【CP+】オリンパス「PENPAL PP-1」を本気で使ってみた

〜スマートフォンへの画像転送を連日実施

 6万5,000人もの来場者を集めて2月12日に閉幕したCP+2012。デジカメWatchでも計27本のレポートを公開し、多くの読者に見ていただけたことと思う。

 その取材のさなか、今回はちょっとした実験をしてみた。オリンパスより「PENPAL PP-1」と「OLYMPUS PEN Lite E-PL3」をお借りして、E-PL3で撮影した写真をPENPAL経由でスマートフォンに転送、スマーフォンからTwitterとFacebookに投稿してみたのだ。

使用した機材。右がPENPALを装着したE-PL3。左がAndroid端末のP-07C

 もともとTwitter、FacebookのデジカメWatch公式アカウント(Twitter =@dc_watch、Facebook =https://www.facebook.com/impress.dcwatch)には、記事公開時のRSSフィードを投稿させるようにしてある。そのため、いつものように記事を上げさえすれば、両アカウントにツイートまたはコメントが自動的に流れる。なのになぜ人力での投稿を試みたのかといえば、記事公開までのタイムラグがもったいないほどの大きなネタを見つけたとき、速報を流すツールとして使うつもりだったのだ。

 しかし大手メーカーのブースは、事前に発表済みの製品がほとんだったので速報の必要はなく、効果的な使い方ができないまま会期は終了。そもそもCP+2012は海外イベントに比べると会場が狭く、プレスルームへのアクセスも良い。さらにネットワーク回線も速いので、大ネタを見つけたらプレスルームに走り、そのまま記事を書き上げた方が有効に感じた。

 で、何を投稿したかというと、Twitterでは主に会場のコンパニオンの写真。これが1ツイート当たり5〜10のリツイートがあり、これは普段の我々のツイートからすると、それなりに多い。

Twitterでのツイートの例。4日間で50回の画像付きツイートを行ない、そのうち46回でPENPALを使用した。

 一方Facebookの方はどうかというと、会期中に最も「いいね!」がついたのは、ニコンブースで並びながら暇つぶしに投稿したコメント。「いいね!」数は44だ。これも普段に比べて破格に多い。ただし、デジカメWatch本体への効果のほどはよくわからないし、肝心の速報ができなかったのはちょっと残念だ。

Facebookのコメントでは、ニコンブースの行列の写真がトップの人気

実に自然な「カメラで撮影、スマホで送信」

 というわけで、いまいち効力を発揮せずに終わったPENPAL体験だが、連日使って感じた印象を思い出しつつ述べていきたい。具体的なPENPALの使い方は、こちらに詳しいので参照いただきたい。

 基本的なところから改めてPENPALを紹介すると、このアイテムはデジタルカメラで撮影した画像を、対応したスマートフォンにBluetoothで転送するユニットだ。E-PL2以降のPENシリーズ、および3月下旬発売のOM-D E-M5のアクセサリーポート2(AP2)に装着して使用する。

PENPAL PP-1。発売は2011年1月と意外に古い。価格は8,820円

 普段からデジタルカメラを持ち歩く人も、SNSへの投稿はスマートフォンのカメラ機能を使うことが多いと思う。理由は、その場にインターネットに接続されたパソコンがない限り、デジタルカメラではリアルタイムに写真を投稿できないからだ。

 しかしPENPALを使えば、スマートフォンのカメラではなく、デジタルカメラで撮影した画像を使ってFacebookやTwitterに投稿できる。大まかな流れは、写真を撮影→再生モードで送信した写真を選ぶ→転送を開始→FacebookまたはTwitterなどのアプリを起動→転送した写真を選んで投稿、となる。投稿前に画像編集アプリでエフェクトをかけられたりと、デジタルカメラ単体では得られない楽しみ方が広がるのも特徴だろう。

 PENPAL、スマートフォン双方の転送設定は、ペアリング時の一度だけでOK。その後は転送の都度設定する必要はない。複数のスマートフォンを転送先に選べるので、スタッフの持っている別の端末に画像を送ることも可能だった。

 実際使ってみて思ったのは、スマートフォンのカメラではなく、デジタルカメラを使うことの利便性と自然さだ。画質が良い(特に高感度時)のはもちろんのこと、ズームレンズによる画角の多彩さもデジタルカメラならではのもの。さらにレンズを交換すれば、超広角から望遠まで対応できる。

 また大げさかもしれないが、投稿前の撮影をデジタルカメラに変えただけで、ずいぶんと世界が変わった気がした。取材時のカメラがそのままスマートフォンのカメラになった感覚。スマートフォンを取り出して撮影するのが、逆に手間に感じたほどだ。何というか、カメラに馴染みのある我々にとって、こちらの方がごく自然な振る舞いのように思えたのだ。デジタルカメラで作品撮り、スマートフォンでメモ撮りという使い分けをしている人は、デジタルカメラに1本化できるわけで、カメラ好きにとってこのメリットは大きいと思う。


専用スマホアプリを使う無線LAN内蔵モデルも

 もうひとつ感心したのは、転送前にPENPALが写真をリサイズしてくれること。1,920×1,440ピクセル、1,280×960ピクセル、640×480ピクセルの3種類から選べる。私は会期中、640×480ピクセルを使用した。その場合の転送時間は、私が使っていたP-07Cで約2〜3秒、別のスタッフが使っていたGALAXY Sで約1秒。実用的な速度だし、途中で止まったりせず安定して使えた。

 気になったのは、転送する画像を選ばないといけないこと。以前多用していたiPhone用のEye-Fiのダイレクトモードだと、自動で転送されるので選ぶ手間がない。その代わり必要のない画像がiPhoneに次々と流れてきたり、投稿したい画像がなかなかスマートフォンに来なかったりと不都合も多かった。その点、自分で選べるPENPALの方が、今回のようなケースでは使いやすいと感じた。どちらか選べるとなお良いと思う。

 E-PL3の場合、PENPALをつけっぱなしにしていると、アクセサリーポート2にクリップオンストロボが取り付けられないのも残念。ストロボを常用したいなら、普段はクリップオンストロボを装着しておき、通信時のみPENPALに付け替えるという覚悟が必要だろう。いずれはカメラに内蔵して欲しい。

 また、PENPALではなく、使っていたスマートフォン(P-07C)の問題になるが、Bluetoothで受信する画像に対して、必ず承認ボタンを押さなければ受信してくれないのには閉口した。GALAXY Sだとたとえロックされていても転送できるので、Android端末それぞれで挙動が異なるのだろう。とにかく、いちいち承認ボタンを毎度押すのは面倒に感じた。

 その他気づいたこととしては、複数枚をまとめて遅れるようにして欲しい。E-PL3でのトリミングは機能が限られているので、スマートフォンに送ってからアプリで対処した方が良い、といったところ。

 操作面での改善も期待したい。再生画面から転送まで、ボタンを6回も押さないといけないのだ。PENPAL本体に、直前の画像を転送するだけのボタンをつけてもらえないだろうか.

 あとはiOSでも使えれば個人的に最高。Bluetoothのプロファイルの問題で、いまのところPENPALはAndroid端末のみで利用に限られている。

 この春は、IXY 1、IXY 420F、FinePix Z1000EXR、サイバーショットDSC-TX300Vと、4機種の無線LAN機能搭載モデルが登場する。いずれも専用のスマートフォンアプリを介してカメラ内の画像を選択し、スマートフォンへの保存設定を行なう新しい試みをしている。

IXY 1IXY 420F
FinePix Z1000EXRサイバーショットDSC-TX300V

 また、発売が2月から3月に延期になったとはいえ、東芝のFlashAirも同様にスマートフォンとの連携を意識した製品だ。加えて既存のソリューションとしては、今回試したPENPALとEye-Fiも健在。スマートフォンの普及で写真をリアルタイムにシェアすることが普通になった今、本格的な無線転送機能を搭載したデジタルカメラの活躍に期待したい。



(本誌:折本幸治)

2012/2/21 00:00