イベントレポート

坂崎幸之助さん「ライカはローリングストーン」トークショー

限定50台・漆塗りのライカMもお披露目

3月22日から3月28日かけて、ライカ大丸東京店でTHE ALFEEのメンバーである坂崎幸之助さんの写真展「ライカはローリングストーン」が開催された。本稿では3月25日(土)に行われたトークショーの模様と、同日にお披露目された大丸創業300年記念モデル「ライカMブラックアンバー」についてお届けする。

盛況のトークイベント

今回の写真展は、ライカ大丸東京店の所在する大丸東京店10階の美術画廊で開催。作品の販売も行われていた。取材した第1部のトークショーには500名の参加応募があり、抽選で60名が選ばれたという。

2,000台のカメラコレクションでも知られる坂崎さん。ライカは35mmフィルムを使った小型精密カメラのパイオニアとして「小さなネガから大きな画像」を合言葉に発展してきた点などをトークショーの参加者に紹介した。坂崎さん自身にとっては、撮影距離を5mに固定してスナップ撮影するなど、「たくさんシャッターを切れるカメラ」だというライカ。日頃は写真を狙って撮ることはないそうだが、今回は展示を前提とした撮影だったため、多少は狙いを持った作品もあるという。

また普段は、写真家の田中長徳さんと組織する「日本JPEG党」の党員でもあるが、展示が前提だったためRAWでも撮ってみたところ、明るさや色合いなどを後から「ライトルーム」(銀塩写真を現像する暗室=ダークルームとの対比として)で直せることを改めて便利だと感じ、「写真展を目標にするならRAWデータで撮りましょう」と来場者に解説した。

坂崎さんは、M型ライカ初号機の「ライカM3」と同じ1954年生まれ。「坂崎、高見沢(俊彦さん。THE ALFEEメンバー)、ゴジラ、ニッポン放送」と同級生の名を挙げた。

中学校入学と同時にフォークギターを手にし、ギター歴も50年を迎えた。最初の1本はヤマハ初の国産フォークギターであり、現在でも評価の高いFGシリーズだった。型番は「FG-110」で、国産ギターのセオリーとして「数字が"110"なら定価は1万1,000円だろう」と思ったら1万2,000円だったという話など、当時を振り返る。のちには、アコースティックギターの最高峰ブランドといわれるマーチンから坂崎幸之助モデルが登場している。

ほかにもコレクションしている「和ガラス」の展示を現在開催中という話など、多彩かつ、どれも並みの凝りようではない坂崎さんの深みがうかがい知れるトークとなった。

いっぽうカメラは、小学5年生のときに手にした「フジカドライブ」が最初。ゼンマイ式のハーフサイズカメラで、当時撮影したネガがまだ残っているという。トークショー当日のカメラはデジタルのライカM-P(Typ240)。レンズはライカ愛好家が通称"8枚玉"と呼ぶ初期型のズミクロン35mmで、レアなブラック仕上げ。現在のデジタルカメラと半世紀前のレンズという組み合わせだが、同じライカMマウントで繋がっている。愛好家にはたまらない組み合わせだ。

坂崎幸之助さん

また、赤瀬川原平さん、高梨豊さん、秋山祐徳太子さんによるライカ同盟に対して「偽ライカ同盟」と名付けられた団体に田中長徳さんらと所属し、ライカのコピー製品、中でも"ロシアンライカ"と呼ばれるロシア製コピーライカを楽しむ一面もある。今回撮影に使ったライカM-P(Typ240)にはライブビュー機能があるため、本来は目測撮影しかできない距離計非連動のレンズでも、実際に写る画像を見ながらピントを緻密に合わせられる点が楽しいと話す。

坂崎さんは、クリスティーズなどで大量にまとめ買いしたという距離計非連動のロシアレンズ達について「彼らもいまだかつて、こんなにしっかりピントを合わせてもらったことはないはず。レンズ自身の喜びの声が部屋のあちこちから聞こえてくる気がする」と話していた。

写真展タイトルの「ライカはローリングストーン」は、作詞家で"時計王"などとしても知られる松山猛さんが作詞したザ・フォーク・クルセダーズの同名曲がもと。銀座でブラックボディのレアなライカを手に入れるという、カメラ好きにはすぐ情景が浮かぶようなストーリーだ。

言うまでもなくボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」が由来の題名で、そのローリング・ストーンとは「苔が生えないぐらい転がり続けよう(新しくいよう)」という意味が込められ、坂崎さん自身の「好きなライカやレンズはその日その時でコロコロ変わる。いつまでも苔むさない」という気持ちも重なっている。

坂崎さんは東京・京橋のIsland Galleryに所属する写真家であり、次回の坂崎幸之助書写真展「50年目のギター」が5月16日(火)〜5月29日(月)の期間で開催されることが決まっている。

本漆塗りの「ライカMブラックアンバー」お披露目

ライカ大丸東京店に展示されていた「ライカMブラックアンバー」

イベント当日の3月25日から受注開始した大丸創業300周年記念モデル「ライカMブラックアンバー」が披露された。ライカM(Typ240)をベースに輪島の本漆塗りを施した特別モデルで、限定50台の受注販売となる。価格は税込135万円。

漆塗りの部分は5層の塗り重ねだといい、手にしても金属ボディらしい冷たさが伝わってこないのが新鮮だった。正面の赤いライカロゴの仕上げは、コーポレート・アイデンティティの観点から現在では色を変えるなどの手を加えることも許されない場所だが、ドイツ本社の許可により漆塗りが実現したという。

ボディが収まる桐箱には四季がモチーフのレリーズボタン4個も入り、こちらも目を楽しませる。納期は注文から3〜4カ月。ライカ大丸東京店、ライカ松坂屋名古屋店、ライカ大丸心斎橋店の3店舗で受注する。

試作品を手にする機会があった。実際はボディキャップも漆塗り
ライカMブラックアンバーの試作品を手にする坂崎さん。漆つながりで、ジョン・レノンのためにオノ・ヨーコがヤマハにオーダーした"ドラゴン"と呼ばれる漆塗りギターについて、漆とギターの適正湿度の違いから製造に苦労した話、その納品から半年でジョン・レノン自身が撃たれて亡くなった話を回想。

本誌:鈴木誠