カシオ、“フリースタイルカメラ”「EX-TR100」発表会

〜石井竜也氏が登場。「イメージングスクエア」を語る

 既報の通りカシオは4日、コンパクトデジタルカメラの新機種として、「EXILIM EX-TR100」、「EXILIM EX-ZR100」、「EXILIM EX-H30」の3機種を発表。都内で発表会を開催した。

EXILIM EX-TR100石井竜也氏も来場した

 各機種の仕様などは下記で公開している。

 またEX-TR100については、「TRYX」(米国での名称)β機のレポートを掲載しているので、あわせて参照いただきたい。


「写真革命」をテーマにした製品、第2弾

 最初に挨拶に立った執行役員QV事業部長の中山仁氏は、年末商戦向けに投入した「EX-ZR10」と「EX-H20G」を振り返り、両機種の投入時にかけ声として打ち出した「写真革命」のコンセプトについて改めて述べた。

執行役員QV事業部長の中山仁氏昨年秋のEX-ZR10とEX-H20Gから「写真革命」を標榜
今回のEX-TR100とEX-ZR100もEXILIM ENGINE HSを搭載する

 初の液晶モニター付き民生用デジタルカメラ「QV-10」から始まったカシオのデジタルカメラは、フィルムカメラの歴史を負う既存のカメラメーカーと異なり、「何もないところから価値を生み出した」との自負が強い。企業哲学の「0→1」(ゼロからイチへ)を具現化したような製品を特徴とし、中山氏はHDRアートを搭載したEX-ZR10、ハイブリッドGPS装備のEX-H20Gもその系譜になぞらえるとした。特にワンシャッターで絵画調の写真が撮れるEX-ZR10の人気は高く、「供給が足りなくなるほどだった」という。

 EX-ZR10とEX-H20Gの新機能は、ともに新搭載のEXILIM ENGINE HSに負うところが大きい。今回の新製品にもEX-ZR10譲りのHDRやHDRアート機能が搭載されていることもあり、「ともに写真革命のテーマにふさわしい」と紹介。

 今後も写真革命というテーマのもと、カメラの既成概念にとらわれない新しい展開を進めるという。

改めてデジタルカメラを再構築した「EX-TR100」

 続いて登壇したQV事業部商品企画部次長の渋谷敦氏は、EX-ZR100とEX-TR100について説明した。

 EX-ZR100は、24-300mm相当の高倍率ズームレンズを搭載したEXILIMシリーズのフラッグシップモデル。さらにEX-ZR10と同様、HDRとHDRアートを搭載する。

EX-ZR100を紹介するQV事業部商品企画部次長の渋谷敦氏EX-ZR100。ホワイトとブラックをラインナップ

 HDRアートは、効果の強さを3段階から選べるようになった。また、EX-ZR10になかったモードダイヤルを新設。その選択項目にHDRとHDRアートを配置したことで、より両モードへのアクセスが楽になっている。

 なお先行して発売したEX-ZR10のHDRアートに対する市場の評価は、「思った以上に好評。驚きを持って迎えられている」とのことだ。

上面にモードダイヤルを装備。HDRアートもここから呼び出せる
HDRアートは3段階から強さを選択できるようになったバッテリー室。撮影可能枚数は約450枚
こちらは下位モデルのEX-H30。HDRアートは非搭載

 渋谷氏の解説のうち、多くを割いたのがEX-TR100についてだった。

 EX-TR100は、2011 International CESでの発表時、「TRYX」という名称だった製品。国内での名称が異なる点については、「エリアによってわけたほういいだろうとの結論から。アメリカは名前を前面に出し、日本はEXILIMブランドの中で訴求した方が良いと考えた」という。

 レンズ部、本体部、フレーム部がそれぞれ、フレームがレンズ部とヒンジで接合され、レンズ部と本体もヒンジでつながれている。それぞれを回転させることで、様々なスタイルでの撮影が可能になるのが特徴だ。

EX-TR100 WE(ホワイト)
EX-TR100 BK(ブラック)

 特徴的なデザインについては、デザインセンタープロダクトデザイン部第1デザイン室長の長山洋介氏が説明した。

 デザインの原点は、「デジタルなのに静止画しか撮っていない」、「結局、銀塩写真から変わっていない」との発想からだったという。スチルとムービーを1台でまかなえる現在、スチルカメラに類似した形状でいいのだろうかという疑問が浮かんだところで、コンパクトデジタルカメラのデザイン要素を分解して再構築するところからデザインが始まった。

 デジタルカメラで絶対に省略できないのがレンズとファインダーのためのデバイス(液晶モニター)。それをフレームでつなげてみたら……さらに全体を貫くキーアイコンとして、レンズの存在感を出すための六角形を据えてできたのが、コンセプトモックアップだという。

デザインセンタープロダクトデザイン部第1デザイン室長の長山洋介氏レンズとモニターをフレームで再構築
デザインスケッチ六角形をキーアイコンに
コンセプトモックアップ。製品より小さいようだ
フリースタイルコンセプトの例。フォトスタイルムービースタイル
スタンドスタイルフックスタイル
カシオのデジカメ初のタッチパネルを採用21mm相当の超広角レンズをアピール
タッチした指をスライドさせるとセルフタイマーが始まる
メニュー画面。いままでのEXILIMにないデザイン撮影モード選択画面
BS(ベストショット)選択画面EX-ZR100と同じく、HDRアートの効果を3段階から選べる
露出補正。タッチ操作で行なえる撮影ステータス画面

 また、カシオ初のタッチパネル式液晶モニターを採用。感圧式でサイズは3型、ドット数は46万となっている。メニューデザインはこれまでのEXILIMにない雰囲気。GUIのコンセプトを「Simply Fun」とし、「ステーショナリーのような親しみやすさ」を与えたという。

 バッテリーを非交換タイプとしたのも特徴。パソコンなどを介し、USB端子からのみ充電する思い切ったスタイルを採用した。

 渋谷氏はEX-TR100を「アイデア次第で様々に使える、新しいタイプのカメラ」と説明。「QV-10、EX-S1など、カシオの新たなスタイルの提案のひとつ。独自の撮影スタイルを発見していただくことを期待している」とまとめた。

 なお市場シェアについて質問が及ぶと、中山氏は「シェアをとりにいくというより、新しいものとして市場を広げたい」と回答。「新興国ではなく先進国が舞台。差別化による付加価値で勝負し、EX-ZR10で見たように、コンパクトデジカメでも単価を維持した上で売れる自信がついた」と述べた。

 また、21mm相当という超広角単焦点レンズの採用については、「新しい撮り方の提案をしたい。ズームは必要不可欠ではない」と説明した。


出足好調の「イメージングスクエア」

 続いて執行役員DI事業部長の樫尾和宏氏が、1月にサービスを開始した「イメージイングスクエア」について方針を述べた。

 イメージングスクエアは、撮影画像をWebサイトにアップロードして絵画風の画像に変換する無料サービス。変換後の画像はイメージングスクエアのギャラリーへ転送できるほか、オンラインプリントサービス(有料)を利用できる。

執行役員DI事業部長の樫尾和宏氏イメージングスクエアのメインは「バーチャルペインター」、「HDRアートクラフト」、「ダイナミックフォト」の3機能になる
豊富な変換モードを利用可能

 「1枚の写真から誰でも簡単に上質なアート作品を作り出せる」(樫尾和宏氏)を特徴。カシオでは「デジタルクラフト」と呼んでおり、「バーチャルペインター」、「HDRアートクラフト」、「ダイナミックフォト」の3機能で構成されている。

 すでに15万枚の作品が寄せられ、今月には米国でのサービス開始も予定しているという。

 樫尾氏は「世界一のアートサイトを目指す」、「アート文化を提供し続ける」と抱負を述べた。

 続いて執行役員営業本部戦略統括部長の守屋孝司が、イメージングスクエアの詳細を説明した。画像処理による作品化は、プロからコンシューマーに広がっており、そうしたトレンドを実現したのがカシオのカメラ内画像処理技術だった。その技術をサーバーに入れたのがイメージングスクエアという。

 サイトのコンセプトは「ファン創りコミュニケーション」と説明。「たくさんのデジタル写真が眠っている中、絵画調に変換することで思い出を深くするきっかけして欲しい。カメラはスタンドアロンではなく、プラスネットワークで進化する。カメラとネットワークの組み合わせで新しいフォトアートの文化を提案したい」と想いを述べた。


石井竜也氏「筆の跡まで再現するのに驚いた」

 会場にはアーティストの石井竜也氏も来場。石井氏はイメージングスクエア内に設けられた「IMAGING SQUARE MUSEUM」の館長を務めており、発表会当日はそのグランドオープンの日でもある。イメージングスクエアを使った石井氏の作品を数多く公開している。

守屋氏と握手する石井竜也氏イメージングスクエアについて語った
「はなひとひら」など自身の作品をバックにトークが進むIMAGING SQUARE MUSEUMで公開中の作品を紹介

 IMAGING SQUARE MUSEUMには、カシオがスポンサードするラジオ番組「ディア・フレンズギャラリー」(TOKYO FM)の紹介コーナーもある。月曜日から木曜日は赤坂泰彦氏、金曜日は石井竜也氏がパーソナリティを務める番組。ゲストのお気に入りの写真をイメージングスクエアで変換、それについてトークを繰り広げる内容になっている。

 イメージングスクエアを体験した石井氏は、「話を聞いたときは単なるデジタル上のお遊びというイメージだった。しかし、実際には様々な絵画の表現をリアルに再現できる。(例えば)顔を認識して顔だけを残したり、筆の跡まで再現するのに驚いた」と感想を述べた。

 また、「カシオはアナログの写真をデジタルに置き換えて、デジタルを使いまたアナログに戻ってきた。ただアナログにしただけでなく、より科学的で芸術への愛情をちゃんと込めた上で理解している」と評価。「こうした技術が広がり、一般の人のアートの目線が高くなると、アーティストはもっと高いところを目指す。アートの発展にもつながる」とも。

 EXILIMについては「普通の写真を撮らずに、いろんなモードで撮ってしまう。結構夢中になりますよ」との感想を披露した。



(本誌:折本幸治)

2011/2/4 21:15