トピック
ニコン「Z5II」「Z6III」…2つの個性を鉄道撮影で検証!
GANREF「注目製品レビュー ニコンZ5II & Z6III」撮影セミナーに同行してみた
- 提供:
- 株式会社ニコンイメージングジャパン
2025年6月19日 18:30
弊社インプレス運営の写真SNS「GANREF」が企画する「注目製品レビュー ニコンZ5II & Z6III」の撮影セミナーが、6月7日(土)と翌8日(日)に開催された。
2025年3月の「GANREF」が企画する「注目製品レビュー ニコン Z8+大三元レンズ【風景・星景編】」に続く企画。選ばれたGANREFメンバー8名に「ニコン Z5II」と「ニコン Z6III」を徹底的に使ってもらい、機材の新機能などを存分に活用して作品を制作してもらおうという内容だ。メンバーのレポートはすでにGANREFで続々発信されている。
今回のテーマは「鉄道写真」ということで、鉄道写真家の助川康史さんを講師に迎えた。助川さんはニコン機を使い、鉄道誌や旅行誌などの撮影も行っている。またニコンカレッジの講師としても活躍中だ。
撮影セミナーでは、鳥取県米子市から兵庫県相生市にかけて伯備線と山陽新幹線を撮影した。2日間で4カ所の撮影ポイントをまわり、鉄道写真にチャレンジする趣旨となっている。
メンバーにレビューしてもらう製品はZ5IIとZ6III。希望するNIKKOR Zレンズ3本とともに1カ月間貸し出され、両機種の違いも比べながらじっくり試すことができるようになっている。
撮影セミナーで使用するレンズとしては、超望遠撮影を体験できるように「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S + Z TELECONVERTER TC-1.4x」か「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」を全員に貸し出していた。
Z5IIは、4月に発売されたばかりで注目を集めているFX/フルサイズ機だ。Z6IIIより手頃なモデルという位置づけだが、動体のAF機能が強化された。メカシャッターで最高約14コマ/秒の連写と合わせて鉄道撮影にも十分対応できる1台となっている。一方のZ6IIIは、部分積層型CMOSセンサーによるさらに高い連写性能などが魅力だ。
進化したAF機能の使い方を伝授
初日は10時に米子ワシントンホテルプラザに集合し、まずは座学でカメラの機能や鉄道撮影の基本的な撮り方を学ぶことになった。メンバーやニコン関係者の挨拶もあり、和やかな雰囲気で進行していった。
助川さんは冒頭、「鉄道写真を上手に撮るにはカメラの性能や機能をよく理解することが重要です。これらをフルに生かすことで確実で美しい鉄道写真を撮れるようになります。EXPEED 7からAF精度がかなり上がりました。AF-Cの被写体検出で撮ると、『ここまで進化している!』というのを体感できると思います」と解説した。
共通する使い方のほかに、Z5IIとZ6IIIでは設定や撮影時の考え方が違う部分もあるとのことで、両機の違いについての解説にも時間が割かれた。
Z5IIは「ニュースタンダード機」という位置付けになり、Z5の後継機でありながらエントリー機とは呼べないほど性能が向上しているとのこと。上位機種の能力を詰め込んでおり、これからZシリーズの基準になるであろうカメラだと話した。「失敗がなく確実に撮れるんです。5、6年前のフラッグシップ機ほどの性能といえます。よそ見をしていてもシャッターを押せば撮れます」(助川さん)と笑いを誘った。Z5IIはJPEGの場合は14コマ/秒で連写でき、助川さんによると「それで新幹線も撮れます」とのことだ。
Z6IIIについては、部分積層型CMOSセンサーによる高速読み出しが大きなメリットという。約20コマ/秒での高速連写ができる電子シャッター使用時に、ローリングシャッター歪みがより目立たなくなる。「私の場合、普段から電子シャッターがデフォルトです。新幹線でもローリングシャッター歪みを感じなくなりました」(助川さん)。
それでいて、メカシャッターでも約14コマ/秒でのRAW撮影が可能。鉄道写真のさまざまなシーンに対し、フレキシブルに対応できるとした。助川さんは上位機種も使用しているが、シャッターを切る数では現在Z6IIIが多いとのこと。
Z5IIとZ6IIIは操作系もほぼ同じ。「Z5IIを買って将来ステップアップしても、サブ機として末永く使えるのがZ5IIです」と助川さん。
列車撮影のAF設定はAF-C、被写体検出(乗り物)、3D-トラッキングが良いという。自動的に列車を検出して追いかけてくれるので、あとは連写をすれば撮れる。「この設定で、被写体を外した記憶が無いほど信頼しています」(助川さん)。ポイントとしては三脚で構図を先に決めておくのが重要だそう。手持ちだと列車の動きにつられて構図が変わってしまうからだ。
今回の参加メンバーで鉄道写真をメインにしている人は少ないこともあって、鉄道写真の基本的な考え方についても講義があった。
日の丸構図は基本的に避け、画面を4つに分けたそれぞれの中央に列車を置くとバランスの良い構図になるとのこと。それが難しい場合は3分割構図や、対角線構図を考えるようにする。また、横位置が難しいときは縦位置を試すと収まり良いこともあるそうだ。
まずは伯備線で編成写真にチャレンジ
座学が終わるとホテルを後にし、貸切バスへ。最初の撮影ポイントである伯備線(黒坂~根雨)に向かった。踏切近くの道路から「やくも」などを撮影できる有名スポットになっている。
ここでは、鉄道写真の基本である編成写真を収めることになった。現場では助川さんが撮影のポイントやカメラの設定方法などを伝えた。
編成写真は列車全体を写すが、どの辺りまでフレーミングしておけば良いかは事前にはなかなかわからないもの。その点は助川さんが「架線柱何本目まで入るように」といった具合でレクチャーするのでメンバーも安心して構図を決められたようだった。
構図では地面の草が多すぎるとバランスが悪いので注意すること。また、目立つ小屋などは入らないようなフレーミングにすると良いそうだ。貨物列車も走る場所だが、パンタグラフは切らず架線も入れた構図が理想とのこと。
この場所ではシャッター速度は1/1,000秒は必要で、絞りはF8程度が良いとのことだった。3D-トラッキングが外れないようにシャッターボタンの半押しを離さないようにして待ち構えるのもポイントだそう。
撮影を体験したメンバーからは、3D-トラッキングに対する高い評価が得られていたようだ。「きれいに追ってくれる。ピントもバッチリで優秀」、「信用して使える安心感があった」といった具合だ。
ニコン Z6III/NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S+TC-2.0x/800mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F11、−0.3EV)/ISO 1600
ニコン Z5II/NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR/30mm/マニュアル露出(1/1,000秒、F8.0、−0.3EV)/ISO 640
大山をバックに風景を取り入れた構図で狙う
続いて再びバスで移動し伯備線(岸本~伯耆大山)エリアに移動。大山をバックに鉄道車両を撮影できるポイントだ。
この日は曇りで大山が見渡せるか心配されたが、多少雲はあったもののその勇姿を見せてくれた。この場所は風景も含めて広めに撮ることからレンズは50~100mm程度が使いやすいとのこと。大山付近の雲も含めるのであれば、さらに短いレンズとなる。
この場所は列車まで離れており、ほぼ横移動なのでAF-SでOK。あらかじめ架線柱に置きピンをしておく。シャッター速度は1/1,000秒で十分止まって写るそうだ。感度はできるだけ下げるためにも、シャッター速度は列車が止まるギリギリに設定するのがコツという。
各メンバーも熱心で、助川さんへの質問も矢継ぎ早に飛ぶ。多いのは構図に関することで、助川さんがメンバーのカメラを覗いて手本となる構図を作ってくれるので参考になったようだった。
撮影場所の道は長いのでポジションは各自の自由。離れた位置から狙うメンバーもいた。助川さんがお勧めしていたのがローポジションから狙う構図。アイレベルに構えてしまいがちだが、カメラの高さによっても写真の印象が大きく変わる。
なおアクティブD-ライティングについては、この日のように曇りでもともとコントラストが低い場合には切るか弱めの設定で良いとのこと。コントラストが弱いシーンで強めにかけると眠い絵になってしまうためだ。
初日の撮影はこれで終わり、一行はバスで津山まで移動し、ホテルで1泊となった。
ニコン Z5II/NIKKOR Z 24-120mm f/4 S/84mm/マニュアル露出(1/1,000秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 400
新幹線のスピードに圧倒! 線路脇から編成を狙う
2日目は8時にホテルを出発。いよいよ新幹線の撮影だ。まずは相生~岡山間にある山陽新幹線の線路沿いに移動した。この場所も有名な撮影スポットで、きれいな編成写真が撮れることで知られるそうだ。
現場に到着すると、助川さんから「列車通過時は風圧がすごいので気をつけるように」と注意があった。三脚にカメラを載せたまま離れると倒れる恐れもあるとのこと。
この場所は広くは無いが坂になっているため、数人いても望遠レンズであれば重ならずに撮影可能。この場所は本格的な超望遠撮影エリアということで、助川さんによるとレンズは400mm以上で狙いたいとのこと。この日は曇りなので400mmで十分だが、晴れているときは架線柱の影を取るためもう少し望遠が良いそうだ。
また、三脚を使っていても超望遠レンズではシャッターを押すときのわずかな動きで構図がズレてしまうので、ケーブルレリーズも使いたいということだ。
ここでの露出設定は1/2,000秒、F8程度。新幹線が白いので露出オーバーにならないように1/3段アンダーくらいでも良いというアドバイスもあった。
新幹線通過時の風は凄まじいもので、メンバーもカメラを押さえつつ大変な撮影だったが、大迫力の撮影が楽しめたのではないだろうか。
ニコン Z5II/NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR+TC-2.0x/1,200mm/マニュアル露出(1/1,000秒、F13、±0.0EV)/ISO 1600
川沿いでセミナー最後の列車撮影に挑む
最後の撮影地となったのは山陽新幹線(相生~岡山間)の千種川土手。新幹線の高架まで遮るものがなく、列車全体を収められるスポットだ。川の流れや背景の山も取り入れられる。
本来青空であれば新幹線が映えるところだが、この日は曇り。空をあまり入れないようにするなど、メンバーもそれぞれ工夫して構図を作っていた。
助川さんからは画面の左端に橋脚を入れないと列車が空を飛んでいるように見えてしまいNGになるとのこと。標準レンズ程度の画角で広めに取るのがポイントだそうだ。
ここもフォーカスはAF-Sで置きピン。先頭車両が架線柱に被らないようにするため、より高速に連写できる「高速連続撮影(拡張)」(Z6IIIが20コマ/秒、Z5IIが約14コマ/秒)の使用を助川さんは勧めていた。
今セミナーの撮影スポットはいずれも駅から離れた場所で、車がないと行きづらい所だ。その点、このセミナーでは貸切バスで撮影ポイントの近くまで行くことができた。メンバーからも、「撮影ポイントに案内してもらえるのでストレスなく撮影ができた」といった声があった。
ニコン Z5II/NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S/150mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F5.6、−0.3EV)/ISO 800
作品セレクト&講評会
2日目の撮影はお昼過ぎに終了し、相生ステーションホテル アネックスで提出作品のセレクトとプリントが行われた。
今回も1人2点を選び、A3ノビでプリントを行った。それを見せながら作品の狙いを1人ずつプレゼンし、助川さんが講評した。
今回のセミナーでは、両機のポテンシャルを引き出す撮影テクニックやレンズの実力を深く学ぶ機会になったことと思う。メンバーが学んだ実践的なテクニックをぜひGANREFのレビューを通してチェックしてほしい。
参加した感想をインタビュー
参加メンバーのうち3名に気に入った作品を見せてもらい、お話を伺った。
meguruDさん
ニコン Z6III/NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S/150mm/マニュアル露出(1/1,250秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 500
鉄道写真を撮るのは初めてでしたが、知らされていたのとは違った長さの列車が来てしまったときにとっさにズームを調節してうまく撮れたのが成果でした。3D-トラッキングも列車に付いてきてくれて、カメラの性能にも助けられました。
普段使っているのとは違うメーカーの機材が使えるということで、初めてセミナー参加しました。普段はスナップを撮っていますが、お借りした「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」は主題と背景の分離が簡単にできて驚いたのが一番印象に残っています。
ヤスユキさん
ニコン Z6III/NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S/400mm/マニュアル露出(1/50秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 100
鉄道写真をメインに撮影しています。世界一かっこいいと思っている500系をよりかっこよく、スピード感を出そうと考えて流し撮りをしました。シャッター速度は1/50秒です。「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」を使いましたがレンズの画質も良くて、正直欲しくなりました。
最近Z6IIを購入しましたが、Z6IIIと超望遠レンズをセットで使うとこちらの方がメイン機材に良いのではと思いました。AF-Cも3D-トラッキングも自分の腕より信頼できる印象です。迫ってくる列車での置きピンは完全に時代遅れの方法だと感じさせられました。
きしさん
ニコン Z6III/NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S/400mm/マニュアル露出(1/1,000秒、F5.6、−0.3EV)/ISO 800
Z6IIIを去年の暮れに買って使っているのですが、新しく出たZ5IIが気になって応募しました。私の撮影スタイルだとどちらの機種でも対応できそうでしたが、鉄道ではやはり連写性能の高さからZ6IIIの優位性も確認できました。
この作品は望遠撮影なので、余白が埋まると考えて縦位置にしました。今回はZ6IIIにNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sを付けていましたが、テレコンを付けても本当に何の違和感も無くて、最近はずいぶん進歩していると実感しました。