トピック

ドラマチックな夏の天の川を撮るためのおすすめレンズ(APS-C編)

さまざまな天の川が表現できる焦点工房 超広角レンズSelection

白浜町の千畳敷で立ち昇る天の川。F3.5まで絞って撮影したことで、周辺まで収差が少なく、しっかりと解像している
ニコン Z7II/10mm(15mm相当)/マニュアル露出(F3.5、13秒)/ISO 4000/WB:晴天

星空風景の撮影に最適なレンズを2回にわたって紹介する本企画。2回目は機動力が高いAPS-Cフォーマットカメラで使用できる小型・軽量の広角レンズをセレクト。15mm相当の広角レンズと、全天を写せる円周魚眼レンズのハイコストパフォーマンスな2本を紹介する。

関岡大晃

大阪を拠点に全国各地で夜空を撮影する星景写真家。肉眼では捉え切れない宇宙の美を、写真ならではの表現で作品に昇華する。流星群などの「一瞬の輝き」を追い続け、SNSで発信している。共著に『今夜星がみたくなる 夜空の手帳』(東京書籍)。

※本企画は『デジタルカメラマガジン2025年8月号』より転載・加筆したものです。

手頃で高性能な超広角レンズ

銘匠光学 TTArtisan 10mm F2 C ASPH.
発売日:2024年1月11日
実勢価格:3万3,000円前後(税込)

●SPECIFICATION
対応マウント:キヤノンRF、ソニーE、ニコンZ、富士フイルムX、マイクロフォーサーズ
レンズ構成:10群13枚
絞り羽根枚数:8枚
最小絞り:F16
最短撮影距離:0.25m
フィルター径:φ72mm
外形寸法(最大径×全長):約60×63mm
質量:約335g
※数値はソニーEマウント
レンズ構成図
Z50II装着例
操作性に優れる絞りリング

手に取った瞬間に感じたのは、驚くほどの軽さだ。10mmの超広角レンズでありながら、コンパクトかつ軽量な設計で、登山や長時間の星空風景撮影でもまったく負担を感じない。開放F2の明るさは夜空の撮影に適しており、ISO感度を抑えても十分な露出が得られ、ノイズの少ない写真が撮れる。開放絞りから使っても収差は少なく、周辺までシャープに描写する点は、3万円という価格帯以上の性能を持っていると感じた。

さらにうれしいのは、72mm径のねじ込み式フィルターに対応していること。ソフトフィルターや光害カットフィルターをそのまま装着でき、追加の機材なしで使用できるのは大きな利点だ。

雲が残る空模様だったが、天の川が美しく描写されている。開放F2の撮影したが、手前の風景も含めて全体的にシャープな写りだ
ニコン Z6II/10mm(15mm相当)/マニュアル露出(F2、13秒)/ISO 3200/WB:晴天

POINT 1|優れたコストパフォーマンス

ニコン Z6II/10mm(15mm相当)/マニュアル露出(F2、13秒)/ISO 5000/WB:晴天
開放F2で撮影した星空風景。中心部はもちろん、周辺の星までシャープな描写を維持している。わずかな収差は見られるものの、全体的にしっかりと解像しており、価格帯を考慮すれば非常にコストパフォーマンスに優れたレンズだ

POINT 2|前面にフィルター装着が可能

10mmという超広角で明るい単焦点でありながら、前枠にフィルターを装着可能だ。星空風景の撮影において、ソフトや光害カットフィルターは表現の幅を広げる重要なアイテム。小型・軽量ながら角型フィルターが不要という利便性は大きい

手のひらサイズの円周魚眼

AstrHori 6.5mm F2.0 Fish-Eye
発売日:2025年4月7日
実勢価格:2万2,000円前後(税込)

●SPECIFICATION
対応マウント:キヤノンRF、ソニーE、ニコンZ、富士フイルムX、マイクロフォーサーズ
レンズ構成:5群6枚
絞り羽根枚数:9枚
最小絞り:F22
最短撮影距離:0.2m
フィルター径:装着不可
外形寸法(最大径×全長):約64×51mm
質量:約268g
※数値はソニーEマウント
レンズ構成図
Z50II装着例
剛性の高い金属マウントを採用

軽量コンパクトなAPS-C用円周魚眼レンズ。192°という圧倒的な画角により、肉眼では捉えきれないスケールの景色を1枚に収められる。天の川の撮影では、空全体を包み込むような描写が可能で、パノラマ合成なしでも迫力ある星空風景が得られる。

開放F2の明るさも強みであり、夜間でもノイズを抑えた撮影が可能だ。EDレンズや高屈折率レンズにより収差も抑えられ、描写はクリア。水滴の中に風景を閉じ込めたような表現ができるこのレンズは、見慣れた風景を非日常的に変えてくれる。人と異なる視点で星空を撮りたいユーザーに推奨したい1本だ。

POINT 1|192°のダイナミックな描写

192°という肉眼をはるかに超える画角により、レンズを上に向ければ天頂まで伸びる天の川も1枚で画面内に収められる。宇宙の広がりをこのレンズだけで表現できる点は大きな魅力だ。星空風景の撮影において独自の表現力を発揮する
ニコン Z6II/6.5mm(9.7mm相当)/マニュアル露出(F2.8、25秒)/ISO 1600/WB:晴天

POINT 2|全長51mmのコンパクトボディ

小型かつ軽量で非常にコンパクトな設計になっており、ポケットにも収まる優れた携帯性を持つ。常用レンズでなくとも、撮影に変化を付けたい場面で気軽に取り入れやすい。荷物をそれほど増やさずに表現の幅を広げられる便利な1本だ

作品紹介

円周魚眼レンズの特性を最大限に生かすため、真上に向けて星の軌跡を撮影した。空の広がりをまるごと閉じ込めたような構図で、迫力ある星の軌跡が描けた
ニコン Z6II/6.5mm(9.7mm相当)/マニュアル露出(F4、20秒)/ISO 800/WB:晴天
石灰岩が点在する独特な地形が魅力のロケーション。円周魚眼の画角を生かして、広がる星空と独特な地形を余すところなく一枚に収められた
ニコン Z6II/6.5mm(9.7mm相当)/マニュアル露出(F2.8、25秒)/ISO 3200/WB:晴天

・銘匠光学 TTArtisan 10mm f/2 C ASPH. APS-C 単焦点レンズ
・AstrHori 6.5mm F2.0 Fish-Eye

関岡大晃