Eye-Fi X2の「ダイレクトモード」を試す
無線LAN内蔵SDメモリーカードとしてお馴染みのEye-Fi X2シリーズに、スマートフォンユーザー待望の「ダイレクトモード」が追加された。専用アプリをインストールしたiPhoneやAndroid端末に撮影画像を直接転送できるというもので、気になっているユーザーも多いことと思う。
Eye-Fi対応のソニーα55(左)とiPhone 4(右) |
今回はアイファイジャパンが18日に発売した「Eye-Fi Mobile X2」(7,980円)を使用して、ダイレクトモードの設定から実際の使用手順までを試してみた。Eye-Fiによると「ダイレクトモード」は同社独自技術の名称で、ダイレクトモードを利用した画像転送のことは「インスタントアップロード」と呼ぶそうだ。送り先の端末にはiPhone 4とiPad 2を用いた。
■「画質」か「即時性」か
筆者は日頃から、電車移動などの空いた時間にiPhoneで画像の加工やアップロードを行なうのが好きだ。アップロード先はiPhoneの画像共有アプリ「Instagram」や、Twitter、各種SNSなど。
素材はパソコンから転送しておいたデジカメ画像を使うことが多いが、散歩中に見かけた景色をすぐTwitterに投稿したい場合には、先にデジカメで押さえておき、投稿用に改めてiPhoneで撮るなどしていた。画質には目をつぶる必要があるし、二度手間とも感じていた。
Eye-Fi X2のダイレクトモードには、筆者のそうした悩みを解消してくれそうなソリューションとして大きな魅力を感じた次第だ。
■実際に転送してみる
結論から先に言ってしまうと、ダイレクトモードの画像転送で期待通りの結果は得られた。しかし、事前の設定やコツを掴むまでのトライ&エラーで手間取ったこともあったため、ポイントとなる手順などを以下に示す。
Eye-Fi Mobile X2(左)と同梱のカードリーダー(右) |
Eye-Fiカードは、登場時から「デジカメから記録メディアを取り出さず、Wi-Fiネットワークを通じて撮影画像をパソコンに転送する」という使い方を売りにしていた。ポイントとなるのは、おそらくメーカーはダイレクトモード搭載後も「Wi-Fi経由でパソコンに画像転送」というのをEye-Fiカードの主な使用方法と位置づけている点だ。
つまり、ダイレクトモードだけを使いたくても、Eye-Fiカードとしての設定が必要になる。以下に筆者が行なった設定方法を示す。
・パソコンの設定方法
Eye-Fiカードを購入してすぐの場合、まずはEye-Fiカードをパソコンに接続し、自動起動する「Eye-Fi Center」からアカウント作成などを行なう。
上で述べた通り「Wi-Fi経由でパソコンに画像転送」を行なえるよう、Eye-Fiカードが接続するWi-Fiネットワークを指定する必要がある。ダイレクトモードではEye-Fiカード自体がアクセスポイントとなるため既存のWi-Fiネットワークは不要なのだが、筆者が試した限り、初回設定でそこを飛ばすことはできなかった。
撮影画像の共有先として外部サービスをついでに設定しておくと、スマートフォンに転送した画像をEye-Fiのアプリからそのまま任意のサービスに送ることができる。ダイレクトモードしか使わない場合でも設定しておくと、あとで便利かもしれない。
設定後は「ネットワーク」→「ダイレクトモード」のタブにある「ダイレクトモードを有効にする」を押す。この操作を忘れるとダイレクトモードは利用できない。
Eye-Fi Center内のダイレクトモード設定画面 | Eye-Fiアプリから各種サービスに画像を送れる(画像はiPadの画面) |
ここまで設定したところで、ダイレクトモードしか使う予定のない方は最初に設定したWi-Fiネットワークの設定を削除することをお勧めしたい。Eye-Fiカードの基本はアクセスポイント経由の画像転送なので、先にアクセスポイントが見つかるとダイレクトモードに移行しないようになっているのだ。もちろんそのままでも、設定済みのネットワークがない場所では問題なくダイレクトモードが起動する。
・スマートフォンの設定
次は端末側の設定だ。iPhoneおよびiPadでは、App Storeから無償ダウンロードできる「Eye-Fi」アプリをインストールし、さきほどパソコンで作成したEye-Fiのアカウントを入力する。そのあと、端末側の設定でEye-Fiカード(=アクセスポイント)に接続できるよう、Wi-Fiネットワークの設定を行なう必要がある。
Eye-Fi Centerの画面上で「今すぐダイレクトモードを起動する」を押した後は、iPhoneやiPadであれば「設定」→「一般」→「Wi-Fiネットワーク」の一覧にEye-Fiカードの生成したネットワークが表示される。Eye-Fiカードはパソコンに接続したままでもよい。接続時の認証に必要なWPA2パスワードは、Eye-Fi Centerの画面上で確認するか、Eye-Fiアプリ内からワンタップでコピーできる。
iOSのW-Fiネットワーク選択画面 | Eye-Fiアプリでカードとのペアリングを行なう。WPA2パスワードはこの画面からクリップボードにコピーすることもできる |
あとはアプリ側で転送元となるEye-Fiカードと、受け取るファイル(静止画か動画か、両方か)の選択を行なえば準備は完了。カメラとEye-Fiアプリを同じぐらいのタイミングで起動すると、数秒で画像の転送が始まった。転送速度は1枚あたり数秒といったところ。30秒ほど待っても転送が始まらない場合は、どこかでうまくいっていない可能性がある。
画像を受信しているところ。上のサムネイル表示はカメラロールの中身 |
筆者がiPhone 4とiPad 2で試したところ、端末側にEye-Fiカード以外のアクセスポイント(自宅や会社の無線LANなど)が登録されていると、知らぬ間に接続がそちらに切り替わっていて、ダイレクトモードの転送がいつまで待っても始まらないということがあった。
■ExifやGPS情報もそのまま
Eye-Fiカードから受け取った画像は、iPhoneやiPadの「カメラロール」に保存される。ほかの端末の場合も、OSネイティブの保存場所に入るという。いくつかの画像加工アプリから開いてみたが、画像サイズが大きいため多少処理が重くなる以外は特に問題を感じなかった。
iPhone 4およびiPad 2では、GPSデジカメがExifに書き込んだ位置情報もそのまま残っていた。位置情報付きの画像は、Eye-Fiアプリの再生画面に現れるアイコンを押すと「マップ」アプリが起動し、撮影地点が表示される。撮影地までの経路検索やストリートビュー表示は、iOS純正のビューワーアプリ「写真」にない利用法だろう。
GPS搭載のソニーα55は、Eye-Fi連動機能も搭載。撮影画面の左上に動作状況のアイコンが出る | 通信をオフにして電力消費を抑えることもできる。多くのEye-Fi連動機能搭載デジカメで利用できる機能だ |
右下の「i」の上にあるボタンを押すと、デフォルトの地図アプリが起動する |
■多少のパソコン知識は必要
以上の手順で、デジカメの撮影画像をiPhoneのカメラロールに保存することができた。これで撮ったばかりのデジカメ画像をTwitterに載せることができ、パソコンを持たない旅先からInstagramに投稿することもできそうだ。これらを荷物を増やさず実現できているのだから、嬉しくなる。
転送速度はClass 6に対応。SDHCメモリーカードとしての不満も感じない |
ただ、Eye-Fi Centerでのカードセットアップや端末との接続設定など、ある程度の専門用語に出くわす機会があったため、パソコンに馴染みがないユーザーは多少ハードルが高いと感じる部分もあるかもしれない。買ってきたパソコンを無線LAN経由でインターネットにつなげるぐらいの知識を持っていれば安心だろう。
とはいえメーカー側も公式サイトにFAQを用意しているし、聞き慣れない用語が出てきてもWebで検索すればすぐにわかるはずだ。設定が完了して動作のクセを掴むまで、根気強く試してみてほしい。調子が悪いときはアプリの再起動も有効だ。
■ダイレクトモードだけでも価値あり
筆者は以前にもEye-Fiカードを使ったことはあったが、パソコンへのワイヤレス画像転送をそこまで魅力に感じなかったため、常用には至らなかった。しかし、ダイレクトモードを使うようになってからは、いつも持ち歩くコンパクトデジカメに常時Eye-Fiカードを入れている。スマートフォンを使った写真共有が好きな方なら、ダイレクトモード目当てで購入しても損はないように思う。
キヤノンIXY 410FもEye-Fi連動機能を搭載。24mm相当の画角はスマートフォン内蔵のカメラでは得がたい | iPad 2(左)との組み合わせでは9.7型の大画面が活きる。カメラ側でトイカメラ風のエフェクトを施した |
なお、発売済みのEye-Fiカードでも、Eye-Fi X2シリーズであればすべてファームウェアアップデートによりダイレクトモードを無償で追加できる。発売済みのEye-Fi X2シリーズはEye-Fi Mobile X2の発売に伴う値下げが行なわれているため、用途によってはそちらも見逃せないだろう。
2011/5/31 00:00