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世界最大の業界見本市「フォトキナ」2014総括(後編)
変化の時期を迎えるイベント。CP+にも期待
Reported by山田久美夫(2014/10/20 12:00)
高級コンパクト&高倍率ズーム機
ライカ
ライカは今回、「ライカX (Typ113)」「ライカX-E (Typ102)」「ライカD-LUX (Typ109)」「ライカV-LUX (Typ114)」など、多数のコンパクト機を一挙発表。
このなかで、「D-LUX」と「V-LUX」は従来通り、パナソニックのLUMIXがベースだが、外観や絵作りはライカオリジナルという。もちろん、Made in Germanyの「ライカX」「ライカX-E」は、ライカのオリジナルだ。
人によっては、「ライカのコンパクト機?」というかもしれない。だが同社のカメラビジネスのなかで、このカテゴリーが意外なほど大きな割合を占めており、とても大切なラインナップなのだ。
ブースでの人気もなかなか高く、M型と同じくらい混み合っていて、実機に触れるまでにけっこう時間がかかることもあった。なかでも、APS-Cセンサー搭載で35mm相当F1.7の大口径レンズを搭載した「ライカX (Typ113)」と、事実上「LUMIX LX100」の姉妹機といえるフォーサーズセンサー+大口径ズーム搭載機の「ライカD-LUX (Typ109)」の人気の高さが印象的。
この両機はある意味で、対極をなすモデルではあるが、M型ライカユーザーのサブ機としても、気軽なスナップ用モデルとしても魅力的な存在といえる。
私自身も「ライカXバリオ」の画質が好きなこともあり、同じセンサーを搭載した単焦点モデルの「ライカX (Typ113)」に魅力を感じた。
また、「ライカD-LUX (Typ109)」も、よくよく見ると、けっこう「LX100」とはデザインが異なっており、当たり前だが、よりライカっぽい雰囲気に仕上がっている。まあ、個人的には、自動開閉閉式のレンズバリアだけはやや馴染めなかったが、常時携帯機として魅力的なモデルだと思えた。
もう一つ、今回は1インチセンサー搭載の「ライカV-LUX (Typ114)」も登場。本機は、今回私が取材用に使っていた「LUMIX FZ1000」の姉妹機であり、サイズは大柄だが、これ1台でほとんどの撮影をカバーできる万能機といえる。ライカ自身もオールラウンドモデルとして本機を強くアピールしていた。
もちろん、地元ドイツでもライカはかなり高価な存在であり、コンパクト機とはいえ、憧れの存在あることに変わりはない。ブースを見ていても、そんな特別な存在であることが伝わってくる感じがした。
パナソニック
パナソニックは今回、高級コンパクト機の元祖といえる「LXシリーズ」の最新モデル「LX100」を発表。先代の「LX7」が1/1.7型だったのに対して、今回は一気にフォーサーズセンサーを搭載。レンズもF1.7-2.8と大口径な24-75mm相当のズームを搭載し、さらにEVFも一体化しながらも、とてもコンパクトなモデルだ。
ブースでの人気は、マイクロフォーサーズの「LUMIX GM5」と同等か、それを上回るような印象を受けた。実際、4K対応や大口径ズームなど、「GM5」よりも機能面では上回る部分も多く、4Kフォト機能などは「GH4」や「FZ1000」に迫るほど。その意味で、合理性を重視する欧州市場での注目度が高い点も十分にうなずける。
正直なところ、フォーサーズセンサーを搭載した大口径ズーム機で、これほどコンパクトにできるのは、レンズ一体型モデルだからこそ。つまり、ミラーレス機の場合、システムカメラなので、マウントやフランジバック、シャッターや基板レイアウトなど諸々の制約があり、スペース効率は必ずしもよくないので、これほどの小型化は困難なのだ。
また、使う側からいえば、レンズ交換をしないで、その焦点域で使う限り、ミラーレスとの違いはほとんどなく、むしろ、より明るいレンズをコンパクトなボディで使えるというメリットは大きい。そのため、高級コンパクト機、とくに、「LX100」の場合、万能機ではないが、常用域では「GM5」よりもバランスがよく、とても合理的なモデルといえる。
さらに、EVFが一体型で高品位なため、日中の視認性もよく、フレーミングに集中でき、ブレも少ない。操作部も、シャッター速度や絞り、露出補正が独立したダイアルになっている点も感覚的に操作しやすい。このあたりも、ライカが自社ブランド機のベースに選んだ理由なのだろう。
惜しむらくは、EVFが「GX7」と同じフィールドシーケンシャル(走査型)方式である点。スペースの関係だと思われるが、これがGH4のようなOLEDであれば、より魅力的なモデルになっただろう。
現時点で、ズーム付き高級コンパクト機で最大のセンサーサイズのモデルになるわけだが、欧州での人気はかなり高く、日本国内でも人気が出る可能性が高そうだ。
キヤノン
キヤノンは、先だって日本国内でも発売された「PowerShot G7 X」と「PowerShot SX60 HS」を発表。既発売機なので詳細は避けるが、ブースでの人気は上々。なかでも、「G7X」は「EOS 7D Mark II」と人気を二分するほどだった。
もともと欧米では、「Gシリーズ」の人気が日本よりも遙かに高かったこともあり、「G7 X」の人気の高さも十分にうなずける。さらに、薄さの点で不利になるチルト式液晶を搭載している点もポイント。キヤノンも現地での発表会では、一眼レフでは撮影しにくく、ライブビューではレスポンスの関係で撮影が難しい、自由なアングルでの動体撮影が容易な点を強くアピールしていたのが印象的だった。
また、今回キヤノンは、35mm判換算21-1,365mm相当という空前絶後の超高倍率ズーム機「PowerShot SX60 HS」をフォトキナで発表しており、ブースでは「G7X」に迫る人気を博していた。
この総括の前編でも紹介したが、欧米市場では、日本とは比較にならないほど、高倍率ズーム搭載コンパクト機の人気が高い。実際、エントリー系の標準ズーム付き一眼レフやミラーレス機と同等の価格帯で、広角から超望遠までカバーできるのだから、合理的に考えれば、なかなか魅力的な選択肢といえる。このあたりの価値観も、日本とは大きく異なるわけだ。
さらに同社は、「G7X」発表と同時に、大型センサー搭載の高倍率ズーム機の開発も表明。これはキヤノンとしてはきわめて異例のこと。だが、すでに1インチセンサー搭載の高倍率機「ソニーサイバーショットRX10」「パナソニックLUMIX FZ1000」が登場しており、このカテゴリーを死守するためには仕方がないことだったのだろう。逆にいえば、欧米では、それだけ重要なカテゴリーだという証明ともいえる。
富士フイルム
富士フイルムは、Xシリーズのコンパクト機「X30」と「X100T」を発表。
APS-Cセンサーと単焦点レンズの「X100T」は「X100S」の進化形であり、光学ファインダーの視野内にEVFの一部を表示する点が特徴。だが、外観上はほとんど従来機と変わらない印象。もっとも、このシリーズは、イメージを変えることなく、徐々に進化することが特徴ともいえる。
一方、今回大きく変化したのは2/3型センサーとズームレンズ搭載の「X30」だ。先代の「X20」からの相違点は、光学ファインダーがEVFになったこと。この変化は劇的といえるほどだ。もともと、このシリーズは「覗いて撮る」ことをコンセプトとして展開しているものだが、従来の光学ファインダーは見え味は悪くなかったが、さすがに、視野が曖昧で、私自身はけっきょく背面液晶で撮ることがメインになってしまっていた。
だが、今回「X30」に搭載された有機ELファインダーは、クラストップレベルのクリアで美しいEVFに仕上がっており、表示レスポンスもクラストップレベルの高性能を実現しており、とても軽快で、信頼できるファインダーという印象。
ブースでの人気も高く、実機に触れるまで2〜3人待ちということもあったほど。今回のフォトキナで発表されたコンパクト機のなかでも屈指の人気という印象だ。
個性派モデル
パナソニックLUMIX CM1
実は、今回のフォトキナでもっとも注目度が高かった新製品は、この「LUMIX CM1」。実際、現地で会ったプレス関係者やメーカーの知人の多くが、一番印象的だったモデルとして「CM1」をあげており、フォトキナ開催中に、現地の専門誌が今回のフォトキナを代表する製品として賞していた。
このモデルは、1インチセンサーとライカブランドレンズ、ヴィーナスエンジンを搭載した高級コンパクト機に、本格的な通信機能を一体化したデジタルカメラとして、「LUMIX」ブランドで登場したもの。
とはいえ、一般的には、高性能カメラ機能を搭載した、Androidスマートフォンだと思ったほうがイメージしやすいだろう。
なぜ、このモデルが注目を浴びたのか?というと、単に目新しいからという話ではない。
まず1つは、ごくごく普通の人にとって、いまやスマートフォンで写真を撮るのが当たり前の時代。だが、ある程度、写真やカメラにこだわりを持つユーザーにとっては、現在のスマートフォンのカメラ画質では物足りないという人が増えつつあるのも事実だ。
また、FacebookのようなSNSによるコミュニケーションでは、写真をアップすることが日常茶飯事であり、画質にこだわるユーザーにとっては、今後、高画質なスマートフォンへの要求が必然的に高まるのは目に見えている。その要求にいち早く応えたのが、このモデルといえるだろう。
会場では、稼働機が数台用意されており、実際に触れることができた。手にした感じは、まさにAndroidスマートフォンなのだが、単焦点レンズとはいえ、1インチセンサー搭載機。高品位で高級感のある金属外装で、やや厚手で若干重いが、ギリギリ、胸ポケットにいれて常時持ち歩けるレベル。
アップルのiPhone 6 Plusよりも小さいので、普段は普通のAndroidスマートフォンとして使える。また、明言は避けていたが、普通の携帯電話としての通話も可能だ。
もちろん、ドイツ現地ではスマートフォンの販売はSIMフリーが基本なので、本機も当然、SIMフリー。通信規格は日本とドイツはほぼ同一なので、日本のキャリアのSIMを挿せば、日本でも合法的に、スマートフォンとして使えるという。
価格は900ユーロ前後。日本円では12万円くらいになるが、SIMフリーの高品位なAndroidスマートフォン+1インチセンサー搭載高級コンパクト機だと思えば、法外な値段ではない。なによりも、これ1台で、この両方の使い方ができるなら、多少厚手で重めでも、それを補って余りある価値がありそう。また、レンズは単焦点で光学ズームではないが、画素数は20メガあるので、多少のトリミングには耐えられそうだ。
日本国内販売は未定。現時点でも、日本国内向けの正式アナウンスはない。もちろん、SIMフリーに対する簡単な知識は必要だが、とても魅力的なモデルであり、ぜひ、日本国内でも展開して欲しい、写真好きのための常時携帯機だ。
ソニーQX1
カメラとスマートフォン(通信)を結ぶ存在として、市民権を得つつあるレンズスタイルカメラ。
今回ソニーは、すでに国内発売も開始されたレンズスタイルカメラの新製品「QX1」「QX30」を出品。フォトキナという場でもあり、シリーズのなかでもとくに、Eマウントを採用したレンズ交換式APSモデル「QX1」をアピールしていたのが印象的だった。
現地でも、レンズスタイルカメラの第2弾ということもあってか徐々に知名度も上がっており、以前と違って、キワモノ的な製品ではなく、カメラとスマートフォンを結んで、より写真を楽しむツールとしての認識が高まりつつある感がある。
そして今回、待望のレンズ交換式モデルも登場し、スマートフォントのアクセスも高速化されるなど大きな進化を遂げており、その存在価値を大きく高めた感がある。
ブースでは、Eマウントレンズに「QX1」を装着したデモ機が多く展示されていた。ただ、正直なところ、人気という点では、もう一息といったところ。コンセプトはとてもユニークだし、よくこのサイズにAPS-Cのセンサーユニットを納めたなぁ〜という点は感心するのだが、どんなシーンで使うと、その威力を発揮できるのか?という点が、ブース展示から伝わってこなかった点もありそう。
このあたりは、まだ、メーカーも、ユーザーも模索中という感じではあるが、いろいろな可能性を秘めたモデルだけに、それがうまく伝わらない点は実に残念だ。
また、本機の仕様上、USB充電をしながらカメラを起動できないので、展示機は特殊な改造が施されており、充電しながら動作するようになっていたのだが、その分、通常使用時には必要ないケーブルが繋がっており、それがこのモデルの魅力をスポイルしていたような印象もあった。
今回の新シリーズは全世界的に品薄状態であり、他社からも類似製品が登場してきたこともあってようやく市民権を得た感じだが、まだ必然性に欠ける部分があり、その点が解消されないと厳しいような印象だった。
もっとも、今回の「QX1」については、それ以上に、この製品に対して、保守的な欧州ユーザーの意識がついて行けないという点もありそうだが。
Lytro Illum
まったく新しい概念のライトフィールド式デジタルカメラ「Lytro」。フォトキナ初参加の同社は今回は、本格的な撮影ができる第2世代の8倍ズーム機「Illum」(イリューム)をメインに展開していた。
このモデルは、ライトフィールド技術により、1回の撮影で、画像と距離情報を取得。撮影したデータを元に、カメラ内やタブレット端末、PC上などで、指定した距離にピントを自由に合わせたり、被写界深度を調整できる画期的なもの。
最初の製品は小型でシンプルな外観で、PC上でピント位置の調整ができるものだったが、今回の「Illum」では一気に高機能になり、光学8倍ズームと4型タッチ液晶を搭載した、一眼レフ風デザインのものへと進化している。
米国ではこの夏から発売を開始しており、ドイツでもフォトキナ直前から発売を開始。とにかく、これまでのデジタルカメラとは全く異なる概念のカメラだけに、ブースはその実機とデモをひと目見ようと、きわめて多くの人が訪れていた。
初代が300ドル前後だったところ、今回の「Illum」では高機能化とともに価格1,500ドルと高価なものになったが、そこから得られる画像は実に新鮮。とくに、撮影後、カメラの液晶でタッチした場所に、ピントがすっと合う感覚はこれまでにないもの。また、タブレット上では、タッチ操作で簡単に被写界深度も変えられるため、さらに自由な作画が楽しめる。
実は私もいま使っているのだが、とにかく、ピントや被写界深度が後から変えられるというメリットは想像以上に大きく、軽いカルチャーショック状態。もちろん、調整できる範囲は無限ではないのだが、パンフォーカス側はとくに、これまで体験したことがないような画像を作ることができる。
また、あまり知られていないが、撮影後に、微妙な撮影位置(視点)を調整することもでき、それを利用した3D撮影もできるなど、これまでとは違った楽しさのあるモデルに仕上がっている。
日本国内での展開は、現時点で未定。だが、日本でも本格展開したいという意向のようなので、そう遠くないタイミングで市場導入される可能性もありそうだ。
まとめ
「デジタルカメラは、まだまだ、面白くなる」。今回のフォトキナをみて、素直にそう思った。
ご存じの通り、デジタルカメラ市場は、コンパクトカメラを中心に大幅に台数が減少しているわけだが、スマートフォンで写真を撮る人が増え、写真のショット数という点では、飛躍的というよりも、爆発的に増えている。
実際、前編でも記したように、スマートフォンのカメラ機能の進化により、銀塩時代の「写ルンです」的なレンズ付きフィルムが担ってきた、日常的なショットにカメラを使う人は大幅に減っている。これは当然のことだろう。
そのなかで、日常的に写真を親しみ、そこに楽しさを見出し、写真をより深く楽しみたいユーザーは、以前より明らかに増えている。近年は、その人たちが、明確な意思を持って、カメラに興味を持ち、購入する時代になりつつあるわけだ。
その意味で、今回のフォトキナは、その過渡期といえる状態といえる。
実際、各社とも、ほとんどの新製品がWi-Fi機能を搭載。さらにソニーのレンズスタイルカメラのようにスマートフォン連携をより密にするという展開もあり、スマートフォンの通信機能を活かすことで、より写真を楽しむという、あらたな文化の広がりを感じさせる。
その象徴的なものとして、「パナソニックLUMIX CM1」のように、本格的なカメラとスマートフォンの両方の魅力を兼ね備えたモデルが注目を集めたのは、時代の必然ともいえるわけだ。
2年後の、次回のフォトキナでは、カメラ自身が通信用のSIMに対応し、カメラから直接クラウドに、写真をアップロードできるモデルが続々登場している可能性も十分にありそうだ。
一方、「Lytro」のように、これまでのカメラの既成概念とは違った撮像系を備えたモデルも登場。これが早期に普及し、主流になるとは考えにくいが、これまで光学中心に展開してきた、ピントやボケ、被写界深度という概念を大きく変えるきっかけになるモデルであることだけは、間違いないだろう。
これらの動きを見ていると、現行のデジタルカメラは、まだまだ、フィルムをイメージセンサーに代えただけといってもいい状態に思えてくる。
つまり、これまでのデジタルカメラは、市場拡大にかまけて、本当の意味での、デジタルのよさや魅力をきちんと活かしてきたとは言いがたい状況にあった。
だが、市場が低迷し、デジタルカメラでなくても、写真を楽しめる時代になって、ようやく、自分たちがデジタルカメラでやるべき、本来の方向性が明確になったわけだ。
その意味で、もともと、生粋のカメラメーカーは、他機器や他業種連携が苦手で、そのあたりをあまり意識せずに育ってきた部分があるわけだが、今回、パナソニックやソニーなど、いわゆる家電系メーカーが積極的に、スマートフォンとの連携機能を取り入れて、製品展開してきたのは、とても象徴的な気がしてならない。
とくに、今後期待される通信との連携という点で考えると、やはりスマートフォンなどを手がけてきたメーカーが圧倒的に有利であり、ソニーやパナソニック、さらに通信では超大手の韓国のSAMSUNGといったメーカーが、社内のリソースを活かして、あらたな展開をしてくる可能性が高そうだ。
また、米国ベンチャーである「Lytro」のような、これまでとは違った概念でのカメラが登場してくる可能性もあり、生粋のカメラメーカーにとって、なかなか厳しい時代になりそうな予感がある。
こうしてみると、今回のフォトキナは、盛り上がりにかける部分が結構あったが、つぎの時代を予感させるには十分なインパクトのあるイベントだったといえるだろう。
CP+への要望
さて、最後になるが、カメラ系イベントという視点から見ると、PMAが事実上、CESに吸収され衰退したこともあり、世界的なカメラショーというと、今後はフォトキナと並び、毎年開催される日本の「CP+」が、さらに重要なポジションを占めるイベントになる。
来年は2月12〜15日に開催されるわけだが、フォトキナ翌年春の「CP+」は不作というのが通例。だが、今回のフォトキナを見ると、“個人的に”期待し、予想していた製品が登場しておらず、やや肩すかしだった部分もあり、来春の「CP+」はけっこう期待できそうかな?と思っている。
それはさておき、やはりフォトキナを見て思うのは、「CP+」との違い。とくに、フォトキナでのライカブースなどは、ブースの2/3ものスペースをフォトギャラリーとして展開。しかも、世界的な名作のなかには、当然のことながら、ライカで撮影されたものでない(と思われる)ものもあり、写真という文化をとても大切にしていることが、ひしひしと伝わってくる。
もっとも、フォトキナでも日本メーカーのブースでは、同社モデルで撮影された作品を大きなスペースを使って展示しているメーカーは皆無であり、このあたりは、ライカと日本メーカーの、写真文化に対する考え方の違いともいえる。
もちろん、CP+は日本のイベントであり、会場もフォトキナに比べると、かなり狭く、必然的に大手メーカーでもフォトキナほど大きなブース展開ができるわけではない。とはいえ、「CP+」も、もう少し作品を大切にし、「カメラを売るための新製品の作例」ではなく、「歴史や記憶の残るような作品」をみることができ、写真文化の懐の深さを、きちんと伝える努力をして欲しい。
また、フォトキナではさまざまな技術展示を行っているメーカーもあるが、CP+ではそのような展示が少なく、この点ももう少し工夫が欲しいところではある。
このほかにも、「CP+」への要望点は山のようにあり、それだけで記事1本分になってしまいそうなのだが、いずれにしても、カメラやレンズ、プリンター、ディスプレイなど、写真のハードウェアについては、もはや日本メーカーが完全に世界をリードしているのは明白。
それだけに日本メーカーは、写真文化をどのように捉え、機器に反映してゆくかで、今後の写真の世界が大きく変わるのは事実であり、このあたりはまだまだ、世界リードする日本メーカーとして、やるべきこと、考えるべきことは、山のようにあるのでは?と、フォトキナを見て感じた。
今後のフォトキナは?
一方、フォトキナは2年に一度のイベントであり、製品の進化に追いついていけなくなりつつあるのも事実。しかも、大手メーカーにとっては、商談の場としてフォトキナは、以前ほど大きな意味をなしていないという点もある。また、出展料も高価であり、ビジネスイベントとして考えると、対費用効果は以前より薄れつつある。その意味では、フォトキナという巨大イベントも、そろそろ変わらなければいけない時期にさしかかっている。
これらは、ネット時代のリアルイベント全体が抱えている問題点でもあるが、今回のフォトキナや、各社の製品導入のタイミングを見ていると、巨大イベントゆえに、その存在意義が問われる時代になったことを如実に感じた。
私は今回、13回目のフォトキナ取材だったわけだが、今回の取材で、フォトキナの威厳は感じられたが、もはやフォトキナの必然性を感じることはできなかった。おそらく、体調が許せば、次回も取材に訪れると思うが、フォトキナが時代の要望についてゆくのか、それとも従来のスタイルを維持しようとするのかを見届けたい。
さらに、次回のフォトキナでは、生粋のカメラメーカーと新興の家電系メーカーとの勢力図が、どのように変化しているのかも、興味津々だ。
次回のフォトキナは、2016年9月20〜25日、同じケルンメッセで開催される。あと2年で、デジタルカメラはまた大きな進化を遂げると思うが、写真の本質、写真の楽しさは変わらない。その意味で、写真を撮るための道具として、デジタルカメラは今後とも、さらに魅力的なものへと正常進化し続けることを大いに期待したい。