キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/92mm/絞り優先AE(1/250秒、F9)/ISO 100 愛車をかっこよく撮影したいと思ったことはありませんか? プロの写真家が教える撮影テクニックを身につければ、愛車を魅力的に撮影することができます。今回は、スバル・フォレスターを被写体に、デジタルカメラはもちろん、スマートフォンでも応用できる実践的な撮影術を写真家の小林稔さんに紹介していただきます。(編集部)
小林稔
日本レース写真家協会会長
自動車専門誌や一般誌における国産車・外国車の新車試乗記の撮影、メーカーのカタログ、自動車ショーなどアウトドア、スタジオを問わずクルマとモータースポーツの写真を撮り続け、 現在、SUPER FORMULA、SUPER GTの公式フォトグラファーを務め、ルマン24時間レースなど国内外で年間20レース以上を撮影する。
初心者が意識する3つの要素
車の撮影で最も重要なのは、構図、光、アングルの3つの要素です。この基本を押さえることで、デジタルカメラでもスマートフォンでも、格段に魅力的な写真が撮れるようになります。
構図は車を写真のどこに配置するかによって写真全体の印象を決めます。光は方向や強さによって車体の質感や表情を左右します。アングルは撮影の高さや角度によって車の迫力や親しみやすさをコントロールします。
これら3つの要素を意識して撮影することで、初心者でも愛車の魅力を最大限に引き出した写真を撮ることができます。
キヤノン EOS R1/RF24-70mm F2.8 L IS USM/62mm/絞り優先AE(1/200秒、F8)/ISO 100 自動車撮影の構図の基本は?
写真撮影において、車両のフレーム内での配置によって写真の印象が大きく左右されます。まずは三分割法を活用した構図を覚えていきましょう。
三分割法とは?
画面を縦横それぞれ3等分した線の交差点に重要な要素を配置する構図テクニック。画面の中央にすべてを置くより、少しずらした位置に配置することで自然で安定感のある印象を与えられます。人物の目や風景の地平線などを分割線や交差点に合わせることで、見る人の視線を効果的に誘導し、バランスの良い構図を作ることができます。
キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/92mm/絞り優先AE(1/250秒、F9)/ISO 100 車は被写体が大きいため厳密な三分割法の適用は難しいものの、構図を意識する際の基本的な指針として活用できます。車全体を画面中央に配置するのではなく、車体の一部やヘッドライトなどの特徴的な部分を交差点に合わせたり、車のラインを分割線に沿わせることで、より魅力的で安定感のある構図を作ることが可能です。
キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/70mm/絞り優先AE(1/400秒、F9)/ISO 100 構図作りでよくある失敗として、背景に不要な要素が写り込み、主役の車が目立たなくなるケースがあります。今回は海での撮影でしたので、地平線や遠景が車のルーフラインと重ならないよう注意しました。同じ高さに配置してしまうと、ルーフと背景が同化し、主役である車の存在感が薄れてしまうためです。
◆地平線とルーフが被った例地平線と車両のルーフが重なり主体が目立たない
キヤノン EOS R1/RF24-70mm F2.8 L IS USM/50mm/絞り優先AE(1/250秒、F9)/ISO 100 立ち位置を変えて重なりを回避した。主体の車両が目立つ様になる
キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/200mm/絞り優先AE(1/250秒、F9)/ISO 100 ◆背景に車両が写りこんだ例背景に別の車両が写り込み、主体が目立たない
キヤノン EOS R1/RF24-70mm F2.8 L IS USM/46mm/絞り優先AE(1/80秒、F8)/ISO 100 構図と焦点距離で調整。主体の車両が目立つ様になる
キヤノン EOS R1/RF24-70mm F2.8 L IS USM/48mm/絞り優先AE(1/125秒、F8)/ISO 100 スマートフォンの場合各種スマートフォンでは純正のカメラアプリでグリッド線(4本の線)を表示することができます。この機能を使って三分割法を想定し、グリッド線の交差する位置に車を配置してみましょう。それだけでも構図が整い、写真にメリハリが生まれます。
グリッド線を活用して、線が交差する位置に被写体を置いてみましょう 光の方向が写真に与える影響
光の方向によって車両の印象は劇的に変化します。車体の美しい色や質感をしっかりと表現したい時は「順光」を選びます。車体の立体感や細かな凹凸を際立たせたい場合は「斜光(サイド光)」が効果的です。そして、ドラマチックなシルエット効果を狙うなら「逆光」がおすすめですね。
今回の撮影では、順光と斜光、そして逆光での撮影を行いました。それぞれ異なる場所での撮影となりましたが、光の条件を変えることで、フォレスターの魅力を多角的に表現することができました。構図の基本を押さえた上で光の方向を意識するだけで、写真の印象がガラリと変わります。
キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/100mm/絞り優先AE(1/250秒、F9)/ISO 100 キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/100mm/絞り優先AE(1/400秒、F8)/ISO 100 キヤノン EOS R1/RF24-70mm F2.8 L IS USM/70mm/絞り優先AE(1/10秒、F9)/ISO 200 自動車撮影においては、光の質が柔らかく方向性のある朝夕の時間帯が特におすすめです。朝の穏やかな光や夕暮れ時の温かみのある光は、車体のプレスライン(ボディの凹凸やキャラクターライン)を美しく強調してくれます。
特に夕方の斜光では、車体の側面に陰影がはっきりと現れ、フォレスターのダイナミックなボディラインや力強いフェンダーの膨らみなどが際立ちます。また、朝夕の光は色温度が低く、車体の塗装色も温かみを帯びて表現されるため、より魅力的な仕上がりになります。
キヤノン EOS R1/RF24-70mm F2.8 L IS USM/58mm/絞り優先AE(1秒、F8)/ISO 200 スマートフォンの場合iPhoneの場合、露出補正を活用することで、メリハリのあるカットを撮影することができました。露出補正は、画面上の明るくしたい(または暗くしたい)部分をタップし、表示される太陽マークを上下にスライドすることで調整できます。
ナイトモードも優秀で、暗くなってからでも美しい写真が撮影できます。ナイトモードは暗い環境で自動的に起動し、画面左上にナイトモードのアイコンが表示されたら、そのまま数秒間カメラを安定させて撮影するだけで、明るく鮮明な写真が撮れます。
焦点距離でも見え方が変わる
風景を大きく取り込める広角をはじめ、様々な特性を掴んで、適材適所のカメラ、レンズを選択しましょう。
広角レンズは背景を大きく取り込めるため、フォレスターと雄大な自然を一緒に撮影する際に効果的です。ただし、車体の形が歪んで見える場合があるので注意が必要です。
キヤノン EOS R1/RF24-70mm F2.8 L IS USM/24mm/絞り優先AE(1/2.5秒、F8)/ISO 200 標準レンズは人間の視野に近い自然な描写が得られますが、フォレスターのような大型車両では比較的近距離での撮影となります。
キヤノン EOS R1/RF24-70mm F2.8 L IS USM/50mm/絞り優先AE(1/20秒、F9)/ISO 200 望遠レンズでは車体の迫力あるサイズ感を適切に表現することができます。
キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/200mm/絞り優先AE(1/250秒、F9)/ISO 100 スマートフォンの場合超広角レンズの使用時は、レンズに近い部分が大きく歪んで見えることがあります。車体のプロポーションを保つためには、被写体から少し距離を置くことが重要です。1歩離れるだけでも歪みを軽減でき、自然な車体のラインを保ちながら背景の広がりを活かした撮影が可能になります。
iPhone 16 Proの超広角カメラ(×0.5)で撮影したカット。背景は大きく写るが、車体の形が大きく歪むので美しくない こちらもiPhone 16 Proで撮影。望遠カメラ(×5)で撮ることでボディのディティールが綺麗に表現される アングルでの見え方の違い
前述の焦点距離に加えて、アングルの高さでも車両から受ける印象は大きく変わります。ローアングルでは車の迫力と存在感を強調でき、ハイアングルでは車と周囲の環境を俯瞰的に捉えることができます。アイレベルでの撮影では自然な視点による親しみやすい印象を与えます。
具体的なシーンに応じて使い分けるのがポイントです。被写体との距離も重要で、ローアングルでは近づいて撮影することで車両の圧倒的な存在感を演出できます。一方、ハイアングルでは少し離れて撮影することで、フォレスターと周囲の景色との関係性を美しく表現できます。それぞれの効果を最大限に活かすために、アングルと距離の組み合わせを意識して撮影しましょう。
キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/100mm/絞り優先AE(1/320秒、F9)/ISO 100 キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/200mm/絞り優先AE(1/250秒、F9)/ISO 100 キヤノン EOS R1/RF70-200mm F2.8 L IS USM/115mm/絞り優先AE(1/250秒、F9)/ISO 100 フォレスターの個性を活かした撮影
フォレスターならではの魅力を引き出すには、SUVとしての特徴的なデザイン要素に注目することが重要です。力強いグリル、大径ホイール、樹脂パーツなどの外装ディテールを意識した撮影で、アウトドア志向の機能美を表現しましょう。
キヤノン EOS R1/RF135mm F1.8 L IS USM/135mm/絞り優先AE(1/200秒、F10)/ISO 1250 キヤノン EOS R1/RF135mm F1.8 L IS USM/135mm/絞り優先AE(1/250秒、F1.8)/ISO 100 キヤノン EOS R1/RF135mm F1.8 L IS USM/135mm/絞り優先AE(1/160秒、F1.8)/ISO 125 キヤノン EOS R1/RF135mm F1.8 L IS USM/135mm/絞り優先AE(1/200秒、F4)/ISO 5000 キヤノン EOS R1/RF24-70mm F2.8 L IS USM/24mm/絞り優先AE(1/80秒、F2.8)/ISO 200 スマートフォンの場合インパネ越しに外の風景を撮影する際は、スマートフォンのHDR機能を活用しましょう。HDR(ハイダイナミックレンジ)は、明るい部分と暗い部分を同時に適切な明るさで撮影できる機能です。室内の暗いインパネと明るい外の風景では明度差が大きいため、HDR機能により両方を適切な明るさで撮影することができます。
多くのスマートフォンではHDRが自動で作動しますが、設定画面で「HDR」や「オート」を選択することで確実に機能を活用できます。これにより、フォレスターの開放的な視界の良さを美しく表現できます。
まとめ
撮影テクニックを身につけることで、愛車をより魅力的に撮影することができます。三分割法による構図の基本から光の方向、焦点距離、アングルの使い分けまで、今回学んだテクニックを実践して、あなただけのかっこいいフォレスターの姿を写真に収めてみてください。
撮影協力:沼津市