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カメラグランプリ2025 レンズ賞を受賞! ソニー「FE 28-70mm F2 GM」座談会
F2通しの標準ズームを風景・スナップで使ってみた印象は?
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- ソニーマーケティング株式会社
2025年7月3日 07:00
2024年4月1日から2025年3月31日にかけて発売されたカメラ製品の中から、最も優れた製品を選出する「カメラグランプリ2025」。その「カメラグランプリ2025」において、ソニー「FE 28-70mm F2 GM」がレンズ賞に輝いた。
それを記念し、「FE 28-70mm F2 GM」に票を入れた外部選考員3名による座談会をお届けする。
集まってもらったのは、コムロミホさん(写真家)、鈴木誠さん(ライター)、萩原れいこさん(写真家)の3名だ。
ソニーのフルサイズセンサー対応の標準ズームレンズとして、初めてズーム全域で開放F値2を実現した「FE 28-70mm F2 GM」。試用した3名の感想や、このレンズに惹かれた理由を作品とともにお送りしたい。
F2通しだけではない!ポイントは「画質」「小型化」「AF性能」
——ソニー純正で初のF2通しのフルサイズ標準ズームレンズですが、このレンズを取材されたライターの鈴木さんから、技術的な特徴を教えてもらえますか。
鈴木誠(以下、鈴木): ソニー独自の超高度非球面XAレンズがもたらす画質ですね。XAレンズは、加工方法ではなく加工精度に紐付いた名称です。“たまねぎボケ”ではない溶けるようなボケを得るには、プレスであれば金型の平滑性を高めることで、輪線を抑えてボケ像をキレイにします。端的に言うと、加工精度が高いからボケをキレイにできる。
2つめは小型化になります。ソニーのカメラを語るときに小型化への思想は抜きにできません。なので、F2通しというこのレンズであっても特別扱いしていないのです。数年前なら実現できなかったサイズでしょうね。
3つめはAFです。オートフォーカスレンズの場合、ピント合わせのために動かすレンズをなるべく小さく軽くすることで、AF時の動き出しと停止を高速・高精度にしていきます。しかし、F2ともなるとそれでもフォーカス群は大きく重くなりがちですから、4基ものXDリニアモーターと最新のレンズ制御技術で精緻にコントロールしているのです。自分で使ってみても中で大きなレンズが頑張って動いているような感覚はなく、ごく軽く使えました。
萩原れいこさんの作品
——なるほど。では具体的な画質や操作性、AF性能について、実際に使われた萩原さんとコムロさんにうかがってみましょう。まずは萩原さんが「FE 28-70mm F2 GM」で撮影された作品を見ていきます。これは桜の花のアップでしょうか。とろけるようなボケですね。
萩原れいこ(以下、萩原): 開放F値2.8のズームレンズでは撮れない作品を、ということで、ボケを強調した作品にしてみました。単焦点レンズで撮ったかのようなボケが得られて満足した1枚です。とても優しい、人の感覚に近いニュアンスを感じさせるボケに仕上がったと思います。
——マクロレンズの撮影とはまた違う感じですね。かなり近づいて撮られたのでしょうか。
萩原: ほぼ最短撮影距離の38cmで撮っています。さらにAPS-Cサイズにクロップをしていますが、有効約6,100万画素のα7R Vということで、切り出しても約2,600万画素と十分な画素数が得られました。本職のマクロレンズにはかないませんが、ズームレンズなのに、汎用性の高い使い方ができるレンズではないでしょうか。
コムロミホ(以下コムロ): ボケの背景へのなじみ方がすごいですね。単焦点レンズで撮ったかのようです。
萩原: なめらかな階調再現ですよね。
——次の作品です。一転して遠景ですね。山並みを背景にした立派な桜の木です。
萩原: 今回の作品はすべてJPEG撮って出しですが、クリアでとても解像感があります。F16まで絞り込み、後ろの山まで見えるようにしました。F16になると回折現象が気になるのですが、これほどクリアに再現されるとは思いませんでした。周辺の描写も素晴らしく、パンフォーカスで風景を撮りたい方にも安心感があるレンズではないでしょうか。
——これもまた爽やかですね。水面を入れて明るくまとめられていますね。
萩原: 実は夜の7時くらいに撮ったシーンです。日没くらいの時間帯です。薄暗い中のピント合わせも快適でした。周辺に歪みもありませんし、こういうシーンでも安心して使えるレンズです。
鈴木: 暗いところの出方が良いですね。階調の情報を持っていることも良いレンズの条件なのでしょう。それが感じられます。
萩原: はい、この作品ではないのですが、逆光でもシャドーからハイライトまでのつながりがなめらかです。
コムロ: 木の幹・枝の1本1本がシャープ。電気的に誇張したのではなく、光学の良さがそのまま残っているような。これは大きくプリントしたくなります。
萩原: そうなんですよ。見応えのあるシーンが撮れることを証明できたのかな、と思います。
コムロミホさんの作品
——では、コムロさんの作品を見ていきましょう。モノクロで職人の丁寧な仕事ぶりが伝わってきます。
コムロ: 京都で撮り下ろしてきたJPEG撮って出しの作品です。この日は絞り開放のF2で統一、基本的に28mm、35mm、50mm、70mmの単焦点レンズを持って行った感覚で撮っています。4本分のレンズを1本のズームレンズでまかなえたので、京都までのバッグが小さく済みました。身軽さが良かったです。
——前ボケを大きく入れているのですね。
コムロ: お肉屋さんなのですが、交渉して撮影させてもらいました。お父さんの眉毛がすごく解像していて驚きました(笑)解像感の出方がすごくシャープですね。手前のカウンターを前ボケにして奥行きを出しています。スナップにおいて大事なのはどこにピントを置くか。自分が何を伝えたいのかを表現するのに、F2による浅い被写界深度は有効だと思います。
鈴木: スナップといえば単焦点レンズのイメージがありますが、ズームレンズの効用はあるのでしょうか?
コムロ: スナップでも立ち位置が制限されることは良くあります。背景とのバランスを微調整できるのは、ズームレンズの良いところですね。
——次の作品も前ボケが印象的ですね。
コムロ: カメラを地面すれすれに構えてしゃがみ込み、水たまりに写る自転車と奥の風景のバランスを考えながら撮りました。びっくりしたのは、前ボケのなだらかさ、後ボケとの違いのなさです。このボケが硬いと、写り込みの中のエッジがうるさくなってしまいがちですが、それがすーっとなだらかに続いているので、実際の被写体と写り込みの中の被写体を、バランス良く表現することができました。
鈴木: 非球面レンズが入っているとボケ描写が悪くなるイメージを持つ人がいるかと思うのですが、いまの設計技術や硝材になると、そういうデメリットを上回るくらい進化しているのでしょう。まったく無理のない描写で、F2通しの特殊なレンズという感じは受けませんね。
萩原: きれいにボケるからこそ「こう撮ってみよう」というアイデアが生まれますよね。
——夜のシーンでしょうか。こちらはさらに写り込みにフォーカスした作品ですね。
コムロ: これも低い位置で撮影しました。レンズが重いとローポジションでの撮影がきつく感じるのですが、この製品はカメラとレンズのバランスが良く、おっくうではなくなりました。水たまりの写り込みを見つけてすぐに撮る、ということができます。前ボケに丸ボケを入れています。
鈴木: 光源のとび際の処理がすごく自然できれいですね。ゴーストも見られません。
コムロ: そうなんです。あと、傘のエッジなどに色収差が見られません。これも解像感につながる性能といえるでしょう。
萩原: 黒がリッチですね。奥行きを感じさせる作品です。
それほど重くない? バランス・操作性も文句なし!
——標準ズームレンズで開放F値2ということで、一般的な標準ズームレンズより大きくて重いのですが、その辺りはいかがでしょうか。
萩原: 最近のソニーのレンズは軽いのが当たり前になってきています。そういう比較からすると重い方のレンズなのでしょう。でも単焦点レンズを何本も持つことを考えると、小型軽量といえると思います。重量バランスも良いので、使っていて重さは特に気になりませんね。
コムロ: 開放F値2というスペックからすると、フルサイズ対応で900g台は「軽い」というのが第1印象です。描写も良いので単焦点レンズ4本分だと考えると、むしろ軽くて持ち運びしやすい製品なのではないでしょうか。
鈴木: 色々写真を撮る手段はあると思うのですが、「今日はミラーレスカメラを持ち出すぞ!」という日であれば、この重さに問題は感じません。安心感の方が勝る印象です。もし小指に余裕や安定感が欲しい人は、バッテリーグリップをつけても良いでしょうね。
——開放F値F2.8の「FE 24-70mm F2.8 GM II」との違いはどんなところにあるのでしょう。
萩原: 「FE 24-70mm F2.8 GM II」の方が軽いので、しっかり山歩きをする場合などには有利でしょう。一方でボケを追求したいときは「FE 28-70mm F2 GM」でしょうか。それに両者で描写が違うので、シーンや目的によって使い分けることも考えたいです。
コムロ: F2通しということで、「FE 28-70mm F2 GM」は動画を撮影される方にも良いのではないでしょうか。動画は暗いシーンでもシャッター速度を担保しないといけないので、F値が1段明るいと使いやすさが変わります。一方スナップでは、広がりが持てる24mmからのズームを便利に感じる人もいるでしょう。そういった意味で違う性格のレンズといえますね。
鈴木: モノを買うのが好きな人の視点からすると、迷う余地があるなら「FE 28-70mm F2 GM」にいって欲しいですね。F2.8のズームレンズを買って「思ったよりボケないな」「やっぱりF2にしておけば良かったか」と悩み続けるよりは、まずF2を試してもらった方が精神衛生上良いかと思います(笑)。もちろん、写真を仕事にしている人や、ライフワークにしている人にもF2ズームの世界を体験してほしいですね。
——このレンズの対になるような存在、「FE 50-150mm F2 GM」も出ました。組み合わせることで、どんな撮影ができると思いますか?
萩原: 「FE 50-150mm F2 GM」が追加されたことで感じたのは、大口径ズームレンズのスタンダードがF2.8からF2になるのでは? ということでした。一緒に持ち歩くことで、新しい風景写真の世界が広がるのではないでしょうか。シンプルにボカすことが楽になりますし、被写体を望むようにボカすための繊細な作業が少なくなりました。
コムロ: 「FE 50-150mm F2 GM」ですが、50mmから始まっているところに興味を覚えます。標準・中望遠・望遠の3つの大口径単焦点レンズを1つにしたイメージなのでしょう。ポートレートを撮るには最適なのではないでしょうか。
鈴木: よく使う焦点域でF2ズームを1本買っていただき、追加で単焦点レンズを組み合わせるというのはどうでしょう。そういう使い方もあるかと思います。
新しい「G Master」が変える写真の世界
——F2通しの「FE 28-70mm F2 GM」で、自分の作品がどう変わると思いますか? あるいは新たに使ってみたいシーンなどありますか?
萩原: 心象的な風景写真とでもいうような、表現の幅が広がると感じます。明るい単焦点レンズを使うのは楽しいのですが、普段の風景撮影では立ち位置が制限され、寄ったり引いたりができないことがほとんどです。なのでズームレンズが必須でした。そういうシーンでも単焦点レンズのような明るさで撮れることが画期的だと思います。また、花との向き合い方が変わりそうです。処理感やボケの作り方など、F2.8ズームとは違うアプローチになるでしょう。トンネルや花道など、手前から奥まで続くようなシーンもボケをいかして撮ってみたいです。
コムロ: 初めて向かう場所の場合、どの焦点距離のレンズを持って行くか悩みます。50mmくらいの画角が合うのか、人に近づきづらい街なのか。行ってみないとわからないんですよね。そういうときにズームレンズ、しかも単焦点レンズに近い明るさのズームレンズなら1本でいけるので安心ですね。
鈴木: 取材のときの撮影に便利そうです。説明的な写真は絞る必要がありますが、扉やイメージ的なカットも必要で、そういう場合に1本でさっとボカせるのは良いと思います。
——このレンズはG Masterに属する製品なのですが、G Master、あるいはソニー純正レンズの魅力とはなんでしょう。
萩原: ソニー純正レンズにはAFの快適さがあり、加えてG Masterといえばボケ味と解像力の両立がイメージされます。ゴーストやフリンジなども少なく、撮っててストレスがないのがG Masterだと思います。画作りをする上で我慢しなくて良いのが1番でしょう。
コムロ: 今回このレンズを使ってみて、操作感がとても良いなと思いました。絞りのクリック感の良さは、モチベーションにも関わってきますよね。
萩原: 地味にレンズフードの着脱など、操作感が良いですよね。
コムロ: PLフィルターを操作する切り欠きもありますしね。
鈴木: とにかくあらゆるスイッチがついているのがソニーのG Masterですね。このレンズのトルクの設定はどうされていましたか?
コムロ: 私は「SMOOTH」にしていました。「TIGHT」も面白いですね。ズーム操作が重くなり、例えば50mmにしておけば、ほとんど単焦点の50mmレンズを使っているような感覚になります。
鈴木: Eマウントにはさまざまなメーカーからレンズが発売されていますが、やはり、ソニー純正の存在、そしてG Masterをはじめとする高品質なレンズがあるからこそ、サードパーティメーカーも思い切った挑戦ができるのだと思います。中でもG Masterは、ソニーが最も「やりたいこと」、そして「ソニーらしさ」を体現したクラスの製品だと感じます。メッセージ性が非常に明確ですよね。
——スナップと風景写真、それぞれで「明るい標準ズームレンズ」がもたらすものとは何でしょうか。
コムロ: スナップでは高感度が必要なくなることと、より大きなボケが手軽に得られることですね。自然で美しいボケはカメラならではの表現です。しかもフルサイズのズームレンズでF2ができる。単焦点レンズの良さももちろんありますが、レンズ交換なしで試行錯誤できるズームレンズで、この意義は大きいでしょう。
萩原: F2の明るさがあることで、まず星景の撮影が有利でしょう。また、風景写真では単焦点レンズは使いにくく、ズームレンズが主流です。そのズームレンズがF2.8ではなくF2になることで、新しい風景写真が期待できます。手前から奥までボケを生かした風景写真の可能性を感じます。パンフォーカスに縛られない、心象的な風景写真が今後たくさん出てくるのかもしれませんね。心赴くまま撮る、そういう風景写真が増えてくることに期待したいです。