を記録する」というより「時間を記録する」というイメージだ。そこからさらに180度の全天周画像でそのすべてを記録できるというのがEX-FR200の良さだろう。
複数カメラの同時利用で全天球の撮影も
EX-FR200のもう1つの特徴は、2台のカメラを同時に使って撮影できる点だ。EX-FR200だけでなく、EX-FR100も接続できるため、従来モデル利用者の買い増しにも対応できる。
複数のカメラを利用する場合、両方のカメラの電源を入れておき、コントローラーのMENUから「マルチカメラ登録」をタッチし、「追加」を選ぶ。Bluetoothの接続画面になるので、もう1台のカメラを設定すればいい。接続は簡単だ。
マルチカメラ登録をしたあとは、カメラを起動する度に「優先接続」に設定したカメラに接続する。優先接続側が起動していない場合、もう1台に自動的に接続される。
コントローラーのカメラ追加アイコンをタッチすると、もう1台のカメラに接続を試みて、接続が成功すると上下に2台のカメラのライブビュー画像が表示される。この状態でコントローラーのシャッターボタンを押すと、2台同時に撮影が行われる。カメラ部のシャッターボタンを押すと、個別にシャッターが切れる。
2台のカメラを同時に撮影できるので、今までにない撮影ができる。2台をそれぞれ前方と自分という2方向に向けて撮影すれば、同じタイミングで自分がどういう行動をしていたか、その時の前方の様子はどうか、といった状況がつぶさに記録できる。設置する位置は自由自在なので、アイデア次第でさまざまな瞬間を撮影できるだろう。
インターバル撮影にも対応するし、2人がそれぞれのカメラを持って個別に撮影しつつ、状況に応じてコントローラーで同じ瞬間も撮影する、といった使い方も面白い。
2台のカメラは同時記録だけでなく、カメラ切替アイコンから個別カメラに切り替えできるので、状況によって使い分けも可能だ。
その様子は本レビューの前編にあたる、水咲奈々さんの沖縄レポートでふんだんに紹介しているので参考にして欲しい。
この2台のカメラの同時撮影を応用したのが、アクセサリのマルチカメラマウンター「EAM-8」(10月下旬発売)だ。
これは2台のFRシリーズを前後に並べてマウントできるもので、EX-FR200を2台使えば、180度+180度、つまり360度の全天球画像が撮影可能になる(正確には185度+185度だが)。EAM-8を使わずに2台を使ってもいいが、合成の関係上、基本的にはこのEAM-8を使う必要がある。
2台のカメラをコントローラーに接続すると、撮影モードに「全天球」が追加される。
それぞれのカメラでモードを全天球にした上で、2台の映像を同時に表示した状態でコントローラーから撮影すると、全天球画像が撮影される、という仕組みだ。
正確には、全天周画像が2枚記録されるのだが、それをスマートフォンに取り込むと、アプリ上で2枚を合成して全天球画像として表示してくれる、という形だ。
仕組みとしてはリコーのTHETAのような全天球カメラと同様。あとはそれぞれのカメラから画像をスマートフォンに転送して、「EXILIM ALBUM」アプリに取り込めば360度の全天球画像として利用できるようになる。
実際には、2台のカメラのつなぎ目が黒く目立つ点、全天球画像として出力できない点は残念な部分。画像の転送は2台同時にできないので、いちいち無線LANを切り替えて転送しなければならない点も面倒ではある。
その代わり、PCに画像を取り込んでPC用ソフトウェアの「EXILIM 360 Viewer」を使うと、全天球画像の閲覧、補正、そしてスティッチング時のつなぎ目の変更ができる。動画の場合も同様。MP4動画やJPEG画像として書き出しもできるので、360度に対応したFacebookやYouTubeを使って共有することも可能だ。
スマートフォンから全天球画像の共有ができないのは残念だが、カメラを2台用意すればすぐに全天球画像を撮影できる点は便利だし、全天球画像の撮影にさらに台数が必要なGoProのようなカメラに比べれば、気軽に全天球の撮影ができる。また、身体の前後に付けることで自分を中心にした360度映像が記録できるのも、単体の全天球カメラではできない点だ。
スマートフォンをリモコン代わりに、すぐにSNSにも繋がる
EX-FR200は、従来通りスマートフォンとも連携する。「EXILIM CONNECT」アプリがiOS、Android向けにリリースされており、カメラと接続することでコントローラー代わりにスマートフォンを利用できる。
アプリを起動したら、まずはカメラとペアリングを行う。最初にBluetoothとの接続を行い、その後に無線LANと接続する。普段はBluetoothでカメラとスマートフォンを接続しておき、必要になったらBluetoothから無線LANを起動してカメラとスマホを接続する、という流れになる。
Bluetoothはスマートウォッチとの接続でも使われる低消費電力のBLE(Bluetooth Low Energy)を使うため、カメラとスマートフォン双方のバッテリーへの影響は最小限に抑えられている。常時接続を生かして、カメラで撮影をすると自動的にスマートフォンの無線LANを起動して接続し、画像を転送するオートトランスファー機能が実現されている。
無線LANの設定は画面の指示に従っていけばいいが、iOSの場合は接続プロファイルのインストールが必要なため、多少手間がかかる。また、Bluetoothから無線LANの切り替えは、テストした限りはiPhoneの方がうまくいかない場合が多かった。その場合は、手動で無線LANの接続を行なえばいい。
スマートフォンと接続すると、ライブビューを見ながらのリモート撮影や画像の転送、カメラの設定変更などができる。コントローラーと比べて撮影してすぐにスマートフォンに画像を転送できる点でメリットがあるが、コントローラーの方が反応は良く、接続の問題は少ないので、一概にどちらがいいとは言いにくい。シーンに応じて使い分けるといいだろう。
EXILIM CONNECTアプリでも、2台までのカメラを登録できる。2台を登録しても、コントローラーのように2台同時に画面表示され、撮影できる、というわけではなく、2台のコントロールは別々のようだ。
EXILIM CONNECTに加えて、新アプリの「EXILIM ALBUM」も用意されている。これは、スマートフォン内の画像をアルバム化して管理、共有できるアプリだが、全天周画像を表示させると、複数に分割して表示するのが面白い。また、EX-FR200を2台使って撮影した全天球画像も確認することができる。
EXILIM ALBUMは、日々の撮影された画像をアルバムという形でひとまとめにするが、SNSと親和性の高い縦方向にスクロールするタイムライン的なデザインで、そこに短冊を組み合わせたような写真が並ぶ。スクロールさせると画像が滑らかに動き、タイムライン的に日々を振り返るのに適している。
興味のある画像をタッチすると、画像を単体表示できるほか、半球画像や全天球画像の場合は指でグリグリ画像を動かしたり、スマートフォンを傾けた方向に画像の表示エリアが移動する機能も搭載している。
タイムラインの動きや個別の画像のスライドショー動画を、音楽を自動的に付与して保存、共有する機能も搭載している
スマートフォンと連携することで、画像の閲覧はより快適になるし、全天球画像をスティッチングされた状態で閲覧できる。スマートフォンに保存されているので、そのまますぐにSNSに投稿することも簡単にできるのは大きなメリット。Bluetoothと無線LANの接続が安定しないこともあるので、その辺りがより安定するようになれば、さらに便利に使えるだろう。