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「ライカSL3-P」は“高速×高画質”を叶える最上位機。ドイツ本社のプロダクトマネージャーに聞く

ライカSLシリーズのプロダクトマネージャー、ゲリット・ギッセル氏

ライカカメラジャパンが6月26日に発売した「ライカSL3-P」について、独ライカカメラ社のプロダクトマネージャーであるゲリット・ギッセル氏に話を聞いた。

すでに2機種がラインナップされているライカSL3シリーズにおいて、「ライカSL3-P」はどのような位置付けとなるのか。そしてユーザーは3機種の中からどのように選べばよいのか。また、ライカがカメラ開発で大事にしていることや、“ライカの色”についても語ってもらった。

ライカSL3-P

「ライカSL3-P」は、約4,400万画素の裏面照射型センサーの採用により最大40コマ/秒のAF追従連写を可能とした、Lマウントのフルサイズミラーレスカメラ。動画撮影機能も8Kオープンゲート記録や4K120p記録、フォルスカラー表示などに対応し、ライカSLシリーズの万能性をさらに高めている。

「ライカSL3-P」の特徴と位置付け

——「ライカSL3」と「ライカSL3-S」に加えて、新たに「ライカSL3-P」を開発した経緯を教えてください。当初から3機種を展開する予定だったのですか?

ライカSLシリーズは、特に顧客の声を多く取り入れて開発しているカメラです。これまでも1つの機種を出してから、顧客の声に応じてバリエーションモデルを検討してきました。そのため、最初から2~3機種を開発するとは決まっていませんでした。

今回は、「ライカSL3」と「ライカSL3-S」を発売したあとで“高速かつ高画質”への要求があるとわかりました。「ライカSL3」は6,000万画素ですが、速い動きへのAF追従や、動画機能への要求については完璧に応えられるものではなかったからです。そして、「ライカSL3-S」は高速ですが2,400万画素でした。

「ライカSL3-P」では新しいイメージセンサーの採用によって、4,400万画素の高精細な高画質と、速いセンサー読み出しによる高速性で最大40コマ/秒の連写も実現しました。顧客から求められていた高画質と高速性を兼ね備える、現時点で最も完璧なバランスを持つライカSL3ファミリーの最上位機です。

電子シャッターを使った最大40コマ/秒のAF追従連写に対応

——ライカSL3シリーズを検討する場合、3モデルをどのように選べばよいですか?

「ライカSL3-P」は、総合的に高いレベルでいろいろな撮影に対応できる、最もバランスの良いカメラです。多用途なため、ほとんどの方には「ライカSL3-P」をお勧めできます。

ですが、使い方によっては他にもベストな選択があります。風景やコマーシャル写真であれば「ライカSL3」の6,000万画素が合うでしょう。光のコンディションをコントロールできる環境であれば、今でも「ライカSL3」が最も広いダイナミックレンジを持っているからです。

また、暗いところで撮るのであれば「ライカSL3-S」の2,400万画素が有利です。3機種の中では価格的な買いやすさもあります。

—「ライカSL3-P」の“P”にはどんな意味がありますか?

“P”が何を意味するか、公式には発信していません。ただ、Pという文字はProfessionalやPrecisionなど、いろいろとポジティブなイメージを持つ言葉を連想させます。これまでも各世代で進化した機種に“P”と名付けてきました。

左手前が「ライカSL3-P」。右上は「ライカSL3-S」。赤いライカロゴの有無などで見分けられる

高速化を支える新センサー、進化したAF機能

——「ライカSL3-P」では、どのように高解像度と高速連写を両立しましたか?

「ライカSL3-P」では高画質と高速AFを実現するために、読み出しの速いイメージセンサーを選びました。1番のブレイクスルーはこの新世代のイメージセンサーで、高速でありながら4,400万画素という良いバランスです。

連写速度については「ライカSL3-S」の30コマ/秒でも十分と考えていましたが、この新センサーのおかげで40コマ/秒まで実現できたのです。

——被写体検出できる対象に、人物、動物、車を選んだ理由を教えてください。

MENUボタンを押すと表示されるコントロールセンター。下に8つ並ぶショートカットボタンはカスタマイズ可能
検出被写体は、人、顔、動物、車

ライカは“本質”と訳される「Das Wesentliche」を掲げているので、新機種であってもあまり多くの機能を増やそうとせず、常に慎重に選んでいます。

車の写真は世界的なトレンドで、スピード性能の高まった「ライカSL3-P」に合うので認識被写体として搭載しました。もっと種類があっても良いとは思いますが、設定画面が煩雑にならないよう、今回は車に集中しました。

被写体に「車」と「車(パーツ)」を搭載
Leica SL3-P - All That Matters by Callo Albanese

——鳥や鉄道も人気の被写体ですが、いかがですか?

鉄道は、日本では特に人気が高いですよね。私も昨年の来日時に新幹線を撮りました。ただ、車のほうが全世界的に人気があるため採用されています。

鳥は動物として認識するので、開発中に自分でも撮ってみました。レンズはシグマの「300-600mm F4 DG OS|Sports」を使いました。Lマウントアライアンスによって、各社の様々なレンズを選べるメリットを享受できます。

こうして鳥や車も撮れる幅広さがあるため、今回の「ライカSL3-P」はフィールドテストが大変でした。全ての要素が動作するかを検証するのに、普段より長い期間が掛かりました。

カメラ作りで大事にしていること。“ライカの色”とは?

——ライカのカメラには、どんな特徴がありますか?

画質の良さ、簡単に使えること、ビルドクオリティの高さです。IP54の防塵・防滴性能を持つ堅牢な筐体があり、クリーンなUIで使いやすいカメラです。

天面には2つのダイヤル。左手側は初期設定でISO感度が割り当てられている

——ライカSLシリーズに対して小型化の要求はありますか? 開発において、どのような要素を優先していますか?

将来について詳しいことはお伝えできませんが、もちろん小型化の要求を受けることもあります。これまでライカSLシリーズは、高い画質、メカシャッターの搭載、高品位なビューファインダー、十分なバッテリーライフを大事にしてきました。

なおファインダーには2つの要素があります。表示パネルと、それよりもっと大事な接眼光学系のレンズ設計です。もちろんメガネを掛けている人のことも考えていますし、アイポイントの長さを大事にしています。

今はスマートフォンで写真を撮ることが一般に広く浸透していますから、こうしてファインダーにこだわるのはカウンタームーブメントとも言えますね。

——近年よく“ライカの色”というのが語られますが、ライカ自身ではどのように考えていますか?

「ライカルック」というのを常に意識しています。これには複雑な要素があります。ウェッツラーに特別なカラーチャートがあり、これがどう見えるべきかを画質の担当者が考えているのです。

——ライカ社内に“ライカルック”という一定の正解があり、それを目指して開発しているのですか?

一貫性(Consistency)を念頭に置いています。ライカSLシリーズでは、2015年に登場した初代の「ライカSL(Typ601)」から継続的な色の哲学があります。

イメージセンサーなどのデバイスが変われば特性も異なりますから、それでも“ライカらしい画”という一定の方向性を保つよう、カラーチャートと画質担当者の感性、そして各デバイスの特性を擦り合わせて再現していきます。

写真の真正性を証明する機能、新レンズの技術など

——「ライカSL3-P」にも搭載されているコンテンツクレデンシャル(写真の真正性を担保する機能)には、どんな反応がありますか?

コンテンツクレデンシャルを示す「CR」のアイコン

まだ実際にこの恩恵を受けている人は多くないかもしれませんが、多くのフォトグラファーにとっては今後重要になるでしょう。近い将来、もっと幅広く使われるようになると考えています。

ライカはこれをカメラに搭載した初めての会社ですし、ハードウェアチップで実現しているのも特徴です。コンテンツクレデンシャルはソフトウェアでも可能ですが、チップで実現することにより高速で処理でき、セキュリティレベルも高められます。

「ライカSL3-S」までに搭載されていたのは1世代目のチップで、「ライカSL3-P」に搭載されているのは2世代目です。そのため「ライカSL3-P」からは連写した写真にも適用できるようになりました。

——新しいレンズにも、技術的なトピックがありますね。

「ライカ ズミルックスSL f1.4/50 ASPH.」を装着

技術的に大きな進歩があったのは、新型になった「ライカ ズミルックスSL f1.4/50 ASPH.」です。最新技術を投入したコンパクトなレンズです。ライカ社内で内製化した精密ガラスモールド非球面レンズ(PGM)と、独自に開発したボイスコイルモーター(VCM)を搭載しています。

ガラスモールド非球面レンズの内製化により、光学設計の自由度が増し、レンズの更なる小型化も実現できるようになりました。

ボイスコイルモーターは従来のアクチュエーターに比べてサイズが劇的に小さくなり、動作も非常に高速で静かなため、動画撮影にも適します。

このVCMを搭載したレンズをカメラから外した状態で手に持って動かすと、「カタカタ」と音がします。電気が通っていない状態ではフォーカス群がフリーフローティングの状態になっているからです。

まだ詳しくはお伝えできませんが、今後もこの技術によるレンズの展開にご期待ください。

——これまでSLシリーズは、ファームウェアアップデートで発売後も進化・改良を重ねてきました。今回も計画はありますか?

細かなことはお伝えできませんが、ライカの商品は長く価値を保つことがコンセプトですから、もちろんファームウェアアップデートを続けていきます。

こちらも同時に発表された「ライカ アポ・マクロ・エルマリートSL f2.8/100」。ライカSLレンズで初のフルサイズ対応マクロとして、その実力に期待がかかる

ライター。本誌編集記者として14年勤務し独立。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究