デジカメアイテム丼
プロフォト「B1 500 Air TTL」
バッテリー駆動やTTLに対応。アマチュアにも使ってほしいモノブロックストロボ
Reported by 礒村浩一(2013/12/19 12:01)
一般的に撮影用ストロボというと、カメラに内蔵されたストロボかクリップオンタイプのストロボを思い浮かべることだろう。
ただしその手のストロボは小型であるため光量も限られており、さらにフル発光させると充電に時間がかかってしまう。ハードな撮影においては力不足なのも事実だ。
こうした一般的なストロボとは別に、本格的な撮影に使用されているのが大型ストロボだ。主にスタジオ内での撮影で使用されることが多く、商用電源より直接電力を得ることで、大光量でありながら急速な充電が可能になっている。
今回紹介する、プロフォトから発売された「B1 500 Air TTL」も大型ストロボのひとつである。灯体と充電コンデンサーが一体化されたモノブロックと呼ばれるタイプのものだ。
プロフォトからはすでに同じくモノブロックタイプの「D1」シリーズが発売されているが、このB1 500 Air TTLの大きな特徴は、充電式のバッテリーで駆動するという点。大容量のリチウムイオン充電池を使用することで、最大500Wsの大光量での使用でも約220回のフル発光が可能だという。これにより電源の確保が難しい屋外などでも大型ストロボを使用したライティングが可能だ。
電源は本体の「TEST ON/OFF」ボタンを1秒間ほど長押しして投入する。電源OFFには約3秒間の長押し。
液晶画面には現在の出力値、ワイヤレスコントロールのモードとグループ及びチャンネル、モデリングランプの出力などが表示される。「TEST ON/OFF」ボタンを短く押すことでテスト発光が可能。発光後再チャージ時のビープ音の有無の設定は「READY」ボタンを押すことで行なう。
本製品には、モデリングランプが搭載されている。瞬間光のストロボフラッシュだけでは被写体のライティング状況がわからないので、定常光のモデリングランプの光で状況を確認する。
モデリングランプは20WのLEDを使用。通常大型ストロボで採用されているハロゲンランプの70W相当の光量があるという。モデリングランプはストロボの強さに比例して明るさを変化させるモードとマニュアルで任意の明るさに設定するモード、ON/OFFの選択が可能だ。
カメラとの同期発光は、電波無線方式のワイヤレスリモートコマンダー「Air Remote TTL-C」を介して行なう。
またB1 500 Air TTLとAir Remote TTL-Cとの組み合せにより、キヤノンのデジタル一眼レフカメラにてTTLオートストロボとして使用することができる(ニコンのTTLオート調光に対応した「Air Remote TTL-N」は2014年発売予定)。
ワイヤレスリモートコマンダーは、8チャンネル3グループのB1 500 Air TTLをTTLオートまたはマニュアル調光可能。またProfoto Airシステムとの互換性もあるので、ワイヤレスリモートコマンダー「Airリモート」でのマニュアル調光も可能だ。
対応カメラ、ストロボ製品情報はここで確認できる。
E-TTLオート調光が可能ということは、被写体とストロボの距離が変化しても調光可能範囲であれば同じ露光量でライティングされるということが利点として挙げられる。マニュアル調光のストロボでは、被写体にストロボが近づけば明るく、離れれば暗くなってしまうからだ。
下の作例は、EOS 70Dの調光補正を行なって-3EV〜+3EVまで変化させて撮影したもの。白っぽい壁を背景に白い彫り物を撮影したので全体にアンダー目の露出となってはいるが、ちゃんと調光されて光量が変化していることが判る。
次は、Air Remote TTL-Cで調光補正した例。-2EV〜+2EVまで補正が可能だ。ただしこの値はカメラで行なう補正値に上乗せされる。カメラ+3EVにAir Remote TTL-C+2EVだと+5EV補正ということだ。
今度は、カメラと被写体の関係はそのままで、被写体とB1 500 Air TTLの距離を1〜6mまで変えながら撮影した。1〜5mまではほぼ同じ明るさ。6mになると若干光量が足らず暗くなった。
写真にある数値は、撮影距離とB1 500 Air TTLの発光量。500Wsフル発光を10.0としている。4mの位置で10.0フル発光なので、6m位置では光量が不足してしまった(共通撮影データ ISO100、1/250秒、F8)。
ここまででB1 500 Air TTLの特徴について検証してきた。そこで撮影においてはどのような活躍をしてくれるのかを、実際にポートレート作品を制作することでいろいろと検証してみた。
まずは、明るい日が差す日中の屋外で撮影した作品をご覧いただきたい。ワイヤレスでのE-TTLオート撮影と大光量を活かしての撮影である。
屋外でのストロボを利用した撮影のうち、とてもよく使用するテクニックが日中シンクロだ。日中シンクロとは、日光の明かりがある環境において、定常光である日光とストロボの瞬間光とを合わせ、被写体をライティングするテクニックだ。
3点の写真のうち、いちばん左の写真は逆光において人物の顔が暗くなってしまった状態だ。これを補おうと顔の明るさに露出を合わせ補正したものが、中央の写真になる。
人物の顔の明るさはちょうど良くても背景が明るすぎてしまい、どのようなシチュエーションでの撮影なのかわからなくなってしまった。そこで全体の露出は最初のままで、人物の顔をストロボのフラッシュ光で明るくしたものが右の写真となる。
この方法ならば背景も白トビせず、また人物の顔も暗くならない。これが日中シンクロの基本テクニックとなる。
ただし、人物に当たる光は人工的な印象のものとなる。これがレフ板を使用した場合と大きく異なる点だ。この人工的なライティングをあえて活かすことにより、強い印象でドラマチックなライティングを演出することができるのだ。
次の作例も、強い日光と明るい空の下での日中シンクロ撮影。
背景となる青い空の露出にカメラの露光値を合わせたうえで、本来逆光で暗くなるモデルをB1 500 Air TTLの大光量で明るくライティングした。1/250秒の速いシャッタースピードで風になびくスカートが空中で止まり躍動感のあるシーンとなった。
下の作例では、カメラアングルを変えて空の面積を少なくしモノトーン調の背景にモデルが浮かび上がるようにライティングした。B1 500 Air TTLをモデルに近づけて硬めの光にしたことで陰影のある力強いポートレート作品になっている。
上記2作品の撮影風景。こちらに向かって歩いて来るモデルと一緒に、カメラとB1 500 Air TTLが後ずさりながら撮影した。
動きながらの撮影だと、モデルと灯体の距離は微妙に変化してしまう。しかしE-TTLオートのおかげで、ほとんど一定の光量を保ち撮影することができた。
今度はカメラとモデルの位置を逆にして、人物を明るく、背景を暗く落とし込むように露出バランスを調整した。
空は順光なので逆光に比べると輝度が下がる。人物に強い光を当て、あえて影の濃いスタジオ風ライティングとしたことで、非現実的な印象のポートレート作品となった。
またモデル右斜め奥より、2灯目のB1 500 Air TTLのフラッシュ光をモデルに照射。モデルの右側面の髪のエッジを光らせ立体感に繋げている。2灯ともEOS 70Dにて、ワイヤレスE-TTL調光が行なえる。
下の写真が撮影風景。
メインライトのB1 500 Air TTLに装着しているのは、オプション製品のソフトライトリフレクター(通称オパライト)。ストロボ光を拡散させながらもコントラストのあるライティングが可能だ。
またモデル右奥のB1 500 Air TTLには、グリッドライドが装着されているのがわかるだろう。このように数多く用意されたプロフォトストロボ用のアクセサリーをそのまま使用できるのも、システム化されたシリーズ製品の魅力でもある。
次は、水平線の向こう側に太陽が沈み、残照が残る空と海を背景に撮影したポートレート作品をご覧いただきたい。背景の夕景との露出バランスがコツだ。
大きく動くモデルを瞬間的なフラッシュ光と速いシャッタースピードで停めたことで、動きを感じられる作品となった。
またテンポ良く撮影を進めるためにも、チャージ間隔の短いB1 500 Air TTLでの撮影は非常に心地よい。
これがそのときの撮影風景だ。
メインライトにプロフォトオプション製品のRFiソフトボックス60x90cmを使用。ポートレート撮影では定番のライティングアイテム。2層のディフューザーにより、光をやわらげながらも光量は極力落とさずに被写体を照らすことができる。
モデル右奥からはグリッドを装着したB1 500 Air TTLを発光させてモデルの髪と白い衣装を浮き立たせた。
とにかく太陽が沈んだ直後は一気に空が暗くなっていくので、残照が消えないうちにライティングと撮影を行なわなければならない。
背景とストロボ光の光量バランスが肝であるこのような撮影では、テスト撮影を繰り返しながら微調整を素早く行なう必要がある。
カメラ位置に居ながらにして全ての灯体の調光が可能なワイヤレスコントロールシステムは、限られた時間のなかでの最小限なテスト時間に繋がり、その分の撮影時間を拡げることで貴重な撮影チャンスをより得ることができる。
次は、日が沈み真っ暗になった後の作例。海岸の巨石の上に立つモデルを星空をバックに撮影した。
30秒間の長時間露光により星々を捉えると同時に、B1 500 Air TTLを2灯発光させて人物と岩場をライティングした。
巨大な岩の荒々しさと深淵な星空という自然との競演。岩の上にセットしたB1 500 Air TTLとカメラの距離は30m程離れており、またカメラ位置からは灯体を直接見ることができない。電波式のワイヤレスコントロールシステムだからこそ可能なライティングだ。
撮影風景の写真がこちら。
岩の上に立つモデルに、メインライトとしてRFiソフトボックス60x90cmを装着したB1 500 Air TTLでライティング。さらにモデルの右手下側からB1 500 Air TTLをダイレクトに照射した。モデルが羽織るショールを透過させると同時に岩陰から拡がるフレア光が神秘的な光として印象的な演出となった。
なお、このライティングではE-TTLではなく、マニュアル調光で各ストロボの光量を調整した。
おなじく岩の上に立つモデルと星空の競演。強い逆光のライティングによりどこか神々しく羽を広げた鳥かのようにも見える。
星空を捉えるために8秒間の長時間露光。人物へのライティングには岩の裏手から1灯のみを発光させている。
これも電波式のワイヤレスコントロールシステムのおかげで短時間のセッティングとテスト撮影でライティングを完成させることができた。厳冬期の夜間屋外での撮影、さらに印象的な衣装とするために薄着となりがちなモデルのためにも、短時間での撮影完了は大きな課題となる。
その撮影風景。
暗くて見えないが、私が岩の影からローアングルでモデルと星空をカメラでフレーミングしている。1灯のみのシンプルなライティングだが、大光量なB1 500 Air TTLのおかげで魅力的な作品を創ることができた。
ご覧のように「B1 500 Air TTL」が持つ「シンプルなコンデンサ一体型灯体」「約220回発光可能なバッテリー駆動」「多灯をワイヤレス調光」「キヤノンE-TTL調光に対応」「チャージ時間が短いリサイクルタイム」といった特徴を最大限に活かすことで、あらたな撮影アイデアが次々と生まれてくる。プロ機材としても有名なプロフォトの製品であるだけに、価格も1灯24万1,500円と決して安いものではないが、これらの機能と安定性、および信頼性は非常に魅力的だ。
プロフォトグラファーだけでなく、アマチュアフォトグラファーにとってもアイデアを具象化させ作品へと昇華させることができる強力な武器となることは間違いないだろう。
モデル:夏弥
アシスタントフォトグラファー:関一也(ONE Film Works)
衣装協力:チャイハネ
制作協力:プロフォト株式会社