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Profoto Japan Tour 2015“小樽編”レポート

運河で日中シンクロを体験 今後は京都・門司港・名古屋・東京で開催

プロフォトが、ライティングセミナーなどを行うイベント「Profoto Japan Tour 2015」を開催している。全国6都市をまわるツアーでこれまでに仙台と小樽で開催した。ここでは10月4日と5日に行われた小樽会場での模様をお伝えする。

なお、今後のスケジュールは以下の通り。セミナーやワークショップは一部有料で、事前の申し込みが必要。

京都
京都市国際交流会館:10月21日(水)・22日(木)
門司港
旧大連航路上屋:11月4日(水)・5日(木)
名古屋
名古屋能楽堂:11月20日(金)・21日(土)
東京
会場未定:12月3日(木)・4日(金)
会場は小樽運河そばの小樽市観光物産プラザ(運河プラザ)

このイベントでは、同社のストロボやライティングについて実践的に学べるセミナーやワークショップが充実している。特に屋外での「ロケーション撮影ワークショップ」は好評で、有料ながら小樽会場は定員の各回15人が満員となった。

いずれの会場も、ロケーション撮影ワークショップで写真映えする場所を選んでいるのが特徴となっている。

大人気の屋外ワークショップ

小樽会場のロケーション撮影ワークショップでは、フォトグラファーの上田晃司氏が観光名所など3カ所を周り、ストロボの使いこなしを解説した。モデルは波連彩菜さん。

参加者がまず向かったのは小樽運河。小樽と言えば多くの人が思い浮かべる代表的な観光スポットだ。その運河を背景に日中シンクロで女性モデルを撮影した。

小樽運河を背景に撮影を行った

使用したのは無線シンクロとTTL調光対応のバッテリー式ストロボ「B2 250 Air TTL」。モノブロックストロボに比べると持ち運びしやすく、灯体が小型なのでセッティングの自由度も高い。これまでのプロフォトのアクセサリーがそのまま使えるのもメリットになっている。

B2 250 Air TTLの灯体
B2 250 Air TTLの電源部(バッテリー内蔵)
トランスミッターのAir Remote TTL。この度のファームアップでキヤノンの最新機種EOS 5Ds/5Ds RのTTLに対応した

最初は逆光における日中シンクロの基本について解説。太陽を背にして、運河沿いの壁にモデルが座るという状況で、ソフトボックスを付けたB2 250 Air TTLを1灯当てた。

B2 250 Air TTLにはソフトボックスを装着

逆光で日中シンクロをしない場合、人物に露出を合わせると背景が白トビし、背景に露出を合わせると人物が黒ツブレするのはご存じの通り。こうした場合、カメラをマニュアルモードにして露出は背景に合わせる。今回はISO100でシャッター速度1/200秒、絞りはF10~F13が適当との説明があった。

日中シンクロの作例。背景のトビが抑えられ、雲のディテールが表現できた

参加者は持参したカメラに、貸し出されたトランスミッター「Air Remote TTL」を装着し、1人ずつ撮影を体験した。Air Remote TTLは現在、キヤノン用とニコン用がラインナップされている。

次に、同じ場所でハイスピードシンクロ(HSS)の撮影を行った。これは絞りを開けて背景をボカしたいときなどに使うテクニック。1/250秒といったシンクロ速度より速いシャッターを切ることができる。

ここで上田氏はISO64、F1.8、1/4,000秒という設定を示した。筆者のレンズは開放F2.8でベース感度がISO100だったためISO100、F2.8、1/4,000秒で撮影した。最初の作例に比べると、背景がボケて人物が浮き出るように描写できた。

ハイスピードシンクロの作例。絞りを開けられるため、背景が大きくボケた描写になった

続いて近くにあるHOTEL VIBRANT OTARUに移動。旧北海道拓殖銀行の小樽支店だった建物で、吹き抜けのロビーで撮影を行った。ここでは窓からの光で逆光となるモデルにストロボを当てることで、窓付近が大幅に白トビしてしまうことを防ぎつつ、人物の顔を明るく写すセッティングを試した。

ここではB2 250 Air TTLに大きなアンブレラを装着して撮影

窓からの自然光や室内の照明といった定常光を活かすため、ここではISO800、F1.6、1/60秒での撮影となる。筆者はISO800、F2.8、1/60秒で撮影した。カメラの設定は使用するレンズなどによって参加者各人で異なるが、B2 250 Air TTLはTTL調光に対応しているため、基本的にはそのままで同じ露出を維持できる。

上田氏が撮影したカットは、すぐにパソコンおよびタブレットに転送して参加者が見られるようになっていた

ストロボ無しの作例と比べると、室内の明るさはそのままに、人物の顔が明るくなってやはりモデルが引き立つ写真になった。

ストロボを使用しない場合。顔が影になるため、背景の明るさに対してやや暗い
ストロボを使用したカット。顔が明るくなり、人物が自然な感じで引き立った

最後は、北海道で最初の鉄道となった旧手宮線の跡地で屋外撮影。このときは影が出ないほどの曇天で、光はかなりフラットな状態だった。

ワークショップの最後は旧手宮線跡地での撮影

線路上にモデルを立たせてポートレートを撮影するというシチュエーション。太陽が見えないため逆光にはならないが、ストロボを使うことで背景を暗めにでき、印象的な写真を撮ることができる。

ここでも露出はまず背景に合わせる。ボケを大きくしたいためF2.8まで絞りを開ける。その時のシャッター速度は1/1,000秒。そのため、ハイスピードシンクロを利用する。感度はISO100。

ここではB2 250 Air TTLにオクタと呼ばれるソフトボックスを使用。光をシャープにするためグリッドも取り付けた
光がフラットな曇天。そのままではメリハリのない写真になる

モデルの背景側の空も曇っており、青空はかすかに見える程度。しかしストロボを使用した作例では露出を切り詰めたためくっきりと青空が映っており、曇天で撮影したとは思えない仕上がりとなった。

ストロボを使用しなかったカット。光はよくまわっているが、それだけに平凡だ
日中シンクロを行うと人物が背景から浮き立つ。曇りだが、青い空も描写できた

上田氏は様々なアクセサリーを併用することで光の質が変わることや、写真の狙いによる光の当て方などを各所で解説した。参加者からは上田氏やプロフォトのスタッフに熱心に質問する姿も見られた。

室内でも充実のセミナー

また、室内でのセミナー「ベーシックスタジオライティングセミナー」(有料)では、上田氏がB2 250 Air TTLやモノブロックタイプのバッテリー式ストロボ「B1 500 Air TTL」について解説した。

プロフォトのストロボを解説する上田氏(中央)

ストロボ本体のみではなく、豊富なアクセサリーについても詳細に説明し、実際にどのような効果があるのかをその場で撮影して結果を見せるためわかりやすい。また、簡単にできる多灯撮影のセッティングなども披露した。

トランスルーセントと呼ばれる半透明のアンブレラなど一般にはなじみの無いアクセサリーも紹介
2灯、3灯といった多灯ライティングにおける灯体の角度や発光量の決め方も説明した
照射の違いを比較写真で見せた

同じく室内セミナーの「アドバンスセミナー『ポートレートは光が命』」(有料)では、フォトグラファーの石田晃久氏が、ライティングの重要性について話した。

演色性について説明する石田氏(右)

セコニックのカラーメーター「スペクトロマスターC-700」でプロフォトのストロボやHMIライトの光を計測し、優れた演色性を持つとした。プロフォトのストロボは連続発光させても、演色性に変動がないことを実演して見せた。作品を撮る際には良い光を選ぶことが重要で、C-700を使って演色性を確認することは有用だと話した。

演色性の違いについて説明した
プロフォトのストロボは太陽光に近い演色性の高いものという

石田氏もストロボのアクセサリーについて説明し、一例として「マグナムリフレクター」を付けたストロボを高い位置から照射して、印象的な影を作り出すテクニックなどを紹介した。

マグナムリフレクターによる撮影などを紹介

また、協賛各社の製品を紹介する無料セミナーも併せて行われ、その製品を愛用している写真家やメーカーのスタッフがプレゼンテーションを行った。

協賛各社のセミナーも行われた。これはハッセルブラッドの製品を説明するフォトグラファーの齋藤義典氏

協賛各社の最新アイテムにも触れられる

会場には協賛各社の製品を展示したスペースも用意され、来場者は自由に製品を試したり、スタッフに質問することができた。特に地方ではこうしたプロ用機器や高級なカメラに触れられる所がほとんど無いということで、来場者には好評だったようだ。参加したメーカーによると、数時間も掛けて来た来場者もいたそうだ。

会場には協賛各社のブースが並んだ
プロフォトは、ストロボ関連製品を一同に展示
ATOMOSは、動画を高画質で記録できる外部レコーダー一体型モニター「NINJA ASSASSIN」などを展示
EIZOは、4K対応液晶ディスプレイColorEdge CG248-4Kなどを展示。VAIO製タブレットの外部ディスプレイとしての提案をしていた
富士フイルムは、プロフォトグラファー向けのアルバムオーダー/決済システム「NETSPRO-E」を紹介
ハッセルブラッドは、デジタルカメラH5D-50cなどを展示
フェーズワンは、中判カメラXFなどを展示
セコニックは、スペクトロマスターC-700などを展示
ソニーは、α7R IIを初めとしたレンズ交換式カメラとレンズを展示

プロフォト代表取締役の河原克浩氏によると、来場者は目的を持ってきている人が多いとのことで、ハイアマチュアも多く来たそうだ。また、ロケーション撮影ワークショップには東京からの参加者もあったといい、人気がうかがえる。

今回、ロケーション撮影ワークショップに参加したが、自分でもこういう写真が撮れるのだという驚きがあった。また普段の撮影で参考になる話も多く聞くことができた。こうした機材やセミナーが気になる方は、今後のイベントをチェックしてみてはいかがだろうか。

(本誌:武石修)