雪上という不安定な足場。望遠レンズの撮影だったため少し不安だったが、約5段分の手ブレ補正機能のおかげでミスショットは全くなかった。羊蹄山の勇姿をしっかりと描けた
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm/100mm/マニュアル露出(F11、1/320秒)/ISO 100/WB:オート 「ライカSL3-S」は、階調豊かな高画質と高速連写などの機動力を備えた高級機であり、スペシャルなシーンを残すのにふさわしいカメラ。この「ライカSL3-S」を携えて、写真家にとって人生のキーポイントになった場所へ、遠い記憶をたどる旅が今はじまる。
hirotographer
企業で働く傍ら、東京を拠点に活動する旅フォトグラファー&ライター。思わず出掛けたくなるようなスナップ、風景、シティスケープを撮影するほか、旅先での出来事をnoteなどにまとめて紹介している。
※本企画は『デジタルカメラマガジン2025年3月号』より転載・加筆したものです。
裏面照射型の新センサーとMaestro IVが大切な時間を写し撮ってくれた
学生時代からのスキー仲間とニセコに訪れるようになってから一体何年が経つだろう。朝は最高のパウダースノーに身を委ね、昼は温泉に漬かり、夜は腕によりをかけて作った料理を美酒とともに堪能しながら、思い出話やそれぞれの今を語らう。毎年年末に残しておきたい記録と記憶。
前に進みながらもいつか振り返るその時のために、美しい青空も何でもない夜間も広いダイナミックレンジで写し、残す。そんな特別な時間を逃すことなくカタチに残してくれるのがライカSL3-Sなのだろうと思った。
発売日:2025年1月25日
ライカストア価格:91万3,000円(税込)
●SPECIFICATION
イメージセンサー:2,460万画素CMOSセンサー
画像処理エンジン:Maestro IV
記録メディア:CFexpress Type B、SD UHS-II
ISO感度:ISO 50~200000
手ブレ補正:約5段
シャッター速度:30分~1/8,000秒(メカシャッター)、60~1/16,000秒(電子シャッター)
連続撮影速度:30コマ/秒
EVF:120fps、576万ドット
背面モニター:3.2型233万2,800ドット
外形寸法(W×H×D):約141×108×84.6mm
質量:約768g 誰もまだ滑っていないサラサラのパウダースノーを狙ってスキーヤーたちは朝からリフトに乗り込む。ライカSL3-Sはインナーグローブをはめていてもタッチ操作がしやすい。ボタンを詰め込んだカメラでは難しかっただろう。軽さが新しい可能性を広げることもあれば、質量や手触りが特別な時間に意味をもたらすこともある。切れ味鋭い和包丁のような心地良いシャッターフィーリングと、その黒檀柄(こくたんえ)のようなボディのホールド感は格別で、写真を見返すとそこにはライカSL3-Sを握る、あの感覚が残り続けている。
動画を撮影するために可変NDフィルターを付けていたところ、飛行機の窓のフィルターと干渉し、幻日のような光景に。絞り開放での地上の建物の描写も素晴らしく、このレンズの魅力に早速取りつかれてしまった
ライカSL3-S/ライカ アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH./35mm/マニュアル露出(F2、1/125秒)/ISO 200/WB:オート 三脚を置く場所がなく手持ちで撮影。-17℃まで冷え込んだため厚手の手袋をしていたが、ライカSL3-Sのダイヤルやボタン配置は計算されていてスムーズに設定変更でき、朝の光を逃さずに写せた
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm/141mm/マニュアル露出(F8、1/250秒)/ISO 1000/WB:曇天 30コマ/秒の連写性能と進化したAFは、パウダーが舞うスキーシーンとも相性が良い。100-400mmの望遠レンズでもブラックアウトフリーの撮影で被写体を見失うことなく、どんな天候でも撮影が存分に楽しめた
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm/291mm/マニュアル露出(F11、1/320秒)/ISO 80/WB:オート -10℃の中、仲間と過ごした年越しの7日間
・4本のレンズをセレクト
スキー道具が重いので、できるだけコンパクトなレンズをチョイス。そのほかトラベル三脚、ジンバル、フィルター類、フラッシュとソフトボックスなどを準備。
レンズは、ライカ アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.、ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm、ライカ アポ・ズミクロンSL f2/50mm ASPH.、ライカ アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH.の4本を持ち込む ・インバウンドでにぎわうリゾート
極上の雪質と降雪量で高い評価を受ける世界でも有数のスノーリゾート。豊かな湧水や泉質のバラエティのある温泉など大自然の魅力にもあふれ、海外からの観光客や移住者で急速な国際化と開発が進む。
ニセコアンヌプリ国際スキー場からは羊蹄山が見える。この季節に山頂まではっきりと見えるのは珍しいそうだ ・自分で釣ってさばく海の味
ニセコの旅では私ともう1人の男性が日々料理を振る舞う。こちらは彼がニセコ入り直前に釣ってきたキントキダイの煮付け。釣り物のマハタの清蒸鮮魚なども年末の食卓を彩った。
キントキダイは生だと真鯛に似ている。淡泊な味わいなので、煮つけやバターソテーなどにして食べるとおいしい ライカSL3-Sは、その優れたダイナミックレンジで手前の建物からゲレンデに至るまでの階調をしっかり写し撮ってくれる。車の光跡を描くためにISO感度は50まで落とし、F22まで絞っているが長秒撮影などの設定も直感的で操作しやすい
ライカSL3-S/ライカ アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH./35mm/マニュアル露出(F22、90秒)/ISO 50/WB:日陰 比羅夫(ひらふ)のメイン通りにあるテキーラのポップアップストア。氷のブロックを積み重ねて作られている。氷のテクスチャや光沢などもライカSL3-Sで撮っていると楽しく、こういった所もニセコの魅力の1つだろう
ライカSL3-S/ライカ アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH./35mm/マニュアル露出(F4、1/200秒)/ISO 3200/WB:晴天 優れたカメラは新たな発見や場所へと導いてくれる。赤茶けた壁の質感と積もった雪、空の青などは10年通ったニセコでもライカとでなければ出合えなかった景色だと思う
ライカSL3-S/ライカ アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH./35mm/マニュアル露出(F11、1/200秒)/ISO 100/WB:晴天 帰りの空港でさえもライカSL3-Sの画力に突き動かされるようにシャッターを切りたくなった。ピントが迷いやすいシチュエーションだが、ゾーンAFに設定したところ、思ったところにスッと合焦してくれた
ライカSL3-S/ライカ アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH./35mm/マニュアル露出(F2、1/50秒)/ISO 200/WB:曇天 スピーディーな撮影を実現するチルトとタッチが可能なモニター
過酷な環境での撮影だったが、チルト式モニターによる安定したクイックな動作と直感的な操作性が本当に素晴らしかった。特にゲレンデではリフトでジンバルを組み立て、レンズを交換し、動画も写真も撮る、といった複数の動作を短時間に行うので、頭は常にリソースが不足する。ライカSL3-Sの安定性、操作性でそのハードルを乗り越えられた。
メニュー設定がシームレスに変更できるのは便利だった。動画と静止画もボタン1つで切り替えられる。画面をタッチするだけで直観的にメニュー項目にたどり着けるのでストレスがない チルト式のモニターで、自由度の高いアングルを可能にしながらも防塵・防滴性能も頼りになる。-10℃の中、ライカSL3-Sをジンバルに乗せてスキーで滑走しながらアクションカムのように使用できた デジカメ Watch ChannelにてhirotographerさんがライカSL3-Sで撮影した動画を公開中
【PRECIOUS MEMORIES ep.1】ライカSL3-S×hirotographer - YouTube