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シグマ山木社長自らが就職説明会でプレゼン

シグマが求める人物像とは?

株式会社シグマ代表取締役社長の山木和人氏

シグマは、2016年度新規採用者向けの会社説明会を5月23日に開催した。会社説明会にはシグマ代表取締役社長の山木和人氏が登壇し、会社説明や事業概要、会社の歴史、求められる人材像について説明を行った。山木社長自らが都内の会場で説明を行うのは、シグマとして初めて。

会場の様子
目次

"サラリーマン"になるな

山木氏は会社概要を説明する中で、海外展開中の販売会社を紹介。グループ会社を説明するとともに、今後展開予定の地域について言及した。

「当社では市場がある程度大きくなった国に直接販売会社を置いて、マーケティングや営業活動を行なっていきます。市場成長が途上にある場合は、現地の販売代理店と契約して営業活動を行ないます」

海外子会社
シグマ本社屋

同社の組織に関する解説も山木氏自ら説明した。この中で、エンジニアに持ってほしい心構えとして、日頃社員に声をかけている内容を紹介した。

「私は設計の社員によく"サラリーマンになるな"と言っています。“自分たち、サラリーマンですけど”と言われますが」(笑)

「会社組織ですから、商品企画からスペックに関する文書が来ると、意図する、しないにかかわらずある種の重力が働いて、文書通りにしてしまいがちです。でも、"言われたからこうした"というだけでは良いものはできないんです。時には商品企画のドキュメントを超えるような提案をしてほしい、ということですね」

「重要なのはコンセプトで、どのお客様に対してどういう価値のあるものを作るか、あるいはこれまでになかったどういう革新性のあるものを作るか、そういうのはある意味技術者が一番解っていると思うんです。だからコンセプトを達成するのであれば、多少予定とスペックが違っても、コストが高くなっても構わないと言っています。そういう議論はいつもしています」

本社組織

国内調達のメリット

同社が掲げるコンセプトについては、創業者の故・山木道広氏が唱えた"Small Office, Big Factory"との言葉を紹介した。

「これはなるべく間接部門を小さくして、技術と製造の部門、つまり製品の価値に直結するところに投資をしようというコンセプトです。その結果として、お客様に最高品質の製品を適正な価格で提供できるようになります」

「オフィス部門を軽視しているというわけではなくて、少数精鋭なだけに、営業、マーケティング、管理部門では個々の高い能力が求められるということですね。能力が伸びたらその分どんどん仕事をしていただいてます」

最終製品を適正価格で販売することを念頭に、技術・製造部門に重点的な投資をするコンセプト
シグマ会津工場
会津工場の加工系

シグマ会津工場については、製品の製造に関するほとんどの工程を内製で行なう垂直統合型の工場と紹介。絞り羽根など細かい部品に至るまで自社で製造を行なっている。自社で賄いきれない部分については、東北地方のサプライヤーを中心に協力関係を構築した。

「なぜ自社で全部やるかというと、理由の1つとしては、技術的な合理性を取っているところが挙げられます。自社でやらないと、どこまで精度を追い込めるのか分からないんですね。これ以上やったら極端に良品率が落ちるという技術限界のラインが把握できるところが利点です」

「当社が国内でのローカルな調達・製造戦略を取る理由もいくつかありますが、本社と工場が近いことで、顔を合わせて打ち合わせをすることができるメリットがあります。もし問題が起きても比較的短時間で対処できる。これは海外に工場を持つグローバルと比べて有利です」

自社で内製する2つの合理性

続けて、レンズ交換式カメラや交換レンズといった光学機器は、多くの部品を使って精度を追い込むことで性能を出す擦り合わせ技術で製造するタイプの製品であり、技術者や加工者の綿密な打ち合わせが重要になると説明。特にハイエンドクラスの製品の開発にさらなる精度が求められるようになった時、ローカルなものづくりが活きてくるとの考えを述べた。

「カメラやレンズは趣味の道具であると同時に仕事用ツールとしても使われているので、付加価値を認める市場性があるんですね。品質に集中すれば、それだけ認めてくださるお客様がいる。そういう側面に助けられているところも多々あります。写真産業の良さはそういうところですね」

「また、この産業は写真文化に支えられています。写真文化は写真機が発明されて以来、長い間脈々と受け継がれてきたものなので、将来的に規模を縮小することはあっても、写真やカメラがなくなることはないでしょう。ですから、イメージングの文化に貢献する形で仕事をしていれば、そう心配することはないのではないかと思います」

シグマが取り扱う光学機器の特徴
シグマが展開する事業の特徴

将来の最大市場は中国

シグマが展開する事業の特徴としては「自社ブランド中心の製品展開」、「独自のセンサー技術を持っていること」、「全製品が日本製であること」を挙げた。海外を含めた市場規模にも触れ、今後の市場動向について言及した。

「市場として最も大きいのはアメリカで、次いでドイツ、日本と続きます。中国も伸びて来ていますね。中国の方は写真が大好きなので、当社にとっても世界最大の市場になる日は近いのではないかと考えています。有望な市場です」

出荷先は75%が海外向け
輸出先は4割が欧州。かつては欧州が5割だったが、アジアやインドの市場拡大に伴い、アジアへの輸出が増加している

生き残るためのコツは“独自性”

シグマは1961年の創業時、光学業界の中でも最後発企業の1つだった。当時はレンズメーカーも50社以上あり、激しい競争に晒されていたという。山木氏はそうした状況を乗り越え、今日まで生き残れた要因として「独自技術の開発とユニークな製品展開」、「自社ブランド中心の事業展開」、「早期の海外展開」を挙げた。こうした取り組みの積み重ねから、今日のシグマを支える「自主自立」や「徹底的な差別化」といった文化が醸成されていったと話す。

「当時、国内においてテレコンバージョンレンズといえばレンズの前に装着するものしかなかったのですが、当社が最初に商品化したリアコンバーターがヒットしたお陰で、厳しい時代を生き残れました。現在、交換レンズメーカーとして生き残っているのは数社しかありませんが、いずれのメーカーも、以前は他社にないユニークで革新的な製品をよく作っていました」

シグマ創業当時の写真。一番左が創業者の山木道広氏
当時の光学業界
シグマ創業当時のヒット商品「Telemac Vario 2x Auto Lens [PE]」

「自分たちで価格を決定する権利を保持することも重要でした。当時はOEM事業で売上が伸ばしやすかった状況もあったようですが、父(山木道広氏)は頑なに自社ブランドで勝負をかけています。最初は苦しかったものの、自立してやっていたことが後々になって有利に働いたということですね」

「海外展開については、まずアメリカに進出しました。日本は比較的保守的な市場なので、新規ブランドが定着しにくい部分もあるのですが、アメリカの場合は品質が良くてそこそこ安価であれば受け入れてくれる土地柄があったので、成功しました」

シグマが生き残れた要因

事業の転換期としては、1990年代半ばに起こった超円高を挙げた。同業他社が事業拠点の海外移転などを推し進める中、シグマでは日本でできることを模索している。この時、低価格製品から高価格製品への事業転換を行った。

「規模の拡大を諦めて、雇用の維持を優先した形ですね。高価格商品中心の製品展開に移ったので、数量ベースのシェアが激減し、金額ベースのシェアが増加しました。当社の場合はずっとコアな写真ファンを対象とした製品展開を行なっているので、そうしたお客様に支えられて、今でも安定した事業ができていると思っています」

転換期の施策
事業転換の結果

光学技術は今後も主軸

今後の事業展開についても言及し、今後も光学技術を軸とした事業展開を行なう方針を明言した。その中で、写真用交換レンズ以外の分野への進出も視野に入れた発言もあった。

「今当社が交換レンズを中心に手がけているのは、そこにまだチャンスがあるから。製造コストが高いので、どの分野で利益が取れるのかという事業性は常に見ています。まずは高い水準の光学技術を持つことが重要。今は光学技術をひたすら磨くことに集中していますが、将来的にフィットする事業があれば、どんどんそちらの方向に事業展開をしていきたいと考えています」

今後も光学技術を軸とした事業展開を行なっていく

シグマが求める人物像

シグマが求める人材像については、特定の人材像はないとしつつも、持っていてほしい資質について話した。

「当社には多様な人材がいていいと思っています。例えば技術者であれば、イノベーションを起こせるスーパーエンジニアばかりではものは作れなくて、製品の着想だけではまだ50%。商品化にあたっては、地味な作業を繰り返しながら追い込んでいって、完成度を高めていく人材も必要です。これはエンジニアに限らず、営業でもマーケティングでも、個性に合わせた活躍の場所があります」

特定のタイプは求めていないとする

「ただ、高い志(こころざし)は持っていて欲しいと思います。具体的には、高い目標設定を持って、毎日少しずつ努力ができる人。これができる人とできない人とでは、まず5年で大きな差がつきます。15年経つと、もうどうにもならない差になります。毎日少しずつでも積み重ねていける、そんな人に来てほしいと考えています」

「社会には正解がないことが多くて、ある条件のもとで最大のパフォーマンスを出す最適解が求められます。答えがないので自分の知識を総動員して、仮説を立てて考えるしかないんですね。残りの学生生活では、是非とも周囲の方と議論をして、考える力を養っていただきたいと思います」

「正解のないところで仕事をするので、実際に動いて確かめてみる行動力も重要です。行動せずに頭だけで考えて口だけ出す"評論家"タイプは敬遠されます。まず仮説を立てて行動して確かめ、修正を行なって再試行する、このサイクルをいかに速く回せるかが勝負です」

「会社の仕事はチームワークなので、仲間を尊重できることも必要ですね。能力を伸ばすという観点から言えば、同僚や上司から学ぶことのできる、謙虚な姿勢で仕事に臨んでほしいですね」

シグマ社員として望ましい人物像

「僕も仕事を始めて20年くらいになりますが、一番良い仕事ができた時に最大の喜びがあると思っていますし、社員にはそういう喜びが実感できる場を提供したいと思っています。当社は上場企業ではないので株主の利益を優先する必要はありません。未上場であることの利点を活かした会社運営を心がけたいと思っています」

参加者からの質疑応答

――社長がプレゼンテーションするのは珍しいと思うのですが、何か理由があるのですか?

「社長がやるのは珍しいのかな? なぜかと言われれば、やれと言われたからです(笑)が、私自身も良い機会だと思っています。当社は50年以上の歴史のある会社ですが、今は事業環境も変わって、色々と変えようとしている最中なんです。志のある方に入っていただきたいと思っているので、私の口から現状をきちんとご説明して、ご理解いただいたうえで、共感いただける方に入っていただけたらいいなと思って、こういう形で開催しました」

質疑応答の様子

――今までの経験で、辛かったり、苦しかった時に、どのような気持ちで仕事に臨まれていましたか?

「色々と苦しい時期もありましたが、ただ、自分としては最終的にこういうことがやりたいというビジョンがありました。革新的なものを作ってお客さんを驚かせたいし、ユーザーの皆さんには幸福になってもらいたいという、言ってみれば夢があるので、そのためのステップだと思えば乗り越えられたところはあります。逆に言えば、悩まないというのは現状の課題が見えてないということでもあるので、それは成長の余地がないということですよね。だから、苦しむことを悪いことだと捉えないで、こうあるべきだと思うところに向かって頑張るべきだと思います」

――現在は個人向け製品を主力とされていますが、そこで積み重ねてきた技術やノウハウを活かして、企業や官公庁向けの事業を展開していくことは考えていますか?

「やりたいとは思っていますが、当社では5年、10年後も続けて差別化できないものはやらないと決めているので、そういう機会があれば始める可能性はあります。現在BtoC事業で自社ブランドを主力として展開しているのは、自社で製品の値付けの決定権を持つことが重要だと考えているからです。そうした前提のもとBtoBの仕事をする場合は、特有の技術を持っていることが必要です。以前から携帯端末に搭載するカメラのレンズで協業の話はたくさん来ているのですが、ずっと断り続けています。そのために設備投資をすれば、1〜2年の短期で利益が出るのはわかっていたのですが、長期的に見ればそうはならないのです。そういう観点で事業を選択しています」

――社員として、写真に対する熱意は必要なのでしょうか?

「写真が好きかどうか、今(採用の段階で)は気にする必要はないです。私自身も、子どもの頃は写真があまり好きではなかったし、会社で仕事をするようになってから仕事の面白さに目覚めたし、製品を使って写真の面白さに目覚めたクチです。仕事をするにあたって大事なのは、志とか情熱があることです。当社にも入社当時は写真のことが分からないと言っていたエンジニアがいますが、そうした人でもエンジニアリングの中で興味を持てる部分を見つけて、今ではすごくいい仕事をしてくれています。本当に写真が好きでしょうがない、という方は面接の段階でアピールしてくださっていいと思いますが、面接の際に見ているのは別にそこだけではないので、そうでない方は無理してアピールする必要はありません」

――本社と会津工場の両方にメカの設計部門がありますが、業務内容に違いはあるのですか?

「機構の設計に関して差はほとんどありませんが、カメラボディの開発は本社でだけ行っています。レンズの開発については本社と工場の両方で行なっていますね。プロジェクト単位で割り振られています。電気・電子回路については、製品系の設計を本社が担当しています。工場では基板がちゃんと動くかどうかをチェックする治具とか、工場で使う検査系の設計が主です。将来的には工場でも製品設計をする可能性もありますが、そのあたりはまだちょっとわからないです」

「同じ仕事をやっていても、本社にいるエンジニアと工場にいるエンジニアではちょっと違っていて、本社にいるエンジニアは言ってみればやんちゃなので、冒険的な設計をするんですね。工場にいるエンジニアは安全第一になる傾向があります。工場にいる設計者は本当の技術を知っているので優秀な設計者になるのですが、安全第一というだけでは革新的なものは生まれませんよね。だから今は本社のエンジニアを工場に異動したり、その逆をやってみたりということもやってみています」

会場にはシグマの現行機種がいくつか展示されていた

(関根慎一)