トピック

南仏の光と自然を巡る旅――窪田三四郎×ライカSL3-P

高速AF・連写がもたらす安心感。表現を広げる万能的な存在

演劇祭で活気づくアヴィニョン。街角で劇団員と観客が言葉を交わす温かい情景を、ハイライトとシャドウの豊かな階調で切り取った
ライカSL3-P/ライカ ズミルックスSL f1.4/50mm ASPH./50mm/絞り優先AE(F1.4、1/800秒)/ISO 50

デジタルカメラマガジンとデジカメ Watchの連動企画として、ライカから登場した最新フルサイズミラーレスカメラ「ライカSL3-P」についての特別インタビューをお届けします。今回は、SLシリーズを好み、使い込んできたという弁護士の窪田三四郎さんに、機材を携えて南仏を巡った撮影体験と機材インプレッションをお聞きしました。

演劇祭の熱気で街中が活気に包まれるアヴィニョンや、歴史ある佇まいを見せるアルル、そして野生動物が息づく自然豊かなカマルグ湿地帯。街スナップから雄大な風景まで魅力的な被写体が広がる南フランスが、今回の撮影旅行の舞台です。

日常から旅先までライカを相棒としてきた窪田さん。伝統的なライカの描写力を引き継ぎつつ、大幅に進化したオートフォーカスや高速連写性能を備えた「ライカSL3-P」がもたらした新たな撮影体験と、写真表現のレパートリーを押し広げる機材としての真価についてお話を伺いました。

窪田三四郎(Sanshiro Kubota)

1985年生まれ、大阪府出身の弁護士。2012年に趣味で写真を始める。3年間の欧州滞在中、ライカに魅了され、機材を片手に欧州各地を飛び回って写真を撮り歩いた。現在は街スナップから雄大な自然風景まで幅広く撮影を行っている。

※このページは『デジタルカメラマガジン2026年9月号』との連動企画です。

多様な機材を経て辿りついた、ライカという選択肢

——窪田さんの「ライカとの出会い」について教えてください。

最初は他社製のフルサイズやラージフォーマットのモデルなど様々なカメラを使っていました。その中で、フルサイズでありながらコンパクトなシステムを模索するうちに、ずっとライカの名前が頭にありました。

弁護士の仕事として大きな裁判を無事に終えた自分へのご褒美に、2016年に初めて購入したのが「ライカM モノクローム」です。当時は他社にカラーのフルサイズ機が溢れる中、モノクロ専用機を出しているのはライカだけで、その尖った存在感に惹かれて手に取ったのが始まりでした。

——現在までライカを長く愛用し続けている理由や、道具としての魅力はどこにありますか?

1番はやはり「コンパクトさと堅牢性」です。M型ライカはレンズも含めて非常にコンパクトで、行動の制約が少なくなります。

以前、-30℃の北極圏へスノーモービルに乗って探検に行った際も「ライカM11」と「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」で挑みました。防寒着の中に入れても邪魔にならず、過酷な極寒でも問題なく持ち運べました。そうしたどこにでも連れ出せる信頼感がとても気に入っています。

歴代SLシリーズと道具としての設計思想

——窪田さんはSLシリーズも長く使われていると伺いましたが、導入のきっかけや、その魅力は何だったのでしょうか。

初代の「ライカSL」が出た当時は少し大柄に感じて見送ったのですが、「ライカQ2」を使ってM型以外のライカの機能美にも惹かれ、2019年に「ライカSL2」が発売されたタイミングで購入しました。手ブレ補正が搭載され、画素数も4,000万画素を超えて、ライカらしい佇まいと機能のバランスが熟成されたと感じたからです。

SLシリーズの魅力の1つは、ボタンが少なく操作体系が非常にシンプルな点です。旅行中にカメラの電源を入れたまま移動しても、誤操作で意図せず設定が変わってしまうといったようなトラブルが起きません。他社機のように複雑なコマンドを覚える必要がなく、撮影のリズムが崩れないのが大きな強みです。

また、マウントアダプター経由でライカのMレンズを使う際も、他社のミラーレスカメラよりSLボディと組み合わせたときのほうが、ピント面の解像感やボケの滑らかさなど、ライカ特有のクリーミーな描写をより引き出せると感じています。

自作の演劇をアピールしようと街中で大きな横断幕を掲げる人々。熱気に満ちた街の空気感と人々の生き生きとした表情が克明に写し出されている
ライカSL3-P/ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH./35mm/絞り優先AE(F1.2、1/200秒、+0.3EV)/ISO 50
写真祭の賑わいからふっと離れた静かな路地にて。歴史ある古い壁面に咲く青い花のアクセントを、上品でクリアな発色とボケ味で捉えた
ライカSL3-P/ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH./35mm/絞り優先AE(F1.2、1/640秒、-1.0EV)/ISO 50

劇的なAF進化と4,490万画素の絶妙なバランス

——今回、新製品である「ライカSL3-P」を初めて手にしたときの第一印象はいかがでしたか?

外観で言えば、まず象徴的なレッドドットが排されていますよね。私自身はレッドドットも好きですが、「ライカSL3-P」はより精悍な顔つきになったなと思いました。ボディ形状自体は使い慣れた「ライカSL3」とほぼ同じなので、違和感なく手になじみました。

——機能面において、特に印象的だった進化点はどこでしょうか。

1番驚いたのはAFの進化です。普段愛用している「ライカ ズミルックスSL f1.4/50mm ASPH.」(2016年発売モデル)は描写が極上な反面、大きくて重く、AF速度もゆったりしている印象がありました。そのため今回の旅行に持っていくか迷ったほどだったのですが、「ライカSL3-P」に付けたところ、AFが劇的に速くなり驚きました。

また、被写体検出AFの精度も非常に高いです。カマルグの湿地で頭上を不意に横切ったピンクフラミンゴの群れにパッとレンズを向けた際も、ほぼ無意識でシャッターを切ったにもかかわらず、後から確認したら遠くを飛ぶ鳥たちにしっかりピントが合っていました。スピード・精度ともにこれまでのライカのイメージを覆す進化だと感じます。

ヨーロッパ最大の湿地カマルグで出会った夕景。沈みゆく太陽とオレンジ色に染まる空の中、遠くを飛ぶ鳥の群れを瞬時に捉えた
ライカSL3-P/ライカ アポ・バリオ・エルマリートSL f2.8-4/90-280/280mm/絞り優先AE(F4.0、1/6,400秒、-0.3EV)/ISO 100

——画素数(約4,490万画素)と使い勝手のバランスについてはいかがですか?

旅行先で風景をしっかり残したいとき、2,400万画素クラスだと物足りなさを感じることがありました。一方で「ライカSL3-P」の約4,490万画素は精細感も十分で、トリミング耐性も含めてベース機の「ライカSL3」(有効6,030万画素)と比べても全く違和感がありません。

レスポンスの軽快さがあるのに、風景撮影に必要な画素数がしっかり確保されているのは絶妙なバランスです。例えば「ライカSL3-S」(有効2,460万画素)に惹かれつつも高画素を諦めきれなかった人にとっても、「ライカSL3-P」は間違いなく良い選択肢になると思います。

至るところに演劇祭のチラシが貼り尽くされたアヴィニョンの街角。夕暮れ特有の暖色系の光と影が、絵画のような陰影を生み出している
ライカSL3-P/ライカ ノクティルックスM f1.0/50/50mm/絞り優先AE(F1.0、1/6,400秒、-0.3EV)/ISO 100
強い日差しが降り注ぐアルルの古代闘技場。石造りの建造物に当たる光と影のコントラスト、そして背後に広がる澄んだ青空をクリアに描写している
ライカSL3-P/ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH./35mm/絞り優先AE(F1.2、1/8,000秒、-0.6EV)/ISO 100

最高約40コマ/秒連写がもたらす「諦めなくていい」表現

——「ライカSL3-P」は最高約40コマ/秒の高速連写に対応しています。実際に使われてみていかがでしたか?

従来のSLシリーズでも連写自体は可能でしたが、私はどちらかと言えば単発で1枚ずつ丁寧に撮るスタイルがメインで、積極的に連写を使うことはありませんでした。しかし、「ライカSL3-P」の最高約40コマ/秒というスピードとレスポンスを体験して、「これなら現場で連写を活用したい」と素直に思えるようになりました。

——AF性能の向上や高速連写などの進化は、今後の撮影にどのような影響を与えそうですか?

これまでは自分の撮影スタイルで連写をすることはほとんどなかったため、動いている野生動物などは最初から撮るのを諦めていた部分がありました。それが「ライカSL3-P」のおかげで、空を飛ぶ鳥や動く動物など「今まで撮ろうとも思わなかったもの」が自然と視界に入るようになりました。自分の撮影領域や表現の可能性を大きく広げてくれたと感じています。

夕暮れの光が差し込む草むらで草を食む白馬。木々のディテールや日陰のシャドウ部まで粘り強く描き分け、ライカらしい重厚感のある1枚に仕上がった
ライカSL3-P/ライカ ズミルックスSL f1.4/50 ASPH./50mm/絞り優先AE(F1.4、1/3,200秒、-1.3EV)/ISO 100
水辺に佇むピンクフラミンゴを被写体検出AFで撮影。画面内で小さく写るシーンでも迷いなくピントが合い、高い捕捉力を実感した
ライカSL3-P/ライカ アポ・バリオ・エルマリートSL f2.8-4/90-280/280mm/絞り優先AE(F4.0、1/1,250秒、-0.6EV)/ISO 100

——今回の旅では、Mマウントレンズも活用されていますね。「ライカSL3-P」のボディとの相性はいかがでしたか?

「ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.」のような大口径レンズは、M型ボディに付けるとフロントヘビーになりがちですが、「ライカSL3-P」のしっかりしたグリップとボディサイズだと重量バランスが非常に良く、手になじんで持ち歩きやすいです。また、ジョイスティック操作で瞬時に拡大表示できる高精細なEVFのおかげで、シビアなMFのピント合わせも極めてスムーズに行えました。

さらに、最低感度「ISO 50」が設定できる点も非常に助かりました。夏の南フランスは日差しが強烈で、日中にF0.95やF1.4といった開放F値を使うとシャッタースピードが上限に達してしまうことがあります。ISO 50に落とせることで、強烈な光の下でも大口径Mレンズの美しいボケ味を存分に楽しめました。左肩のダイヤルでダイレクトにISO感度を切り替えられる操作性も快適です。

過酷なロケーションを支える堅牢性と機動力

——南仏の街スナップからカマルグの自然まで過酷な環境での撮影でしたが、カメラ堅牢性についての実感はいかがでしたか?

ライカが掲げる設計思想のひとつに「ロバストネス(堅牢性)」がありますが、その信頼性の高さを改めて実感しました。

気温が40℃近くまで上がる過酷な暑さの中、カメラバッグにしまわず首から提げたままジープのサファリツアーで湿地を何時間も走ったり、割とラフに持ち歩きながら移動しましたが、びくともしませんでした。また、USB Type-C経由でスマートフォンの充電器から給電・充電できるため、携行バッテリー1個でもバッテリー切れの心配なく旅を続けられたのも実用的でした。

カマルグに息づく白馬の表情をクローズアップ。立体感のあるピント面とライカらしいクリーミーな背景ボケが、野生の美しさを際立たせている
ライカSL3-P/ライカ アポ・バリオ・エルマリートSL f2.8-4/90-280/280mm/絞り優先AE(F4.0、1/1,250秒)/ISO 100

——「ライカSL3-P」と旅との相性はいかがでしたか?

旅行先では被写体に合わせて機材選びに迷い、複数台持ち歩くことも多かったのですが、「ライカSL3-P」なら1台で街スナップから自然、動体まであらゆる環境に対応してくれます。そうした「迷いを消してくれる安心感」があるからこそ、過酷な旅の相棒として非常に相性が良いと感じました。

乗馬で揺れる馬上から、片手持ちで前方の馬を撮影。不安定な体勢であっても、高速・高精度なAFによって意図した瞬間をブレなく確実に捉えられた
ライカSL3-P/ライカSL3-P/ライカ ズミルックスSL f1.4/50 ASPH./50mm/絞り優先AE(F1.6、1/1,000秒、-1.3EV)/ISO 100

写真表現のレパートリーを広げてくれる1台

——「ライカSL3-P」は動画性能も備えていますが、動画機能についてはどう感じられましたか?

私自身は静止画が中心なので動画をメインで撮ることは少ないのですが、写真機としての完成度に加えて動画もしっかり撮れる機能が備わっているのは心強いです。スチールと動画を1台でシームレスにまとめたいクリエイターにとっては、非常に頼もしい選択肢になると思います。

——最後に、この「ライカSL3-P」をどのようなユーザーに勧めたいですか?

まずは、私のように普段からM型やSLなど複数のカメラを持ち歩いていて、「旅の機材を信頼できる1台に集約したい」と考えている方です。スナップから風景、望遠撮影までオールマイティに応えてくれるので、機材選びの迷いを消してくれます。

もうひとつは、これまでM型などを使い続けてきて「動体撮影や連写にはあまり興味がなかった」という方です。「ライカSL3-P」の高速AFと約40コマ/秒連写を手にすることで、「今まで撮ろうとも思わなかった被写体」が視界に入り、自分の写真表現のレパートリーを大きく広げてくれるはずです。



南仏の光と影が織りなす街並みから、カマルグの大自然を駆ける野生動物まで。窪田三四郎さんが切り取った作品群からは、ライカ特有の濃密な描写力に加え、「ライカSL3-P」が備える高い機動性とスピード性能が窺えました。

ライカ本来の質感や操作感をそのままに、高速AFや連写性能によって表現の可能性を押し広げてくれる「ライカSL3-P」。普段からライカを愛用するユーザーはもちろん、1台で幅広い表現に対応したい撮影者にとっても、心強い相棒となってくれそうです。

聞き手:宮本義朗(デジカメ Watch編集部)

デジカメ Watch編集部